8
僕はかっと目を見開くと、腕を使って、男の振り下ろす腕を無理な体勢でなんとか横に逸らしながら、その反動を使って体を反対に飛ばし何度か横に転がって、驚いた表情をして振り下ろした腕をそのままに固まっている男との間合いを空ける。
まったく無様な避けかただな、と思っていると、
(その通りね。)
という厳しい言葉を頂き、一年以上経っても変わらないその様に思わず吹き出して笑ってしまった。そして、ふと空を見上ると視界を影が覆った。
「えと、先輩、大丈夫ですか。どこか頭でも打ちましたか。いや、まあおかしいのは元々かもしれませんが。」
ニヤケ顔はしていないものの、いつもの柔らかい、そして、少し心配そうな表情の榊が上から覗き込んでいた。
「いやいや、失礼だな、榊は。おまえの中で僕の人物像がどうなっているか、一度よくよく聞いてみたいね。」
彼女はムッとした顔をして、やっぱり頭を、などと失礼なことを呟くのだって。
よいしょっと起き上がると、まだ、呆然としている男を見ながら、彼女に改めて聞いてみる。
「えと、それじゃ聞くけどあれはなんなのかな?榊とは敵対関係?のようにも見えたけど。」
まあ榊の刀も気になるけど、まずはあっちだね、と言いながら彼女を見ると、気まずそうに目を逸らす。
「いやまあ、なんというか。身内といいますか、身内じゃないといいますか。敵対していることは間違いなんですけど。」
敵対しているなら、まあ良いかな、などと思いながら男の方に向き直る。無理なことをやったせいか体は節々が痛く万全とは言い難いが、先程から早く喚べと口煩く捲し立てているやつがいる。ここまで来たら事が終わると次は僕が彼女のターゲットになっても困るので、バレることは覚悟して急ぎ確認する。
「つまり、榊はあの男の人?と敵対していて始末しようとしてるってことで良い?」
「ええっと、まあ、はい、そうでして。先輩、何をしようと考えているのですか?」
「榊に取引しようと思って。僕が榊の代わりにあの男を倒すから、これから起こることと僕を見逃して欲しいんだけど。」
彼女は驚き、いやいや先輩が倒すのは無理ですよ、とたしなめてくる。
僕は黙って見ててと、未だ止めようとしてくる彼女を半ば強引に切り上げる。
「あんたには申し訳ないんだけれど、僕のために倒されてね。」
何もない両手で弓を引く構えをとり、来いと一言喚ぶ。空間が歪み世界が悲鳴をあげ、光輝くその弓と矢はあたかも元から手にあったかのように現れる。
「えっ?えっ?先輩、何それ。」
唖然とした顔で榊は呟く。
「久しぶり、相棒。」
声をかけると心の中でうれしそうな声が響いた。
とりあえずここまでで、一度間をあけます。




