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相殺式  作者: 冴白
26/28

相殺は、姿を変える

春。


ニュースは、

もう相殺を扱わなくなっていた。


「過激思想の沈静化」

「治安回復の兆し」


そんな言葉が、

並ぶ。


人々は、

安心したかった。



小さな異変


ある地方都市。


深夜の路地で、

二人の男が殴り合っていた。


どちらも、

前科持ち。


周囲は、

誰も止めない。


警察が来た時、

二人は倒れていた。


死因は、

相打ち。


報道は、

淡々と伝える。


「偶発的な争い」


だが、

現場の壁に、

チョークで

書かれていた。


0


誰も、

意味を説明しない。



新しい言葉


SNS。


あるタグが、

静かに増える。


#均衡

#自然淘汰

#同類同士


相殺という言葉は、

使われない。


代わりに、

こう書かれる。


「結果的に

誰も得してないなら

問題ないよね」


「社会的コストは

減った」


「数字の話」


それは、

誰かが

意図的に広めている

わけではない。


“便利だから”

使われているだけだ。



仕組み化


匿名掲示板に、

ひとつの投稿。


悪人を裁くのは

大変だから


悪人同士を

近づければ

勝手に終わる


誰かが、

冗談で返す。


それ、

相殺じゃん


投稿主は、

否定する。


違う

自然現象


このやり取りは、

すぐ流れた。


だが――

スクリーンショットは、

残った。



古谷直也


夜。


古谷は、

報告書を閉じる。


内容は、

どれも些細。


「偶然」

「関連なし」

「証拠不十分」


だが、

数だけは

合っていた。


“嫌な奴”が、

同時期に、

消えている。


彼は、

机の引き出しを開ける。


例のメモ。


数えるな


しばらく、

見つめる。


そして、

静かに呟く。


「……もう

 数え始めてる」



最後の兆し


深夜。


人生相談サイト。


新しい窓口が、

立ち上がっている。


名前は、

ごく普通。


「相談共有フォーラム」


説明文。


同じ悩みを

持つ人同士が

繋がる場所


解決を

強要しません


利用規約の、

一番下。


小さな一文。


本フォーラムは

結果に

責任を負いません


古谷は、

画面を閉じる。


そして、

誰にも聞こえない声で

言う。


「……想槍」


「相殺は、

 終わってなかった」


窓の外。


街は、

今日も平和だ。


だが――

正義は、

 また“楽な形”を

 探し始めている。




これは、

終わりではない。


引き金が、

 人の指から

 仕組みに

 移っただけだ。


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