003
今日は休日。
ニコは広い草原の、でっかい木の下で寝転がっていた。隣にはエレナ – 彼女も怠けた猫みたいに伸びていた。
ニコは空を見上げた。
「はぁぁぁ…」
エレナが振り向く:「ため息ついてどうしたの? お腹でも痛いの?」
「違うよ、考え事してたんだ…」ニコは手を空に向けた。「あの雲さ、どこから飛んでくるんだろうな?」
エレナも見上げる:「空からに決まってるでしょ。」
「…へえ。」
「へえじゃないよ、バカ。」
ニコは気にせず、ずっと雲を見つめている。
「雲がこの国からあの国へ飛んでいくんだ…きっと雲たちは集団旅行してるんだな?」
エレナ:「何バカなこと言ってるの?」
「だってさ…他の国ではどんな人が住んでるんだろうって思ってさ。」
ニコの目が急に輝き出した。
「特に女の子! 外国の子は可愛いのか見たい!」
エレナがバネみたいに跳ね起きた。
顔が真っ赤になって、ほっぺたが風船みたいに膨らんだ。
「ニコ! 女の子のことばかり考えないでよ! 修行に集中しなさい!」
ニコは彼女の方を向いた。
じーっと見る。
すごくじーっと。
「…何ジロジロ見てるの?!」
ニコは顎をさすった:「うーん…考え事…」
「何考えてるの?」
「外国の子は見たことないけどさ、隣の子も結構可愛いなって。」
エレナ、固まる。
「は?!」
「だって目ぱっちりで、髪黒くて長くて、ほっぺたぷにぷにで…結構イケるじゃん。」
エレナの顔、真っ赤なトマトみたいになる:「な、何バカなこと言ってるの?!」
「だってさ…」ニコはニヤニヤしながら。「今はまだ小さいけど、大きくなったらエレナを嫁さんにするのが合理的だと思わない? 外国の女の子を探す手間も省けるし!」
「はぁ?!」
エレナはニコの肩をバンバン叩き始めた。
「バカ言わないでよ! 誰があんたの嫁になるもんか!」
「痛い痛い痛い! 冗談だってば!」
「冗談なもんか! 今日は許さないから!」
ニコは笑い転げて、エレナは追いかけて叩きまくる。二人は子犬みたいに草原でごろごろ転がった。
しばらくして、二人は息切れして動けなくなった。
「疲れた…死にそう…」ニコはゼーゼー言ってる。
「あ…あんたのせいだから…」
風がそっと吹く。草がさらさら揺れる。
ニコは目を閉じた。
「寝たの?」エレナが小さく聞いた。
返事がない。
彼女はちょっと彼を見て、そっと微笑んだ。
「バカ。」
そして彼女も目を閉じた。
「起きなさい。」
ニコは目を開けた。
真っ白。真っ白な空間が広がっている。
「あれ、ここって…」
「やあ、少年。」
ニコは振り返った。
白髪のおばあさんが立っていた。腰が曲がって、しわくちゃな顔で、優しそうに微笑んでいる。
ニコ:「…おばあさん、何か御用ですか?」
「私がわかるかい?」
「会ったことないですけど?」
おばあさんは瞬きした。それから頭をかいた – その見た目にめっちゃ似合わない動きだった。
「あ…間違えた。姿を間違えたわ。」
「え?」
パッ。
おばあさんが消えた。代わりに現れたのは、イケメンでクールな男。黒いマントを着て、めっちゃカッコいい。
「これでわかったか?」
ニコは首を振った:「誰ですかあなた?」
「…」
パッ。
今度はいたずら好きそうな少年。
「これで?」
ニコ:「あのさ、いろんな姿に変えるのやめて、はっきり言ってくれません?」
パッ。
最後に – 白いひげのおじいさん。手にはお茶の入った茶碗。
ニコはほっとした:「ああ、お茶好きのおじいさん!」
おじいさんは満足そうにうなずいた:「やっと思い出したか。」
「でもさっき、なんでいろんな姿に変わったんですか?」
「お前の反応を見たかったんだ。」
「で、結論は?」
「お前はちょっと理解が遅い。」
ニコ:「…」
おじいさんはお茶を一口すする。
「まずは感謝の言葉はないのか?」
「何に感謝するんです?」
「新しい家族に決まってるだろう!」おじいさんは誇らしげに胸を張った。「お前は『田舎の温かい家族』が欲しいって言ったのに、私は金持ちで権力があって、しかも愛がいっぱいの家族を用意してやったんだぞ。私の愛を感じるか?」
ニコは笑った:「感謝しますよ。でも本当に金持ちなんですか?」
「お前の父さんには弟がいる。エルドリア全土の東部戦線を指揮しているんだ。金持ちかどうか?」
