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7-8:れっつこんかつ?

いつも読んでくださりありがとうございます。

7-8


懐かしい相手であるヴェントを雇い入れた。吟遊詩人ということで、楽器の扱いは手慣れてるだろうから、どうせなら楽団にしちゃえと思って、仲間集めも頼んでおいた。


これは対他の貴族用という意味も含んでいるけど、他にも領民相手に披露してもらうのもアリだと思ってる。娯楽が少ないし、遊戯関連の道具は作ったけど、民間相手だとまだそこまで売れてないんだよね。だから、領民の娯楽になればなぁ、って思ってる。


ま、勿論それだけじゃないけど。文官としても働いてもらうけど、他にも役割がある。まぁ、これはヴェントがどれだけ仲間を集められるか次第な所があるんだけど。さて、そんなヴェントだけど、今現在またまた問題を起こしております。


えー、ナディの前に跪いて熱の籠ったような視線を送っている。当のナディはオロオロしている。


「あぁ、なんて美しい…まるで冬の中に出会った朗らかな陽射しのように眩しい美貌だ。君の澄んだその瞳に我が心は囚われてしまった」


詩人というだけあって、なんかそれっぽい事言ってるけど、割りとマトモっちゃマトモ?なこと言ってる。まぁ、コイツの作詞に比べたらだけど。


いや、というか待って。あまりの出来事にポカンとしちゃったけど、ちょっと待って。


「え、え?あ、あの、誰ですか?」


「これは失礼いたしました。僕はヴェントと言います。しがない吟遊詩人でしたが、先ほどこちらで雇っていただける事となりました。麗しの君、お名前をお伺いしても?」


「ナ、ナディ・シリョン…です」


「これはこれは貴族家の方でしたか。急にお声がけしたご無礼をご容赦下さい」


ねぇ、俺も貴族なんだけど?しかもかなり上位の。その目の前で女口説いてるお前は無礼じゃないの?ねぇ?というか、その子、俺の侍女なんだけど?ねぇ?


「え、は、はぁ…」


ほら、ナディ困ってるから。


「あぁ、しかし何と可憐な方だ…僕は貴女に心奪われてしまった。願わくば--」


「確保ーーー!!」


俺が騎士に命じてヴェントを確保させる。ついでに黙らせておく。


「適当なもの口に突っ込んでそれ以上話をさせないように」


「「はっ」」


騎士たちは手早く何処ぞから取り出してきた布をヴェントの口にぎゅうぎゅうと押し込み黙らせた。すっごい嬉々としてやっている。何せさっきから鎧の籠手がギシギシと軋んでたからね。


ナディに限らずだけど、ウチの専属侍女や他の侍女たちは美人&可愛い。性格も少なくとも表面上は良い。中でも人気があるのがナディと、侍女ではないけどユリーさん。顔もいいけど、まぁなんだ…その豊かな胸部装甲が、ね。


んで、独り身の武官や文官から人気で、訓練場にどっちか2人を連れていくと武官たちは良い所を見せようと張り切って訓練し始める。文官はいつもの1.5倍くらい筆の進みが早くなる。女の力は偉大だな、とシミジミ思う。


