2-10:揚げ物完成!
襲撃されましたが、最終兵器ジジイが居るので戦闘にすらなりませんw
2-10
俺と師匠が襲撃されてから、師匠の上空に放った火球を見て駆け付けたであろう兵士が現れた。師匠は岩壁を消してガラの悪いオッサン達を兵士に拘束させてた。どうやら、岩壁で囲った中で水魔法を使って溺れさせてたらしい。えげつない。どうやって離れたところに術式を飛ばしたのか疑問だったけど、地面に『魔力線』を潜り込ませて使ってたんだと。
さてここでちょっと魔法関連のおさらいである。『魔力線』--師匠が開発した魔法技術らしくって、普段体内を巡っている魔力を、体の外に放出し、具現化、固定化して操る術らしい。前に習った遠隔術式の一つである即応型遠隔術式ってやつを発動させる必須技術なんだけど、これがムズイのなんの・・・
まず、術式を通して現象を起こすっていう普通の魔法のプロセスを挟まずに魔力を体の外に放出させるのが少しコツがいる。多すぎると、衝撃波みたいになるし少量過ぎるとすぐに霧散する。この多すぎると発生する衝撃波が厄介で、聞いただけなら攻撃手段としても使えそうなんだけど、これ自爆技なんだよね。
確かに相手は吹っ飛ばせる。けど、例えば自分の手から発生させようとすると、自分の手も吹っ飛びます。あ、千切れたりはしない。強過ぎたら千切れるかもしんないけど。ただ、俺がやった時は、俺の踏ん張りが効かなくって、後方にすごい勢いで吹っ飛ばされました。体重が軽くなってるから、こういう事すると吹っ飛びやすいんだよね。おもっくそ後頭部をぶつけましたとも。そんでもって、腕が衝撃を受けたもんだから、肩を脱臼しました。もうやりたくねー。
仮にコントロールしてちゃんと体の外に出せたとしても霧散しそうになる魔力を押し留めないといけない。さらにそれを操って伸ばして、術式の形にして固定する。もう、めっちゃムズイです。今のところ適当にお絵かき遊びする用にしか使ってないです。と、今はその話はいいか。
とにかくガラの悪いオッサン達を兵士に渡して、俺と師匠は兵舎の方に案内された。一応事情聴取が必要らしい。あと、師匠がこの街に入るときに使ってる小さい金属板を見せて、兵士に何か指図をしていた。面倒になるからここの子爵には、黙っておけだのどーだの。あんな火球を爆発させといて、どう言い訳するんだろうね?兵士の人が胃の痛そうな顔をしてたのが印象的でした。なんか、ウチの師匠がごめんなさい・・・
「では、そのように。しかし、あのゴロツキ共の尋問に協力いただけないでしょうか。魔法士が居るとなれば、抵抗の気も失せるでしょう」
「じゃが子供に見せるわけにも、いかんじゃろう」
「はい。ですので、お嬢様の方はこちらの者達が責任をもって警護いたします」
「ふむ・・・しかし--」
「私は大丈夫ですから、行ってきてください」
「ぬ?じゃがのう・・・」
「大丈夫、ですから!ほら、これもお仕事ですよね?はやく行ってきてください」
グイグイと師匠の後ろから足を押して行かせようとする。事情聴取が終わんないと帰れないんだから、早く行ってくれ!にしても、いくら押してもビクともしないな。このステータスお化けめ!!
