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勇者召喚からハブられた俺は、女神様の脱ぎたて神装(パンツ)で異世界を生き抜く ~明日を笑顔でいるために~  作者: 藤塚 まあき
第二章 ママに私が生まれた日の空の色を聞いたら、「おじいちゃんの頭と同じだよ」と言われた
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第17話 天下御免の大泥棒

 酒場でのミーティングを済ませた後。

 俺たち4人は、クリスティア嬢の匿われている屋敷に集まっていた。


 周りには他の冒険者たちがいるものの、その数は今回のクリスティア・シャイン嬢防衛戦に参加する総数よりも少ない。


 これは、戦力をいくつかの防衛ポイントに配置する事によって、下着泥棒の狙いであるお嬢様をどこに匿っているか、かく乱する為のようだ。


 そのため、防衛に参加する俺たち冒険者も、本物のお嬢様がどこに匿われているかは知らない。あらかじめ了承しての事だ。


「俺たち4人は屋敷のロビーで待機か……」


 他の冒険者たちと協議し、それぞれが受け持つ防衛場所で配置につく。

 俺、ブランさん、ユノリア、シルヴァのおっちゃん以外にもロビーに配置された冒険者たちは、パーティ毎に分かれて各々得意な陣形を組むようだ。


「屋敷の外に大勢配置すれば、『この屋敷に何かある』と相手に悟られてしまうからね。人員を割くなら、建物の内部に限られるってコト」


 シルヴァのおっちゃんはその場に座り込み、眠そうに欠伸を噛み殺しながら説明してくれる。

 余裕そうに見えるのは、冒険者として相応の場数を踏んでいるから……って、思っても良いんだよな?


「クロエくん。予告された襲撃の時間まで、まだ余裕がある。もし緊張しているなら、リラックスでもしてきたらどうだ」

「そうだなブランさん。リラックスするよ」

「大の字に寝転んで良いとは言ってない」


 ブランさんは、支給された大剣を試し振りしている。

 本来の武器である呪剣アダマスとやらは、現在は没収されてこの街の教会に封印中だからな。

 俺もはやく没収された女神様のパンツを返して欲しいとこだ。


 あー。にしても、こう。

 高そうな屋敷の床で寝転ぶのって、開放感あって気持ちいいな。

 ぼーっと上を眺めていると、天井の模様がぼやけて見える。


 ……周りの視線が痛いので、そろそろ起き上がるか。


「ところで、ユノリアは何をしてるんだ?」

「天井や床の模様を数えています」


 ……楽しいのか、それ。


「数字を数えていると、心がどこか落ち着くのです。特に6という数字には、なぜか思い入れがありまして」

「へぇ、6かぁ。数字の6は俺も好きだな。なにせサイコロは6だし、6月は英語でJune――ジュネちゃんっていう架空の萌えキャラを連想させて覚えやすかったから」

「そうですか。すごいですね」


 心底どうでもよさそうな無表情で、ユノリアは相槌を打つ。


 まあ、本人が楽しんでるなら、邪魔するのは野暮だろう。


「……魔物使い様は、わたしの趣味を笑わないのですね」

「まあ正直言うとちょっと変だなとは思ったが、俺という存在が変だって言うのもおかしな話だろ?」

「……変な方だという自覚はあったのですね」


 おかしいな。

 無表情のはずなのにユノリアの視線が痛いぞ。


「…………ま、まあ、あれだ。人に迷惑かけずに楽しんでるなら、それを貶す資格は誰にもないと思うよ。俺なんて迷惑かけまくりだし、それと比べりゃ全然いいじゃないか」

「……不思議な励まし方ですね。自分を下げて、周りを立てる。……ひょっとすると、あなたの言動は、何か周りを朗らかにするために演じる、道化のような――」

「……お。あの模様、なんだかおっぱいに見えるぞ」

「…………いえ、なんでもありません。ちなみにそれ以上近寄らないでいただけますか」


 なぜか急激に距離が遠のいた。


 ……それからしばらくして。


「……そろそろ陽が沈む時間ですね」


 全身鎧の冒険者がポツリと呟き、窓の方へと視線が集まる。

 やけに丁寧な口調だが、鎧の中はどんな人なんだろう。


 ……下着泥棒、リュパンツ・ザ・サートルが俺たちの方へ来るとして。

 いったい、どうやって侵入してくるのだろうか。


 正々堂々と玄関から?

 それとも窓を突き破って颯爽と?

 もしくは誰もが気づかぬうちに、人知れず目的を達して――。


「……いや、待てよ?」


 こういう時、泥棒や怪盗は変装の名人だと相場が決まっている。

 だとすると、既に他の冒険者と入れ替わってこの場に潜んでいる可能性は考えられないか?


 例えば――そう。

 何気ない一言で、全員の視線を窓の方へと誘導させた……。


「――なあ、どこへ行くつもりなんだ? 全身鎧の冒険者さんよ」


 俺はその場からさりげなく離れ始めた全身鎧の冒険者に、強めの語気で言い放つ。

 俺の一言に驚いたのか、その人物はピタリと立ち止まった。


「……考えてみれば、全身鎧だなんて身を隠すには絶好の姿だよな。いったい、いつから本物と入れ替わってたんだ? それとも入れ替わるまでもなく、始めから存在しない冒険者だったのか」

「…………」

「言い方を変えようか? ……お前だろ。悪魔憑きは」


 ――疑いを向けられた事への弁解は諦めたのか。

 全身鎧の人物は、無言で武器を構え始める。

 それを見て俺は黒だと確信し、ブランさんたちの方へさりげなくマンガ走りで後退しながら指を突きつけた。


「口封じに俺を消そうたって、もう遅いぜ! (ブランさん、はよこっち来てブランさん。俺殺される!) 残念だったな! もうお前はおしまいだ。なんたってこの場で俺たちに倒されるんだからな! (ブランさん、どうしたブランさん? はよこっち来てマジで! 無音で武器持ってにじり寄って来るのマジ怖い!) この通り、一連の会話はこの場にいる全員がバッチリ聞いて――(ブランさーーーーん!?)」


 ……あれ?

