1-20:血縁
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1-20
「ヒスイ。儂の孫にならんか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まご。Mago。MAGO。ま、ご。
まご?あ、あぁ、孫?
うんうん孫ね。えっと・・・
孫:孫とは2世代下の子孫の総称。
うん。思わずネットに接続して孫の定義を調べちゃったよ。うん、そのくらい混乱しとります。え、待って正気?師匠は未婚で、奥さんも子供も居ないって聞いている。両親もずっと昔に他界して、血縁者もおらず、天涯孤独らしい。
「えっと、師匠?ずっと一人だった寂しさの弊害で、ついに頭をやられ--ぇだだだだだだあぁぁ!!いだいだいぃ!ごへんははいー!!」
本日二度目の頬引きの刑に遭った。ひどい。
「まだ頭をやられる歳ではないわ。それに魔法使い、取り分け魔力に優れた魔法士は長命じゃ。200年ほど生きた記録もあるわい」
「え、何それ。もうそんなん妖怪じゃないですか」
「よう、か?お前さんは、相変わらず分からん言葉を喋るのう」
「化け物って意味ですよ」
「・・・酷いことを言うのう」
いや、現代の世界でもそんな長命な人聞いたことないですから。えっと、記録上だと・・・あ、118歳ですか。え、魔法士ってその2倍近く生きるの?
「いや、そうじゃなくって!何を言ってるんですか、師匠!?」
「ふむ、イヤか?」
「う・・・えっとそうじゃないんですけど」
う、うーん、冷静に考えると、メリットが多いのは確かなんだよ。今の俺の立場って、弱いんだよね。どういうことかと言うと、今の俺は魔力が高いだけの孤児。一応、国から認められた魔法士の弟子ではあるけれど、血縁と言うわけではない。
つまり、封建社会のこの国で後ろ盾や身元がハッキリしてないということは、まあ『何か』あった時に身を守る術がないわけだ。そう考えると、師匠と血縁関係になっておくのは、自分の身を守るうえで重要になってくる。けども・・・
「養子、じゃなくて孫なんですか?」
「うむ。養子よりもハッキリと血縁であった方が何かと守りやすい。それと、辻褄合わせも考えておる」
「辻褄、ですか?」
「うむ。実は儂には隠し子が居ってな」
「・・・・・・・・・・・・え、えぇぇぇぇ!?」
衝撃的な爆弾発言!!え、ええ!?師匠、あんた子供居ないって言ったじゃん!?え、あれウソ!?
「落ち着け。そしてその隠し子が成長し、死の前に子を産み、その忘れ形見が、ヒスイ、お前さんじゃ」
「・・・へ?」
「という設定にしておく」
「あ、あ~。設定、ね。設定設定・・・ん?あの、師匠。隠し子はウソじゃないんですか?」
「いや、ウソじゃが?儂は今まで結婚もしたことは無いし、子供もおらん。ただ儂は昔、単独で長期間冒険者として活動していたことがあるからの。その時にこさえた子供が居った、という事にしておけば、まぁ・・・疑われることは少ないはずじゃ。因みに隠し子など居ないことは儂の血液魔法で確認済みじゃ」
あぁ、そういえば師匠のスキルの中に『魔法:血』っていうのがあった。あれ、どんな魔法かなー?って興味はあったんだよね。
「儂の血液魔法は自身の血を武器化したり、操ることができる。また、それらを敵の体内に打ち込めば敵の血液をある程度までじゃがコントロールできる。例えば、血の巡りを止めたり、じゃな。使い方としては後者の方が使えるかの。もう無駄に血を流せる歳でもないしの」
え、えげつねえ。っていうか、グロい。え~、そんな恐ろしいタイプの魔法だったんですか?うわぁ・・・
「まぁ、それが表向きに知られておる儂の血液魔法じゃな」
「表向き?」
「うむ。貴族共から狙われると思うて、秘密にしておる術式があっての。一つは範囲内の血縁者の探知能力じゃな。まぁ、これは貴族らの知らなくてもいい事実などを明らかにしかねんので、黙っておる」
「・・・師匠、何でそんな術式覚えちゃったんですか?」
「仕方なかろう。使ってたらふと頭に浮かんだのじゃ。ヒスイ、このことは他言せぬように」
「怖くて言えませんよ」
「よろしい。そして、これが本題じゃが、儂の血液魔法には血縁を自在に偽装できる術式がある」
・・・あー、こっちの方がヤバそう。もう昼ドラ待った無しの展開が出来てしまうやつじゃないですかー、やだー。つまり、あれでしょ?「お前、俺以外の男と・・・!」「違うの!私を信じて!」的な。そして翌日、川には女の遺体が浮いていて・・・みたいなドロドロのB級ドラマが出来ちゃうやつでしょ?こっわ。
「・・・師匠、何でそんな術式覚えちゃったんですか?」
「・・・仕方なかろう。覚えてしまったものは。こちらもふと頭に浮かんだのじゃ」
師匠が目をそらす。まぁ、そりゃね。そうなるっすわ。
「じゃあ、私の名前が変わるって事ですか?」
「まぁ、そうなるの」
そういえば、俺の『偽装』スキルでも名前を変えられなかった。あれは血液魔法じゃないと書き換えができないって事だったのか?んー、取り敢えずどうやって血縁者だってことを偽装するのかは分かった。
ただ、問題はそこじゃなくて、師匠の血縁者・・・孫になるかどうかってところだ。
「・・・師匠はいいんですか?私、師匠に拾われる前の記憶ないですよ?」
この世界では、って注意書きが付くけど。前世はノーカンでお願いします。
「まぁ、儂も考えなく提案をしたわけではない。お前さんを拾って1か月ほどじゃが、お前さんに悪意がないのは良く分かった。小生意気さはあるがの」
「小生意気って・・・私はちゃんと師匠のこと尊敬してますよ?」
「・・・まぁ、深くは突っ込まんでおくが。正直、この前倒れたときに、心配になったのは事実じゃ。儂にとってお前さんは思いの外、特別になっておったようでな」
「え、へ・・・へ~・・・師匠、やっぱり寂しかったんじゃ--ぃだだだだ!」
「そういうところが小生意気じゃというに」
解放された頬を揉んで、痛みを和らげる。
・・・うん、そろそろ話を戻そう。師匠の孫になるのがイヤかと言われれば、別に嫌と言うわけではない。違和感はあるけど。今まで師匠として接してきたからね。それが急に祖父になるんだから。・・・まぁけど、これも自分の身を守るためでもある。うん、そう。自分を守るため!
