2-7:おのれトマト・・・
諸事情により今日は1話しか更新できないです。大変申し訳ない・・・
2-7
吟遊詩人のヴェントが突撃してきた翌日。俺はいつも通り、午前中魔法の修行である。今日からヴェントに午後は教えないといけないから、本来プールは午後だけの約束だけど、師匠に許可を取ってプールで泳ぎながらの修行になった。ついでに、師匠も誘ってみた。
で、判明した事が一つ。この人、カナヅチでした。ここで揶揄ったり馬鹿にしたら、またプールを埋めるとか言い出しかねないので、俺がレクチャーすることに。と言っても、さすがにいつもの俺の肩くらいまでだと師匠には浅すぎるので、今日はプールに1mほど並々まで水を満たしました。俺はそのままだと頭すら出ないので、プールの端っこの坂にしてあるところで頭を出しつつ師匠の手を取って教えている。
「っは」
「おじい様、そんな感じですー。あとは全体的に体の力を抜けば問題ないと思います」
うん、元々この師匠、運動神経は良いらしくって、割とあっという間にスイスイと泳ぐようになりました。まだ、緊張してるみたいだけどね。で、休憩って事で一旦プールサイド(?)に腰掛けて足を水に漬けながら並んで、畑で取れたスイカを食べています。はい、この世界、スイカがあるみたいです。もう風景が完全に小学生の夏休みを呈してきた。あ、因みに中身の果肉は赤じゃなくて黄色でした。日本にも黄色いのあったな、そういえば。
不満があるとすれば、このスイカそこまで甘くないんだよね。それと前世で目にする大玉じゃなくて、そこそこ小さい。大玉スイカの1/3くらいかな?いや、甘いと言えば甘いよ?ただ、何というか水分を摂る事が目的みたいなフルーツなんだよね。品種改良は出来ればやりたくないんだよなー。結果が分かるのが世代ごとだから時間が掛かるし。
また誰かに教えてやってもらうか?
「それにしても、おじい様。前に水龍を討伐したって言ってましたよね?泳げないのに、水に落ちたらどうしてたんですか?」
「水を操って、水の上に立てばいいじゃろ?」
・・・それ、神の息子のあの人じゃないですかね?試しにやってもらったら、マジでできてました。だから泳げる必要が無かったんだと。そもそも船乗りになる人はこの魔法が使えないとなっちゃいけないって法律らしい。もちろん泳げる人も居るにはいるらしいけど。何じゃそら?って思ったけど、まぁ泳ぐよりは溺れる可能性は低いのか。魔力の続く限りって注意書きが付くけど。
つまり、船乗りの人たちは例外なく一応魔法使いだけらしい。なので、水産物に関しては漁獲高が低くって割高なんだってさ。ここが海からは遠い内陸って言うのもあるけど、水産物の加工食品すら目にしないのはそういう事だったらしい。
「ふむ、確かに泳げると涼しくていいの。しかし、これでは浅いし広げるか」
「ぜひ、そうしてください」
深いプールとか割と好きです。よく4mくらい潜水とかしたわ。懐かしいー。ってなわけで、今日はこのままだけど、プールを広げてくれるらしい。今あるプールをそのままに、拡張してくれるらしい。
「さて、では儂は儂でもう少し泳げるようにするので、ヒスイは『魔鎧』を使いつつ泳いでみよ」
「はい」
ってわけで、『魔鎧』で全身を強化しつつ泳いでみる。脚力も上がるもんだから、結構なスピードが出る。あと足裏に術式を浮かべて、『水』を発動することでスピードアップできないかなー?って思ったけど、足をバタつかせながらだと、ほぼほぼ効果なし。というか、若干の水圧でコントロールがブレてむしろ、スピードダウンした。うーん、そう簡単に上手くいかないか。
そういえば、『そよ風』の方はどういう作用機序なんだろ?周囲の気体を押し出してるのか、それとも空気を生成してるのか?で、試しに水中で使ってみたけど、ブクブクと泡が出たことから、空気を生成してることが分かった。・・・これ、もしかして息継ぎなしで延々と潜っていられるんじゃ?
すぐに顔を上げられるように、足の着くプール端の坂の部分に行って顔だけ水に漬けてブクブクと空気を出し切ってから、自分の口内に術式を浮かべて『そよ風』を発動してみる。お、おぉ。空気がちゃんと出てきてる。勢いもそこまで強くなく・・・って待って!多い多い!
