火事場の馬鹿力
短くてすみません。
「リア、俺達とはぐれないでね。」
「分かりました。」
あれからお忍び用の馬車に乗って王都に来た。
いつも使っている馬車を使うと事件が起こる確率が高くなるからということだった。
貴族の子供は狙われやすい。
現に私が一年前に誘拐されかけた事があった。
あの時は偶々逃げられただけで同じことをまたされたら今度こそ逃げることは出来ないと思う。
なので私達は徹底的に準備をしていたのだ。…これはお兄様達からの受け売りです。
王都に来たは良いものの、私達は何処に行くのだろうか。
“お出掛け”をしたことがなくていまいち分からない。
お母様から少しお小遣いを貰ったからお買い物がしてみたいな。
皆へのお土産を買いたい。
使い道がそれしか浮かばないから。
今考えたところで欲しいものが見当たらない。
でも折角お母様がお小遣いをくれたんだし使わなきゃ勿体無い。
それに私、お出掛けやお買い物を“1人以上で”する事に憧れていたのだ。
もしも欲しいものを見つけたらその時に買えばいい。今世では幸せになると決めたのだ。よし、頑張るぞ!
思考から現実に帰ってきた私は、驚くべき事に気付いてしまった。お兄様達がいない…。
お兄様達が迷子になったと言うわけでは無いだろう。さっき私にはぐれないでと言っていた。
私も分かりましたとか返事してしまったがどうやらはぐれてしまったようだ。
残念なことに、考えたら他の事が見えなくなってしまうのだ。これは元からだ。直さなければ…。
それにしても、お兄様達は何処だろう…。
こう言うときは下手に探し回ってはダメと言うけれど、探し回らなきゃ見つからないと思う。
さっきの事を踏まえて、考えながらも周りを見ていたら髪が強く引っ張られた。
でもそれは一瞬で、髪を触ってみるとつけていたバレッタが無いことに気づいた。これは危ない。
白銀なんて髪の貴族は私しかいないから今の私は狙われやすいだろう。
いや、それよりもお兄様達が私にくれたものなのだ。そもそもお兄様達の言うことを聞いておけばこんなことにならなかったのだ。
周りを見渡すと私のバレッタを持って走っている同い年くらいの少年を見つけた。
周りの人たちは「何故公爵令嬢がここに?」と騒ぎ立て始めた。やっぱりばれてしまったようだ。
…早く捕まえないと。
前世を思い出してから寝る前にやっているラジオ体操第一と第二のおかけで体力が以前よりも増えたのだ。
でも少年がすばしっこくて追いつきそうで追いつけない。
ここは人生二度目の火事場の馬鹿力で粘る。
後ちょっと…もう少し!
そして少年と私の距離、三十センチ…二十センチ、十センチ…捕まえた。
少年の顔を覗き込んでみると少年ではなく、少女だと言うことが分かった。
そしてもう一つ。この顔は何処かで見たことがある。誰だったかな…。
うーん………え?
思い出した。そして混乱した。
私のバレッタを奪った少女の顔は確かに『私だけの王子様』のヒロイン、エルナ·ウェルローゼだったから。
少し更新が遅くなってしまいました。すみません。PV30000越え、総合評価650越え、ブックマーク250越え、ありがとうございます。誤字脱字報告も助かりました。もし宜しければ伊戸菜に感想など教えてくれると嬉しいです。これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。