「あー、わかったわかった。では、大人しく待っておれよ?」
「はい」
「それとそこな兵士共よ、分かっておるな?」
師匠がにらみを利かせると、俺を警護する予定らしい兵士たちが一斉に右手の拳を心臓辺りに打ち付ける様にした恰好を取る。あ、それが敬礼なんですね。そして、兵士一同が若干ビビっているのが嫌でも分かった。あー、もう、この師匠は・・・
「「「「は、はっ!」」」」
「もー、師匠!!」
ってなわけで事情聴取と同時に、拘束した連中を尋問するために師匠も同席するそうだ。子供には見せられないって事で、俺は一人個室で待たされることになった。扉の外には護衛の兵士が立って、中にも扉の側で兵士が見張っている。なんかかなり厳重に警護されとります。だからメチャクチャ居心地が悪いです。なるべく目を合わせないようにしてるんだけど、向こうはコッチをずっと見てるわけで・・・視線がきついです。
いや、まぁ貴族位を持つ師匠に睨まれちゃしょうがないのか。なんか、ホントすみません・・・
暇でしょうがないので、『ネットワーク』で動画を適当に再生しつつ『魔力線』で宙にお絵かきしながら時間を潰す。以前師匠が宙に文字を書いたのは、この『魔力線』を使って書いていたらしい。俺が出来るのは一筆書きのものだけだけど。ちゃんとした単語を描くためには、
一文字書く→『魔力線』を固定→『魔力線』を切り離して維持→一文字書く→『魔力線』を固定→『魔力線』を切り離して維持→一文字書く→・・・
ってプロセスを繰り返さないといけない。すっごい集中力が必要で、一文字すら成功した試しがないです。
うん、さっきも言ったけど、俺はまだまだ宙に留めて維持しておけるほど魔力をコントロールしきれてないんだ。だから一筆書きで適当に線を描くだけ。まぁ、これはこれで暇潰しにはなるんだけどさ。んー、人差し指だけじゃなくて他の複数の指でも同時に試してみる。順々に2本、3本って試してみて、最終的に4本まで同時に出せた。スイーと4本同時に『魔力線』を引いてみる。集中を欠くと速攻で霧散するけど、1本でやるより明るくなってキレイである。両手でも、できないかね?
んんん~~~・・・無理だ。両手で4本ずつ出すのはキツイ。2本ずつならいけたから、結局計4本だね。これがちゃんと宙に固定できれば、罠とかにも使えるらしいんだけど、今の俺には無理だ。俺の宙に描いた『魔力線』は触ったら霧散する。取り敢えず師匠が迎えに来るまでそんな感じで暇潰しをしておりました。
--☆
「・・・なぁ、あの子供がやってたの見たか?」
「・・・なんか光りを出してたな」
「あれってたしか、その辺の魔法使いが使えるレベルのものじゃなかったはずだよな?」
「そうだな」
「4本、出してたな」
「出してたな」
「・・・末恐ろしいな」
「そうだなー」
--☆
さて、襲撃があった訳だけど、普通に昼飯時で腹が減ったので、予定通り紙工房で紙を購入して食堂に向かいました。え、暢気すぎじゃないか?いや生きてりゃ腹が減るのは自然の摂理だし、襲撃って言ってもなんか師匠が瞬殺しちゃったから、そんな感じがしないんだよね。
ついでに師匠に油を吸収する紙を作ってもらえるよう依頼してって頼んでおきました。クッキングペーパー欲しいです。今回は目が粗い紙を複数枚重ねて代用する。まぁ、そのままよりはマシだろう。多分、今の体で脂っこいものを大量摂取すると吐きそうだし。
で、到着したのは以前も来た食堂。扉を開けて入ってきた俺と師匠の顔を見て、ギョッとした顔をしていた店主さんが印象的でした。ちょっとショック。この店主さんの俺のイメージは、恐らく我儘お嬢様とかそんなイメージな気がする。
まぁ、今回は新しい調理法とレシピの下賜って感じなので、歓迎してほしい。とにかく新しい調理法を早速試してもらって新境地を開拓してもらいたい。俺は揚げ物が食べたいのである。
で、交渉に移った訳なんだけど、さすがに俺は厨房に入れてもらえなかった。師匠が教えるって事になったんだけど、師匠だけで大丈夫かな?
