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6-5話 魔術を覚えました

これからに備えて各種アイテムの補充も終わり、俺は魔女さんを待つことになった。

一応ギルドで依頼も見てきたが、今の所受けられそうな物はなかった。

場合によっては単純レベル上げかなとも思う。


やがて夜になり、拠点で待っていると魔女さんが戻ってきた。

魔女さんは俺を見つけると様子を察したのか苦笑を浮かべながら言ってくる。


「さて、ヨキ君はもう準備できているみたいですわね」

「ええ、いつでも大丈夫です!」

「ふふっ……分かりましたわ。では行きましょうか」


魔女さんはそう言って中庭に進む。俺もすぐにその後を追った。


すでに夜。中庭には明かりがなく、星空の光が頼りだった。

その中を魔女さんの鬢髪が光を反射し、より鮮明になっている。

中庭の中央に魔女さんは達、こちらへと振り返った。


「さて、始めますわね」

「はい。よろしくお願いします。……それで俺はどうすれば?」


俺に問いに、魔女さんは一つ頷く。


「まあ、反則ですけど、君の精神を直接導きますわ。そこで君の感覚に任せて見てくださいな。恐らくそれでコツを掴めますわ」


そう言って、俺の正面に魔女さんがやってくる。

背の違いのため俺が彼女を見下ろす形になっていたが、ふっと魔女さんが浮くと視線を正面に合わせた。


「さ、私の目を見てくださいな」


そう言って魔女さんはさらに近づく。

ほとんど触れそうな距離にまでなる。

一瞬、ドキリとするが、その赤い瞳に吸い込まれるように俺の意識は途切れた。



次に気づいたとき、景色が一変していた。


中庭ではあるが全てが暗い。今までの場所と変わらないはずなのに闇が強調されていた。

魔女さんの姿は見えない。ここには俺が一人だけで立っている状態。

なにか、特定の物が協調されているように感じる。


「これが……導き?」


あえて声に出して考える。体の感覚はそのまま。ひたすらに闇が強調されている。

つまり、闇属性の魔術を使う上ではこの感覚が大事という事なのだろう。


俺は、知覚した闇を掴む。

その闇は俺の手の中で、若干震えているように見える。


「……なるほど」


これが魔術を使うときの感覚か。本来の人間ではありえない感覚に思わず笑みが出る。

俺は闇を放し、次にただ意識を傾ける。それは闇を自分の一部のように扱う感覚だった。


俺の意志通り、闇が俺の左腕に纏うように集まる。

自分のイメージ通りに形成された状態に俺は満足感を得る。


「さしづめ、闇の腕って所か?」


多分、初級の魔術にあるだろう魔術名を言いながら、それを振るう。

その闇の腕は俺の意志通りに動く。


「なるほどなるほど」


一度解除し、さらにもう一度繰り返し、その感覚を覚える。

全てが簡単にできた。恐らくここまで簡単に思えるのは魔女さんの導きがあるからだ。

今のうちにコツを覚えよという事はそういう事か。

なら今のうちに練習するようにするか。

俺は次に、影の人型を作り出し、同時に動く。

闇の塊を作り出し、発射する。

外皮のように纏い、鎧のようにする。


一通り、普通のゲームに出てくるような事をして、その感覚を覚える。


「こんなものかな……」


恐らく1時間は練習しただろうか。大体の感覚は掴んだような気がする。

後は、魔女さんの導きがなくてもできるか。という事か。

やっぱ魔女さん色々チート級NPCのような気がするな。

簡単に魔術を覚えられそうで正直ラッキーだと思う。


「チートか……」


そういえば、と思う。

魔女さんは明確に俺たちを違う世界の人間としていた。

それを知る理由が、魔術を極めたからという事だったか。

つまり、魔術を使うという事はそこにたどり着く何かがあるという事だろう。

考えつくことと言えば……


「ゲームシステムで用意された以上の魔術使用……プログラムの変更が魔術使用の延長で可能なのか?」


まさしくこの世界を書き換える行為。そういう意味では魔術は親和性があるのかもしれない。

だが、魔術なんて普通はシステム上で用意されたもの。

基幹システムまで影響を与えるなどありえないだろうと否定するはずだが、実際それは起きていることを俺は知っている。


「鬼戦での不具合発生がなければ思いもつかないことなんだけどな」


魔術の仕様がこのゲームの基幹プログラムにも関わっているだろうという事。

もしかしたら、この魔女の導きもプログラムに干渉している結果の可能性すらある。

つまり、魔女の導きを受けた今の俺ならもしかしたら、その領域を覗けるかもしれない。


「覗いてみるか?」


もし鬼戦のような不具合が発生するとしたら、その領域に行くことで対抗できるかもしれない。

運営からはバグ利用でアカウント削除されるかもしれないが、見つけたらすぐに報告すればいいだろう。

いや、本当に駄目だったならその時点でミリンから警告が来るはずだ。

ミリンから連絡こなければ、大丈夫な行為のはず。


俺は意思を決めると奥に潜るように思考する。

魔術の延長ならこれで何かおきるはず……

しかし何も変化はない。


当然と言えば当然。恐らく普通に魔術を使うようにするのでは無理だ。

こういう事でないのなら……と今の状態で見回すと何かがひっかっかる。


その違和感の正体を確認しようと周囲をゆっくりと確認する。しばらくしてその違和感の元を見つけた。

そこには草が生えている。……ただし、本当にわからない程度浮いていた。

つまり普通では絶対気づけないが、この空間で表示バグのような物が強調されていたからこそ気づけた。


恐らくこれは入り口なのだろう。

俺はそれに手を触れ、強引に突っ込んだ。

ズルリと体が飲み込まれるような錯覚と共にその中に入り込む。




視界の先には、意味不明の文章の羅列、数字が飛び交い、闇と光で構成された空間があった。

プログラムの稼働を視覚化した結果がこれなのだろうか。

もしかしたら運営は効率的にプログラムするためにこの空間を作り出したのかもしれない。


やはり、と思う。魔女さんのような魔術を極めた人は、こういう違和感を手掛かりにこうやってプログラム領域に入り込めるのだろう。

そして、このプログラム領域を調査することで、自分の世界の真実を知ることになる。


「この領域に入り込めた魔女さんは、一体どういう気分なのかな……」


そうこぼしながら俺は、先に進む。どういう法則性があるか見ようとした。

恐らくプログラムに触れることで書き換える事もできると思う。

しかし、それは当然しない。そんな事をすればBANは確定だ。

あくまで鬼戦の時のような非常時に対応できるために覚えておくだけだ。


そう心に決め少しずつ進む。とはいってもゲームを構成する複雑なプログラム。

俺のレベルではとてもではないが理解できない。

こりゃプログラムの勉強もしないといけないか。そんな事を思っていると視界の先に何かが見えた。


俺はそれに近づいていく。

それは、闇の塊のような壁だった。

恐らくプログラム領域の端を視覚化した結果だと思う。

つまりここが終点。

俺はそろそろ戻ろうと踵を返そうとする。


……なