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3-1:油断した頃にソイツはやって来る

いつも読んでくださり、ありがとうございます。


あともう一話今日は上げます。

3-1



秋も深まる今日この頃。ベイジ村と我が家の庭では収穫が行われた。さすがに俺も我が家の収穫は手伝いましたとも。あ、そういえば栽培してた例の異世界産のニンニクとショウガは無事に育ちました。なんか3か月弱くらいで育った。本当に大丈夫か、この植物?ま、まぁ、一応食っても体を壊すことは今のところないし?問題はない、はず。


森の方も常緑樹以外はすっかり黄色や赤に色付いている。それとクラッドの街の鍛冶工房に依頼していた品物も納品された。希望通りの湯たんぽと卸し金に、ホットサンドメーカーだ。さすがに遠心機は手回し式の原始的な構造であっても少し時間が欲しいとのことらしい。受け取りに行ったとき、工房の人たち総出で跪いて謝罪されたときはビビった。まだ完成してないことを謝罪されたんだけど、むしろ時間は掛けてでもしっかりしたものを完成させてほしいので、来年でもいいですよって言っておいた。


ついでに改良も可能であればして欲しいと言っておきましたとも。あ、でも絶対じゃないですとも、ちゃんと言いました。なんでそんな事言ったのかと言えば、「改良してもいいですよ」っていうのは、「改良しろや。でないと分かるな?」的なニュアンスで受け取られることもあるらしいって師匠に聞いたからである。そういう言外の意味はないんだけど、貴族とのやり取りでは警戒しないといけないらしいから、ああいう平民だけの工房だとそういうのも警戒しないと生き残っていけないんだとさ。めんどくせー。こちとらナチュラルボーン平民なんですがね。


とにかく、これで冬に凍えまくるって心配はなさそう。因みに、師匠は去年の冬どうやって乗り越えたんですかって聞いてみた。そうしたら、


「竈に火魔法で火を入れ続けて暖を取ったわい。ベッドも移動してくればそのまま寝られるしの」


ってな具合でした。なんか前世で、暖房とかが効いてるところの目の前に布団を引きずってきてそこで寝る引き籠りのクソ野郎を思い出してしまった。アイツちゃんと就職したんかな?まぁ今はいいや。


師匠には「それだと私、凍死します」って言ってクラッドの街で厚手の布団と羊毛(?)の毛布もどきを購入してもらいました。何で「毛布もどき」かって言うと前世で一般普及しているような奴じゃなくて、なんかセーターをそのまま一枚布にしました、みたいな感じだったからです。まぁコレはコレでふかふかしてるから良いんだけどさ。温かそうだし。布の織り方なんか知らないから、作り方分かんないし、今までどのサイトを見てもイマイチちんぷんかんぷんだから、どうにもなんない。俺の裁縫スキルはボタンを留めて、ちょいちょい裾を縫うくらいが限界です。俺みたいななんちゃって幼女に女子力を求めてはいけない。


で、ベイジ村の方ではモッツァレラチーズの改良が進んで、裂けるチーズも出来た。なんか何回も伸ばして重ねてを繰り返すと出来ますよって師匠経由で伝えたらご婦人方が作ってくれました。それにより高まるチーズ需要。来年は街でも売れるようにしたりして、家畜舎の増築もして牛とか鶏とか増やすように計画中なんだと。


あとリコッタチーズはバター代わりみたいな感じで使われることが多いみたい。パンに付けたりとかね。さすがにバターみたいにフライパンに油を引く用には使えないけど、それでも食生活はグンと良くなった。


と、まぁこんな感じに色々と技術を伝播しつつ、村や街で改良をしてもらって、俺自身は師匠との修行の日々っていう割かし忙しい毎日を送ってたんだけど・・・今現在俺の身には危機が迫っている。


俺の現在地は自宅の裏に設置されている倉庫の中。倉庫の扉の隙間には土を詰めて『固定化』で動かないようにしてある。そう、今俺は潜伏&籠城中なのである。何でかって?それは今の俺の現在の状態が原因なんだ。


・ヒスイ・ドミナンス(4歳)

Lv:1

種族:人間

性別:女

状態:虫歯(軽微)

HP:19

MP:211

Atk:4

Def:6

Int:80

Mnd:121


スキル:

『ネットワーク』

『鑑定』

『危機察知』

『物理補正』

『魔法補正』

『成長補正』

『薬生成』

『魔法:火』

『魔法:水』

『魔法:風』

『魔法:地』

『魔法:治癒』


しれっと『薬生成』を追加してるけど、例のポーションの検証で聞きたいことがあったから隠しておくわけにもいかなかったので、『偽装』で書き換えた。まぁそれに関しては今はいいや。問題はコレだ。『状態:虫歯(軽微)』


