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第9話 貴方となら悪くない

「きししし……幕間の時間もそろそろ終わり。君達のフィナーレに向けて、死神執行部隊の公演を再開しようじゃないか」


 黒杖を指揮棒のように構えながら、ジャックは従えたアンデッド達で俺たちを楽しそうに取り囲む。


「あれは……」


 このアンデッド達には見覚えがあった。

 俺が初めてこの街に降り立った時、ギャグシーンを交えて追想劇を繰り広げた愉快なゾンビさん達だ。


「…………ッ! ……彼らまでもが、ジャックの支配下に……」


 やはり、ブランさんの生前の知り合いで間違いないらしい。

 転んだ俺を待ってくれた時の気の良さはどこへやら、ゾンビたちは殺気をはらんだ様子でジャックの指令を静かに待つ。


「愉しいフィナーレの前に、スペシャルなキャストを紹介しておこう」


 続けてジャックは、指揮者が演奏前にする一礼のような仕草の後、自身の隣へ俺たちの視線を誘導させた。


「僕の隣に控えるのが、何を隠そう、今夜の主役。〖レイスナイト〗こと、ブランカ・リリィベルの怨念さ」

「あれが……」


 そこには確かに、他のアンデッド達とは一線を画すオーラの持ち主が。


 そいつはブランさんと全く同じ背格好で、黒い瘴気のような物に覆われており。

 先程の光線を放ったであろう、漆黒の両手剣を地面へ突き立て、まるで王様のように(おごそ)かに鎮座している。


 その輪郭はうすぼやけており、実体の無いモノが、人間の身体を形作っている事を示していた。


 俺はごくり、と喉を鳴らす。


「……あれって服着てるの? 全裸なの?」

「クロエ君。私はいったい何度、貴方をグーで殴ればいいのだろう」


 げんこつをぷるぷると震わせるブランさんは置いといて。

 俺は本日何度目かのたんこぶをさすりながら、ジャックの次の台詞を待つ。


「何やら隠れてコソコソと企んでいたようだけど、どのみちだったね。この街を覆っている霧は、僕の張り巡らせた魔法の結界さ。

 この霧がある限り、君たちはこの街から出られず、どこにいようと、その位置は手に取る様に分かる。そして僕を倒さぬ限り、この霧は晴れる事はない……」


 つまり最初にブランさんがやろうとしていた囮作戦では駄目だったと。

 結局のところ、ジャックを倒さなきゃ、俺たちに明日は無いって事か。


「……だったら話は簡単だ。ジャック! お前が倒れるまで、何度だってこの女神様のパンツで殴りつけてやる! 異世界おパンツ無双でな!」

「……そう。その女神とやらの下着。僕にはずっとそれが気になっていた」


 ジャックの表情から途端に笑みが消え、ビッ――と黒杖を振りぬいた。

 あ、この流れはアカンやつ。


「――《即死魔法・魔閃弾(ハデス・ショット)》!」


 ――即死魔法ッ!

 ヤバイ反応できなッ――、


「クロエ君!!」


 咄嗟にブランさんが俺を庇うように間へ入るが、放たれた魔法の閃光は、ビームのようにブランさんの肉体を貫き――!


「ぐっ……!」

「あっつ!?」


 僅かに軌道が逸れて、俺の脇腹を掠めていった。

 ……って、今の即死魔法だよな!?

 掠っただけとは言え、当たるとマズいんじゃ……!


「……って、即死しなけりゃ大丈夫なのか?」


 そんな俺の疑問に答えるように、ジャックは高らかに笑い出す。


「きしし……! やっぱりだ! 状態異常のみならず、即死魔法も効いてない! これで君の持つ謎の力がハッキリした! そのパンツはやはり、女神の“神装”だ!」


 神装。

 そんな仰々しい言い方をされても、これパンツなんすよ。

 『神装』と書いて『エッチなしたぎ』とか読めちゃう紳士アイテムなんです。


 ……そんな俺の内心を知ってか知らずか。

 ジャックは心底愉快そうに、俺の持つパンツへズビシと指を突きつける。


「まさかこんな変態にここまでしてやられるなんてねぇ」

「おいこら誰が変態だ。俺はただ女神様の脱ぎたてパンツを振り回していただけだ」

「……ひょっとして人間族って、僕らと変態の基準が違うの?」

「いや、たぶん同じだ。あれは変態であってる」


 ブランさんまで俺を変態呼ばわりするのか!