「おお…」ニコの目がキラキラ。「じゃあ俺、道楽息子になれるじゃん!」
「今なんて言った?」
「あ、いや、何でもないです!」
おじいさんは怪しそうな目でニコを見た。
「ずっとお前を観察してるんだぞ。」
ニコはびっくり:「え?! 盗み見?! ストーカー?!」
「私は神様だ。ストーカーは権利だ。」
「…」
「でも良い感じだ。お前は前世でできなかったことをやっている。」
ニコは黙った。
「この調子で続けなさい。」
おじいさんは茶碗を置いて、急に真剣な顔になった。
「本題だ。今夜、お前の父さんがある提案をする。」
「何の提案ですか?」
「自分の仕事場に連れて行って、そこで学ばせようとするだろう。お前はすぐに承諾しなさい。」
「なんであなたの言うことを聞かなきゃいけないんですか?」
「私は神様だから。」
「…確かに。」
「まだある。父さんは家庭教師を雇うだろう。その時は、一番変なやつを選べ。」
ニコは眉をひそめた:「一番変なやつ? 例えば?」
「例えば、ズボンに穴が空いてて、髪はボサボサで、一人でよく意味なく笑ってるようなやつだ。」
「…なんか聞いたことあるような?」
「ああ、前世のお前に似てるな。」
ニコ:「…」
「でもそいつがお前に役立つ魔法を教えてくれる。」
「どんな未来のために?」
「その後、お前は軍隊に入れ。父さんの働いてるところだ。」
ニコはしばらく考えた。
そして聞いた:「なんでそんなことまで知ってるんですか?」
おじいさんはお茶をすすりながら、平然と言った:「毎日新聞を取ってるからな。」
「は?」
「冗談だ。私は神様だぞ、知らないわけがないだろう。」
ニコ:「…あなた、結構面白いんですね。」
「ありがとう。」
白い空間がぼやけ始めた。
「待って―」
「忘れるな! すぐに承諾しろ! 一番変なやつを選べ!」
「でも―」
「そして忘れるな – この人生はお前のものだ!」
「おじいさん―」
「思いっきり生きろよ、ダーリン!」
「ダーリン?!」
「ニコ! 起きて!」
ニコは目を開けた。
エレナが隣に座っていて、顔は肉まんみたいに膨らんでいた。
「寝ちゃったの?! 夕方からずっと待ってたんだから!」
ニコは起き上がって、周りを見た。草原はまだ青い。風はまだ吹いている。夕日が沈みかけている。
彼は空を見上げた – 雲はまだ流れている。
「夢だったのかな?」彼は呟いた。
「何が夢だったの?」エレナが聞いた。
「あ…何でもない。」
「変なの。」
ニコは立ち上がって、服についた草をはらった。
「帰ろう。お腹すいた。」
「うん、帰ろ。」
二人は夕日の中で草原を歩き出した。影が長く伸びている。
「なあ、エレナ。」
「何?」
「大きくなったら、本当に俺の嫁にならない?」
「ぶっ殺すわよ今すぐ!」
「痛い! 冗談! 冗談だって!」
草原に笑い声が響いて、風に乗って遠くへ消えていった。
草原での午後を過ごした後、ニコは妙にハイな気分で家に帰った。
彼は台所で母の手伝いをした – 前世では一度もやったことのないことだ。椅子に座り、この世界の魔法の初級書を手に持ち、読みながら母が料理をするのを眺めていた。
時々、母は愛情たっぷりの目で彼をチラッと見る。
「ニコ」
「はい?」
「最近、なんで剣術の練習をしないの?」
ニコは固まった。
本が手から落ちそうになった。
「あ…えっと…その…」
頭の中は大混乱。
「やばい! 剣術の才能! このニコって奴には剣術の才能があるんだ! でも俺、剣のことなんて何にも知らない!」
母は息子の慌てた様子を見て、クスッと笑った。
「もしかして、練習に飽きちゃった?」
「いえ! ただ…ちょっと本を読むのに忙しくて…」
ニコは本に顔をうつむけ、心臓はバクバクしていた。
「いずれ剣を練習しなきゃいけない。でも俺、剣の持ち方さえ知らない。もしかして、シャベルみたいに持つのかな…?」
彼は身震いした。
「やばい。超やばい。」
夕食は暖かい雰囲気の中で行われた。
アンナは豪華な料理を作った。エレナはニコの向かいに座り、時々彼をチラッと見ては、またうつむいてご飯を食べていた。ニコは気づかない – 彼は肉との格闘に集中していた。
そして、アレックスが口を開いた。
「ニコ」
「はい?」
「父さん、そろそろエリクのところへ仕事に行かなきゃならなくてな。」
ニコはうなずいた。