一応この世界にも歯磨きの概念はちゃんとあって、ガシュの木という木の枝先の皮を剥がして、中の繊維を噛みながらほぐす感じで使う。一応これで歯垢とかは除去できてるみたいで、磨いた後はスッキリする。と言っても、今の俺の顎の力は弱いからほぐすのに時間が掛かるもんだからメンド臭くなって、適当にやってた。で、今の状態になったんだと思う。


それでこの状態異常が、ね。師匠にバレたんだ、今朝。普通に朝飯食ってたら「痛っ」って歯が痛んで、ついつい手で押さえちゃったんだよね。したら師匠が勝手に鑑定したらしくて、「虫歯になっとるぞ」って宣告されました。そして師匠が「糸はどこにあったかの?」とか言って自室に戻った隙に逃げ出したってわけだ。


虫歯と糸の組み合わせと言えば、俺の考えが間違ってなければアレですよね?無理やり引っこ抜くあのクソったれ民間療法。


い、いやいやいやいや!!アレめっちゃ痛いから絶対ヤダ!!で、逃げ出したはいいけど我が家の敷地外は相変わらず3mの岩壁で囲われてて逃げ出せない!ちくしょー!あ、いや?『落とし穴』で穴を開ければいけるか?まぁそれは最終手段だな。なんか、俺の『落とし穴』って対象が岩か土だったら何でも穴を開けられるらしい。んー、『落とし穴』って魔法名を改訂した方がいいかね?


と、そんなことはさて置いて。庭には隠れ場所なんか皆無である。最終的に消去法で庭の裏の倉庫に避難したってわけだ。取り敢えず籠城するにしても師匠の事だから扉の『固定化』してある土なんか速攻壊されるはず。こうなると、自分で虫歯を治療するしかない。どうやって?治癒魔法は相変わらず『止血』以来新しい魔法は覚えてない。なんか病気に効くような魔法でも覚えられりゃ良いんだけどねぇ。


ってなると残る希望は『薬生成』になる。自分自身でスキル検証してから師匠にスキルの上げ方を聞いたんだけど、予想通り上げたいスキルをひたすら使うしかないんだと。なので毎日ポーションを作りまくった。溜めておくビンとかは無いから、一部は畑にやるとか、あとはその辺に人間スプリンクラーとして撒き散らしました。なんかポーションは動物も植物も摂取し過ぎると弊害が起きるらしいから、ほどほどの量しか撒いてないけどね。


で、それでスキルを上げ続けたら、数種類のポーションを作れるようになって、その中にこんなものが出てきたんだよね。


ステリポーション:MP420


『ステリ』ってことは殺菌してくれるポーションってことだよね?ステリ『された』じゃなくて、ステリ『する』って信じていいよね!?『薬生成』の画面上で鑑定が出来ればそれが一番早いんだけど、そう上手くはいかないらしい。いやもしかしたら『鑑定』のスキルレベルを上げれば何とかなるかもしれんけど。取り敢えず滅菌してくれるポーションとして話を進めよう。


虫歯も言ってしまえば菌の繁殖によって歯が溶かされてしまう病気だから、滅菌してその後再生させれば何とかなるはずなんだよね。調べてみたら、ドリルで削らず治す方法っていう記事を見かけたから、間違いはないはず。ステリポーションで滅菌して、その後適当なポーションで歯を再生させる。これでいけるはず。あ、因みにポーションの類は動物相手に使う分には即効性があって、ケガとかもすぐ治るらしい。そこら辺に関しては師匠から授業を受けたんだけど、今は置いておこう。


ただ問題はこのポーションの要求されるMPが多すぎってこと。俺のMPの最大値は211。二倍近くMPを増やさなきゃ作ることが出来ない。こうなると今まで師匠に禁止されてたけど、戦闘を解禁してもらって、レベリングするしかない!師匠と一緒に居たらパワーレベリングとかで都合よくMPが増えたりするかもしれないし。


・・・あの師匠が許可出すかね?あの過保護な師匠が。なんかそれ言った瞬間に問答無用で歯を抜かれそうな気がする。じゃあ脱走して勝手にレベリングする?でも、俺が転生した初日に出会った魔獣とかのレベルの奴が来たら軽く死ねるよね。ってなるとソロでレベリングは無しだな。今の俺には相変わらず攻撃魔法がないんだし。攻撃手段ならあるけどさ。まぁ、その攻撃手段も結局は諸刃の剣ではあるから、一人で戦うって選択肢は取れない。


んー、やっぱり師匠を何とかして説得する方法を考えよう。つっても問答無用で歯を抜かれない様に注意しないといけない。師匠の化け物ステータスで口を無理矢理こじ開けられたら最悪のパターンになる。さて、そうならない様に作戦を練らないと--


