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七聖の王と悪戯好きな魔王  作者: 秋野 紅葉
欲張りなお姫様
12/71

お茶会

「で、なんで牢屋の中なんだ?」


「クロノス様が元魔王とか言うからですよ」


ここは城の地下1階、最奥の牢屋の中。

暗く、外部の音は何も聞こえない


「しっかしマーモもひどいよなぁ。こいつらを捕えろとか言って」

「それを止めようと刀を抜く瞬間に抑えたのはだれですか」

「俺でーす」


はぁ、


二人でため息をつく。


「どうする?飽きたしそろそろ出る?」

「クロノス様の気が済んだなら」


——ガガッ


大きな扉が開く。

「クロノス?」


マーモが覗き込むように顔を出した。

「あぁ、マーモ丁度よかった。俺たちそろそろ行くね」

「は?」


——ッカーン


音を立て二人は同時に四肢に繋がれた鎖を切った

「もうなんでもありですわね。そんな事をしなくても出してあげますのに?」

「そうなの?」

「えぇ、勿論そちらの女狐も」

「クロノス様あいつ殺したい」

「口調が堅いと本当に怖いからやめなさい」


3人は長い階段を昇りながら話し続ける

「で、貴方がゲーテという証拠は?」

「ない」

「クロノス様問題です。彼女達が倒した偽物の魔王は誰でしょう?」

「ん?ヴァンパイア」

「はぁ、わかりました。信じますわ」

「おぉ、そうか」

「で、あの日貴方は何処で何をしてらしたのですか?」

「地下で本読んでた」

「は……?」


——コホンッ

「ジン?でしたわね、貴女は?」

「本を読むクロノス様を見つめていました」

「え……?」


「こんなのに何年も苦しめられてたかと思うと頭が痛いですわ」

「それに関しては実感がないが謝る。すまない」

「実感がない!?あれだけの虐殺を繰り返して?」

「マーモ様、そのお話は事実でございます。クロノス様は魔物に飾りの王として扱われていたのですから」

「最終決定はしていたから同罪だよ」

「話しが見えませんわね。さ、着きましたわよ」


城の廊下を歩き続けて、白い扉の前に辿り着いた

中に入ると、

「ここマーモと俺が初めて会った場所だ」

「そうですわ、私の部屋でございます」

「へー、いい部屋だな」

「あんな城にいた魔王に言われたくありませんわ」

「ほぅ、我らが城の偉大さに気付いているとはマーモ様中々見る目がありますね」

「まぁ、あの時は戦いに必死でしっかりとは見ていませんが」

「あの荒れ具合だと相当なものだったんだろうな」

「そうですわね。少し腑に落ちませんでしたけど……」

「いえ、もっと強いものかと。クロノスが出てきていたら納得は出来ますが」

「ヴァンパイアは?あいつ一応ヴァンパイアロードっていう上位種なんだが」

「厄介ではありましたが、こちらにはレヴィアちゃんがいましたので」

「そう!そいつ、一度戦ってみたいなー」

「クロノス様が負ける筈がありません」

「恐らく決着がつく前に大陸が壊れますわ」


真面目な顔でマーモが言う

「それは面白い。でもそれは困るな、もう滅ぼしたり、壊したりはしたくないんだ」

「どうしてですの?」

「飽きたから」

「は?」


「ジン?クロノスはいつもこうですの?」

「はい、クロノス様はクロード大陸から一歩も出たことがありませんでしたので、知識は多くの書籍で培ったものしかございません」

「少しずつ理解出来てきたわ。でわ、魔法は?」

「んー、城の魔導書を読んで覚えた」

「なっ!?今自分で何を言ったかわかってますの!?」

「事実を言った」

「ですね」

「上位魔法を使える者すらこの世界で一握り、最上位なんて片手で数えられますわ!」

「マーモも使ってたよね?」

「あれは……レヴィアちゃんに弾丸を作ってもらいましたの」


——ヴヴヴッ


空間に裂け目が出来て中から少女が出てきた


「呼んだ~?」

「あら、レヴィアちゃんお久しぶりですのー」

「マーちゃん暑いよ~」

マーモの双丘に埋もれたレヴィアがなんとか声を出した。


「あら、ごめんなさい」

「いいな、それ。気持ちよさそうだ」

「苦しいけど気持ちいいよ~?」

「クロノスが望むなら……」

マーモがもじもじしている

「クロノス様!あんなはしたないものより、私の足はいかがでしょう!自分で言うのもなんですが——」

「ほんと~。スベスベ~」

「なっ!?」

レヴィアがジンの着物から覗く足に頬ずりをしている。

「えぇいっ!やめぬか!」

「え~」

レヴィアが涙ぐんでいる

「ほら、おいで。膝に乗せてあげよう」

「わ~い」

レヴィアがクロノスの膝に乗った


なんなのだ……?これは

こいつ、侮れない!