 まあ心当たりしかないんだけども。


 しかし仮に変態だとしても、俺は変態と言う名の勇者でありたい。異世界だけに。


「……まあとにかく。君のような貧弱なステータスで即死と状態異常を無効化するには、“幸運判定”に成功するしかない。しかし見た所、君にそこまでの幸運があるとも思えない。そもそも運が良ければ僕なんかと出くわさないだろうしねぇ」


 それはごもっともです。

 異世界に転移して初っ端から魔王軍の幹部級と遭遇とか、運が悪いってレベルじゃないからな。


「……という訳で、君の持つアイテムは、おのずと“幸運判定”に関する加護があるのだと予想できる。幸運ってのはよくある基本機能みたいな加護だけど、運そのものが良くなるのではなく、“幸運判定”にしか効果がない権能まで絞れば、おのずと答えは導き出せる」


 そのまま楽しそうに推理を展開し、最後に「犯人はお前だ」みたいなポーズで俺のパンツへ黒杖を向けた。


「君に神装(パンツ)を与えたのは――幸運と閃きの女神メィチス。閃き……アイデアってのは、思いつくのに運も絡むからね」


 ……幸運と閃きの女神、メィチス。

 それがこの神装(エッチなしたぎ)を授けてくれた、あの女神さまの名前……。


「ありがとう、メィチス様……。俺、このパンツ大事にします」


 俺は霧深いお空に向けて、涙ながらに敬礼した……!


「しかし碌なアイテムを与える権限もないから、自分の身に付けている物しか渡せなかったんだろうか。……まあ要するに、とりたてて特徴のない、使いっ走りの下級女神って事か」

「それは聞き捨てならないな」


 ブランさんは錆びついた大剣を振りかざし、正面に構える。


「――歴史上において、女神メィチス様の加護を受けた者は皆、叡智に優れた成功者として名を残している」

「つまり俺以外にもえいちなパンツを受け取った漢たちが……」

「クロエ君は黙っていなさい。

 ……とにかく、誰もが幸福な晩年を過ごしたからこそ、幸運を冠する女神なのだ! クロエ君はここで死ぬ命ではない!」

「歴史に名を残すのは成功者だけさ! 彼は名を残す事なく死んだ有象無象となるんだ!」


 ジャックが黒杖を振りかざし、俺たちを取り囲んでいたアンデッド達の目に紅光が灯る。


「――来るぞクロエ君! この物量では護り切れるか分からん。――とにかく、自分が生き残る事だけを考えろ!」

「んなこと言われたって――」

「大丈夫だ。私はもう破れかぶれではない。――共にこの局面を乗り越えるぞ!」


 そうか。ブランさんのメンタルはもう大丈夫なのか。

 だったら俺も腹をくくるしかない!


「さあ――アンデッド達よ、彼等の終曲を響かせたまえ!」


 ジャックの号令と共に、最後の戦いが始まった――!




「おわぁぁぁぁぁぁ!?」


 俺は圧倒的物量のゾンビ軍団に追われながら、とにかくあちこちを走り回る!

 時折、拳に巻き付けた女神様のパンツでゾンビを殴りつけ浄化するが、この物量差では焼け石に水だ。


 そして、街の中心部――広場では、ブランさんが自身の怨念である〖レイスナイト〗と激しく斬り結んでいた。


『――!』

「ぐっ……」


 その戦局はどう見ても防戦一方。

 後方に控えるジャックが何もしないのは、自分たちの勝利を確信しているからだろう。


『――【黒雷撃】』


 レイスナイトが闇の大剣を振りかざし――バチバチと黒い閃光を迸らせながら重厚に振り下ろす!

 落雷のような轟音と共に、大地を抉りながら極太の魔法剣(ビーム)がブランさんを襲い――、


「ふッ!!」


 ブランさんはその動きを先読みしていたのか。

 攻撃(ビーム)が放たれるよりも疾く、錆びついた大剣を地面に突き立てる。

 そして、両手を柄から離すと、勢いよく身を捻り――大剣の腹を思いっきり蹴り抜いた!


 ドウッ!!


 魔法剣は蹴り抜かれた大剣に当たると僅かに軌道を逸らし――誰もいない瓦礫に風穴を撃ちぬく!

