↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/4

お婆ちゃん! 

 お婆ちゃんの家が見えてきた。四年ぶりだから、懐かしい! 

 元の私としては、二週間ぶりなんだけどね。

 二学期の期末試験で、来れなかったんだ。ああ、期末試験……大嫌いだったけど、平和な世界なんだなぁと思うよ。


「ふぅ、高校生生活に馴染めるかな?」

 元々、農業女子! とか小馬鹿にされていたんだよね。カラオケに行くより、種屋の方が良いって女子高校生だったから。


「まぁ、三学期はほぼフリー登校みたいだから、大丈夫でしょう! 後は……受験、勉強を覚えているかな?」

 四年のブランクがあるのは不安! なんて事を考えながら、お婆ちゃんの家に着いた。


「えっ、何だか荒れている! もしかして、転移ミス? 数ヶ月ズレているの? でも、赤のスポーツカーとは出会ったし……」

 いつも、木の葉一枚も落ちていない前庭に、枯れ葉が積もっているし、冬だけど雑草もチラホラ。嫌な予感!


「お婆ちゃん! 六花(ユキ)だよ!」

 おかしい! お婆ちゃんには、昨日電話した筈。四年前だけど、したよね!


 普通なら、私が行くと言ったら、ご馳走を用意して、玄関の戸を開けた途端に「よう来たねぇ」と笑いながら出迎えてくれるのに。


「お婆ちゃん!」

 こたつにうつ伏せたままのお婆ちゃん!


 こんな時は、ゆすったら駄目なんだ! 息はしている! 焦る気持ちで、脈を取ると、トクトクと取れた。ただ、これが正常なのかわからない。


「しっかりして、救急車を呼ぶからね!」

 救急車が来るのが遅い! 婆ちゃんをゆっくりと横向きに寝させながら、ここに聖女のマリアが居てくれたらと泣きそうになる。


 そうだ、両親に言わなきゃ! 携帯で連絡する。

「お母さん、婆ちゃんが……」


 泣き出した私を、母親が宥めながら状況を把握しようとする。

「救急車を呼んだのね! それなら、搬送先を連絡してちょうだい。お父さんはこちらから連絡するから、六花はお婆ちゃんについていてね」


 やはり、四年の年月は消えたのかな? 魔王と戦って精神的に強くなったと思っていたのに、何もできない女子高校生に戻っていた。


 でも、救急車にお婆ちゃんと一緒に乗って、病院には付き添った。

 ただ、高血圧だったお婆ちゃんは、脳梗塞を発症していた。


 駆けつけた両親を見た途端、お母さんに抱きついて泣いちゃった。

「お婆ちゃんが……」

 

 お父さんは、お医者さんと話をしている。お母さんに肩を抱いて貰って、ベンチに座って待つ。

「もっと、早くにお婆ちゃんの家に行っていれば……期末試験だからと、二週間も行かなかったから……」


 後悔に溺れそうな私をお母さんが宥める。

「お母さんは、何度も一緒に暮らそうと提案したのに、都会に住みたくないと言っていたの。六花のせいじゃないわ。ただ、私やお父さんが、もっともっと頻繁に顔を見せるべきだったのよ。いつまでも元気だと思い込んでいた。それに、六花が行かなきゃ、もっと大変なことになっていたわ」


………………

 

 結局、お婆ちゃんの意識は戻らなかった。

 田舎の村のお葬式、家でするんだ! 近所の人が手伝ってくれたし、お婆ちゃんの為に皆が参列してくれた。


 ただ、この日、お婆ちゃんのお葬式どころではない騒ぎが起こっていたんだ。

 私は、沈み込んでいたので、テレビも携帯も見ていなかった。

 それを知ったのは、忌引き明けの学校でだ。

 

 四年ぶりの学校、制服を着る時、何となく気恥ずかしく感じた。本当なら二十二歳なんだもの。

 でも、時間は戻っている筈! ピチピチのJKだよ! と自分を鼓舞して、姿見を見る。


「ううん、やはり地味?」

 異世界に転移した仲間たち。それぞれ個性豊かだったし、美形が多かった。

 その中で、私は平凡な容姿。それもコンプレックスだったんだよね。

 聖女マリアなんて、金髪碧眼、その上お医者様! 