「あっづ!」
「あ、油が撥ねてくるのですが!?」
「バカヤロー!火ぃ消せ、火ぃ!!」
「み、水!水をおぉぉ!!」
「も、燃えたあぁぁ!!?」
・・・・・・なんか阿鼻叫喚になってるんですが。やっぱり俺が最初は付いていた方が良いと思うんだよなあ。最初は一緒にやろうとしたんだけど、師匠だけ厨房に入って俺は強制待機ですよ。身の安全も大事だけど、このままじゃ久々のフライ料理を逃してしまう。そうとなれば行動あるのみ。
俺は席を立って厨房に顔を覗かせる。料理人の服が焦げているのと、さっきの会話から推測すると、熱した大量の油に水をブチ込んだっぽい。一番やっちゃいけない奴をやっちゃったかぁ・・・なんか師匠も珍しく落胆してるっぽいし。
「あのー、やっぱり私がやりましょうか?」
「え、あ、いや、しかし、お嬢さんにそれをやらせるわけには・・・」
「・・・いや、もうこの際ヒスイに頼むとしよう、料理長よ。実はこの調理法はヒスイが最初に言い出したことでな。あぁ、このことは他言無用じゃ。でなければ全員燃やすぞ?よいな?」
師匠の脅しに全員がブンブンと頭を縦に振っている。というかなんて物騒な物言いしてるんですか!!俺は若干投げやりになっている師匠のそばまで行って、渾身の力で足をはたく。が、当然0ダメージである。っていうか、むしろ叩いた俺の手の方が痛い。ちくしょうめ!
「もう、師匠!!そんな怖い脅し方しなくったっていいでしょう!!」
「いや、しかしじゃな--」
「分かってます。私を心配しての言葉ですよね?けど、もう少し言い方を考えてあげて下さい!魔法士の師匠に燃やされるとか言われるのは、シャレにならないと思います!」
「う、うぅむ。まぁそうじゃの。料理人たちよ、すまなんだ」
「私からも謝罪します。すみませんでした、皆さん」
「い、いえいえいえいえいえ!!!わ、私共に頭を下げていただく必要などございませんのでぇぇ!!」
ここの料理長と思しき人が額を地面に高速で擦り付ける勢いで下げてきた。あー・・・多分これ以上言葉を交わすのは逆効果になりそうだから、さっさと調理法を教えよう。師匠には他の料理人さんにマヨネーズの作成とハーブドレッシングの作り方をレクチャーしてもらって、俺の方は料理長さんと、プラス1人に揚げ物のやり方を教える。調理台に手が届かないから、椅子を持ってきてもらって、そこに立つ感じで。
あ、当然ベイジ村の二の舞は御免なので、卵は良く殺菌することを伝えておきました。次亜塩素なんか無いから、煮沸消毒しかできないけど、しないよりはよっぽどマシだろうし、今のところベイジ村で再発した人はいないから大丈夫なはず。ちゃんと沸騰したお湯に1分くらい漬けてるし。まぁ、割った時にちょっと白身が固まってることがあるけど・・・取り敢えずこれで、最低限の安全は担保できているはず。
んで、教えにかかり始める。菜箸--というか箸自体がないから、トングで挟んで具材を油に入れる。もちろん、入れる前に、切った具材は水気をよく切って、下味をつけてから衣液に漬けて、パン粉を塗す。重量計がないから目分量ですべて行う。料理長さんたちは・・・悪いけど覚えて。
ジュゴワワと油で揚げると、具材が次々とキツネ色に色付いていく。メインは蛇肉だけど、お店の方で用意できる肉も少し入れている。ただ獣臭いであろう猪肉とかは除外してるけど。あとで臭みを取る方法も教えてあげよう。あと肉を柔らかくする方法とかも。
「こんな感じで揚げるんです。あ、それと肉を油で揚げるときは初めから高温で揚げてください。具材は今回くらいの大きさで切らないと、中まで火が通りませんので注意してください。あと、油が冷めてる時から入れてしまうと、物によりますけど衣、あ、えっと、具材に付けた液が揚がった部分のことを衣って言うんですけど、それが油を吸い過ぎちゃったりするので気を付けてください。で、揚がったやつは、こういう紙なんかに置いておくんです。そうすることで余計な油が落ちてくれるので」
