クリスマスやから(前編)
十二月二十五日。午前十時すぎ。カズミは部屋で本を読んでいた。ベッドに横になって、枕の上にあごを置いて、布団にもぐりこんでいた。
勉強机にある携帯電話が鳴った。そろそろスマートフォンに変えたいなぁ、と思いながら、ベッドから抜け出して、携帯を開く。
『クリスマスですね』
ヒロコからのメールだった。件名にこれだけを書いて、本文は『。』だけだった。どうでもいいので、カズミは『せやな』と書いて、返信した。
すると、十秒もしないうちに、また携帯が鳴った。
件名『レッツパーティー』本文『はぁと』
ハートがひらがなで書かれていることに、いら立ちを覚えながら、カズミは『いらん、しらん、やらん』と送り返した。
そして、今度は携帯を閉じないうちに、鳴った。
件名『今夜君と二人で』本文『午後七時。二人の愛の巣にて。最高の夜にしよう。』
カズミは無視した。携帯を机に置いて、ベッドに戻る。本の続きを読んで、しばらくすると、また鳴った。今度は電話だった。
「もしもし」
『無視だけは、やめてくれへんかな~』
泣きそうな声で、ヒロコが言った。
「意味わからへんし」
カズミが怒ったふうに言うと、
『ごめんやってー。でもパーティーせーへん?』
「愛の巣ってどこやねん」
『それはもちろん! あ・ん・た・ん・ち!』
ここでも語尾に『はぁと』をつけるヒロコ。
「きもい言い方すんなアホ」
『ひどい! なーええやろー? カズミの家行きたーい』
「んー。まぁ、ええよ」
『わーい! やたー! サンクス、カズミー! あいしてる!』
「うっさいわ。ほな七時な」
『うわっ、ちょっ待っ』
カズミは無理やり電話を切った。顔が熱い。目の置くが、じん、として重い感じがした。鼻をすすってつぶやいた。
「恥ずかしいやつ……」
カズミはちょっとだけ、笑った。
(後編)に続きます。