 ……後から遅れて、落雷の衝撃と瓦礫の崩れ去る音が俺たちの鼓膜を震わせる!


「すげぇ!」


 敵の大きな一撃を防ぎ切った! ――と思ったのも束の間。


『――【瞬雷牙】』


 一時的に武器を手放し、丸腰となっているブランさんの元へ、レイスナイトが神速の踏み込みで間合いを詰める。

 音を置き去りしたその動き、俺は目で追う事もできず――、


「――来い! 我が剣よ!」


 大剣は、まるで呪いの装備のように、ブランさんの手元を離れても独りでに戻って来ていた。


 いつの間にやら、ブランさんの両手には手放したはずの錆びついた大剣が握られており、レイスナイトの一撃をかろうじて受け流す。

 ……いや、防ぎきれずに片腕から血がしたたり落ちていた。

 しかし、


「……ッ!」


 ブランさんはさらに踏み込むと、鍔迫り合いから滑らかに切り返し、敵の肩口へ大きく斬りつける!


 だが……、


「……くっ、やはりダメージにはならないか……ッ!」


 吹っ切れたブランさんは巧みな体さばきで防御はできるが、肝心の攻撃力がない。

 ジャックの言っていた通り、聖騎士のスキルがデバフとなり、聖なる力によって全てのスキルがマイナスの補正を与えているのだろうか。


 スピードも落ちているようで、自身の防御はできても、俺へのカバーが間に合わない。

 要するに防御しかできない、攻撃力0の壁役(タンク)。ゲームに例えるとそうなってしまう。


 スキルの絡まない攻撃……殴る蹴る等の純粋な暴力なら話は別だろうが、魔物相手に通じるかは怪しい。


 せめて攻撃用のスキルが使えたら……!

 敵だけ必殺技が使い放題とか、こんなに不利な戦いはない!


「……くそっ、こういう時は、術者であるジャックを倒せばレイスナイトを何とかできそうなんだが……」


 見ての通りブランさんはレイスナイトにかかり切りで、俺がジャックの相手をするしかない。


 だが女神様のパンツじゃジャックは倒せなかった。

 単純な戦闘力で勝るレイスナイトにも恐らく通用しないだろう。

 俺たちは決定打に不足する!


「きししし! 無駄無駄! 無駄なんだよ君達! けどね、面白いから抵抗は続けてみなよ。僕はね、君たちが絶望に染まり、戦意を喪失する瞬間を見てから、トドメを刺したいのさ!」


 ジャックはいまだ動く気配はない。

 そして、その口ぶりからすると、俺達が戦意を喪失しない限り、殺すつもりも無いらしい。

 思えばゾンビから逃げ回る俺も、あいつの気まぐれ一つで簡単に取り囲んで袋叩きにできるはず。


 それをしないって事は、やはりジャックは油断している。


 生き延びる道があるとすれば、そこを突くしかない。


 今はまだ面白がって傍観しているが、もしあいつが本格的に参戦すれば、今度こそ死ぬかもしれない。


 まずはこのゾンビ達をなんとかしないと……!


「……よし、一か八か、やるしかねぇ!」


 俺は瓦礫の中から角材を拾い上げると、その先端にパンツを装着する。

 そして、角材を正面に構えてゾンビ軍団に対して構えると……!


「これが本当のエロ戦車(“パンツ”ァー)だぁぁぁぁぁぁ!!」


 角材をぶん回しながら突撃していった。

 要するにリーチの長い武器で、ゾンビとの間合いを保ちながら攻撃し続ける単純な作戦です。

 エロ戦車突撃ィ!


「……君ってばかなりのおバカさんなだけに、常人には思いつかないような馬鹿らしい作戦を何度もやってくれるねぇ。けど所詮、奇策は奇策。王道の兵法には遠く及ばない。知ってる? 戦いってのは、兵士の練度と数で決まるんだよ?」


 ……数分後。

 重い物を振り回して息切れした俺は、広場で作画崩壊のような顔面でへたり込んでいた。

 周囲にはいまだ大量のアンデッド達が俺とブランさんを取り囲んでいる。


 ……万事休す、か。


 俺は別に、フィジカルに優れていたり、頭脳明晰な人間なんかじゃない。

 異世界に行ったところで、急に覚醒して英雄的な活躍ができる筈もないんだろう。


 ……だけど、


「……まだだ、まだ諦めてたまるか……!」

「クロエ君……」


 いまだ闘志を瞳に燃やす俺に対し、ブランさんは庇うように前へ立つ。

 そうだ。俺の冒険、まだ始まったばかり。

 こんな所で死んでたまるかってんだ!