で、そんな中争い事は困るので、武官や文官の間で紳士協定的なのが結ばれたらしいんだよね。たまたま盗み聞きしたという孤児が教えてくれた。


そしてヴェントを取り押さえた騎士達も例に漏れなかったようだ。さっき殺気駄々漏れだったもんね。剣抜く前でよかった。


「姫様、いかがいたしましょう?」


「ん゛ん゛ん~~!」



ヴェントを取り押さえてる騎士が指示を仰いでくる。うーん、雇った手前即刻クビにも出来ないし…


「取り敢えず宿舎の一室に押し込んで来てください。くれぐれも乱暴はしないように。ヴェント一旦一人になって冷静になりなさい。冷静になった頃また会いましょう」


ヴェントはそのまま騎士2人に連行されていった。はぁ、一旦これでよし。俺はナディの方を見て、様子を確認する。呆然としておられる。可哀想に…


「えっと、ナディ大丈夫ですか?その…急な事でしたけど」


「ふえっ!?あ、は、はい!だ、だだ大丈夫、です!」


「いや、見るからに混乱してるんですけど…」


「う、うぅ…」


「マーサ、おじい様に何の用か確認してきてくれますか?私はナディと一緒に居るので」


「…姫様、お言葉ですが--」


「分かっています。領主の呼び出しより、侍女を優先するのは序列を乱し周囲に影響を与える、でしょう?でも、今はこっち優先です。おじい様には事情を話してきてください」


「…かしこまりました」


マーサは出ていき、室内にはナディ、ララァナ、ルゥ、俺だけになる。え?マルタとパック?入ってきた時から窓際で昼寝してます。何しに来たの、この子ら?


取り敢えず、ナディを席に座らせ一旦落ち着いてもらう。


「えーと…」


さて………………






な、何をどう話すべき?


いやいやいや、しょうがないじゃん!前世通してもこんな機会無かったからさぁ!別に失恋って訳じゃないんだよね?だから、そこまでヘヴィに考えなくていいはず。…いいよね?


「え、えっと、姫様。お時間を取らせてしまい申し訳ありません…」


「えーと、ナディ。その、ビックリしましたね?わ、私もあんな風に告白?求愛?してくる男性初めて見ました!それはビックリしますよね」


「きゅ、きゅきゅきゅきゅ求愛…!」


やべー、地雷だったか!?ナディの顔が耳まで赤くなる。


「や、やっぱりその…あ、あれって求愛、だったんですよね?」


「え?それはそうでしょう。あんなのでも吟遊詩人ですからね。なんかそれっぽいこと言ってはいましたが。あぁ、元吟遊詩人ですね。今日雇ったので。だから明日から同--あ」


あっぶね。同じ職場に求愛相手が居るとか気まずい。こうなると、ヴェントには悪いけど、楽団は外れてもらって、別の役割の方に注力して…


「ふへ」


「はい?」


なんか聞きなれない音、というか声が聞こえた。


「へへ…えへへへへ…」


ヤバい、ナディが壊れたかもしれない。顔は赤いままだけど、なんか今まで見たことない表情してる。


「春が来たかも…」


「………ナディ、なんて?」


ナディはハッとしたような感じで、居ず舞いを正して俺を視界に納める。


「え、えっと…これで私もようやく結婚できるかもなぁ、って。えへへぇ」


……ん?


「あの、ナディ。結婚、するんですか?」


「あ、えっと、孤児院の職員みたいに、できれば私も産休とか使えるとありがたいのですが…」


「それは勿論構いませんけど…えっと、待ってください。今整理しますから」


俺は考える。なんか今のナディは嬉しそうにしている。それはいい。でも、何で結婚なんて話が出た?いや、ヴェントがあれだけ口説いてたからか。え、結婚するの?ヴェントと?え?


「えーと、ナディ。もしかして、ヴェントと結婚するつもりですか?」


「…そ、それは、まぁ私に求愛してきてくれたのは今までヴェントさん?だけですし…驚きはしましたけど、えっと…あれだけ情熱的に言い寄られたら嬉しいなぁ、って」


……え、マジ?言っちゃなんだけど、あいつ元々根なし草の吟遊詩人だよ?よく考えよう?結婚相手としての価値はどうかって。情熱だとか恋愛だとかだけで結婚決めると後が大変だから。


俺の心配を他所に、ナディは「きゃっ」みたいな感じで恥じらっている。


「ナディ、一旦落ち着きましょう。本当に結婚相手アレでいいんですか?他にも有望株一杯居ましたよね?」


「え?でも、あんな風に言ってくれたのヴェントさんだけですし…」


……あー!紳士協定が邪魔して、ウチの武官、文官たちナディにアプローチすら掛けてなかったのか!草食男子どころの話じゃない!お互いに縛って身動き取れなくしてた訳だ。いや、確かにコレでウチの侍女は安心とか思っちゃってたの俺だけども!