 誰も俺たちの方へ注目してないぞ。

 何やら全員、天井の方に視線を向けて――。


「あ痛ァァァァァァァ!?」

「で、ごわす」


 ボトッ。


 天井から二人の人間のようなものが降ってきた。

 地面に落下して尻餅をついた彼等は、涙目のまま、何事もなかったかのように飛び上がり――、


「はーっはっは! ようワイらが天井に潜んでおったと気ィついたな! それじゃあ観念して、いっちょ名乗ったる! ワイこそが(自称)天下御免の大泥棒! その名も高き、下着泥棒リュパンツ・ザ・サートル様や!!」


 まるで軽業師のように着地すると、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界では似つかわしくない、日本の神職のような和装を振り乱し、その男は高らかに名乗りをあげた。


 ……えっ。リュパンツってこっち?


 あと中世ヨーロッパ風ファンタジー世界では、およそ聞くことの無さそうな関西弁っぽい訛りが聞こえた気がしたんだが……。

 ひょっとして俺の【言語理解:EX】がバグってんのか?


「――って、今リュパンツ・ザ・サートルって名乗ったよな!? じゃあさっきの全身鎧はいったい何だったんだよ!?」


 振り向くと、全身鎧の人は気まずそうに構えを解いていた。

 そして、ためらいがちにリュパンツたちの方を指さしている。


「……え? リュパンツを察知して身構えただけで、他意はない?」


 ……ふ、腑に落ちねぇ~~~!

 

「いったい何をやっていたんだ、クロエくん。天井の模様を数えていたシスター・ユノリアが違和感に気づき、シルヴァ殿の投げたナイフで、天井に張り付いていた下着泥棒をこうして追い詰めたんだ。これからが本番だぞ」


 ブランさんの唐突な説明によると、リュパンツは忍者みたいに天井の模様そっくりの布で擬態していたらしい。

 リュパンツと名乗った日焼け肌の男はいそいそと和服の袖をめくり、歌舞伎のように頭を振り乱している。髪の毛めっちゃ短いけど。


「さ。ワイは名乗ったで。次はG08(ゴエイ)さんが名乗りぃや」


 今しがた名乗りを終えたリュパンツは、もう一人の仲間と思しき、和装のメイドさんに声をかける。

 和装のメイドさんは機械のような駆動音を鳴らし、懐から短刀をするりと抜くと、鈴の音を転がすように静かな口調と共にぺこりとお辞儀した。


「おいどんの機体名はSE-G-08。……G08(ゴエイ)さん、とお呼びください。……で、ごわす」


 ……おいどん? ごわす?

 いま語尾にごわすって言ったかこの美少女メイドさん。

 機体名だとか口にした事より、鈴の音を転がすような美しい女性の声からのごわす口調の方が気になるんだが!?


 なんか変な喋り方の奴ばっかりと遭遇する気がするが、やっぱり俺の【言語理解:EX】がバグってるのだろうか。


 ていうか仮にも中世ファンタジー風世界で、一人称おいどんの美少女人造人間メイドって属性盛りすぎだろ!?


「あれはまさか……東方列島諸国の一つ『機械帝国-TATUMA-』の人型魔導生命体! この時代では完成しているのか――!」


 ブランさんが興奮したように解説する。


「……なんすか、その機械帝国なんちゃらって」


 気になって周りの冒険者たちに聞いてみると……。


「えっ? きみ『機械帝国-TATUMA-』を知らないの?」

「はぁ!? お前『機械帝国-TATUMA-』を知らないのか!? そんな奴いたのかよ!?」

「おい皆! ここに『機械帝国-TATUMA-』を知らない奴がいるぞ!!」


 なんか知らんけど、すっげえ驚かれた。

 そして誰も『機械帝国-TATUMA-』とやらについて解説してくれなかった。

 なんでや。


 すっげー気になるんだけど、誰も語らない辺り、できるだけ触れたくない事柄なんだろうか。


 しょうがないので、俺は一人で呟きながら考察してみる。


「TATUMA……タツマ……薩摩? 東方列島諸国の一つとか言ってたが、この世界における日本的な場所にある国なのか……?」


 “機械帝国”という名前と、美少女人造人間メイドの産地な辺り、相当な魔法科学技術がありそうだが……一人称おいどんで語尾がごわすなのがなぁ……。

 そんなとこに薩摩要素は必要あんのか?


「……ていうか、リュパンツも多分、東方列島諸国とやらの出身だよな。ひょっとしてこの世界の日本的な場所って、ピュアな外国人が漫画読んで想像したようなトンチキ国家群なのか……?」


 ……駄目だ。

 なんか珍妙な事実が発覚してばかりで頭がこんがらがってきた。


 だが一つだけはっきりしている事がある。


「次回は完全にギャグ回って事だな。じゃあ俺もボケ側に回るか」

「収集がつかないからやめてくれ」


 ブランさんが心底やめて欲しそうに唸る。


 ……果たして俺、クロエ・ユキテルはボケとツッコミ、どちらに回るのか。

 皆も予想してみてね!

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