5-6:離宮での生活
人は何やかんや適応して慣れるもの。
地味に離宮生活を満喫してます。
5-6
離宮生活は快適と言えば快適だった。ただ、色々と不便というか不満もあったけど。一例としてはトイレットペーパーがない。例のフィッチって植物の葉っぱを代用している感じ。まぁ、よっぽど気を遣って作られているのか、かなり柔らかく作られてるから、使ってて痛くはないのが救いか。他にも、料理に関してはニンニクやショウガも無いから香り付けとか、色々と物足りない感もある。あと多分、ここの厨房でも出汁とかを取って無さそう。基本塩味とかハーブがベース。それにパンも硬いし。細かい所も入れると、他にも言いたい所はある。量だけは申し分ないんだけどね。
あとは風呂事情。基本的に髪を洗うのも石鹸なので、髪がこう突っ張った感じがする。
それ以外にも、衣類はドレスっぽいのばっかで落ち着かない。ズボンのリクエストをしたが、マーサに却下されました。教育が基本的に淑女教育なので、服装は大事らしい。ドレスなどの女性服に合わせたマナーとかも多いので、それを学ぶためにも服装は指定されてしまった。理屈は分かるので、強くも言えない。言うのもメンドクサイんだけどね。連日の淑女教育とやらで、もう気力が・・・
教育は歩き方に始まり、テーブルマナー、各種作法、言葉遣い、挨拶、身だしなみ、その他諸々。まさか指先の動き一つにまで突っ込まれて、教育を受けるとは思わなかった。テーブルマナー、作法を学びながらなので、食事の味がロクにしなかった。マジで頭に木の板を置かれて、落とさずに歩けと言われるとは思わなかった。基本的に自分で着替えとかしない様にとか、もう訳分らん。辛うじて言葉遣いは少しの指摘だけで済んだのが救いか。
「お嬢様、背中が曲がっております」
(ひ~~!)
もう注意されるたびに、内心で悲鳴を上げてました。投げ出さなかった俺を褒めて欲しい。まぁ、実際にはそのお陰で、退屈な時間を過ごさずに済んだんだけどさ。やる事が多いってのも考え物な気がするけど。
それと、王都に居るかもしれないユリーさんやエドナさんと連絡が取りたいって言ったら、手紙を書くのは許してくれた。ただ、警備とかの都合上、直接は会えないとのこと。手紙のやり取りができるだけ幸運か。そんでもって、ユリーさんは現在彼女の実家に居るらしい。姉であるエドナさんも一緒とのこと。ユリーさんからの手紙には最初は守れなかったって謝罪から始まって、それ以降はビッシリと俺を心配する内容の言葉が羅列されてて・・・というか羅列され過ぎてて、初見ではぶっちゃけ引いた。だって見た目が呪いの手紙ばりにインクの色一色だったからね!なんか手紙から真っ黒いオーラみたいなのが幻視出来ちゃったんだもん!ナディとイリーナも顔が引き攣ってたし。
あ、そうそう。ナディとイリーナは俺の専属の侍女になりました。まぁ、出世である。ただ、その分立ち振る舞いが相応になるようにと、マーサから俺と一緒に扱かれています。良かった、仲間が居て。そして仲間はまだまだ居る。
「マーサさん、このカーテシー?って挨拶の仕方だけど、私はどうすればいいでしょうか?」
はい、ララァナさん参戦。おまけでルゥさんも参戦。ララァナさんは元々隠れ里から逃げ出してきたような感じらしくって、今さら戻れないってことらしい。それと俺の元を離れたくないってことで、ドミナンス家で侍女兼護衛として雇うという事になった。ルゥさんは、別に元居た里を逃げてきたわけじゃ無いけど、場所が分からないし、こっちも俺やララァナさんから離れたくないって事で、ララァナさん同様に雇われることに。家族はいいのか、って聞いたんだけどジェスチャーを読む限り、「気にしないで」ってことらしい。
とにかく、2人とも俺の専属の侍女兼護衛になった訳である。だからもう「さん」付けはダメらしい。まぁ、それは良いんだけど、檻仲間である2人からお嬢様扱いされるとちょっと寂しい。でも、俺たちだけの時は以前と変わらない様に、接してくれると約束したので、ちょっとは気分が上向きになった。