「……念のため聞きたいんですけど、ナディは他にも声を掛けられたりしてませんでした?例えば城に勤めてる武官、文官から」


「仕事上、姫様の警備で話すことはありましたけど、そういった事は一度も。城外に出るときも一応兵士であったり騎士の誰かが護衛に付いてはくれましたが、何もありませんでした」


ジィーーーーーザスッ!!!!


何てこった!あのチキン共め!お陰でよりによってナディが元根なし草の餌食になりかけてるんだけど!


「ナディ、もう一回考え直しましょう?アイツ、一応私が雇いましたけど、元々根なし草で結婚には向かないかもしれませんよ?」


俺がそう言うとナディの表情が悲しそうに曇る。


「姫様は反対なさるんですか?」


「うぐっ!?…そ、そりゃ応援したいですけど、アイツ本当に根なし草ですよ!…それに、ヴェントよりナディの方が大切だし…辞められるのも困るし…あんなのにナディあげたくないって言うか…」


ゴニョゴニョと口籠っていると、俺以外の全員が笑い出した。


「ちょっと!?」


「あはっ、あははは!ヒスイ、あなた父親じゃないんだから!…プフッ、フッ…無理…あははは!」


「不敬ー!ララァナ不敬ーー!」


ひとしきり笑われた後、ちょっと気になったからナディに侍女の結婚事情を聞いてみた。確かに普通なら定職に就いてて、仮にも大領地の領主に仕官しているので、安月給とはいえ、ウチの騎士とかは優良物件っちゃ優良物件。だが、実は妻子持ちが多いんだよね。6割くらいが実は妻子持ちだったりする。一応この国は一夫多妻が認められているので、2人娶ってるのも居るけど、3人となると厳しいって人が殆どらしい。養うための財力とか色々あって。


で、こういう城勤めの侍女は玉の輿狙ってる部分もあったりする。騎士の他にも文官の中でも上位のまとめ役とかの高級文官は狙いどころ。だが、そいつらは冗談じゃないくらい忙しい。なぜか?


……はい、俺とおじい様のせいです。すみません。領地運営のためと、俺もおじい様もあっちこっち行くので護衛に人を割かれるのと、徐々にキャメロットの外の巡回範囲を広げて治安改善を目指しているので、そっちにもかなりの人員を割いている。それと一応ある程度計画を立ててからとはいえ、俺が割りと思い付きで色んな事を始めちゃうので、文官も忙しい。根回しとか準備とか、人員の確保、配置、実務などなど。




そういや、こっちに引っ越してきてから城勤めの誰かが結婚したとかそういう話は聞かない。改革を一気に進めてきたけど、まさかこんな弊害があったとは…盲点過ぎた。


そして、ナディは婚期を気にしているらしい。ナディはこの前19歳になった。本人が固辞したので、誕生会的なのはやってない。ただ、新しい櫛と衣類をプレゼントしました。


15で成人だというこの世界においては、およそ成人してから5年以内くらいで、殆どの人は結婚するんだってさ。つまり20歳くらいまで。で、ナディは大体あと1年くらい以内に結婚したいんだそうな。


まぁ、婚き遅れとか言われたくはないって事なんだろう。そんなこんなで、ナディとしては唯一直接アプローチしてきたヴェントに心が動いている、と。


「う、う~ん、なるほど。まさかそんなことになっていたとは…」


「その…国王陛下よりケイリュオンを立て直すよう勅命を受けている現状、誰かが抜けたら大変なことになるのは理解しています。ただ、それとは別に自分自身の将来も考えないとと思っていまして…」


「そうですよね…そこは重要な事です。私も自分を犠牲にしてまで仕えていたせいで、幸せを取り逃した、とかさせたくないですし」


まぁ、結婚が幸せかっていう疑問は大いにあるけど。それに俺の場合はそもそも性別迷子な所があるし。でも、ナディが結婚したいって言うなら、応援したい。これは本心だ。問題はその相手。うーん…


正直、あんまこの手は使いたくないけど…


「よし、分かりました。婚活パーティ開きましょう」


「「はい?」」
















--☆
















ザワザワとひしめく男たち。城中の独身男性陣を騎士、兵士、文官問わず集めた。あと、まだ奥さんが1人だけって奴らも。正直、後者に関しては呼ぶかどうか迷ったけど、少しでも侍女たちの選択肢が増えたらいいな、と思って呼んだ。


