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8:入学

 お家(おうち)に帰宅したその晩の夕食。


 どこからか話を聞きつけたジェレミーは嫌がらせのように魔の王に関しての話題を上げてきた。


 こ、こんにゃろ!


「うむうむ、元気があってよろしい」


 好好爺の顔を浮かべてニコニコする皇帝陛下。


 いつもなら嫌味を言うヴィクトリア様は何も言わずもぐもぐと静かにご飯を食べていた。

 なぜなら頭の中ではヴィクトリアもといジェルのことでいっぱいだったからだ。彼女は明日こそはいつも残している野菜を食べさせてやる! と意気込んで話を左から右へと流していた。


「あらあら」


 第二皇妃ニノン様は片手を頬に当て、もう片方の手で可愛らしい羊を撫でていた。


「めぇぇ」


 羊は気持ちよさから頭を第二皇妃の手にこすりつける。


「それでこそ帝国の子ですわ!」


 何がそれこそなのかわからないが胸を張る第三皇妃ヴァネッサ様。


 マリーの母であるマリヴォンヌは無表情でマリーを見ていた。


 ひ、ひぃ……。


 ママンの視線にびびっている私を横にセドリックお兄様が立ち上がった。


「さすが俺たちの妹だ! それなら俺がそいつらに訓練と教育をさせてやろう!」

「いきなりたくさんの魔物を一箇所にいると、どうしても軋轢や食糧問題があります。僕が代わりに住処など決めときましょう」


 それに続いてパトリックお兄様がいつものゆっくりとした口調で続けた。


 アミラお姉様は指を加えながら、ニノン様が撫でている羊を見て「いいなぁ……私も欲しいです」と、こぼしていた。


「マリー、ジェルみたいなカッコいい魔物はいたか?」

「あ、あとでウィルに聞いてみますわ」


 ジャックは相変わらず間抜けな顔でマリーに聞いていた。その間に挟まれているジェレミーは家族全員の反応に頭を抱える。



「ふん、ふん!」


 薄暗い部屋の中、一人血走った顔で巨大なダンベルで素振りをしている男の子がいた。




 ◆◇◆




 第二皇妃、ニノン・ド・パロメスの独白。

 つまらぬ夫と結婚したと思ったが最近は存外、面白い。

 上の女も険がとれて、時たま楽しそうに笑うようになった。それに加え隠れて魔物の犬と戯れてるのがバレていないと思っているのが、更に滑稽だ。

 つまらなければ帝室で暗闘を繰り広げて遊ぼうと思ったが……やはり公国から来たマリヴォンヌの娘の影響か?

 まぁ妾にとったら面白ければなんでもよい。

 息子二人のどちらかを皇帝にして傀儡にしようと思ったがそれもやめだ。ふむ。むしろ六番目のマリーを嫌がらせで女帝にするのも面白そうだ。


 ……ただ最近、下のアルフレッドが自室にこもって筋トレばかりしているが、大丈夫か? 病弱じゃなくなったのはいいが。


 度が過ぎているような……。

 い、いや、よそう。考えるだけで頭が痛くなってくる。




 第三皇妃、ヴァネッサ・ド・パロメスの独白

 おーっほほほほ!

 マリーさんは面白いですわね!

 ジャックとジェレミーともよく遊んでくれてますし、良い子ですわ!

 おーっほほほほ!




 ◆◇◆




「私はパロメス帝国の第六皇女マリー・ド・パロメスです。普通の態度で接しても構わないと言っても無理でしょう。なら、私は何も言うつもりはありません」


 無駄にキリッと顔を決めたマリーが壇上から鋭い目線で見下ろす。


「私が願うことは一つ、くだらないことをせずに勉学に励むことです、以上」


 マリーが「くだらないこと」と言った瞬間、身体から殺気と雷を放出して威嚇をした。


 ふっ。これなら虐めとかおきないでしょう……もし起きたらギッタンギッタンにしますわ!