まぁ、勿論亜人である2人を雇うって事には、他の侍女たちからは反感があった。それも貴族家の長女である俺の専属。侍女の序列の中でも、普通の侍女よりも上である。それがパッと出の亜人が、その地位を掻っ攫って行ったら、面白くは無いだろう。気持ちは分からんでもないけど、もうちょっと平和になって欲しい。2人へのイジメとかを心配してどうにか手を打とうと思ってたら、「私たちが望んでやってることだから、ヒスイは気にしなくていいのよ」って言われたので、俺が表立って庇護したりとかは止めておこうと思う。ただ、ナディとイリーナには気にしてくれると嬉しいとお願いしておいた。ってことで、これからは「ララァナ」「ルゥ」って呼ぶのがスタンダードになりそうである。本人たちも「さん」じゃない方が、近しい感じがして、そっちの方が良いって言われた。まぁ、いいけどさ。
とにもかくにも、午前中は俺を含めた4人でマーサからの教育を受ける。ホントにきつい。で、昼食を挟んで先王陛下とのお茶会があります。念のため言っておくけど、俺もマーサも専属侍女陣の誰一人として望んでないお茶会です。何でこの国のトップ層とお茶会などせにゃならんのじゃ!でも逆らえない。このお茶会、先王陛下の方から招待を受けているものなので。先王陛下曰く、
「余もただ離宮に居るだけでは暇で仕方がない。淑女教育の一環と思い、茶会の作法などの勉強にもなろう?」
と、あちらの大変ありがたい(有難くなんかない)提案もあり、強制開催となった。マーサの方でも申し出を俺の教育不足を理由にやんわり断ろうとはしてくれたんだけど、無駄でした。ちくしょう。王位を退いたとはいえ、王は王。権威的にも逆らえないし、そして何よりもう一つ逆らえない理由がある。
それはドミナンス家への王家からの援助が関わっている。はい、実は援助されていたそうです。まぁ、端的に言えばその援助はアレです。借金です、はい。おじい様が姿を晦ませたのが約4年前。んで、4年間もの間当主の居ない貴族家(それも成り上がり)が何で今も存続しているのか?そこで王家が出てくるわけです。
おじい様は例の先王陛下を半ば誘拐?みたいにして戦わせてた事があって、それからも何回か魔獣狩りなど、一緒に戦闘を行ったことがあったらしい。それを聞いたときは、あの一回じゃなかったのか・・・あのジジイ、マジで一回しばく、と思いました。
とにかく、そんな感じで約30年来の友人であること。それと以前言っていた『国王直轄魔法騎士部隊』に所属し、さらに本当に短い期間だったらしいけど、宮廷魔法士の職にも就いていたらしい。まさしく先王陛下の懐刀として活躍していた時期があったとのこと。そんなに活躍していたのに、あまり伝説だとかそういうのを他の人から聞かないのは、他の貴族とかが妬みから情報を拡散しなかったのと情報封鎖を行っていたかららしい。本人も表立って目立つのを嫌がったので、それを良しとしたとのこと。
さらに、先王陛下の息子である現国王。この人は小さいころに、おじい様に師事していた事があったらしい。そもそも、おじい様が宮廷魔法士をやっていたのも、先代の宮廷魔法士が亡くなって、空席にさせるわけにはいかなかったからって理由で、先王陛下が無理やりねじ込んだんだってさ。で、丁度いいからって理由で、当時は王子、王女であった人物達に魔法、武術などを指南するために就いただけらしい。教育期間であった1年を満了したらさっさと引退したらしいからね。で、貴族らはそこらへんも含めて気に食わなかったのだろう。余計に民衆へと情報が広がらない様に裏工作に精を出していた、と。だが、当のおじい様からしたら、願ったり叶ったりであった。そしてそれを主導していたのは例のケイリュオン前領主と、その一派らしい。ディアノーグ公爵家も親交があったとかで、其処らへんも繋がってたんだってさ。当の本人はむしろ有難がってたってんだから、なんか貴族共が滑稽すぎる・・・