内訳は騎士が大体40人。兵士が約600人、文官が約150人。計800人ほど。改めて増えたなぁ…と実感する。これだけ居ても割りと人材不足なので、やっぱり優秀な人材をリクルートするのって大変なんだな…というか、マジでキャメロットもケイリュオンも広すぎるんだよ。


さて、そんな計800人を騎士が使用する訓練場に集めた。さすがに女性をここに入れる訳にはいかないので、専属達には軒並み遠慮してもらった。代わりに護衛としてセドリック、ヴェンが付いてきた。あと、一応おじい様も居る。後で登場して貰う予定である。ただ、騎士や兵士が萎縮すると困るから、今は舞台袖で待機。さて、やりますか。


「えー、お集まりの腰抜けチキン共、ごきげんよう」


因みに喉の辺りに『魔鎧』を発動して声を大きくしてます。なので、声がよく響く。当の男性陣は急に投げ掛けられた言葉にポカンとしている。


「さて、私はちょっとだけ不機嫌です。何せ私の専属侍女であるナディがとある男性の毒牙に掛かりそうになっているので」


ザワザワと声が大きくなる。その中から幾つか声が拾える。


(なんだと!?我らが休戦協定を破った裏切り者が居るということか!?)


(お前か?)


(違うっての!お前こそどうなんだ!)


(ってか、誰だその男は!?)


「はいはい、犯人捜ししても仕方がないでしょう」


パンパンと手を叩いて注目させる。というか、紳士協定じゃなくて休戦協定だったのか。まぁ何でもいいけど。


「さて、そもそもあなた達が休戦協定なんておかしな物作らなければ、こんなことにはなってなかったんですよ。まぁ、でも?忙しかったのは事実ですので、それも仕方なかったと思うことにします」


さっきからちょいちょい後ろから殺気と言うか圧が飛んでくる。セドリックだな。言葉遣いで言いたいことがあるかもしれない。とっとと終わらせよう。


「要点は省きますが、結婚を望む侍女達の願いは出来る限り叶えてあげたいと思います。そこで、3日後から10日かけて婚活パーティを行います」


(((婚活パーティ?)))


「えー、つまり集団でやるお見合いみたいなものです。ただこの人数なので、何回かに分けます。連日というわけではなくて、2日やって、1日空けてという感じのサイクルでやります。勿論強制じゃありません。それは侍女達も同様です。そこで自分をアピールして下さい。ただし、ルールがあります。その場で求婚はしないこと、お付き合いの申し込みもしないこと。武力に物を言わせるのも禁止です。相手を怖がらせないこと。もし、違反しようものなら…おじい様ー」


はい、ここで登場してもらう。コツコツと敢えて音を立てながら登場して、男性陣を一睨みする。それだけでピリッと空気が引き締まる。


「えー、分かると思いますが、領主であるおじい様とその孫娘である私が主催です。その私たちが決めたルールを守れないならば、どうなるか…分かってくれますね?」


無言のまま男性陣が敬礼した。よしよし、これでいいか。


「とにかく、細かいルールはまた当日話します。服装は普段の仕事着で来るように。騎士や兵士なら鎧、文官なら仕事着。今日は10日間の内でどこに出たいか希望日を出して下さい。あとは当日に向けて、各自準備をするように。では、解散」


さて、そんな宣言というか、通達をしたのが3日前。そして、今日がその婚活パーティ初日です。


侍女達は大変だろうけど希望するなら何日でも参加OKにしてある。あと、各日で男性陣側の参加者を通達済みで、気になる男性が居るなら、そこに参加。ってな具合にした。要は女性陣が相手を選びやすい様にって配慮である。これには諸手を挙げて喜ばれた。この世界の女性の結婚は親が決めるとか、実家のためだとか自分で選べない事が殆どらしいので。ウチの領でそれはヤダなぁ、と思って女性から選べるという風にしました。一部男性陣からブーイング食らったけど、「死にたいですか?」って言ったら黙ったので問題なし。