「はい。」
「一緒に…連れて行こうと思うんだが。」
「はい、わかりました – って、えええええ?!」
ニコは食べ物を吹き出しそうになった。目は茶碗みたいに見開かれた。
アレックスは息子の反応を見て、ちょっと驚いた。
「行きたいか? 嫌なら――」
「行きます! 行きます! 今すぐ行きます!」
アレックス:「……」
アンナ:「……」
エレナ:「……」
家族全員が、まるでイカれた奴を見るような目でニコを見た。
ニコは自分がやりすぎたことに気づき、コホンと咳払いをした。
「いや…その…はい、行きたいです。」
頭の中は大回転。
「マジか! あのじいさんの言った通りだ! あのじいさん、未来を知ってる! じゃあ、変な家庭教師を選ぶって話もマジなんだ!」
アレックスは疑い深そうな目で息子を見た。
「もっと悩むと思ってたぞ。」
「いえ! 子供の頃から世界中を旅したかったんです! これはチャンスです!」
「…子供の頃から?」
「あ、いや、その…ええと…とにかく!」
アンナが笑い出した。
「うちの子、変ね。」
アレックスも笑ってうなずいた。
「ああ、でも面白い。」
誰も気づかなかった――夕食中、エレナが一言も喋らなかったことに。
そして誰も見ていなかった――彼女の顔に、ほんの少しの悲しみが浮かんでいたことにも。
その夜、ニコは部屋で寝返りを打っていた。なかなか眠れない。
天井を見上げ、口元はニヤニヤしている。
「明日、遠くに行くんだ。エリクおじさんのところへ。軍の司令官だぞ! きっと楽しいに決まってる!」
彼は布団を蹴り上げ、空中にパンチを何発か繰り出した。
「それで、一番変な家庭教師を選ぶんだ! 魔法を学んで! 軍に入って! 英雄になって! 大勢の可愛い女の子と――」
コンコン。
ノックの音に、ニコはビクッとした。
「だ…誰?」
「私。」
エレナの声が、風のように静かに聞こえた。
「ニコ、寝た?」
「まだ。入っていいよ。」
ドアが開いた。
エレナが入ってきた。シンプルなパジャマ姿。でも彼女はニコをまっすぐ見ない。ドアのところに立ったまま、両手で服の端をいじっている。
ニコは眉をひそめた。
「どうした? 何かあった?」
エレナは長い間黙っていた。
そして、小さな声で言った――蚊の鳴くような声で。
「私…一緒に行っていい?」
ニコは瞬いた。
「え? どこに?」
「ニコと一緒に。」
「……」
エレナはまだ下を向いている。手はもっと激しく服をいじり始めた。
「明日…私も一緒に行きたい。」
ニコは起き上がり、彼女をじっと見た。
「おい、父さんの仕事について行くんだぞ。旅行じゃないんだ。」
「でも、行けるでしょ。」
「多分ダメだよ。父さんが許さないって。」
エレナは黙った。
ニコはため息をついた。
「なあ、ここにいてよ。ちょっと行って、すぐ帰ってくるから。また一緒に学校行こう。」
エレナは何も言わない。
ニコはしばらく彼女を見て、それから軽く笑った。
「もしかして、俺が帰ってこないんじゃないかって心配?」
ようやく、エレナが顔を上げた。目が少し赤い。
「私…何て言ったらいいか、わかんない。」
ニコは彼女を見た――そして初めて、エレナがこんなに小さく見えた瞬間はなかった。
彼は手を伸ばし、彼女の頭をポンポンと叩いた。
「大丈夫。ちゃんと帰ってくるから。」
エレナは固まった。
そして顔を真っ赤にして、彼の手を払った。
「誰が心配なんかするもんか! ただ、一緒に練習する相手がいなくなるのが困るだけ!」
ニコは吹き出した。
「はいはい、わかったよ。」
エレナは顔を背け、赤くなったほっぺたを隠した。
「でもね。」
「ん?」
「覚えておいてよ。」彼女は振り返り、彼の目をまっすぐ見た。「修行だけだからね。外で変な恋愛とかしちゃダメだから。」
ニコは固まった。
「は?」
「お母さんが、恋愛しちゃダメって言ってたから。」
「それ、母さんが言ったの? それともお前が言いたいだけ?」
エレナは答えない。背を向けてドアへ歩き出した。
「おやすみ。」
「おい、ちょっと――」
バタン。
ドアが閉まった。
ニコはベッドに座ったまま、数秒間ぼーっとしていた。
そして呟いた。
「女って…マジでわけわからん。」
廊下で、エレナは壁に背中をつけ、両手で顔を覆った。
「私、今、何言ったんだろ…」-