急いで術式を消して魔力を霧散させる。それで空気の生成は止まった。は、肺が破裂するかと思った。ってか、鼻から空気を出せば良かったのか。これでも術式は最小にしたんだけどな。
でも、コツは分かった。早速潜水してみて、泳ぎつつ『そよ風』で空気を生成しつつ息継ぎなしでひたすら泳いでみる。うん、これに『魔鎧』を組み合わせつつだったら問題なく泳げるね。今のこれにプラスで何か発動するとなると、ちょっと難しいかもだけど。
でも、これ地味に楽しい。前世でやったことはないけど、ダイビングでもしている気分かな。魔力は『自己治癒補正』があって回復し続けるから、体力の続く限り泳いでいられる。これ、普通に凄くね?というか、これ陸上でも使える機会あるかも。例えば火災現場的な所とかで。煙を吸い込まず、活動が出来てしまうのでは?周囲の火は『水』で消しつつ、何とかなりそう。いや、消防士になるつもりはないんだけどさ。けど、どんな環境でも動ける奴ってそれだけでアドバンテージ取れるからね。って、お?なんか急に体が浮いて?
ザパッと俺は師匠に水から引き揚げられたみたいだ。
「ヒスイ、息をしておるか!?」
「してますよ?」
「まったく。自ら顔を出してこんかったから、溺れてるのではと思ったわい」
「聞いてください、おじい様!私、水中でずっと泳げる方法を発見しました!」
「はぁ、それは分かった。じゃが、一旦上がれ。体温が随分と下がっておる」
あー、そういえば低体温症のことは考えてなかったね。その辺はこれからの注意すべき部分という事で。と、いうことで!俺はシャチとかイルカばりの潜水能力を手に入れました!今度ゴーグルでも作ってみようかな?
--☆
ヴェントに歌を教えるためにベイジ村に来た。午前中にプールで泳いじゃったから、結構眠い。飛んでる間、師匠に寄っかかって、ちょっとだけ寝たけどさ。ベイジ村に着いても、しばらく起きなかったけども・・・
さて、起きて取り敢えずヴェントに歌を教えることにする。一曲歌い終えて、ヴェントに歌ってもらう。竪琴付きで。さすが本職の吟遊詩人。俺のド素人の主旋律のみから耳コピで弾けるようになっていた。しかも、普通の男性Vcとしては十分に上手い部類に入る。俺よりもよっぽど。これでセンスがあれば完璧ってことか。まぁ、天は二物を与えずって言うからね。いや、才能の塊みたいな人とかも居るけどさ。
「う~~ん、言うことない感じに上手いですね。なんでコレであんな曲しか思い浮かばないんですか?」
「うぐ」
「あ、ごめんなさい」
俺の言葉がヴェントの心を抉る。
「けど、ヒスイの言う通りよね~。私も初めて聞いたとき分かんなかったもん」
後ろからリナに抱きすくめられる。ここは冒険者ギルドのホールである。リナもシーナも昨日、俺が来たのに会いに来なかったのが不満らしい。で、今日もまっすぐ冒険者ギルドに向かうのを発見したらしくって、師匠に抱えられつつ眠っている俺を追って、冒険者ギルドに突撃しに来たらしい。
ただ、今日は二人と遊んでらんない。「私、ヴェントさんに歌を教えなきゃいけないから、遊べないけどいい?」って聞いたら、彼女らの琴線に触れるものがあったらしくって、自分たちもとくっ付いてきたわけだ。
それで教える前にちょっと興味があったから、ヴェントが考えた曲を聞いてみたんだ。そしたら・・・
「クラッドの街は~いい街さ~♪〇〇〇〇(自主規制)~~♪」
センスがないっていうか、うん。人間性を疑った。子供の前で歌う歌詞じゃねー。近くにいたドガルさんと師匠が張り倒してくれたおかげで、リナとシーナへの被害は最小限になったと思う。リナは分からないって顔してたけど、シーナは顔をちょっと赤くしてたから、ちょっとダメージがあったっぽい。俺?俺は意味は分かったけど、ほら。見た目幼女ですから。訳が分かんないって顔をしておきましたが?え、内容?R-18的なナニカだったよ。
「はい、じゃあ次の曲ですね」
「は、はい!お願いします!」
取り敢えず、それから小1時間くらい俺の音楽教室は続いたのであった。
--☆