俺の説明にコクコクと頷いてくれる料理長と料理人さん。全部を俺がやっちゃっても良いんだけど、それじゃこの人たちの練習にならないから、やってもらうか。
「じゃあ、やってみてください」
「「え」」
「え?」
二人してアワアワと慌てている様子。いや、見本は見せたし、二人とも頷いてたって事は理解してたって事だよね?ならできるでしょうに。
「あー・・・すまんの。ほれ、ヒスイ。教え終わったのなら席に戻るぞ」
「・・・はーい」
俺は師匠に連れられて厨房を後にする。そして師匠と向かい合う形で席に座る。
「そうムクれるな」
「ムクれてなんかないです」
「・・・はぁ、儂らは教えに来ただけ。そこから先は、あ奴らの領分であり、あの場所はあ奴らの領域じゃ。それに一応の貴族位持ちが厨房に居ることはまずあり得ないし、あのままあそこに留まれば、料理人たちは緊張で料理が出来んじゃろうに」
「・・・師匠は脅してたのにですか?」
「それとこれとは話が別じゃ」
まぁ、分かりますけども。そりゃね、後ろでお偉いさんに見張られながら料理するなんて地獄でしょうよ。でも、何か違うことしちゃう可能性もある訳だし?しっかり見届けたかったなぁ、って思う。
しょうがないので、ここはここの料理人たちを信じて待つとしますかね。一応もう厨房の中から阿鼻叫喚な悲鳴は聞こえない訳だし。
しばらく待っていたら、ようやく料理が出てきた。出てきたのは見た目は完璧なカツだった。調味料に関しては塩と出来たばかりのマヨネーズでいただく。
早速一つを口に運んでみる。ザクッとした歯触りと、口の中で閉じ込められていた肉汁が広がる。蛇肉のカツだから少し警戒していたけど、普通に美味しい。食感は鶏に近いっちゃ近いんだけど、それよりも柔らかい、かな?味もそこまでくどく無くて食べやすい。うん、文句なく美味しい。美味しいんだけど、美味しいんだけど・・・!!
何で、ソースがないんだ!!尚の事欲しくなってしまった。あとやっぱりケチャップも欲しい。ちくしょー、トマトめ!!トマトさえ手に入れば、色々と幅が広がるのに!!
と、側で待機している店員さんが居るんだった。ここで不機嫌な顔をしたら前回の二の舞である。美味しいのは間違いないわけなんだから、笑顔笑顔と。
「とても、美味しいです」
俺のその言葉に店員さんが明らかに安堵の表情を浮かべて、厨房の方からは顔を覗かせていた料理人たちがガッツポーズして喜んでいた。
「うーむ、油で『揚げる』か。焼くのとはまた違った方法にするだけでここまで変わるのか・・・確かにヒスイの言う通り美味いの」
「でも、パン粉を改良すればもっと違った食感、というか美味しくなると思いますよ?今回は時間がないって事で、硬いパンを粉にしましたから」
そうなのだ。本来であれば柔らかい天然酵母で作ったようなパンをパン粉にしたほうが美味しいはずなのだ。今回は時間がなかったので店に置いてあった普通の(?)この世界お馴染みの硬いパンで代用したわけだ。そういや、天然酵母はベイジ村にしか伝えてなかった。うーん、技術拡散って難しいね。
その後、天然酵母の存在や肉を柔らかくしたり、臭みを取る方法なんかを教えてメチャクチャ感謝されました。そういやここ、ステーキ店ちっくなお店だったね。先に肉を柔らかくする方法とかを教えた方が良かったかも。まぁ、このまま研究して美味しくしてくれることを祈る。
流石に今日は疲れたので、もうとっとと帰る。帰って寝る。おやすみなさい。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
・・・休日出勤もうやだ。




