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『4』(全6話構成)



 運命の日は、その日の夕方、突然やってきた。

 その日もいつもの信号で友だちとバイバイして家に帰った僕を待っていたのは、轟々と燃える自分の家だった。

 鹿島さん家の時と違って人だかりはあまり出来ていなくて、消防車もまだ来ていなかった。だからその分、真っ赤な炎を窓から噴き出して燃える自分の家がはっきり見えた。

 そんな。うそ。そんな言葉がたくさん頭の中に浮かんできて、それが積もり積もってパンクしてしまいそうだった。そんな。うそ。そんな。うそうそうそうそ! 燃える僕の家を取り囲む大人たちの足の間をすり抜けていちばん前の列に顔を出すと、とたんに熱い空気が顔にぶつかって僕は目をつぶった。目を開けると、口から血を吐くみたいに窓から炎を噴き出す家が、僕の目を叩いた。

 燃えている。今年お年玉でもらった一万円も、お気に入りのカードも、教科書も体操服も。みんな燃えている。胸の中で悲鳴を上げているのに、僕は目の前の炎を眺めているだけで金縛りにあったみたいに動くことができない。

 その時、するり、と人だかりからすり抜けて、燃える家に向かっていく人がいるのが見えた。

結衣ちゃんだった。結衣ちゃんは、後ろから注意する大人たちの声が聞こえているのかいないのか、ふらふらと燃える家に向かって歩いていく。

 その顔は、ぼんやりと曇っている。

 鹿島さんの家が火事にあった時のように、ただ、その瞳だけが、目の前で燃える炎の動きに合わせてゆらゆらと揺れている。

 その時金縛りにあっていた僕の頭の中に、マッチの火に指をあぶられながら「きれいだよね」と言った結衣ちゃんの顔が思い浮かんだ。

「駄目だ! 結衣ちゃん駄目! 駄目だよっ!」

 結衣ちゃんを追って、僕はいつの間にか目の前で燃える自分の家に向かって走り出していた。


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