「年齢=彼女いない歴のまま死んでたまるか……!」

「あ、そっちなのか」 


 大事な事なんだよ!

 ステータスカードに記されたクラスは無職だが、何かの間違いで魔法使い(30まで女性経験なし)にでも覚醒したらたまったもんじゃない!


「……って待てよ? ステータスカード……」


 そういや俺のステータスカード。

 レベルが上がったからか、どこか光ってる箇所があったんだった。


 今はジャックも傍観してるし、確認する余裕がある。


 俺はカードを取り出すと、手早く光っている個所を確認する。


 そこには、光る文字でこう記されていた


【転職可能クラス: 魔―使い】


 ……って、転職できるようになってる!?


「魔法使い! まだ十代なのに!? ……ってそうじゃねぇ。魔法使いって事は、なにか一発逆転できる魔法でも憶えれば希望が持てるぞ!」


 そう思い、もう一度ステータスカードをよく見ると……、


【転職可能クラス: 魔()使い】


 ……。

 …………。


 ……そっちかー。


「……うん。無職よりはきっとマシだ!」


 たぶん、魔物であるブランさんと打ち解けたからとか、そんな感じの理由で転職条件を満たしたのだろう。

 だが転職する事で、ステータスに補正が加わると女神様は言っていた!

 魔物使いだろうとそれは変わらないはずだ!


 今の俺の平均ステータスは、レベルが5になった事で、ギリギリ二桁に届いたばかり。

 魔物使いに転職する事でどれだけ上がるかは分からないが……少しでも強くなれば、女神様のおパンツナックルの威力も上がるかもしれない!


「今はこれに賭けるしかねぇ! 行くぜ転職ポチッとな!」


 俺は祈るような気持ちで、ステータスカードを操作する。

 すると、カードが淡く光り輝くと共に、その光が俺を飲み込んで――!


 ……数秒後。

 光が収まると、カードに記された俺のステータス情報が、魔物使いのものとして更新されていた。


「……なんだろうね、今の光は?」

「クロエ君? いったいなにを……」


 ジャックとブランさんが怪訝そうな反応をするが、今はそれに返す心の余裕はない。

 転職によって更新されたステータス情報。

 この内容次第で、俺の運命が決まるのだから……!


 俺は誰にも聞こえない声量で呟きながら、カードを手早く確認する。


「頼む……!」


 まずは能力値。無職のゴミカスだった頃から、どれだけ成長できたのか。


 ――なんてことでしょう。


 ギリギリ二桁に届いたばかりだった俺の物理系ステータスが……!


 ……全部一桁になりました。


「オイィィィィィィィィィィ!? 逆に下がってどうすんだよこれ!!」


 なんてこった!?

 魔物使いってあんまし本人が戦いそうなクラスじゃないとは思ったが、まさかクラス補正でステータスが下がるとは思わなかった!


 いやまぁ、ゲームによっては後衛職になると物理系のステータスが低くなるのは定番だけどさ……。


「……ッ!!」


 いやまて、取得スキル欄にクラス専用スキルが追加されてやがる!


 そうか。クラス専用スキルは転職したら自動的に使えるようになる物もあるのか。

 魔物使いの専用スキル次第ではまだ逆転の可能性も……!



【モンスターテイム】

対象の魔物と契約し、テイムする。



 ……まあ、うん。

 THE、魔物使いって感じのスキルですね。はい。


 スキル名をタップすると、さらにそのスキルについての補足説明が記されていた。

 ……その効果は簡単に言うと、契約紋を浮かび上がらせ、対象の魔物をテイム状態にするというもの。


 ――考えろ俺。

 一見すると強そうなスキルだが、考え無しに使ってはいけない気がする。

 なぜなら、


「食らえジャックまたはレイスナイト! 【モンスターテイム】!」

「……馬鹿なの? 自分より強い相手に効くわけないじゃん。てやっ」

「ぐえー死んだンゴ」


 こうなりそう。


 考えろ。俺の取り柄はゲームが好きな事だ。別に上手い訳ではない。むしろ好きと言う以外に取り柄はない。断言できる。


 だがゲームが好きなら、これまでに遊んだゲームの記憶が脳に刻み込まれているはずだ。

 過去のゲーム体験に照らし合わせて、この状況を何とか出来そうな攻略法を見つけ出すんだ!


