7-6:姫様は考える
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
今回はのんびり回ですね。
7ー6
「……何で、ここに居るの?」
フォルカという幻獣の親子を保護した翌日。朝目が覚めると、ベッドの横で寛いでいる件の幻獣親子が居た。
…なぜ?
いやいやいや、おかしい。だって昨日は確かにプライベートビーチに置いてきた筈だ。なのに、何でここに?しかも俺の私室に居るわけ!?
一応、これでも領主一族なので、俺とおじい様の部屋は警備が厳重になっている。衛兵が扉の近くに控えているし、護衛のララァナとルゥは隣部屋である。あ、因みに夜番だった衛兵にはちゃんと翌日休みを与えてるからね?そこまでブラックじゃないです。それに何より、俺の部屋には鍵が掛かっている。開けられるのは内側からと、外からだと鍵を持っているマーサとララァナだけの筈だ。窓も確認してみるが、しっかり鍵が掛かっている。つまり、密室なはずだった。
あんな短い前肢で解錠して開けられるとは思えない。いや、ホント何で?
「君ら、どうやって入ったの?」
寛いでいたマルタがのっそりと顔を上げて俺を見てくるが、首を傾げるだけだ。うーん、マジで何で?
マルタは俺の私室に敷かれている絨毯が気に入ったのかゴロンと仰向けになり、『フスー』とご満悦そうにしている。パック?俺が起きた段階で、マルタの体を伝って、ベッドの上に来てます。遊べ、って感じでジャれついて来てます。
幻獣の前ではセキュリティは意味を為さないのだろうか?俺が思い悩んでいるというのに、パックは我が物顔でベッドの上を転がり、勢い余ってドスンと俺に激突してくる。
「お、ま、え、は~…こうしてくれる!」
『キュッ、キュッ!』
パックを押し返しつつ仰向けにさせて、腹の部分に頭を当ててグリグリと全力で毛並みを堪能する。ちょっと獣臭いけど、まぁ気にするほどじゃないな。当のパックは鳴きながら、バシバシと短い前肢で叩いてくる。というか、見た目アザラシの癖に、随分高い鳴き声出すんだな。前世の水族館とかのアザラシだと、子供であっても『ヴァー』みたいなちょっと野太い感じの鳴き声だったのに。
暫くベッドの上で戯れてたら、コンコンとドアのノック音が聞こえた。やっべ…
俺は急いでベッドを降りて、寛いでいるマルタを軽く叩いて起こす。
「マルタ、どうやってここに来れたか知らないけど、昨日の場所に帰って!マーサとかに見つかると多分マズイから!」
『……』
目だけ開けたあと、フイッとそっぽを向いた。よほどここの絨毯が気に入ったんだろう。こんちくしょう!
「マルタ!ちょっ、本当に」
グイグイとマルタを押すがビクともしない。重量が違いすぎる。一体何キロあるんだコイツ!
「姫様、おはようございます。起きてらっしゃいますか?」
外からララァナの声が聞こえる。ヤバイヤバイヤバイ!このまま、黙っていると鍵を開けて入ってきてしまう。
「お、おはようございます、ララァナ。起きてます!起きてるんですけど…まだちょっと入ってきて欲しくないというか」
「何かありましたか?」
「な、何でもないですー」
(ほら、マルタ!動いて!動け、コラ!)
『…ヴアー』
…………
マルタが大きく鳴いた。よりによってこのタイミングで。そして、マルタの方はやっぱり想像通りの野太い感じの鳴き声でした。
「…姫様、今何か聞こえた気がするのですが」
「き、気のせい、です!」
マルタを必死で動かそうとグイグイと足を踏ん張って背中で押すが、相変わらず動かない。そして、パックは新しい遊びと勘違いしてるのか、足に纏わりついてくる。ちょ、邪魔ーー!
