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7

何度となく彼女と男の交錯が続き、均衡しているように見えたその戦いは、よくよく見ると、彼女より男の方が動きが鈍くなっており、男には焦りが見え始めた。


ザクっという音とともに、榊の持つ刀が男の体を抜けた後、月に照らされた夜空に赤い飛沫が舞う。男は咄嗟に後ろに飛び、彼女と間合いを空けたのだった。


「まったく、どうやっても勝てないのだから、いい加減にしてほしいですね。」


明日も朝が早いのに、と榊はいつもとは違い無表情で無関心にそういい放つ。


男もそれは分かっているのかじっとしながらも、彼女を睨み付けていた。ぼくは普段コンビニで見るのとは全く違う彼女を見ていると、ふと目があった気がした。


すると男はこちらに気がついたようで、僕を見ると、嫌らしく笑う。


「あ、先輩!だめ!」


一矢報いるためか男は一瞬で、未だにうずくまっていた僕に飛びかかってくる。


彼女の見たこともない悲痛な、そして焦ったような顔とスローモーションのようにゆっくりと振り下ろされる腕を見つめながら、一方、僕の心は凡そ一年ぶりに聞く体の内側から来る声に耳を傾けていた。



◇◇◇



その声を初めて聞いたのは、異世界に召喚され三年が過ぎた頃だった。


勇者の試練だとか、勇者に相応しい武器を授けるとかで連れていかれたとある祠に入ったとき、どこからか声が聞こえてきた。


(また来たわ、まったく懲りもしないやつらね。何回来ても追い返してやるんだから。)


誰に使われることもない世に唯一ある知性を宿す神器、数多くの戦士が挑戦するも触ることすら許されず、長い付き合いとなる相棒と出会ったのは、その時だった。


いつも近くにいた厳しくも優しい声が心の奥底から聞こえる。


(まったく、ゆっくり寝ていることもできないわ。あんたは私がいないと何もできないんだから。)


(しっかりしなさい。いつも通りに起き上がって、そして、はじめましょう。)

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