さて、ヴェントに歌を教え終わった夜。今日も夕飯を食べて風呂の時間まではまったりする。ヴェントに歌を教えるのも良いんだけど、そろそろ新しく何かしらを作りたい。生活の質の向上、これ大事。取り敢えず師匠には便器でも作ってもらおうかな。いい加減和式はキツイ。何となくの形状を伝えるだけで、作ってくれる師匠は流石だと思います。土魔法で岩製の便器だ。排泄物とか色々とくっ付かないように、表面をツルツルにして下さいって、しっかりお願いもした。おかげでもうトイレ行くたびに足が痛くなる事はなくなるはず。あ、俺も水魔法が使えるので、少し前からちゃんと流すようにしました。
それと便座は木製です。岩素材のままだと冷たすぎて、座れないんだよ。うーん、あとはトイレットペーパーが早くできて欲しいところだな。さて、トイレは一旦これでいいや。
さて、本格的に始めようと思っていた調味料作り。調味料も作りたいけど足りないものが多すぎる。例えばソース。玉ねぎやニンジン、はある。リンゴ・・・は見たことないから、ポムの実で代用。トマトも見たことないんだよね。だから自動的にケチャップも諦めざるを得ない。あとショウガも見たことがない。ニンニクもないな。それに砂糖。香辛料関連も軒並みダメ。唯一コショウだけはあるけど、あれって海外からの輸入品らしくって高いんだと。一応、我が家では師匠の財力に物を言わせて買ってあるけどさ。
うがー!あれがない、これがない!今度クラッドの街に連れて行ってもらった時に市場を探してみよう。そうなると、作れそうななんちゃって醤油でも試してみるか・・・
えっとあれってどうやって作るんだっけ?えっと、検索検索と・・・またか!またトマトか!!こんちくしょー!!!何なんだ、あの万能野菜!!調べる調味料という調味料全部に使われてんじゃん!!もういっそ怖いわ!!ちくしょう、トマトめ!!だれか俺にトマトを下さい!!Give me tomato!!
・・・文句を言っても始まらないので、何かしらで代用しよう。要は酸味と、ある程度のアミノ酸?が確保できりゃ良いんだから、何かしらの果物やら野菜で代用で。レーネンの果汁を水で薄めて使うか?ちょっと酸味が強くなるかもしれないけど、何とかなると信じる。あとキノコで出汁を取って旨味成分であるグルタミン酸とかを取るか。けど、それだけだとアミノ酸が足りないよな。大豆も見たことないから、使えないし。
アミノ酸アミノ酸・・・もう肉を使っちゃうか。タンパク質分解すりゃアミノ酸なんだし。肉の煮汁使えば大抵何でも美味しくなるだろうし。あと、糖分はどうしよう?砂糖がないからなぁ。んー、ポムの実を摩り下ろして使ってみるか。あとは塩と酒か。塩はある。酒は、欲を言えば料理酒が欲しいけど、米がないから手に入らないだろうしなぁ。というか、この世界の酒って何があるんだろう?文化圏的には洋酒かね?洋酒だから、ワイン?それともブランデーとか?比較的簡単にできるのはワインだろうけど。師匠は普段酒を飲まないっぽいしなー・・・
よし、取り敢えず師匠に相談である!
「し--おじい様!また新しく調味料を作りたいので、今度トイレットペーパーの完成品を取りに行くときに買い物がしたいです!クラッドの街って結構大きかったですし、市場も多分大きいですよね!?」
「クラッドの街の市場か。まぁ、ベイジ村よりは遥かに大きいじゃろうが・・・しかし、また何か作るのか?儂としてはマヨネーズで十分なんじゃが」
はい、どうやら師匠はマヨラーになってしまったようです。あれだと野菜が食いやすいって喜んで使ってます。因みに俺はドレッシング派。
「単調な味だけだと飽きます!それと何があるか色々見ておけば、何かの役に立つと思うんです!!だから、買い物に連れてってください!!」
「分かった分かった。まったく、年寄りをこき使いおって」
ブツブツと文句を言ってるけど、言質は取った。よしよし。今度クラッドの街へ行くときは、何が売ってるかの市場調査だ!!
と、そう思っていた時だった。ベイジ村で事件が起きたのは。
いつも読んでいただきありがとうございます。また、寄せられた感想等読ませていただいております。それに関して(?)、次回事件が起きます。
これからもよろしくお願いします。