『ヴアー』
『キュア―!』
(ちょ、おまっ--)
「姫様、入ります!」
「ま、待って、まだ--」
部屋を開けて入ってきて、そして寝室の扉が開けられる。そこでララァナと、その後ろに控える専属侍女達と目が合った。良かった、マーサが居ないのがせめてもの救いだ。
ただ、どちらにせよ、今の状況の言い訳が思い付かなくて、俺達の間に沈黙が流れる。
「……お、おはようございます?」
「……ヒスイ、言いたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「き、聞きましょう」
「何で、ここに、その子達が居るの?」
「……私が聞きたい」
「……はぁ」
ララァナが側に寄ってきたけど、マルタもパックも大して気にしたような素振りも見せない。マルタは相変わらず転がってるし、パックは遊ぼうアピールばっかり。マルタとパックに挟まれてる場所からララァナにサルベージされても2頭とも変わらずである。
「とにかく、身支度しないと。それとこの事について、後で報告すること」
「…へーい」
「まったく」
そのまま身支度を済まされ、朝食に向かう。その間、マルタとパックは俺の部屋で留守番させる。パックが着いてきたそうにしていたが、心を鬼にして断固拒否した。そう、心を鬼にして…くっ、あんなパッチリ大きい目をウルウルさせながら、見上げてくる様な魅了攻撃はホントにキツかった。ついつい「連れていきましょう」ってポロッと言ってしまいそうになった。
取り敢えず、パックに関しては出来れば世話をしてくれる人がいた方がいいと思ったので、チラチラとパックを見ては微笑んでいたナディに頼んでおいた。
「お任せください!」
って、気合い入れて言ってたから大丈夫だろう。そして、イリーナが若干ガッカリしてたので、次はイリーナに頼もう。いや、次があったら困るんだけどね。取り敢えず、おじい様と朝食をとった後、事の顛末を説明してみた。全員が怪訝そうな表情をしていたが、それをしたいのは俺もである。
「ふむ…そもそも幻獣を飼おうなどと言う者自体が初めてじゃからな。全く分からん。しかし、儂が今まで見てきたフォルカはその様な能力は持っておらんかった」
「うーん、そうですか。『鑑定』で調べてみても、名前の所がそれぞれマルタとパックになっているだけで、スキルとかにも変化はなかったんですよね」
「ヒスイ自身に何ぞ変化は無かったのか?」
「私もそう思って、自分自身も見てみました。でも全く変化無しです」
考えられるのは、未だに読むことすらできない謎のスキル3つが原因じゃないかってこと。一応、あともう1つ原因が考えられるけど、あっちはなぁ…
「とにかく、あの幻獣親子を一旦昨日と同じ場所に返してくるとしよう」
「…そうですね。城にはプールもありませんし。午後、また息抜きついでに行きましょう」
「あぁ、良かろう」
ってなわけで、午前中は保健所で氷、ポーションの提供と、淑女教育、執務をこなして午後にプライベートビーチに行くことになった。
で、今日プライベートビーチに向かうのはウチの面子だけだ。俺、おじい様、ユリーさん、マーサ、専属侍女4名、の計8名。フィニーたちは流石にそろそろ店を留守にできないだろうからね。それとユリーさんも一応同行するけど、昨日訪れた漁村で新しい商談があるらしくって、一緒には遊べないって泣いてた。比喩でも何でもなく、マジで泣いてた…
まぁ、取り敢えずユリーさんを漁村へ送り出した後、着替えてからプールに直行する。それにマルタ達が付いて来…
「う、浮いてる?」
見間違いだろうか?いや、見間違いじゃないよな。マルタとパックが浮いていた。厳密に言えば、泳いでいる?マルタとパックの周囲を水が一緒に浮かんでいて、それの上を滑るように泳いで進んでいるみたいな感じ。
俺だけじゃなく、マーサたち侍女全員も驚いていた。
「あぁ、そうじゃったな。ヒスイは初めて見るか。フォルカという幻獣は確かに海や川、湖で生活するが、陸地も進むことができる。こやつらが持つ魔法によってな」
「へ、へぇ…初めて知りました」
確かにマルタのスキル欄に『精霊魔法:水』ってあったけどさ。こんな風になるとは予想外すぎる。どうやら陸地はこれでそこそこ速く移動できるらしい。そして、出した水は自在に操れるらしくて、自分の体を乾かすこともできるらしい。
「ガルグを討伐した際もこやつらは器用に船の上でも移動しておっての。守る必要がなかったと言う訳じゃ。むしろ器用に泳いで翻弄しておった。水の中ならばなおのことじゃな」
さ、さすが見た目がアザラシなだけはある。つまり、フォルカとは魔法も使えることで独自進化したアザラシみたいな認識でいいのかな?
