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天然皇女と3MENたち  作者: angelcaido
3章 Garden’s Side
29/73

第29話 婚活デビュー

皇帝の何気ない一言から、公爵に新たな任務(?)が下されました。


玉座の間。


重厚な空気が満ちる中、ルードは静かに一礼した。

皇帝は玉座に腰掛け、無言のまま視線を向ける。


「陛下」


ルードは口を開く。


「ザグル侯爵に関する件を、報告いたします」


皇帝は、何も言わず聞いていた。


「舞踏会にて、ザグル侯爵が皇女殿下に接近。

政治的意図があったものと見ております。


結果として、ロエル・ザグルは侯爵家より勘当。


侯爵家の狙い――


皇女殿下との婚姻を通じた政への介入は、阻止されております。」


皇帝は眉一つ動かさず、ゆっくりと頷いた。


しばしの沈黙ののち、玉座から低く、よく通る声が落ちる。


「……なるほど。

では、ロエル・ザグルの身分。今後は、どのように扱うべきと考える」


ルードは一瞬言葉を選び、慎重に答えた。


「現状、公爵家騎士団に所属しており、爵位や家督は保持しておりません。

侯爵家としての権限は、事実上ありません」


「しかし、彼の才覚と忠義、理性はいずれも信頼に足ります。

従いまして――扱いは、慎重を期すべきかと」


皇帝は目を細め、わずかに口角を上げた。


「……よかろう。そなたの見立てを信じよう」


「ロエル・ザグルについては、今後の扱い、余が定める。

軽々に動かすでないぞ」


沈黙が再び場を支配する。


皇帝はゆっくりと視線を巡らせ、低く、だが鋭く言葉を紡いだ。


「――身分を、いずれ継ぐはずであった侯爵位を捨て、

なお自らの意思で動いた……その心、いかなるものか」


そして、静かに一言だけ付け加える。


「……いずれ、その行動が帝国にどう作用するか、見届けねばならぬな」


ルードは、わずかに眉を寄せた。


玉座の間に、重い沈黙が戻る。


誰も、その先を口にはしなかった。



「ところで……」


皇帝は、ふと話題を変えた。


「はい」


「ああ、そう身構えるな」


穏やかな声だったが、そこには逆らえぬ威が滲む。


「帝国も、ようやく落ち着いてきた。

どうだ、そなたも――そろそろ身を固める頃合いではないか」


ルードの目が、わずかに見開かれる。


「しかし、皇太子殿下、第二皇子殿下が……」


「無論、あやつらにも見合いは進めておる。

……もっとも、見合いにまで勝負を持ち込もうとするから、頭が痛いがな」


「……?」


(見合いで、どう勝負するんだ……?

数か? 家柄か?

いや、あの二人なら、令嬢同士を戦わせかねない……)


(……考えるのは、やめよう)


「……しかし、皇女殿下は、ようやく我が屋敷に慣れたところです。まだ――」


「すぐに婚姻せよ、とは言っておらぬ」


皇帝は、穏やかに、しかしきっぱりと遮った。


「そなたは公爵家当主にして、騎士団長も兼ねておった。

忙殺されていたのは、余も承知しておる」


「だが後任が決まった今なら、多少は時間も取れよう」


「公爵夫人に求められる資質は、

領地、爵位、当主の在り方によって異なる」


「そなたも、いずれ見極めねばならぬ立場だ」


「……見合いを重ねながら、考えればよい」


「……はい」



公爵城 執務室


「……聞いてました?」


キドが、じっと冷たい視線を向ける。


「え? ああ。聞いてる」


「では、言ってみてください」


「庭で――

ラミアが、暇つぶしにロエルと花を眺めていた話だろう?」


「……は?」


キドの表情が、固まった。


「そんな話、してません」


「暇つぶしに、ロエル様が投げた訓練用ランスが、騎士のすぐ横を掠めて悲鳴が上がった話です」


「あぁ……」


ルードは額に手を当てた。


「すまない。ラミアがどうしたんだ?」


「……しっかりしてください。

一体、何があったんですか?」


ルードは、こめかみを押さえる。


「皇帝から……見合いを勧められてな」


「え?」


「特定の令嬢ではない。

何人か会ってみろ、と」


「……皇女殿下は?」


「すぐに決めろ、とは言われていない」

「このままで問題ない」


キドは一瞬黙り、それから苦笑した。


「帝国唯一の公爵ですからね……

令嬢方が、火花を散らしそうです」



数日後。


「……なぜです?」


キドは机を挟み、真剣な顔でルードに詰め寄っていた。


「何故、三人の令嬢と会って、

全員から即日で断られるんですか!?」


「……わからない」


ルードは、真剣そのものの顔で眉をひそめる。


その瞬間――


「ハハハハハッ!!」


爆笑が、部屋を震わせた。


「帝国唯一の公爵様が、

三連続でフラれるとか!!

傑作すぎるだろ!」


ロエルは腹を抱え、涙を浮かべて笑っている。


「ロエル!!」


「公爵夫人になれるの、帝国で一人だけなのに!

なんで全員辞退するんだよ!」


ルードは机を叩いた。


「お前は、室内訓練場の天井に穴を開けた件の謝罪に来たのではなかったのか!?」


「だって、もう謝ったじゃん!」


ロエルは肩をすくめ、なおも笑い続ける。


「いやぁ……歴史的快挙だと思ってさ」


キドは静かに天を仰いだ。



こちらから3章に入ります。

よろしくお願いします。

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