マーモとジンが初めてアイコンタクトを交わした瞬間であった


「で、お兄ちゃんがゲーテ?」

「間違っちゃいないが、名はクロノスだ」

「確かに~。ゲーテは人間が勝手につけた名前だもんね~。じゃあクロちゃんって呼ぶね~」

「あぁ、なんでもいいぞ」

そう言ってクロノスはレヴィアの綺麗な髪を撫でた

「で~、1週間前にクロちゃんにマーちゃんは負けたんだよね~」

「ぐっ」

「で~、代わりに仕返しして欲しくて呼んだの~?」

「いいえ、クロノスが本物の魔王かどうか見てほしくて……」

「う~ん、間違いないと思うよ?夜叉も連れてるし、そこの夜叉のお姉ちゃんも相当強いよね~」

「夜叉!?ジン、貴女魔物だったんですの!?」

「種族で言うなら」

「ジャンルでゆ~なら~」

「あぁ、夜叉だし魔物だ」


「3人揃ってからかってますの?」

『さぁ?』

ジン、レヴィア、クロノスが首をかしげて言った


「レヴィアちゃんが混ざって悪化しましたわぁ~」

少しマーモが涙目になっている


「悪かったよ、騙すつもりはなかった。ジンは魔物である前に大切な『仲間』だからな」

「今、仲間が強調されたような……」

「お姉ちゃん……ドンマイ?」

「レヴィア様、どうぞこちらへ」


——ひしっ


何故かジンと膝に乗ったレヴィアが抱き合っている

「はぁ、私もジンにはもう偏見では説明できない思いはありますのでかまいませんわ」

「おぉ!わかってくれるか、マーモ!」

「え、えぇ……どうしましたの?」

「友情!あはっ」

屈託のない笑顔で言った


「もしかしてクロノスって……馬鹿ですの?」

「恐れながら……」

「だねぇ~」


「え?なんだって?」

『何も』

こちらも三人揃った


「で、レヴィアちゃん。このことはどうします?」

「レヴィは~心配ないと思うよ?レヴィはクロちゃん悪い人に見えないし~」

「なら、聖王の間には……」

「もう行ってきたよ~?マーちゃんの所が最後~。でも、アルスの所は行ってない~」

「まだ喧嘩してますの?」

「毎日のように天使が襲ってくるよ~?」

「ちょっ、大丈夫ですの!?」

「問題ないよ~。いい暇つぶし~」

「まぁ私たちに2人を止められるとは思いませんしね……」

「そのアルスって奴も強いのか?」

「えぇ、一言で言うなら『最悪』ね」

「めんどくさいよね~」

「いくら聖王とはいえ、こんなに小さくて可愛い子にっ……」

「お姉ちゃん、レヴィのこと心配してくれてるの~?ありがと~」

何とも言い難い笑顔でレヴィアをジンが可愛がり出した


「で、皆さんはなんとおっしゃってましたの?」

「ん~とね、ベルちゃんたちは遊びに来てほしいって」

「ベルちゃん?」

「アスティア帝国の聖王ですわ。まったく相変わらず惰性を貪ってるようですわね」

「ルシフは~、手合わせしたいって」

「ルシフ?」

「剣の国の聖王ですわ。まったく戦闘マニアはかわりませんわね」

「サーシャは~……」


「あぁ!?今更魔王だぁ!?かかってこいやぁー!むしろこっちからいってやろうか?あぁ!?何処にいんだよコラッ」


「だってさ~」


ポカーンと時が止まる

「いやいや、止まってませんわ。相変わらず物真似をする時は人が変わりますのね。というか、あの子またトランスしてましたの!?」

「なんかでかい火竜みたいなのと戦ってた~」

「なるほどね……」


マーモは頭を抱えている

「サーシャって?」

「エルフの国の聖王ですわ。戦闘中はキャラが変わりますの。普段は物静かな子なのに」

「まぁ旅をしているんだし、そのうち会えるさ。そう伝えておいてくれ」

「旅~?楽しそう~」

「レヴィアも来るか?」

「そうですねっ!そうしましょう!」

ジンは勢いよく賛成した


「いくぅ~」

「なっ……貴女はいったい——」

「でもねぇ~今は行けないの~。ごめんねぇ~」

「残念だなー」

「残念ですー」

ジンは泣きそうになっている


「でも~、全部お仕事終わったら合流するねぇ~。えぇ~っと~、クロちゃんアストラルゲート使える~?」

「あぁ」

「じゃあ~これに使ってぇ~」

レヴィアは掌に収まるほどの大きさの水晶を取り出した

「じゃあ——」

空間系上位魔法『アストラルゲート』

水晶のある場所の別次元にある熱源に触れた

「これでいいのか?」

「うん、これでクロちゃんのマナ覚えたからいつでも会いに行けるよぉ~」

「すごいな」

「そ~お?クロちゃんでも出来そうなのにぃ~」

「そのうち試してみるよ」

「じゃあそろそろ行くねぇ~。クロちゃん」

そう言って手を広げてきたので、膝に乗るのかと手を伸ばすクロノス

すると——


——っ


手を伸ばした隙に抱き着きクロノスに口づけをした。


「またね~、マーちゃん、夜叉のお姉ちゃん、クロちゃん……大好きっ」

そう言うと空間の裂け目に消えた


ひょいっ

「クロちゃ~ん、浮気はめっ!だよ~?」

顔だけ出して、そう言うと光を失くした瞳でふふっと笑い、いなくなった


やはり、侮れない……


マーモとジンは顔を見合わせた


「ははっ、流石に今のは驚いたよ」

「私も」

「私もですわ」


「そろそろ夜も更けてきましたし、食事にしましょう。今晩はここに泊まるといいですわ。あ、ジンは隣に部屋を用意しておりますわ」

「は?今なんとおっしゃいました?牛女」

「夫と夜伽をしますので出ていけといったのよ?女狐」


「あはっ、二人は本当に仲がいいな」

『よくないっ』


こうしてもうすぐ別れの朝が来る


まだまだ3人の夜は続く




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