男性陣もいい具合にバラけており、各日に騎士、兵士、文官と散らばっている。


そして、侍女たちの服装も仕事着で指定した。これは服装でどうしても格差が出てしまうのと、単純に今からだと裁縫職人たちに注文が殺到して過労死まっしぐらになると踏んだからです。反論も大きかったけど、領主の孫娘としての強権を発動。こんなことで貴重な職人に潰れて貰っちゃ困るからね。


因みに事の発端であるナディはほぼ全日程参加。イリーナも参加するけど、こっちは3日間だけ。あと、数十名ほどの侍女は参加しないらしい。既に心に決めた人が居るとか、他にも色んな事情があるらしい。


しかし、改めて見ると女性陣に人気なのは『円卓の騎士』が出る初日と3、6~9日目だな。一応稼ぎとかは他の騎士よりちょっとは良いからね。まぁ、騎士団長はともかく、『12騎士』の方は相応しくない場合、3年おきに入れ替える可能性があるけど。そう言った途端に、騎士全員が色々と目の色変えてた。いやーこのまま切磋琢磨して欲しいねぇ。


さて、そうなるとこの期間は侍女達が忙しいので、そこそこ歳嵩が上の孤児院の子供たちに簡単な仕事を頼む。ご褒美として食事をちょっとだけ豪勢にしてあげると、やる気を出していた。


実は孤児院の食事はあまりグレードを上げすぎないようにしている。あまりにグレードを上げすぎると、大人になってから感覚が狂うとララァナからのアドバイスがあったからだ。まぁ、確かにと思って、普段は栄養バランスはいいけど、そこそこ質素な食事の範疇に納めている。だから、もっと美味しいものが食べたければ勉強に武術にと頑張れってことである。


んで、ルールに関してだが、木札に名前だけ書いてもらって、それを胸に付ける。侍女にはメモ用紙を渡しているので、そこへ気になった人や事柄を書いてもらって、もう一度会いたいって人に3枚まで投票して貰う。男性側は1枚だけ。で、マッチングしたら後日会える機会を作ってあげて、カップル成立とかにしようかなーって感じにしている。


投票数の差に関しては、何せ城勤めの男女比は元々が7:3くらいな上に、今回参加する侍女は120人程度だからね。このくらいの差にしとけばいいかなーって適当に決めた。


因みに、兵士は全員が全員城勤めというわけではない。なので、数自体は多いんだけど城に勤めているのは総数の半分にも満たなかったりする。さて、そんな話しは置いておくとして、俺は自室待機です。








…何で?俺、主催者だよ?主催者未参加とかあり?一応、おじい様がこっそり監督してくれるらしいけど、不安である。司会、進行はセドリックとマーサで、助手としてコニーとヴェンが付き添っているらしい。一応、こういう時の注意事項として男同士、女同士で固まりやすいから、上手いこと誘導してと言っておいた。同性同士で集まっても、意味ないから。今回は婚活パーティだから。


一方の俺は護衛も手薄になるので、自室で軟禁状態です。


「は~あ~ぁ~、初日くらい出たかったなぁ」


「ヒスイが出てもしょうがないでしょ」


「だって、ナディとか心配じゃない?イリーナも平気かな?」


「マーサさんも付いてるわ。大丈夫よ」


うーん、そうだといいけど。


「ん~あ~」


「…ヒスイ、スカートの中見えちゃうからやめなさい」


「んぇ~?今はいいじゃーん」


現状、俺はマルタの上に乗って、大の字になっております。俺の体が小さくて軽いからできる体勢です。当のマルタは相変わらず寝息を立ててる。パックはルゥと遊んでます。服に噛みつかれると、後でマーサが怒るから、漁村で使わなくなったという縄を縒ってオモチャを作ってみたんだよね。当然ステリポーションで滅菌済み。


それをルゥがパックの前で振って、パックがそれに食い付こうとしてる。『グァ…アグ…アグ…』って鳴き声?を出しながら、果敢に追いかけております。この子らも随分ここに慣れたよなぁ。


