5-5:亜人と侍女
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5-5
別館の前まで移動してきて、別館とやらを見上げる。いや、およそ遠目に目視は出来ていたから、予想は付いてたけどデカいなぁ。少なくともペップスの森の自宅よりは遥かにデカい。2階建てのちょっとしたお屋敷って感じの様相である。あ、当然本館よりは小さいからね?いや、まぁそれにしたってって話である。
前方を固める騎士が扉を開けて、別館の中に入る。本館である屋敷よりも廊下が少し狭い。その影響か、護衛の騎士たちの密度が上がった気がする。そして屋敷の中を少し進んでいたら、ララァナさん達が居るという扉の前まで来た。で、扉を開けようとしたところで、マーサが待ったをかけた。
「失礼いたします、先王陛下。念のため部屋の中を検めますので、しばしお待ちください」
「ふむ、検める様な必要があると?」
「・・・亜人とはいえ、女性にございます。先触れは先ほど別の者に頼んで出しておきましたが、急な訪問でしたので準備ができていない可能性があります」
「なるほど。ではしばし待とう」
「寛大なご配慮感謝いたします、先王陛下」
で、マーサが所作を崩さずに、鍵を開けてササッと部屋の中に入っていった。扉の隙間から見えるかな?って思ったら、全然ダメだった。というか、所作を崩さずにあんなに速く動くとか、どうやってんだろ?慣れかな?というか、鍵かけてたのかよ。状況は俺と同じ軟禁状態って事か。後でちゃんと状態を見て、侍女やら騎士やらから悪意のあるような仕打ちを受けていないか確認しておこう。まだ会って1日も経ってない人たちだからね。100%信用する方が難しい。そして待ったのは、ものの1分ほどだった。
マーサが中から扉を開けてくれて、そこにはララァナさんとルゥさんが侍女さん達が着ているのと似たような服で、頭を下げて待っていた。取り敢えず全身パッと見で外傷はなさそうな事に安堵する。念のため『鑑定』で見ても、HPは減ってないし、状態も正常だ。あとで一応本人たちに確認しよう。
「この度は、亜人である私たちの保護、感謝いたします。先王陛下、並びにヒスイお嬢様」
ララァナさんの挨拶に、胸がジクリと痛む。確かに今の俺はドミナンス家の唯一の跡取りなんだろうけど、今まで普通に接してきてた2人にこういう風な態度を取られると、悲しさや寂しさが沸き起こる。
「うむ、こちらのヒスイたっての希望であった故、気にしなくていい。聞けばこの王都に来るまで、ヒスイを守ったとか。我が国の貴族家令嬢を守ったこと、大儀であった」
「恐れ多い事でございます」
尚のこと距離感が空いたことを感じて、鬱にでもなりそうだ。失礼なことになるかもしれないけど、先王陛下の服を掴んでる手につい力が入る。・・・皴になったらごめんなさい。
「・・・ふむ、余が居ては女同士の会話もできぬであろう?報告も聞き、実際に其方らを見る限り、ヒスイに害を及ぼすことも無かろう。余は戻る故に、存分に話すとよい」
先王陛下はそう言って俺を降ろしてくれた。空気読んでくれたんですね。ありがとうございます。
「念のため、侍女らを含めた護衛を残す。では、ヒスイよ。晩餐にでもまた会うとしよう」
俺がボーっとしてたら、マーサに軽く肩を叩かれた。あ、と。挨拶しろと。そういう事ですね、はい。
「あ、ありがとうございます、先王陛下。また後程」
先王陛下は頷くと、騎士数名に指示を出して部屋を出て行った。指示を出された騎士は部屋の外の扉の前で護衛に付くみたいだ。大丈夫だと思うけどね。
先王陛下と騎士たちが出て行って扉が閉まり、そして部屋の中には俺とララァナさん、ルゥさん、それとマーサを含めた侍女数名だけが残った。侍女さんの数はマーサを含めて10名弱。うーん、この部屋女性しかいない。と、そんな風に室内を観察してたら、ララァナさんとルゥさんがヘタリと床に座り込んでしまった。
「こ、怖かった・・・!いきなり前代の国王が来るとか聞いてないわよ・・・!」