ガチャガチャ・・・


「む、やはりここか。ヒスイ、ここを開けなさい」


げぇ!もうバレた!いやまぁ、隠れる場所なんかこの家ここくらいしかないから、すぐバレるとは思ってたけども。でも、どうやって説得するかまだ考え中なんだよ!えーと、取り敢えず師匠が問答無用で歯を抜いてくるのを避ける対策を・・・


「おじい様、さっき糸を探しに行ってましたけど、その糸で何をするつもりですか?虫歯を抜くとかなら、開けません」


「しかしそのままでは今より酷くなるぞ?それにお前さんはポーションを作れるんじゃから、すぐ治せるじゃろ?」


「やっぱり抜くつもりなんですね!痛いのはイヤです!!断固拒否!!」


「もっと痛くなると言っておろうに」


「嫌なものはイヤです!そもそも虫歯だって細菌とかの微生物が原因ですから滅菌して溶かされたところをポーションで再生するのが一番負担が少ないです!『薬生成』の中にそういうポーションが作成可能って出てきたので、それで治します!」


「ならば、それで早く治してここを開けなさい」


声色的に師匠がイラつき始めてるのが分かる。が、俺も引けない。


「今すぐは無理です。必要なMPが足りないので」


「よし、今すぐ出てきなさい。一瞬で抜いてやろう」


「イーヤーでーすーー!!レベルを上げてMPを増やせば何とかなるんですよ!!だから、おじい様は私のレベリングを手伝ってください!!」


「それは戦うという事か?何度も言うが、危険じゃと--」


「自分の身を守る力がない方が危険です!おじい様がもし側に居ないときに危険な目に遭ったらどうするんですか!?今の貧弱ステータスな私だとどんな攻撃であっても一撃で死ぬ自信があります!!」


「・・・儂がお前さんの側を離れることは無いであろうし、そういった脅威から遠ざけるようにしておる」


「将来的には分からないじゃないですか!それにいつも一緒に居られるわけではないじゃないですか!私が成長した後もずっと一緒に居るつもりですか!?」


「大事な孫を手放すつもりはないぞ?安心せい」


違う、そうじゃない!!あー・・・この言い訳だけは使いたくはなかった!!ちくしょー!!


「そうじゃなくって!えっと例えばですけど・・・今はお風呂とか色々一緒ですけど、成長したらそういうのは出来ないって言っているんです!!そういう時に何か危険があったら対応できないじゃないですか!乙女の入浴を覗くつもりですか!?」


「・・・孫娘の入浴中に襲撃しようなどとする愚か者は一族郎党もろとも消し飛ばすので安心しなさい」


「物騒すぎます!あーもう!そうじゃなくって、何かあっても対応できるようにしておかないと、色々と危ないかもしれないじゃないですか!!今のステータスじゃ自分の身を守る事だってできないのに!」


こっちが引くつもりがないって察したのか、静かになった。なんかボソッと「色々?」とか聞こえた気がするけど、そこは拾わなくていい!いや、ホントこの世界って何があるのかまだ分からないから、色んな状況に備えておきたいんですよ!自分の身一つで対応できることは増やしておいた方が良いに決まっているし。前世でも入浴中に襲撃されてるとか殺害されてるってドラマとか映画があったし!


「おじい様が協力してくれなくても、最悪壁に『落とし穴』で穴を開けて一人で魔獣狩りに行きますからね!!」


「また、何という脅しをするか、このバカ娘は・・・はぁ、分かった。取り敢えず出てきなさい」


「不意打ちでやっぱり歯を抜いたりしません?」


「あぁ、しないと約束しよう」


まぁ、ここで師匠の言葉全てを鵜呑みにするのは怖いので、一応保険として倉庫に置いてあった布切れを口に当てて、解いた腰紐で顔に固定する。うえ、若干ホコリとかび臭い・・・不格好だけど簡易版マスクの完成である。これで少しはマスクを退かすタイムラグが出来るから、歯を抜かれる心配が少しは減る。


と、ここで俺は一つ問題点がある事に気付いた。いや、ね?扉の隙間に土を詰めて『固定化』掛けてコンクリもどきみたいにしてるんだけど、どうやって外に出よう?


俺の『固定化』は固めるだけ。一回固めたらそのまま持続してくれる。じゃないとプールの壁面なんか作れなかったしね。で、何が問題かって?解除ができないんだよ。これは・・・やらかした。い、いや、仕方ないんだ!!歯を抜かれるなんて恐怖を前にしたら、こうなるって!とにかく身の安全を優先していたので、しょうがない!


「ところで、師匠。土を固定しちゃって開けられないので、出してくれませんか?」


「・・・・・・」


外から呆れられる気配を感じたが、最終的に倉庫の壁の板を一枚外して出してくれました。取り敢えず、交渉は成功した。よし、虫歯を治すためにも、魔獣狩りじゃー!!


入浴中とかトイレの時とかに襲撃される映画とかトラウマものです。


ス〇ザーとか。そもそもホラーとかパニックものキライ・・・

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