4-9:不安の種
この1週間、定期更新してましたが、また不定期更新に一旦戻します。(仕事が・・・仕事のできないジジイの尻拭いが・・・)
読者の皆様には、大変申し訳ないと思っております・・・
4-9
「オルゥズ、ディー、今日はここで野営だ」
「はいよ」
「了解」
俺が誘拐されてから既に1か月。あー、多分1か月。正確な日数はカウントしてない。ナイフでもあれば檻の床板に傷でも付けてカウントするんだけどさ。囚われの身である俺に武器なんて渡してもらえる筈もないし。というか、俺の着用してた装備一式、どこいった?どっかに売り払われた?それだったらどこかで足が着いて、おじい様が助けに来てくれるかなー、って期待してるんだけど、その様子はない。でもこいつら結構慎重だから、そんなヘマしないかな?
そして今日はここら辺の森で野営をするらしい。流石に寒くなってきて、檻仲間であるララァナさん、ルゥさんとくっ付いてないと朝晩は凍えそうになる。風邪に有効なポーションは作成できないからね。
さて、既に約1か月が経過したわけなんだけど、これだけ一緒にいると誘拐犯であるクソ野郎共の事が分かって来る。まずコイツらが所属している組織。『黒蜥蜴』というらしく、割と大きな奴隷商会っぽい。組織名はオルゥズから聞いた。組織の規模は俺の予想。予測した理由は、こいつら何度か馬車の馬を街の近くを通るたびに交換してるんだよ。あ、ついでにその馬の定期交換の時に、毛皮を3人分貰って、それに皆で包まってる。取り敢えず凍死を防ぐ最低限の防寒具は手に入れた。足んないけどね。
それと交換の仕方はこうだ。足の遅い俺たち『商品』持ちは森で待機。そこへ街から『黒蜥蜴』の『連絡員』が交換用の馬と情報を持ってやってくる。これが街の近く通るたびに起こる。つまり各街に『黒蜥蜴』の連中が居るんだろうね。『連絡員』の格好はいたって普通の旅装だったり、狩人の格好だったり。どうも街に上手い事街に溶け込んでいるらしい。
そして何より一番驚いたのが、エドナさんの話にもあった山越えだ。グランドル領から王都方面へ出るには山越えが必要だって話だった。でも、俺たちは山越えをしていない。なぜか?トンネルを通って来たからです。
・・・はい。トンネルです。いや、俺もビックリだったよ。多分元は洞窟だったっぽい?最初は道がデコボコしてたし。それと入口は上手い事隠蔽されてた。何より、ここの正確な位置が分からない。
トンネルの中は途中から道がやや平坦になって、そして中には休憩するための、ちょっとした広場みたいなのがあった。そこで休憩を挟みつつ山を通過した。『黒蜥蜴』が作ったのか、もしくは元々は他の組織が作ったのか、はたまたずっと昔のものを再利用しているのか。そこは分からなかったけど、こんな大きなトンネルを利用、維持、保有できる組織だ。そういう情報を統合して、そこそこ大きな組織じゃないかなーって思ってます。
さて、次は俺たちを運んでいる連中について話そう。まず俺を殴ってきて殺しかけたクズ野郎のオルゥズ。軽薄、粗暴、口が悪いと3拍子揃ったチンピラみたいな奴。コイツ嫌い。魔獣に食われちまえ。
オルゥズ(26歳)
Lv:41
種族:人間
性別:♂
状態:正常
HP:391
MP:42
Atk:521
Def:401
Int:92
Mnd:191
スキル:
『潜伏』-『自身を周囲の風景と同化させる』
『索敵』
『毒耐性』
『格闘術』
『短剣術』
『索敵』持ちだったため、隠れていたのに俺の居場所が分かったみたい。コイツが『索敵』さえ持ってなかったら、俺も攫われることもなかったのに。
次に無口で影が薄いディーって男。オルゥズとは逆で、必要な事さえ喋ろうとしない。俺の勝手なイメージはコミュ障。まぁ、最低限のコミュニケーションは取ってるみたい。だからコミュ障ってのは俺の勝手なイメージ。俺やララァナさん達とは一切喋ろうとしないので、良く分からないってのもある。ある意味一番不気味なやつ。