あ、良かった。いつものララァナさんだった。その隣でルゥさんがコクコクと震えながら頷いている。
「ララァナさん、大丈夫ですか?」
「え、えぇ、平気よ・・・驚いただけだから」
ララァナさんに近付いて、手を差し伸べるとララァナさんは俺の小さな手を取ってくれる。そのまま大きく息を吐いた。小声で「無事でよかった」って呟いていたから、どうやら安堵の溜息らしい。そういやほぼ丸一日以上目覚めなかったらしいからね。心配されるのも仕方がない。ルゥさんも心なしか、表情が柔らかいような感じがする。さて、そんな風に心温まる雰囲気を出している中、ボソリと聞こえてしまった。嫌なセリフが。できれば聞きたくなかったセリフが。
「亜人風情がお嬢様に触れるなんて・・・」
この部屋に居るのは俺、ララァナさん、ルゥさんと他は侍女数名だ。誰が言ったのかは分からない。でも俺が救出されたときの記憶も含めて、理解してしまった。
どうもこの国には亜人を危険視というか蔑視する風潮があるらしい。まぁ、テンプレって感じだな。ただ、前世でのナチス然り、一種族にヘイト集めて民意を誘導したり、フラストレーションを発散させたりしようとするってやり方自体は理解できる。納得もしないし、賛同もしないけど。
こういった差別の始まりは、肌の色だったり、民族や宗教の違いだったりと色々なんだろうけど、亜人差別の原因は容易に想像がつく。種族の違いから来る外見の差異だろう。まぁ、根本の所にある原因は人間が臆病故に、違うもの、理解できないものを排除しようとする防衛本能みたいなものだろう。ただ、本能を理性で抑えてこそ人類だと思う訳でして。ましてや、この2人は俺の恩人だ。あの汚くて狭くて寒い檻の中で身を寄せ合った仲間である。彼女らに害意を向けようとするなら、正面から受けて立つ。俺は振り返って、侍女一同を見渡す。で、視線をマーサに固定する。
「マーサ、聞きたいことがあります」
「はい、何でございましょう?」
「ドミナンス家では、恩を仇で返す様なやり方が家訓にでもあるんですか?」
俺の質問の意図が分からないとでも言う様に、侍女たちの間にザワザワと波紋が広がる。それと困惑の気配が。敢えて不機嫌な事を隠そうともしない様な感じで喋ってるからね、今。実際不機嫌ですけども。亜人蔑視が当然の根底にある人たちからしたら、訳が分からないだろう。マーサだけが意図を察したのか、直立不動で俺を見下ろしている。あ、いや。他にも2人ほどが何かに気付いたような、気まずそうな・・・いや、何かに憤るような?でもなんか微妙な?複雑な表情をしていた。一応今の侍女さんの顔は覚えておこう。
「いえ、決してそのような事は御座いません。お嬢様、お心を乱してしまい、申し訳ございません。教育が行き届いていなかったようです。今すぐ下がらせます」
マーサが侍女全員を下がらせようとしたが、それに待ったをかけた。さっきの気まずそうな表情をした侍女2人が気になったからだ。何でそんな表情をしたのか、興味があった。で、俺が指名した当の本人たちは絶望したような表情に変わっていた。その2人以外は退室した。出て行く侍女たちを、2人が助けを求める様に視線で追っていた。いやいや、別に不都合な話とかするつもりないから。そんなに警戒しないで欲しい。
取り敢えずマーサにテーブルに着く様に促されて、ララァナさんとルゥさんもテーブルに着く。それと、先ほどの2人とも話したいので、一緒にテーブルに着いてもらった。すっごい遠慮してたけど「聞きたいことがあるので、お願いします」って言って着いてもらった。2人ともイチイチ絶望顔しないで欲しい。一方マーサの方はお茶を淹れると言って準備を始めてしまった。同席するつもりはないってことだろう。侍女の鑑みたいな女性だね、マーサは。
「まず、改めましてヒスイ・ドミナンスです。ね?私が言った通り、ちゃんと魔法士の孫だったでしょ、ララァナさん、ルゥさん」
「そ、そうね。あ、いや。そうですね、お、お嬢様?」
「えっと取り敢えず、一緒に檻の中にいたときみたいな感じでお願いします。マーサ、いいですよね?」
