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相殺式  作者: 冴白
22/28

否定された正義

会見の翌朝。


街は、

いつもと変わらなかった。


電車は走り、

店は開き、

人は仕事に向かう。


だが――

水面下で、

何かが切れた。



「奪われた」


匿名チャット。


相殺派と呼ばれる人間たちが、

一斉に言葉を荒らげる。


「逃げただけだ」


「都合が悪くなったから

否定した」


「じゃあ、

今までの被害者は

何だったんだ」


そこに、

一つの書き込みが投下される。


奪われたんだよ

俺たちの“救い”を


その言葉に、

火がついた。



標的が変わる


最初に狙われたのは、

“悪人”ではなかった。


否定した者だ。


地方都市。


弁護士事務所。


相殺を「違法」と

テレビで断言した弁護士の

車が燃やされた。


壁に、

スプレーで書かれた文字。


相殺否定=加害者の味方


次は、

大学教授。


「私刑は社会を壊す」

そう語った翌日、

自宅に投石。


誰も死なない。


だが――

恐怖は、確実に拡散した。



“選別”の始まり


SNSに、

リストが出回る。


【相殺否定者一覧】


・記者

・学者

・警察幹部

・支援団体


そして、

最後に――


元・相殺関係者(未確認)


想槍剛は、

それを見て

息を止めた。


自分の名前は、

まだない。


だが――

時間の問題だった。



決定的な事件


夜。


小さな集会所。


相殺被害者遺族の

話し合いの場。


そこに、

黒いマスクの集団が

押し入った。


叫び声。


「裏切り者!」


「相殺を返せ!」


机が倒れ、

人が倒れる。


止めに入った

ボランティアの男性が、

階段から落ちた。


死亡。


ニュース速報が流れる。


【相殺否定集会で

死亡事故】


加害者は

「正義のつもりだった」

と供述


“事故”。


だが、

誰もが分かっていた。


これは、

思想による殺しだ。



組織の再起動


地下会議室。


古谷直也は、

無言で報告を聞いていた。


「……否定したことで、

 加速しました」


部下の声が、

重い。


古谷は、

静かに言う。


「想定内だ」


誰も、

驚かなかった。


「だが」


彼は、

一枚の資料を

机に置く。


「このまま放置すれば、

 “相殺派”は

 自警団になる」


「それは、

 内戦だ」


沈黙。


「――想槍剛を、

 見つけろ」


その命令は、

追跡でもあり、

要請でもあった。



想槍剛 ――逃げ場がなくなる


ネットカフェ。


シャッターが下り、

テレビでは

速報が流れ続ける。


想槍は、

椅子に深く座り、

目を閉じた。


否定された正義は、

刃になる。


それを、

一番よく知っているのは――

自分だ。


「……もう」


小さく、

呟く。


「裏でも、

 表でもない」


「真正面から、

 言わなきゃ

 止まらない」


携帯が震えた。


非通知。


出ると、

低い声。


『想槍剛』


『今度は、

 逃がさない』


古谷直也だった。


だが、

声は

敵意だけではなかった。


『会う必要がある』


『今度こそ』


想槍は、

ゆっくり息を吐いた。


「……分かりました」


逃げ続ける物語は、

ここで終わる。


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