取り敢えず、昨日は殆ど遊べなかったので、今日はその分を取り戻す。早速プールに飛び込むと、マルタとパックも付いてきた。パックはまだそこまで前肢で泳ぐことに慣れていないのか、シャカシャカ忙しなく動かして泳いでいる。一方のマルタはさすがというか、スイーっと滑らかに泳いでいる。俺自身も魔法を使った泳法で泳いでるけど、普通に付いてくるし、俺よりも器用だ。
まぁ、普段水場に住んで生活してるんだから、そりゃそうか。
少しの間、マルタと泳ぎながら戯れていたけど、パックの相手もした方がいいと思って、パックの元まで泳いでいく。
それを水中で確認したパックもぎこちなくはあるけど、俺とマルタの方へ泳いでくる。前肢をシャカシャカ動かして、必死に進もうとする姿は普通にかわいい。…可愛すぎんか?
泳げた事をしっかり誉めるために、ワシャワシャと頭を撫でてやる。
さて、そんな感じで泳ぎつつ、マルタの泳ぎ方というか魔法を観察していた。魔法はしょうがないけど、こう…水流をコントロールして泳ぐのを見るのは参考になる。やっぱり、多方向にコントロールできるようにならないと、あれだけ滑らかに泳ぐのは難しいみたいだ。『魔力線』で術式を展開しつつ泳げるようにしないと俺には無理だなぁ。
取り敢えず、パックと並走しつつその日は日が暮れるまで遊んだ。そして、体が冷えすぎていたのだろう。翌日寝込んだ。
--☆
夏も終わりそうな今日この頃。
今日も今日とて教育と執務をこなして、午後は久し振りに何もせずに、のんびりしています。マルタに寄っ掛かりつつ本を開いて。パックはアゴを膝の上に乗せて、プスーと寝息を立てている。
結局、この2頭が俺のもとに現れる理由は謎のままだ。俺のもとに急に現れたあの日も、ちゃんとプライベートビーチに置いてきた筈なのに、翌日にはまた俺の私室で寛いでいた。念のためその日もまたおじい様がプライベートビーチに置いてきた筈なのに、私室で寛いでいたら急に現れた。いきなり目の前にパッて。こいつら空間魔法使ってない?いや、でもこいつらのスキルにそれは無いんだよね。
一応、俺が持ってはいるけどこんな風に使った試しがないし、使える魔法もショボいのが一個だけだ。空間魔法って言うくらいなんだから、テレポートとか出来れば楽なのに…
まぁ、とにかく何度も急に前に出てこられると驚くし対応が困るので、基本的には飼い主である俺の私室で飼う事になった。それ以降、私室を整える侍女の数が増えた。理由は2頭見たさと、あわよくば触れ合えるからである。侍女たちの間で密かに人気らしい。あとは侍女ではないけど、コニーが訪問する回数も増えたかな。「本気で侍女を目指そうかな…」って呟いていた。
そんな2頭は基本的には俺にベッタリである。懐かれるのはいいんだけど、この子ら体温が高めだから、ずっとくっ付いてるのは熱い。
今もちょっと熱くなってきたので、パックのアゴを床にそっと下ろした。そしてそのまま本へ目を落とす。そこで扉がノックされた。どうぞ、と許可を出して入室してもらう。
「姫様、失礼いたしま--」
入ってきたのは、お茶を持ったイリーナだった。俺を見て少しフリーズした後、お茶をテーブルへ置いた。
「姫様、また床の上でお読みになられてるんですか?マーサさんに怒られますよ?」
「一応絨毯の上ですから。それにマルタのお腹のクッション性能が良くて…触ります?」
「…っ」
イリーナは手を出しかけては引っ込めを繰り返していたが、ついに抗えなくなったのか、マルタを触りだした。
「ね?柔らかいでしょう?」
「そ、そうですね…」
「今なら私たちだけですし、顔を埋めて全力で堪能できますよ?」
「う、埋めて…!?し、しかし、それは…それ、は…」
葛藤しつつ、徐々に前傾姿勢になっていってる。最終的に誘惑に抗えなかったのか、本当に顔を埋めてしまった。