まぁ、変に警戒されるよりいいけどさ。そんな2頭だけど、絶対に寄り付かない場所がある。それは孤児院。物珍しさ故に、子供たちにモミクチャにされてから懲りたらしい。俺が孤児院に視察へ行くときだけは、付いてこなくなった。それ以外の時は結構どこでも付いてくる。というか、時折例の転移?っぽい魔法で急に現れる。流石にトイレの時は勘弁してほしい…


2頭は割りとどこでも好きに現れる事ができるっぽくて、エサも自分達で海へ勝手に行って食べてきて、勝手に帰ってくる。何て自由さか…俺なんて、今なんか軟禁状態なのに。


それと濡れたままだとマーサだけじゃなく掃除する侍女も怒るので、濡れた状態はダメだって躾ました。やっぱり、こっちの言葉をある程度理解しているらしい。言ったらちゃんと乾かしてから戻ってくるようになったからね。


相変わらず何でこんなことが出来るのか謎だけどさ。本当に何でだろう?


ふと俺はララァナルゥの視線も外れている事を確認してから、こっちに引っ越してきた時に実は使えるようになった空間魔法を使用してみる。


掌に術式を浮かべて、発動する。出来たのはおよそ10cm四方の透明な立方体である。『キューブ』って名付けた。俺の意思で自由に動かせて、何より硬い。でもこれだけなんだよね。


試しに全力の『アクア』をぶつけてみたり、『ファイア』で焼いてみたりもしたけど、傷は付かなかった。防御として使えるのでは?って俺も思っていた時期がありました。でもこれ、形を変えることが出来ないんだよ。体積そのままで薄くして壁に出来ないかって試そうとしたけど無理だった。防御面積が狭すぎる…


それと動かせる速さや強さは俺のステータス依存らしくって、さほど強くないです。よりにもよって参照されるのが物理面のステータスらしい。ただ、『物理補正』のスキルで増えた分も加味されるっぽいので、成人女性くらいの力では攻撃できるっぽい。


ここに引っ越してきた当日にレベリングしてAtkの数値は26になっているので、そこに加算されて46。およそ街で暮らしている一般女性の物理的な強さが40~60くらいらしい。男性で50~80くらい。


なので、そこそこは強く相手を殴るのには使えるけど、戦闘とかだと精々が嫌がらせ程度にしかならない。あとは本当に低レベルの魔獣相手用。結局は攻撃用でも何でもない普通の魔法をブッ放した方が強いという結論に至った。


うぅ…もっと、空間転移みたいなTHE・空間魔法みたいなやつが良かったよ。


取り敢えず『キューブ』を出して遠隔操作してみる。動かすのは俺の意思で自由に出来るので。それと射程はおよそ『索敵』の範囲と同じ。これに術式も乗せられれば『魔力線』より速く魔法を遠くに展開出来ると思ったのに…


基本的に物理も魔力も干渉できないので、これで大きささえマトモなら絶対防御とかできたのに…覚える魔法が相変わらずショッパイです。


最終的に俺が思い付いたのはファ◯ネルみたいに複数の『キューブ』をヒュンヒュンと周囲を周回させることくらいだ。でも気を付けないと『キューブ』同士が当たって、あらぬ方向に飛んでいったりする。その辺は注意が必要だ。


あと特筆して優れている所を語るならば、ステルス性くらいか。もうちょい威力あれば初見殺しの攻撃になるんだけど…


そんな事を考えながら、マルタの上で寝返りを打って、うつ伏せになる。


「お前たちが喋れれば解決するかもしれないのになぁ」


ペシペシとマルタを軽く叩いてみるが、返ってきたのは『フスー…』という寝息だけだった。


俺自身が強くなる道のりは遥かに遠いようである。




昔海外旅行へ行ったときに、虫に刺されて(多分ハチ)最悪だったという記憶があります。ただ、日本にもハチは居るし、外は危険だからインドアなのは悪い事じゃないんだ。だから、休日に家に引き籠ったっていいじゃないか・・・人間だもの。

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