「・・・はぁ、あまり良くはないですが、仕方がないでしょう。この部屋の中だけですよ」
まぁ貴族の面子とか威厳的なものがあるだろうしね。その秩序を守らないとってのも分かる。正直そういうのキライなんだけどね。余計なこと言ってこの部屋でも、そういうのを守れと言われても困るので、何も言わないでおく。
「あ、私自身元々は貴族とは縁遠い環境でおじい様と生活してたので、敬語とかそういうのは気にしなくていいですよ」
侍女2人はどうやら自分から話すつもりは無いっぽい。っていうか、ガッチガチに緊張してる。最初はララァナさん達と話そう。
「ララァナさんとルゥさんはどうしてました?えっと2日前?に一緒に保護されてからどう過ごしてたんです?」
「私とルゥもゆっくり寝れるのなんて久しぶりだったから、昨日のお昼ごろまで寝てたわ。それに何だか、手枷だとか無しで生活するのが久しぶりで、昨日はそういう感覚を取り戻すのに使ってた感じかしら?」
「ルゥさんも?」
俺がそう問いかければコクリと頷いた。檻から解放されたけど、言葉はやっぱり取り戻せてないらしい。
「あ、そういえばルゥさんって、ずっと檻の中でしたけど、飛んだりしなくて大丈夫なんですか?」
なんか、鳥って一定期間飛ばないと、飛べなくなるって聞いて事があったからそんな質問をしてみたが、コテリと首を傾げるだけだ。えっと、つまり分からないと?
「マーサ、この離宮の敷地内で少し飛行訓練とかってできますか?」
「先王陛下にお伺いしておきましょう」
「はい、よろしくお願いします」
ルゥさんがパタパタと翼を揺らしつつ、嬉しそうな表情をしていたので、この対応は正解だったらしい。よかった。その後聞いた話だと、基本的にこの部屋に軟禁された状態だったらしいけど、檻の中より遥かに快適だったとのこと。さて、じゃあ侍女2人にそろそろ話題を振ってみよう。ララァナさん達との会話で何となく俺の性格だとか、根っからの貴族ではないと分かった筈だし。
「えっと、そちらのお2人は・・・」
俺が視線と言葉を投げかければ、ピシリと背筋を伸ばして表情を強張らせる。だから、俺は根っからの貴族とかじゃないから、そんな風に警戒しないで欲しいんだけど。
「お、お初にお目にかかります、お、お嬢様!ナディ・シリョンです!ナ、ナナナディとお呼びください!」
「お、同じく、イリーナ・パッティアです。イリーナとお呼びください。せ、誠心誠意お仕えいたします!」
「はい、初めまして。ヒスイ・ドミナンスです。これからよろしくお願いします」
自己紹介してくれたナディとイリーナの2名。若干声が裏返ってるけど、まぁ悪い人たちじゃなさそう。ナディがダークブラウンのロングヘアで、イリーナがクリーム色っぽい金髪?の髪をした侍女だ。まだ2人とも少女って感じの年齢な気がする。
「えっとまず、2人に残ってもらった理由なんですけど、さっき私がララァナさんに触れたときに2人だけは他の侍女さん達みたいに嫌悪感みたいなのを表情に出してなかったので、何でかなーって気になったんです。理由を聞いても良いですか?」
2人は顔を見合わせると、少し小声で話し合ってから、ナディの方が回答すると決まったらしい。話し合う時、若干難しそうな顔をしていたのが気になった。
「えっと、失礼を承知でお聞きしますが・・・お嬢様は亜人のことをどう、思います、か?」
恐る恐るといった口調で俺にそう尋ねてきた。どう思うって言われてもなぁ。そもそも実は俺自身人間じゃないし。種族の所が亜人とか訳の分からん種族名になってるし。それは置いとくとして、ララァナさんたちみたいな明らかに風貌が人間から離れた、そういった亜人の事をどう思うかって事だよね。まぁ、そんなの決まってますが。
「何で人間と分けて考えるのかが分からないですね。亜人自体はララァナさんとルゥさんで初めて見ましたけど、言葉は通じますし、むしろ2人には助けてもらいましたし」
うん、見た目が違うくらいで何でそこまで嫌悪感を示すのかね?いや、これが言葉が通じないとか思考がぶっ飛んでるとかなら、話は分かる。でもそうじゃない。