「モンスターテイム……魔物を仲間にする……魔物を仲間にできるゲーム……結婚相手は幼馴染かお嬢様……」


 ……そう言えばいくつかあった。

 俺がプレイしたゲームの中で、アンデッドモンスターでも回復魔法で回復できる作品が。

 条件を満たす事で、アンデッドでも教会に入ったり、神の加護を受けられるようになる方法が。

 それは……。


「魔物を……仲間にすること……」


 モンスターテイムを、ブランさんに使う。

 そしたら、聖騎士のスキルのデバフが解除される……かも、しれない。


 ……ひとつだけ問題がある。

 それは、俺とブランさんの力が釣り合っていないことだ。


 モンスターテイムを成功させるには、自分の力量が相手の抵抗力を上回った状態で、さらに幸運判定に成功しなければならない。


 幸運判定は女神様のパンツでクリアできるにしても、ブランさんが抵抗したら間違いなく失敗するだろう。

 が、今からテイムすると言って警戒を解かせたら、その隙にジャックにテイムされるかもしれない。


 だからそうと気づかれないよう、ブランさんに問いかけるしかない。


「……なあブランさん。俺がブランさんに何かするとして、そしたら受け入れてくれるか?」


 なんかこれだとセクハラOKか聞いてるみたいだね。


「……短い間だが、クロエ君はアホな事をする割にはその殆どに理由があると分かっているつもりだ。私に何かするなら、それは本当に大事な事かセクハラのどちらかだろう」


 やっぱりセクハラの話だと思われてるらしい。


「じゃあセクハラだと思ったら?」

「拳骨とグーパン、どっちが良い?」

「どっちも同じじゃねぇか!!」

「そういう事だ。やられたら怒る。けど抵抗はしない。セクハラではないと、直前まで信じているからだ」

「そっか、なら安心したぜ」


 つまりセクハラしても、怒られるだけで済むって事だろ。


「…………」

「冗談ですセクハラなんてしませんごめんなさい」

「まだ何も言ってないぞ?」


 嘘だ!!

 今の無言の笑みは人を殺せるだけの威力があった!


「……笑顔、浮かべてみたんだがな」

「初めて俺に見せた笑顔が脅しかよ!?」

「貴方となら悪くない」


 そう言って、今度こそ笑みを浮かべる。

 ぎこちないながらも、見てると何処か安心するような、優しい笑顔だった。


 ……そっか。

 なら今からする事はもう決まった。セクハラは無しで。


「…………行くぜ、ブランさん」

「ああ。行こう、クロエ“くん”」


 これ以上の言葉は要らない。

 後は――俺達の間に生まれた信頼に賭ける!


「……これが終わったら説教だ」


 …………負の信頼しか生まれてない気がする。

 おかしいな。パンツを振り回しながら言ったのがマズかったのだろうか。


 とにかくやるしかねぇ。

 俺はブランさんに向けて、スキルを発動するべく左手を突き出した。


「【モンスターテイム】!!」


 ………………。


 ……………………。


 ほんの一瞬の静寂。

 けれど、俺にとっては気の遠くなるほどの沈黙を破り。


 上級アンデッドであるデュラハン……ブランカ・リリィベルは、覇気のこもる声量で静かに告げる。


「……信じていたぞ、クロエくん」


 首元を覆っていた黒い炎が、白銀の色に輝く。

 その全身には、雷のように光のオーラがほとばしっていた。


 ……テイム成功。こっから反撃だ。





――ステータス情報が更新されました――


クロエ・ユキテル


レベル: 1 → 5


クラス:『  』→『魔物使い』


スキル:    言語理解:EX

    New モンスターテイム(クラス専用)


――(非公開情報)――

テイムモンスター:


New 『デュラハン』

 ブランカ・リリィベル(ネームドモンスター)

 レベル:88


――――――――――――――





【本日の更新(3/4)】


 ジャックと戦う為の適正レベルは80。

 次回はいよいよクライマックスです。

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