 勇者のマキアスだって、均整の取れた身体にキラリと光る白い歯! 長身のマッチョ! 

 こちらの世界では、アメリカンフットボールのスターだったとか? 私は、全く知らなかったけど、転移した仲間は騒いでいた。


 それに賢者のユング。褐色の肌に金髪に青い目という目立つ容姿で、弁護士だった。格好いい上に賢いなんて、ズルいよ!

 魔王討伐戦の途中で亡くなった仲間達も、其々こちらの世界でも一芸に秀でた人ばかりだった。


 なぜ、私が転移させられたのか? タイミングがあっただけ? 皆も不思議がっていたなぁ。

 そんな事を考えて、ぼぉっとしていたら、クラスメイトが騒いでいる。


「ねぇ、ねぇ、昨日は地震があちこちで起こったんだって! 怖いよねぇ!」

 ふうん? 地震? そう言えばかなり揺れたかも? 震度三はあったかもね。

 お婆ちゃんの葬式で悲しんでいたから、地震の事は気にしていなかった。


「世界中で同時に地震があるだなんて、変だよね! テロじゃないかってSNSで言っていたよ」

 えっ、それは怖い! 折角、平和な世界に戻ったと思ったのに、こちらも戦争やテロがあるんだ。

 まぁ、魔物が彷徨く世界じゃないだけマシなのかな?


 四年ぶりの学校、でもいつもの通り騒ぐクラスメイトから距離を置いた立ち位置が私。


 折角、こちらの世界に戻れたのだから、今度はもっと積極的に友だちを作りたい。


 ただ、私の夢が田舎でのスローライフだから、それが理解して貰えるかは、かなり問題なんだよね。


 期末試験の結果は、いつも通り。悪くもないけど、良くもない。ああ、平凡だぁ!


 担任の先生から、受験生なのだから、体調に気をつけて、ラストスパート頑張れ! と激励を受けた。


『ああ、良いよねぇ! 魔王を倒せ! とか無茶な事を強制されないのって最高じゃん!』


 ただ、教科書を四年ぶりに見て、かなりヤバそうだと焦る。

 得意だった歴史。年号とか、苦労して暗記したのに、かなり忘れちゃっているよ! 

 でも、一番苦手だった英語の授業で驚いた。

 ネイティブスピーカー並みに理解できるのは、異世界言語スキルのお陰?

 数学は、まぁまぁ! 数式を覚え直さなきゃいけないのもあるけどさ。


『冬休みは、塾の冬季ゼミで潰れそうだなぁ……』なんて、呑気な事を考えていた。


 世界同時に起こった地震、その事はニュースになっていたが、事実はまだ公表されていなかったのだ。


………………



 新年の臨時ニュースで、全世界にダンジョンができたと発表された。

 その時、私は雑煮の餅が喉に詰まりそうになった!


「嘘でしょう!」

 喪中なので、お節は作らなかったけど、お雑煮は食べていたんだ。


「何だか六花が読んでいるラノベみたいな話だな!」

 お父さんが笑っているけど、笑い事ではないよ!


「ダンジョンって、魔物がいるんだよ!」

 やっとこちらの世界に戻ったのに、何故! 新年早々、頭がクラクラしてきた。


「兎に角、六花は受験を頑張りなさい!」

 ダンジョンより受験! お母さんの言葉に、それで良いのか? と不安になったけど、異世界でも、私は身体能力も魔力も秀でていなかった。


 この世界にできたダンジョンで魔物を討伐する能力は無い!

 魔王討伐の時に頑張ってくれたのは、召喚した聖獣だ。

 この世界で、私は無力な召喚士。だから、真面目に勉強して、大学に合格しよう! そして、いずれはお婆ちゃんの家に住み、農業をするんだ。


 平凡な女子高生の夢は、こちらに出現したダンジョンであろうと邪魔されない筈だと、人任せにしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>お婆ちゃんの家に住み、農業をするんだ。 農業大学?牛や豚が召喚士できたら元手要らずでスローライフですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。