まぁ、そんなこんなで王家はおじい様本人には恩もあり、また友人でもあったので、当時は騎士爵であった、おじい様を男爵位に陞爵。この国でも前例がない個人での平民から上級貴族が誕生した、と。しかし例の元ケイリュオン領主の嫌がらせがあった。それを断罪し、ケイリュオンを圧政から救った。王家としては、ケイリュオンを潰さずに済んで、さらに恩が嵩んだ状態になったらしい。なのでさらに陞爵させようとしたら、失踪しちゃったので焦ったらしい。
「失礼ながら、先王陛下はケイリュオンで圧政が行われていたのを知らなかったという事ですか?」
「・・・そうなる。先代のケイリュオン領主一族は権謀に長けていたのが1つ。そして我が国で海があるのはケイリュオン、ヒュペリオンだけなのだ。しかしヒュペリオンは北方。塩を取るには向かん。それにヒュペリオンには鉱山もある。普段はそちらに人員を割かざるを得ない。故にケイリュオンで採れる塩を背景に、中央でも大きく影響力を持っていたというのもあった」
「なるほど」
え、えげつねえ。でも確かに塩分は人体にとっての必須の栄養素だ。そこの生産地を押さえられちゃうのはキツイな。そういえば、先代のケイリュオンの領主は性格がクズだったって、おじい様も言ってたな。王家からしても目の上のタンコブを取り除いてくれた訳だから、そりゃ援助くらいしてくれるか。男爵家維持するのと、国を東西南北の内の大領地の1つを敵に回すのじゃ、コストの桁が幾つも違う。何せ維持するだけなら、屋敷の使用人を雇っとけばいいだけだからね。まぁ、でも借金っちゃ借金なわけでして。そもそも、おじい様が陞爵の話を有耶無耶にして出奔してたって段階で相当ヤバい。普通なら不敬罪も適応されかねない。って諸々の事情があって、やっぱり先王陛下の申し出を断るのは難しいらしい。
「では、今代のケイリュオン領主は王家の息が掛った方が務めてらっしゃるのですか?」
「・・・そこが頭の痛い問題でな。当時の領主一族に苦しめられてきた民は中央への反感も強い。それに塩の生産地は国の生命線でもある。権力と利益に目の眩んだ下手な貴族に任せるわけにもいかぬ。故に、今は領主を置かず1年ごとに代官を立て、最低限の統治だけを行っておる。もちろん、王家の者から視察は毎年出すことにして横領などの不正は起こらぬように注意はしているが完璧に防ぐのは難しかろう」
うおぅ。それは・・・なんとも頭の痛い問題である。先王陛下自身は王位を退いた身ではあるらしいけど、ケイリュオンの視察は主に先王陛下自身が毎年行っているらしい。それだけ重要という事だろう。あとは先王陛下が国王として在任中に起きた事件だから、ケジメとしての面もあるっぽい。
「そういった不正や圧政などの情報は、冒険者ギルドから上がっては来ないのですか?」
「本来ならば王都にある本部へ送られて然るべきではある。が、当時のギルドマスターも共謀していたのだ。そういった事を警戒し、今も代官には軍事を始めとした様々な権限は与えていない。そのため街の防衛などはギルド頼りになっている。故にギルドにも強く出ることはできぬ。もし隠蔽されようものなら、情報を集めるのは難しいであろうな。幸い、現在のケイリュオンのギルドマスターは厳格な人物故、そういった心配はしていないが」
うわぁ。どうやらケイリュオンは荒れに荒れていたらしい。それは今も大して変わってなさそう。うーん、そんな中でおじい様は俺の事を探してるのか。大変だ。あ、そうだ。
「そういえば、私の祖父とは連絡は取れたのでしょうか?」
「それなのだが・・・ケイリュオンの領都に立ち寄った形跡はあるらしいのだが、よほど早く移動しているのか、捕まらんらしい」
うーん、おじい様との再会はまだまだらしい。よっぽど焦ってるのかな?