・・・あーうん、はい。正直に白状しますとですね、気恥ずかしさがあるんだよね。急に呼び方を変えるって、さ。でもそのうち慣れるだろう。・・・慣れるかな?
「呼び方はお祖父ちゃんとかで良いですか?」
「・・・一応、魔法士の孫なので、『おじい様』と呼ぶように」
「師匠が国と関りがあるからですか?」
「まぁ・・・そうじゃの」
「なんですか、今の間は?何か隠し事でもしてるんですか?」
「いや、何でもない。呼び方に関しては、もしかすると儂が懇意にしている貴族には会うこともある可能性があるからの。その時のため、今から慣れてもらう必要があると感じたからじゃ。それより、決まったのなら、さっさと済ましておくかの。早速じゃがヒスイ、術式を施すぞ」
「はい、師匠」
「対外的には、まだ隠しておこうと思うので、『師匠』で構わんが、『おじい様』、じゃ」
「分かりました。えっと・・・おじい、様」
う、うわぉぉあぁぁぁ・・・背筋がむず痒くなる!何ですか、おじい様って!?俺は元々ド庶民なんで、違和感が!い・わ・か・ん・が!!今すぐ転げまわりたい!!
「よし。では少し待て」
師匠はそう言うと、何の前触れもなく指先を光らせる。〇Tかな?その光が刃物状になっていたらしく、躊躇なく掌を軽く切った。切り傷から血がぷっくりと盛り上がって出てくる。で、俺に向けて出血している手をずいと差し出す。っていうか。押し付ける勢いである。
「飲め」
・・・・・・・・・いや、ね。何となく予想はしてましたよ?血液魔法って言うくらいだもんね。けど、いざ現実となるとちょっと、ね。ってか、手から直接ですか?せめて何か他にないですかね?
「・・・あの、直接じゃなくて、一旦指で掬い取ってからでいいですか?あと一滴とかでいいです?」
「うむ、それで構わん」
「では・・・」
ってことで、指で師匠の血を付けて、口へ運・・・うん、ちょっと抵抗感がある。えっと、さっきまで飲んでた白湯はまだ残ってるな。よし、口に入れたらすぐに流し込もう。血の味とか苦手だし。
「あむ・・・っ~~~!!」
速攻で余ってた白湯で流し込みました。やっぱ血の味苦手・・・
鉄臭いし、特有の匂いがあるし。うヴぇぇぇぇ・・・
「ヴぇえぇぇ~~・・・」
「はぁ、少しは我慢せい」
「・・・吐かないだけ、十分我慢してると思います」
師匠を軽くにらんでみるが、師匠はどこ吹く風である。
こちとら吸血鬼じゃないんだぞ!まったく!いきなり見た目幼女の子供に自分の血を飲めとか言っちゃう師匠は、こんなんだから結婚できなかったんだと思います!!デリカシーって言葉を学んでください!え、俺?俺は良いんですよ。ほら、見た目だけとはいえ、幼女だから。子供ですから!・・・はい、以後気を付けます。
「ふむ・・・コレでよし。ヒスイ、自分の状態を鑑定で見てみよ」
「うぅ、はい」
・ヒスイ・ドミナンス(4歳)
Lv:1
種族:人間
性別:女
状態:正常
HP:19
MP:211
Atk:4
Def:6
Int:80
Mnd:121
スキル:
『ネットワーク』
『鑑定』
『危機察知』
『物理補正』
『魔法補正』
『成長補正』
『魔法:火』
『魔法:水』
『魔法:治癒』
確かに、名前にファミリーネームがくっ付いている。なんか、苗字というかファミリーネームが変わるのは、なんというか・・・う、う~ん?まぁ、そのうち慣れると信じて。
「ヒスイ・ドミナンス、ですか」
「不満か?」
「・・・いいえ、ちょっと慣れないだけです。えっと・・・じゃあこれからも、よろしくお願いしますね、おじい様」
俺がそう言うと、師匠は鷹揚に頷くのだった。
・・・内心語るときはまだ師匠呼びでお願いします。
慣れるまででいいので!
と、いうわけで孫になりましたとさ。
あと1話挟んで、次章に移る予定です。
目がかゆいのが花粉なのか、PC作業が多いせいなのか分からなくなってきた・・・(両方か)




