桜の下で-参-
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新しいクラスでの席も窓際で遥と海とも席が離れてしまい少し残念に思う真司。
しかし、海は水鈴の後ろの席で嬉しいのか、それが物凄く顔に出ていた。
全力で尻尾を振っているのが見えるぐらいだ。
「ははっ」
思わず笑いが口からこぼれてしまう。
遥の席は扉から三列目の後ろの席なので、海と真司の姿も見える。後ろ姿でもわかるぐらい喜んでいる海に半場呆れ顔になるが、真司が海を見て笑う姿を見ると、自然と遥の顔にも笑みが浮かんでいた。
――ガラッ。
教室の扉を開けて誰かが入って来る。
「おーい。全員、席につけよ〜。って、お、おう……もう座ってんの? 偉いなぁ」
「先生が遅いねんって。遅刻やぞ」
「そうそう〜」
「あ〜……マジかぁ。すまんすまん」
何とも気だるそうに頭を掻くこの人物こそ、このクラスの担任である白石稔。
教科担当は古典。本人曰く、歴史も好きらしい。
ワイシャツを第一ボタンまで外し、暑い日は腕まくりする。それに加え、寝癖なのか癖毛なのかわからないボサボサの髪。顎髭は生え、正直、とても残念な姿だ。
そして、この見た目通り、いつも気だるい感じでやって来るのが、この白石稔である。
「え〜、まぁ、このクラスの担任になった白石稔です。一年間、よろしくな」
二カッと笑う稔。いつも、気だるそうだが、やる時は真面目にやる人間でフレンドリーな感じなので生徒にも良い印象を与えていた。
「まぁ、先生は何もしねーもんな」
「うちらが、しっかりせなあかんし」
「そうそう」
「先生が担任って、寧ろ不安やな」
「おいおい。お前ら酷いこと言うな〜。泣くぞ? 泣いちゃうぞ?」
「あはははっ」とクラスに笑いが溢れる。
(この先生のことはよく知らないけれど、良いクラスになりそう)
真司もクラスの雰囲気に釣られて一緒に笑う。
新しい一年がどうなるのか全くわからないが、真司はまだ見ぬ未来にウキウキしていたのだった。