「他の侍女さんの反応をを見たから何となく分かりますけど、亜人は嫌われてるみたいですね。ただ、私自身は亜人に対する偏見は持ち合わせてないです。それよりも、何でそういう体の構造になってるんだろうとか、どういう風に動くんだろうとかに興味があります!色々触って調べてみたいですし、動きとか観察したいです!生態がどういう風になってて、体構造はどうなってて、どういう進化過程を辿って来たのか調べたいです!他にも気になる所はあります!それにラミアやハーピーだけじゃなくて、他にも居るならそちらも調べたいですし、どこで進化分岐したのか気になります!あ、テンプレだと獣人?みたいなのとかも居ますかね!?もし居るなら耳とかどうなってるんだろう?聴覚はケモミミ依存なのか、それとも人間みたいな耳を別個に持っているのか!ケモミミの方は『レーダー』的な役割を持っていたりするのか!あ、もちろん、ラミアにもハーピーにも興味ありますよ?蛇の部分はどのくらい器用に動かせるのかとか、ハーピーの飛行高度や飛行速度はどうなっているのかとか!羽根の構造自体はどういう鳥類の中でも、どういうのに近いのか!あとそれから--」
こちとら元々オタクで理系なんですよ!こういう亜人の体の機能はすっごい気になる!色々触って確かめたいし、人間の筋組織とかとは違うのかとか、めっちゃ気になる!檻に閉じ込められてる間はララァナさんもルゥさんも、そういうの聞ける状態じゃないし、精神状態的にもよろしくないだろうと思って調べられなかったし!生態的、動態的差異も調べたいし!神経が通じてるのか、その確度はどんなものなのか!知りたいことは山盛りである!ファンタジー万歳!
・・・・・・・・・ねぇ、何で全員若干引いてるの?別に解剖とか言い出したわけじゃないよ?そのくらいの倫理観は持ち合わせてるんだから。ねぇ、何で表情引き攣ってんの?ジリジリ遠ざかって行ってない?ねぇ、何で?
ほら、怖くないよ?こんな幼気な幼女だよ?ただ、ファンタジー種族への知的好奇心が抑えられないだけで。だから逃げなくていいよ?ねぇ?おい、逃げるな。
--☆
「こほん、失礼しました。取り乱しました。えっととにかく、亜人に対して害を及ぼそうとか、そういうことは考えてないですから。あの・・・だらか、ララァナさん?ルゥさん?そんな目を向けないでください」
「・・・突然、さっきみたいに追いかけて来ないでしょうね?」
「しないしない」
「・・・一旦その言葉を信じるわ」
檻仲間と思っていたララァナさん、ルゥさんにメッチャ警戒されてます。辛い、泣きたい。いや、暴走したのが原因って自覚はあるけどさ。ちょっと傷つく。でも、檻の中で2、3か月くらい我慢してたんだから、この位許して欲しい。
「安心してください。お嬢様、次また淑女にあるまじき行動を起こされたのならば、容赦なく止めさせていただきます。この部屋の中だけとはいえ、口調などを崩すことを許容しているのをお忘れなきよう」
「う・・・はい」
俺はジンジンと痛む頭を擦りつつ、大人しく返事をしておく。先ほどの俺の暴走を止めたのはマーサである。「失礼いたします、お嬢様」と言われ、ヒョイと持ち上げられて元の椅子に戻されて、拳骨を落とされた。このお仕置き方法は淑女としてはどうなん?って思ったけど、余計な事は言わないでおく。後が怖いから。
そして、ララァナさん、ルゥさん、ナディ、イリーナのマーサを見る目が、憧れとか救世主とか、そういう相手に向けるものになった気がする。ちくせう。
「えっと、何でしたっけ?あぁ、そうそう。ナディとイリーナの態度が気になったんです。何でかなーって。そういう話でしたよね?」
「そう、ですね。ただ、お嬢様の先ほどの行動を見て、話しても良い物かどうかが分からなくなりました」
「う・・・まぁ、無理に聞き出すつもりはないですから、教えられそうにないなら別にいいですけど」
別に傲慢な貴族になりたいわけじゃ無いのだ。なので、話せないなら無理に聞き出すことはしない。
「無礼を承知でお聞きしますが、お嬢様は亜人に危害を及ぼさないと約束していただけますか?」