ディー(21歳)
Lv:48
種族:人間
性別:♂
状態:正常
HP:366
MP:51
Atk:600
Def:361
Int:99
Mnd:89
スキル:
『潜伏』
『遠見』-『遠くの景色を見ることが出来る』
『暗殺術』-『認識されてない相手への攻撃に2倍のダメージ』
『短剣術』
『弓術』
『暗殺術』とか物騒なモン持ってた。こっわ。なんか俺が遭遇する襲撃者という襲撃者、恐ろしい連中ばっかなんだけど。もう嫌になる。そういう星の下にでも生まれたんかね?はぁ・・・
で、最後はイルベウスというリーダー格の大男。余計な事は口にせず、また余計な行動もしない。あと俺の足を持って地面に叩きつけてきた奴です。リーダー格だけあってやっぱり強いみたい。鑑定してみたステータスはこうだった。
イルベウス(38歳)
Lv:92
種族:人間
性別:♂
状態:正常
HP:909
MP:261
Atk:1196
Def:1001
Int:542
Mnd:311
スキル:
『筋力強化』
『潜伏』
『過負荷』
『毒耐性』
『格闘術』
『斧術』
『魔法:火』
『魔法:風』
これだけ強いんですよ。冒険者とかでも十分真っ当に食ってけそうなのに何でこんな事やってんだろ?檻の外で野営の準備をしているイルベウスに声を掛ける。まぁ暇だし。
「イルベウスさんって結構強いですよね?」
「・・・・・・」
「何でこんな事やってるんですか?多分冒険者とかでも真っ当に食べていけますよね?あとは騎士とか。ねぇ、なんで?」
「・・・真っ当に生きていけない人種もいる。オルゥズもディーもな。これで満足か?」
どうやら訳ありらしい。ちょっと同情もするけど、俺攫われてる側だしなぁ。
「まぁ、そういう人種が居るのは分かりますし同情しない訳じゃないですけど、貴方たちに私攫われて、こんな事になっちゃってますし。遠慮しなくて良いんじゃないかなーって」
「タチの悪いガキだ。これ以上話すことは無い。死なない程度に殴るぞ?」
「・・・はぁ、ちょっとした暇潰しのためだったのに。じゃあ何か面白い話してくださいよ」
「そんなものはない。クソガキ」
「ちぇー」
「あと数週間もすれば王都に到着する。そうしたら、高く売れるお前を真っ先に変態貴族共のオークションに掛けて終わりだ。お前は高く売れるだろう。そのスキルの多さだ。優秀な跡継ぎを欲しがる貴族共からは金の卵のように写るだろうな」
・・・うげぇ。
「何より効果の高いポーションを出せるスキル。希少性の高い商品を生み出し、魔法の素質もある。一生を子を産む道具として扱われるだろうな」
冗談抜きで、今までの人生の中で一番悪寒が走った。うわぁ、鳥肌が止まんねぇ。
「丁度ガキ好きのペドロ侯爵ってのがいるからな。そいつが高く買い取るだろう」
「え、ペド?」
「ペドロだ。まぁ、本命はそいつだが他にも金を持っている貴族共は居る」
「そのペド侯爵?の性癖は分かったんですけど、性格ってどんなですか?」
「クズだな」
「あなた方より?」
「・・・どうだろうな」
はぁ、ヤダなぁ。うーん、何とか脱出する方法とかを考えたいけど、今のところ有効な手段が一切思い浮かばないんだよね。それに、ララァナさんとルゥさんとも親しくなったから、見捨てるのはかなり気が引けるし・・・
王都に居る知り合い・・・エドナさんとかか!何とかエドナさんとかに報せる方法を考えないと。ってか、王都にこんなデカい檻牽引してるのにどうやって入るんだろう?いや、それよりも脱出方法だ。どうすべ?あと数週間あるって話だし、考える時間はある。その間に何とかしないと。今のところ思いつくのは騒ぎ立てるくらいだ。でも向こうもそれくらいは考えそうだよなぁ。そうなると、猿轡をまた噛まされるかな?鎖でジャラジャラ戦法を取る?でも床にでも固定されたら騒ぐのも無理だ。こいつらが、そういう事を思いつかない事を祈るしかないかぁ。
んー、ロクな考えが思いつかない。どうすべ?