「それより、ヒスイが手紙のやり取りしているユリーという者から、こんな献上品があった」
先王陛下が指示すると、お付きの執事の人が箱を持ってきてくれた。その箱を開けると、チェス一式が入っていた。俺が使ってたやつじゃなくて、真新しいやつだ。先王陛下が献上品って言ってたから、そりゃ新品を用意するか。
「ヒスイが遊び方を知っているから、共に遊んでみてはどうかと一筆添えられていた。これはどう遊ぶのだ?」
「えっと、まずはですね--」
取り敢えず一通り駒の動かし方を教えて、最後にキングを取った方が勝ちという事を教えた。
「私は見たことがありませんが、『駒取り』というゲームと似ていると、祖父が言っていました」
「たしかに。だが、あれはどちらかが全ての駒を取るまで勝敗が付かんからな。どうあっても長引くし、勝敗の付かないこともある故、あまり好きではないのだ」
「チェスはキングを取れば勝ちなので、打ち方にも依りますが早く勝敗が付くこともありますよ」
「なるほど・・・うむ、およそ覚えた。どうだ、ヒスイよ。少し相手をしてくれぬか?」
「はい、私でよければ。けど、私強いですよ?」
「ははは、よかろう。余としても手抜きのお主に勝ってもつまらん。わざと負けるような事はしなくて良い。ここに滞在している間に、勝てることを目標としよう」
ってなわけで、先王陛下相手にチェスを何局か打つことなった。最初から本気で行くと、絶対楽しく無いだろうから、手加減しつつ打つことにする。先王陛下相手とはいえ、勝てる内は勝つ。というか、先王陛下がわざと負けるような接待チェスはやめろって言ったからね。
というか滞在期間がどの位になるか詳しくは聞いてないから、下手すると先王陛下が勝つまで離宮に滞在させられる可能性があるけど、まぁいいや。ここって安全だし。さて、そんな感じで先王陛下とチェスを打ちつつ、少し雑談も交える。
「そういえば、先王陛下はずっと離宮にいらっしゃいますが、執務などは大丈夫なのですか?」
「あぁ、問題ない。余は王位を退いた身だ。いつまでも余が出しゃばる訳にもいかぬしな。それでも幾つか余が対応せねばならん仕事はあるが、幸いこの時期は基本的に暇なのだ。む、これは取れるか?」
「あ、そうですね。では私はルークでポーンを」
「む・・・ヒスイよ、初心者相手にもう少し手心を加えても良いのではないか?」
「これでも手加減しているのですよ?それに先王陛下がわざと負けるような事はしないようにと、仰ったではないですか」
「うぅむ・・・少し、考えさせてくれ」
「はい、承知いたしました」
目の前で「うーむ」と悩む先王陛下を見ていると、おじい様を相手にしている時の光景が思い出される。取り敢えず無事らしいけど、さっさと王都に迎えに来て欲しい。まぁ、無茶を言ってる自覚はあるけど。それから日が傾くまで、少し休憩を挟みつつ、先王陛下のチェスの相手を務めた。自室に戻ってから、マーサから少しお小言を貰ったけどね。先王陛下相手に不敬だ、って。公の場では避けるって言っておいた。だって、わざと負けて気分害されちゃう方がマズくない?
それよりも頭を使い過ぎたからか、何か甘いものを食べたい。プリーズ糖分。
--☆
離宮での生活も3週間近く経とうという頃、例のディアノーグ公爵家とやらの処刑や取り潰しが行われたとマーサから報告があった。他にも例のオークションに参加していた幾つかの貴族家が取り潰しか降格。教会には正式に抗議文を作成し、今まで得た違法奴隷が居れば、王国へ返還せよとの命令。それと各地の教会へのガサ入れ。それを先王陛下と現国王陛下の連名で行ったらしい。
この前、王位を退いたから、あまり出しゃばらないとか言ってたのに大丈夫なのかな?って疑問を口にしたら、マーサから説明を受けた。
「だからでございますよ。今回の事でもし失敗があれば先王陛下が責任を取れるようにするためです。国王であるアウグスト陛下は戴冠してから日が浅いですから。今回の事で失敗をするわけにはいかないのです。それでももし失敗するような事があれば、先王陛下が主導で動いていたと言うつもりなのですよ」
へぇ、と感心した。息子のセーフティになって最悪責任を取るつもりだったのか。で、成功したら手柄は息子に、と。この離宮に居る間はチェスをひたすら指している、老齢な人物って感じなのに。3週間チェスの相手やお茶会をして話していると、否が応でも人となりは多少分かる。王族のはずだけど、割かし気さくだし、未だにマーサから合格点を貰えないお茶会の練習相手になってくれている。いや、マーサの基準が厳しすぎると思うんだけどね?まぁ、教えてくれてるんだから文句は言いませんけど。
