寒いと思うから、寒いねん!
高校の教室は寒い。特に朝はひどい。授業が始まらないと、暖房はつかないので、それまでの間、生徒たちは各々、できる限りの寒さ対策を試みる。
その日のヒロコは、手袋、マフラー、足元には小さい毛布、といった万全な装備だった。
「これでなんも怖くないで!」
と言いながら、がちがちと歯を鳴らしている。寒さに勝つには、まだまだ防具が足りないらしい。
「ヒロコはホンマに寒がりやな」
ヒロコの席へ、カズミがやってきた。ヒロコと打って変わって、カズミは防寒グッズを一切、身に着けていない。スカートの下から、ハーフパンツが覗いているのは、いつものことである。
「あんた、おかしいで! なんの武器も持たんと、寒さに勝てると思ってんの?」
二の腕を火が出そうな勢いでさすりながら、ヒロコはカズミを睨んだ。
「なに言うてんねん。寒さはモンスターか何かか?」
カズミは首をすくめて、小さく笑った。
「は? なに言ってんの? 寒さがモンスター? カズミ、ゲームのやりすぎちゃう?」
「……ぬおー!」
カズミは、ヒロコのマフラーの両端を引っ張った。首が絞まる。ヒロコが、「ぎぶぎぶ!」と言って、カズミの腕を叩く。
カズミを怒らせると、怖いのだ。ヒロコは改めて思った。
「はー。死ぬか思たわ」
マフラーを緩めて、大きく息を吸い込む。顔が火照って、体が熱くなった気がした。