それ以上話すことは無いとでも言う様に、イルベウスはそのまま準備に戻った。暫くすると、オルゥズとディーも戻ってきた。どうやら野鳥を3羽仕留めてきたらしい。今晩はチキンソテーかな?あぁ、また指示出さないと。
俺の指示を聞いて、野鳥が捌かれてソテーされていく。あー、良い匂い。俺は少なくても満腹になるので、残りはララァナさんとルゥさんの胃袋に消えました。ってか、ララァナさん体デカいけど、足りるんかね?一応、足りるって言ってるけど、心配である。
--☆
さてさて、王都まで数日となって俺たちは檻を偽装した馬車に移された。外側からは普通の幌付きの馬車にしか見えず、中身はアンチマジック的な素材の例の檻でした。これで外からは見えなくなった。しかもどういった念の入れようか、王都に直接向かうのではなく、王都を迂回するようにどこか別の場所へ向かっているらしい。馬車の隙間から遠目にだけど、デカい城が見えたから多分アレが王都なんだろうね。あ、デカいと言っても遠目にはかなり小さく見える。そこへ真っすぐ向かっているわけじゃ無いので、まだまだ王都までは掛かるらしい。
「はぁ、ヒスイはこんな状態なのに元気ね」
「暗い未来が待ってるなら、今くらいは明るくしときたいです」
なにせ売られる先の最有力候補が変態貴族だからね。結局脱出するためのいい案は思い浮かんでない。まぁでもしょうがなくない?魔法も『魔鎧』もロクに使えないんじゃ、俺はそこいらに居るただの幼女になってしまう。『物理補正』でステータスは上げられるけど、それでも3桁超えないし。そして、体力は元々の数値依存っぽくて、相変わらず体力は貧弱です。どうやって分かったかというと、檻の中で運動しないのは体に悪いと思って動ける範囲で筋トレをしようとしたんだよね。そしたら速攻で息が上がった。
・・・あとね?ショックだったことがあるんです。前世ではできていた各種筋トレ。腕立て、腹筋、背筋。腹筋と背筋は出来たんです。・・・1回だけ。は、ははは。笑っていいよ。因みに腕立ては0回でした。ふへへへ、笑っていいよ。はははは。
はぁ、超ショック。前世で出来ていたことが今世でできないって知るのが割とダメージがデカい。ま、今さらか。そういやいつだったか、石を投げて全然飛ばなくてショックを受けたこともあったし。ホント、貧弱過ぎるよ、この体。
「あれ、急に静かになった」
「いや、筋トレの事思い出して」
「あー、あの変な動きしてたヤツ?ヒスイが『ふんぬぅ』って息粗くして変な顔してたのは面白かったなぁ」
「・・・(コクコク)」
「ルゥさんまでヒドイ!」
ルゥさんにまで笑われたでござる。あ、そういやようやく笑った。薄っすらだけど。たまには道化になるのもいいかもね。なお、代償は俺の精神的なダメージ。
「はーあ。結局おじい様の救助は来なかったなぁ」
「ヒスイのお祖父さん?魔法士?だっけ?私はずっと隠れ里に居たから、人間の魔法士だとか貴族だとかには詳しくないんだけど、本当にヒスイのお祖父さんってそんな偉い人なの?」
む!ララァナさんまで信じてない!ホントの事なのに!いや、まぁ確かに証拠はないけどさ。あ、ルゥさんも頷いている。ショック・・・
「本当なんですって!私のフルネームはヒスイ・ドミナンスって言うんです。まぁ、私自身おじい様の孫だって知ったのは1年位前ですけど・・・」
おじい様の孫だって知ったって話は、そういう設定になっているってだけだけどね。正確には血液魔法で血縁になったってだけだ。というか、おじい様の事だから血液魔法で俺の事しらみ潰しに探せないんかね?ギランの街では外壁の外の平原が広かったから、範囲外だった可能性はあるけど・・・
そういや、流石に大丈夫だと思って失念してたけど、あの人スタンピード生き残ったよね?大丈夫、だよね?ポーションもあれだけ量産したし、鍛冶工房とか木工工房に依頼して兵器の作成もしたし、現代戦術とかも教えたし・・・
あ・・・でもスタンピードの規模とか知らない。冒険者とか兵士が凄いピリピリしてた、けど・・・そもそも、おじい様は何で助けに来ないんだ?