と、髪を梳かされながらそんな会話をしていた。今は風呂上がりで、自室にて寝る前に色々と集まってくるという噂や情報を教えてくれている。あ、そういえばまたユリーさんから、というかユリーさんの実家である商家からマクリウを使ったシャンプーが送られてきて、早速使っている。どうやら大分改良をされたらしく、俺が作った時みたいな青臭さがほぼ消えていた。改良をしてくれたようで何よりである。未だに警備の関係上、会う事は出来てないけど、手紙のやり取りはできるから、しっかりお礼の手紙は出しました。
マーサからは、手紙の文面を結構色々と指摘されたけど、ユリーさん個人に出すものに関しては許してもらえた。さすがに商家の方へ出す方は指示通りに貴族らしい回りくどい文面で出しといたけどね。その事をユリーさんの手紙でおもっくそ愚痴として書いたら、「ヒスイちゃんらしくて安心した」って返ってきた。と、本題に戻ろう。
「ディアノーグ公爵家を始めとした貴族家の取り潰しがあったという事は、もう安全という事ですか?」
「基本はそうでしょう。他の関係者も僻地への移送中らしいですから。この季節では実質処刑も変わらないと思われますが」
そう、季節は巡って、既に冬真っ最中である。俺が王都まで誘拐されて運搬されてる最中に冬の入口くらいにはなってたんだけどね。でもあれから3週間経って、本格的に冬である。そんな中に移送って・・・まぁ、『色々と』考えちゃうけど、俺には何もできない。別に男爵家の長女であって、当主ってわけじゃないからね。精々が先王陛下にちょっとしたお願いをするくらいが限界だ。一応は聞き入れてくれて良かったけど。
「しかし、他に潜んでいる者が居るとも限りません。お嬢様、くれぐれも離宮内とはいえ、お一人になりませんよう、ご注意ください」
「はい。もう誘拐されるのはコリゴリですから」
「そうですね。お嬢様にも専属の護衛が付けられると良いのですが、離宮から屋敷へと戻ってからになりますね。今、離宮内に人を入れる方が危険ですから」
「護衛・・・あ、一応言っておきたいんですけど、ヒースって騎士だけは止めてください。追っ掛--えっと・・・なんか顔が怖いので」
危ない危ない。危うく追っ掛けられたことを暴露するところだった。一応、ヒースとはベイジ村で初対面だって事になってるから、それ以前に会っていたって事を言う訳にはいかない。いやー、初対面って大事だね。俺自身、まさかここまで一個人に対して拒否反応示すとは思わなかった。助けてもらったけど、それはそれ、コレはコレである。そんな事を言っていたら、マーサがクスクスと笑っていた。
「えぇ、承知しました。お嬢様もそういった事を言うのですね。安心いたしました」
「え?」
「ここに来てから、お嬢様はあまりご自分の要望を仰らないでしょう?」
「そうですか?結構言ってる気がしますけど・・・」
ララァナやルゥ関連の事とか彼女らの食事の事とか。文句を付けたとしたら、出汁くらいか?あれで少しはスープの味は上がった。まぁ、元々いい食材を使ってるからか、食事自体はまぁ美味しいと言えるレベル。ただ、レパートリーとかがなぁ。あと何かもう二つ三つ、いや四つくらい?足りないって感じ。
「出世をしたナディやイリーナを気にかけて欲しいだとか、ララァナとルゥを色々と気にかけて欲しいといった事くらいでしょう?普通の貴族のお嬢様ならばもっと色々と要求するのが殆どなのですよ」
「えっと・・・ほら、私普通の貴族のお嬢様じゃありませんし。元々平民ですよ?おじい様からも貴族に関しての知識は教えられましたけど、立ち振る舞いとかは教えられてませんでしたから」
「ふふ、そうですね。私もお嬢様の教育に関しては、ご立派な淑女となれるよう手を抜きませんが、お嬢様はどうかそのままで居てください」
「んー、人はそうそう変わりませんよ。先王陛下から聞きましたけど、おじい様も大事な事を言わない癖があるっていうの変わってないですし。私にだって爵位持ちの件や、先王陛下と友人関係だったって事は言ってませんでしたからね!ホントに何を考えてるんですかね!」
マジで何を考えてるんだかね!そんな重要事項あるなら事前に言っといて欲しかった!先王陛下が気さくで、あまり不敬だなんだって言わない性格だったから良かったけど、そうじゃ無ければ俺は下手すりゃ、不敬罪とかで投獄とかされてたかもしれん。初対面でそういう話を聞いたときはマジで胃が痛くなったからね!こんちくしょう!
「えぇ、えぇ。ではお帰りになった暁には揃って文句の一つでも言わせていただきましょう。さぁ、もうよろしいですよ」
髪を梳かし終わったのか、俺はようやく解放された。ふあ・・・もう眠い。マーサやナディ、イリーナ、ララァナ、ルゥに「おやすみなさい」と言って、ベッドに入って速攻で眠りに落ちた。
チャーハンがパラッとできない・・・