 と、思いきや心の中ではいつも通りのマリーだった。


 マリーの言葉と殺気に生徒全員のみならず教員たちも背筋を伸ばす。そのくだらないことをしていただろう、生徒と教員は背中に冷や汗をかいていた。彼らは翌日逃げるようにして退学をしたそうだ。


「マリー・ド・パロメスと申します。先ほど入学者代表として言った通り、くだらないことがなければ私から言うことありません」


 ふっふっふ。いじめが起きなければ、私の悪役皇女ルートは回避されるはずね!


 そんなことをマリーが考えていると教室は静けさに包まれていた。マリーは疑問に思いながら席に座ると、先生が思い出したかのようにゴホンッと言って次の生徒に挨拶を促す。



 ◆◇◆



 私は孤立していた。それはもう孤立も孤立。


 取り巻きすらいない……。


 なんでよ! 別に虐めとかする気ないけど、こういうのはお約束として取り巻きができるはずでしょ! ボッチは嫌よ!


 マリーが舐めるように周囲を見渡すと、全員顔を背け肩をぷるぷる震わせる。


 お! 率先していじめをしそうな金髪ドリルを発見!

 なーんてね。ふっふっふ、知ってるわよ? あなたは私の取り巻きの一人の伯爵家の令嬢だったはず……。


 心の中でニタニタしながらマリーは立ち上がり、その伯爵家令嬢に近づいていく。


 伯爵家令嬢はマリーが自分に近づいてきていることにただでさえ青白い顔していたのに、ポンっと肩を叩かれると……そのまま恐怖のあまり失神した。


「あら?」


 どうしたのかしら? 疲労?


 マリーは水の加護を使って伯爵令嬢の身体を治すが失神から戻らない。


 しょうがないわね……。


「あなた。私はこの子を医務室に連れて行くので、先生に何か言われたら伝えといてください」

「は、はぁぁい!」


 横にいた男子生徒が声を上擦らせて大きな返事をした。


 げ、げんきいっぱいね。


 マリーはその男子生徒に少しドン引きしながら、伯爵令嬢をお姫様抱っこで持ち上げて医務室に向かった。





「あれ、私どうして……」

「起きましたか?」

「ひぃぃ!」


 ひぃぃってひどくない? 別に取って食うつもりじゃないのに……。


「も、申し訳ございません! 殺さないでください!」

「殺しませんよ、サンドリーヌさん」


 私はゆっくりとした口調で続ける。


「あなたはどうしてそこまで怯えているんですか?」

「そ、それは……」


 なぜかキョロキョロする金髪ドリルのサンドリーヌ。


「寵愛の子で麗しい皇女様だからですわ!」


 な、なぬぅ!

 なんでその恥ずかしい呼び名を!


「なぜ……寵愛の子だと?」

「もちろんですわ! 寵愛の子であられる皇女様が生まれた際に、多くの国民を癒した寵愛の子であられる皇女様はみんな存じてますわ!」


 や、やめて! その周りくどい言い方!

 恥ずかしくて顔から火が吹きそうになるわよ!


「そんな他人行儀じゃなくて大丈夫よ、サンドリーヌさん。私たちは今日からご学友になるのよ?」

「で、ですが……」


 私はベッドに座ってサンドリーヌさんの手を両手で包み込む。

 ついでに水の加護ももう一度かけた。


「私のことはマリーと呼んでください、サンドリーヌさん」

「マ、マリー様……」


 うん? なんで頬を赤らめてるのかしら。

 まぁいいわ! これで一件落着ね。


「私からだと他の子たちも畏まうから、サンドリーヌさんの方から言っておいてちょうだい」

「は、はいぃ。マリー様……私のこともサンドラと呼んでください」


 うっとりした顔でマリーを見るサンドリーヌ。


「えぇ、よろしくね。サンドラ」


 くっくく。これでボッチ回避されるわね!

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