マルタは我関せずって感じで、マイペースに寛いでる。最近はどこに行くにも、片方は必ず付いてくる。例の精霊魔法?で。ただ、マルタの方は図体がデカイので時折廊下にある調度品だったり、何かしらの台だったりを壊したりしている。なので、廊下からは壊れそうなものは全部撤去された。
そんでもって、この際だからということで、色々と交易品に出来ないかって言って、ユリーさんに売り付け先を探してもらっている。元々は前領主の持ち物だったんだし、売り払っても問題ないだろう。それを資金に、色々と作りたいし。
今、一番手に入れたいのはゴムである。ユリーさんに特徴を伝えてゴムの木を探してもらっている。そろそろ馬車の改良をしておきたいからね。じゃないと乗る度にケツが痛くなる。それと酔う。未だに馬車で吐いてはないけど、時間な問題な気がする。
あとはトマトやその他の野菜。それと今は固形石鹸を作れないかって試してもらっている。調べたら海藻を焼いて得た灰から炭酸ナトリウムを、卵の殻や貝殻を焼いて得られる炭酸カルシウムを混ぜる。で、そこから得られた水酸化カリウム(劇物!危ない!)を油と混ぜて作れるらしいんだよね。海藻も適したものがあるらしいけど、如何せん異世界の海藻なので、上手くいくかどうか…
一応、木とか雑草から作れる木灰から取れる炭酸カリウムを使った方もあるけど、そっちは液体石鹸を作るのに適しているらしい。保管とかなら固形石鹸の方が楽だと思うので、今回は固形石鹸を作ることにした。まぁ、液体を保管する容器もタダじゃないから単価が上がっちゃうだろうしね。
今まで石鹸代わりとして何を使ってたのかというと、木の実から取れる泡立ちのいい液体を使っているらしい。ムクロジかな?でも、「これってムクロジ使ってますか?」って聞いても首を傾げてたから、もしかしたらマクリウの親戚でも使っていたのかもしれない。生憎と城内には詳しい人が居ないので分かんない。
まぁとにかく、衛生面の向上を図るためにも、石鹸は必要だ。俺も自分の手で作ってみたかったんだけど、火を使うというのと、劇物が生産行程で発生すると侍女たちにバレて全力で遠ざけられた。レシピだけ寄越して、あとはやらせるということらしい。
取り敢えず、とある薬師が担当してくれるらしいので、その人に注意事項を伝えると共にやってもらうことにした。水酸化カリウムは失明や皮膚を怪我する危険性があるし、海藻もどれが適しているのか分からないので、何通りも試してほしいと伝えました。
因みに薬師や侍女を始めとして、領都の人達は海藻を食わないらしい。今まではゴミとして捨てられてたんだってさ。なんて勿体ない…
まぁでも、お酢を捨ててるくらいだから調理法が無かったのかも。ワカメとかはアヒージョにして食えるらしいし、色々と一般向けに情報を開示して食料事情に貢献しよう。本当は味噌汁にしたいけど味噌がないし…
現在の領内の食料事情として、領内の食糧は家畜が少ないというのもあって、肉類は魔獣肉頼りな所がある。野菜は一応あるけど少ない。農村とかだと、山菜や野草を野菜代わりにしているらしい。海藻を食べるのは漁村とかのみ。それも井戸や川の近くのところだけだし、食べる頻度も多くはないらしい。
その理由は単純で、そのままだと塩辛いから。で、塩抜きするには真水が必要。飲める水というのは大変貴重なので、わざわざ塩抜きに使う水が勿体ないし、毒のある海藻もこの辺は自生しているらしいので結局は食べないことの方が多いらしい。
毒ありはともかく、可食のやつは一緒に炒めたりして味付けに使っちゃえばいいのに。ミネラル取れて体にいいんだし。でも、毒のあるやつは基本的に収穫禁止にするか。
そっちを石鹸作りに多く回すように言っておこう。焼けば毒も燃えるでしょ。
そんなわけで、石鹸作りをこの前からやってもらっています。取り敢えず、量産が出来るようになれば、一般向けに売り出したいんだよね。香り付けした高級なやつとかは貴族用ってことで売れないかな?その場合の販売ルートはユリーさんと相談かな。