「えぇ、もちろん。むしろ亜人が望むなら、なるべく手助けしたいと思ってますよ」
「では--」
そこで話してくれたのは、2人は同じ街出身で、少し離れた場所に獣人の村があったらしい。村と言っても山と森の中にある小さなものらしくって、攻めるに難し、守に易しって感じの、天然の要塞みたいな場所にあるらしい。で、そこに2人の共通の友人がいるんだと。
そもそも2人とも家名持ちなので、一応実家は貴族家らしい。なのに何で獣人の友人が居るのかというと、2人の実家内での立場によるものらしい。ナディは士爵家の3女で、継承権とは程遠いし、最下級貴族位の士爵家の、それも3女だと政略結婚としても貴族に嫁ぐとかは望み薄。さらに実家を支えるために、12歳を越えた頃から街で働いたりしていたらしい。その仕事の一環で、森に行くことがあったとのこと。その時出会ったのが、獣人で後の友人になる相手だったらしい。何やかんやあって意気投合して、友人になったとのこと。
一方のイリーナも似たような感じ。実家は士爵より上の騎士爵。ただ、愛妾の子供らしくって、ナディ同様に実家内でのヒエラルキーは低かったらしい。で、似た境遇のナディと意気投合。そのまま獣人の友達も紹介されて、今に至る、と。というか、愛妾の子供って・・・うーん、流石中世チックな封建社会国家。権力万歳って感じがする。
「今もその獣人の人とはお友達なんですか?」
「えぇ、もちろん。流石に街での仕事先は給金が安い物ばかりでしたし、最悪の場合は娼婦になるしか無いくらい仕事が無かったので、イリーナと一緒に王都で職探しをしようとしたんです」
「そうして準備をしていたら、ある時新興の貴族家の侍女を募集すると聞いたので、それに乗ったんです。一応貴族家の侍女は、身元がハッキリ分かる者が優先されますので、その時だけは実家の名前を有難いと感じました」
あっけらかんと本人たちはそう語るが、中々に世知辛い話である。これが約4年前くらいの話らしい。当時は2人ともギリギリこの世界での成人(15歳)を迎えておらず、それでも侍女見習いとして自分達を売り込んで、侍女見習いの職を勝ち取ったらしい。それで暫く働いて見習いから正式に侍女になったのも束の間。例のおじい様失踪事件が発生。例の「魔法の研鑽のため、旅に出る」ってだけ書き残した置手紙の事を知った時は頭が真っ白になったとのこと。クビも覚悟したらしい。
「・・・・・・その件につきましては、おじい様が本当に申し訳ない」
「いえいえいえいえ!!お、お嬢様に謝っていただくなど恐れ多いです!確かにその時はクビも覚悟しましたが、先王陛下と国王陛下が、屋敷を維持し主人の帰りを待つように、と便宜を図ってくださったお陰で今日までお取り潰しの憂き目にも合わずにやってこれましたので。お気になさらないでください」
「ナディの言う通りです。それにこうしてお嬢様にもお会いできました。そのために旅に出たのだと思えば、納得できます」
・・・納得、できるんだ。う~~ん、この世界の貴族では隠し子とかは割とメジャーなのかな?なんかヤダなぁ、それ。マーサも含めた彼女らの認識では、おじい様が旅に出たのは魔法の研鑽と偽っての隠し子の捜索のためだったという理解らしい。確かに、おじい様と考えたカバーストーリーはそんな感じの設定したけどさ。
「えーと、とにかく本題としては、2人とも獣人の友人が居たから亜人に対する偏見がない。それで、亜人には危害を及ぼさないで欲しい、って事ですよね?」
「はい、そうなります」
「分かりました。おじい様が戻ってきたら、その旨も伝えましょう。私もそういう偏見が嫌いですし」
「「お嬢様のお心遣いに感謝いたします」」
2人は深く頭を下げてお礼をしてくれた。あのおじい様の事だし、俺のお願いなら聞いてくれるでしょ、多分。そこまで話して、今度の話題は俺についての物に移った。おじい様と出会ってからの話を所望されたので、カバーストーリーの内容を話しておく。そんな感じで、俺たちは夕方になる手前まで交流を深めた。いやー、喋り過ぎて喉枯れるかと思った。
寒いと朝起きるの辛いです・・・