あの過保護で、巨人やら数多の魔獣に、竜ですら倒した事がある、おじい様が何で?え・・・あ・・・だ、大丈夫、だよ、ね?
背筋に嫌な汗が流れる。心臓がバクバクと早くなる。早すぎる鼓動の音が耳の傍で鳴ってるみたいで、うるさい。うるさい・・・止まれ、止まれ、音。寒気は止まらないのに、血が熱くなって高熱でも出したような感覚がしえ、鼻の奥がツンとする。目頭が勝手に熱くなる。あ、ダメだ。無理。止まんない・・・
「え?ヒ、ヒスイ!?どうしたの!?ヒスイ!!」
「あ・・・ぅ・・・」
ララァナさんが顔を覗き込んできて、ルゥさんが面喰らいつつも急いだ様子で翼で包んでくれるけど、涙が溢れて止まらない。出てきた不安が治まらない。自分の中で感情がぐじゃぐじゃになる。渦巻いている感情が、悲しみか不安か怒りか分からなくなる。
「お?なんだぁ?ようやくクソガキが、らしくなってきたかぁ?王都がいよいよ近付いて自分の身が可愛くなったってか?あぁん?」
オルゥズの耳障りな声が聞こえるが、アイツの言葉が頭に入って来ない。音が遠くなるような感覚がする。
「ヒスイ?落ち着いて。ね?どうしたの?話せる?」
「ぅ・・・わ、私・・・ひっく・・・うっ、お、おじい、様、が・・・」
「大丈夫。大丈夫だから。ゆっくり息をして。ほら、大丈夫だから。大丈夫、私が居るわ。ルゥだって」
ルゥさんの翼に包まれつつ、ララァナさんが優しい声を掛けながら、背中を擦ってくれる。ララァナさんにしがみ付いたまま、嗚咽が漏れる。前が見えない。声を出そうとして、喉がヒリつく・・・
「ね?私もルゥもここに居る。大丈夫だから。ほら、落ち着いて。ね?」
「・・・・・・・・・ギランの街に、居たんです」
「うん」
「ぅ・・・そこで、スタンピードがある、って。おじい様が、戦いに行って・・・でも、今、助けに・・・来てくれなくて・・・」
「・・・うん」
「な、何でって・・・考えて。それで・・・ひっぐ・・・・・・も、もしかしたら、死ん、だんじゃ・・・て・・・お、思ったら・・・」
ぎゅっと強くララァナさんに抱きしめられる。
「・・・ヒスイ、貴女のお祖父さんは、魔法士って凄い魔法使いなんでしょ?ならその人が死んでる方があり得ないんじゃない?」
「・・・でも・・・」
「ヒスイはお祖父さんに生きてて欲しいんでしょ?」
「・・・ゔん」
「なら生きているって信じなさい。助けに来れないのは、この国は広いんだから、いくら魔法士だってそこからたった一人を探すのは難しいわよ。森の中から木の葉一枚を探すのなんて、不可能に近い事よ」
「・・・」
「でも、きっと大丈夫よ。だって、こんなに強いヒスイのお祖父さんでしょ?きっと大丈夫。ね?今も絶対にヒスイの事を探してくれてる」
「・・・はい゛。は、ぃ・・・う、あ・・・・・・・・・あ゛ぁぁぁぁぁ!」
二人に抱き抱えられたまま、泣いて、その日はそのまま意識を失った。
補足です。
攫われて1月とちょっとくらいとヒスイは認識してますが、実際には2か月くらい経ってます。寝込んでた間はカウント出来てないので。
さて、2か月ほど気丈に精神を保ってましたが、まぁ普通檻の中に2か月とか精神病みますからね。それと、檻の中の描写はそこそこ控えてますが、まぁそこそこ不衛生と思ってください。ポーションで逐一キレイにはしてても、檻から出れないんじゃ汚れるのはしょうがないですから、ねぇ?
次回まで、しばしお待ちをば。