あとは漁業関連をどうにかしないとなぁ…
今のままだと、折角目の前にある水産資源が活用できない。その理由は海性魔獣の存在のせいである。おじい様が昔討伐したというガルグほど凶悪なのはもう居ないらしいんだけど、それでもロクに身動きが出来ない海上というのは海性魔獣の天下なのである。一般人は船から落とされると、そのまま引きずり込まれるらしい。こっわ…
なので、水上を歩ける魔法が使えないと海に出てはいけないそうだ。けどこのままじゃ、水産資源は高級品のままだ。一応俺は望めば食べられるけど、高級品って分かっちゃうとなぁ…なんか自分だけ食べてると、罪悪感にも似たような感覚がある。
手っ取り早いのは船を強化する事なんだけど、中途半端な大きさの船じゃ転覆させられておしまい。デカイ船だと、それを作る資材はどこから持ってくるのかって話になる。この領地、林業も大して発展してる訳じゃないから、冬を越すための薪なんかも自然の恵み頼りなところがある。一応、植樹はしてるらしいけど、木が育つのは時間が掛かるし、適当に植えてるらしいし…
間伐とか枝打ち、下草刈りだったりをして森林を回復させつつ木材を得られるようにしないといけない。
それと『獣士隊』の件も保留だし。
「はぁ~~~…考えること多すぎ。無理~」
本を投げ出して、背中に居るマルタの腹にボスンと寄り掛かる。
「姫様、どうかなさいましたか?」
「まだまだやらなきゃいけない事が多くって。考えるだけで嫌になるって話です」
長々と考えたけど、俺が次にやりたいこと、やるべき事をまとめると…
1、ゴム探しと、それの利用。
2、食材探し。
3、石鹸作りと衛生面の向上。
4、漁業の改革と船の改造。
5、林業の普及。
6、『獣士隊』の発足。
んでもって、そのためにやらなきゃいけない付随してくる問題の数々。どれから着手したもんか。いや、実は『獣士隊』発足のために、そろそろ動く予定ではあるんだよね。狙うのは冬ちょっと手前の秋頃。
移動も勘定に入れると、秋に入ってちょっとしたら移動開始かな。まぁ1ヶ月近く先ですが。
ふと、横を見るとイリーナは未だにマルタにへばり付くようにしている。俺もベッドから伝って、マルタの上に乗っかる。
「「はぁ~~……」」
2人してアニマルセラピー中です。あ~、このまま寝たい。そんな感じで10分くらい無為に時間を潰していたら、再び扉がノックされた。
「誰ですか~?」
「姫様、マーサでございます」
俺とイリーナは即座に跳ね起きて、お互いに服装の乱れなどをチェックする。この間、5秒ほど。よし、大丈夫。俺はベッドに腰かけて、イリーナは立って待機する。
「はい、どうぞ」
「失礼いたします」
マーサが入ってきて、パックが物音で起きるが周囲に俺とマルタが居るのを確認したら再び寝始めた。暢気だな、コイツ。
「マーサ、何の用ですか?」
「姫様にご来客でございます」
「私に?おじい様ではなく?」
「えぇ。何でも、姫様の生徒と自称する、吟遊詩人のヴェントと名乗っておりましたが」
……あぁ、思い出した!ベイジ村で楽曲を何曲か教えたアイツだ。えっと、2年ぶりくらいか?また懐かしいヤツが来たな。
「本来ならば、身元も知れないような吟遊詩人に姫様をお会いにさせたくはないのですけれど…どうやら、門番が呆れるほどしつこかったのと、ここ数日で何度も訪れているようで」
あー…あいつ、俺の歌をたまたま聞いてベイジ村まで押し掛けてきたからね。音楽に携わるだけあって、情熱家なのかな?まぁ、作詞のセンスは壊滅的だけど。
「取り敢えず会いましょう。一応知り合いなので。えっと、念のため、おじい様に報告を」
「既に報告し、確認を取っておりますよ。イリーナ、念のためララァナとルゥも呼んでください」
「はい、マーサさん。では姫様、失礼いたします」
うーん、懐かしの再会イベントだな。ぶっちゃけ顔が既にうろ覚えなんだけど大丈夫かな?
次回、懐かしのキャラ登場?




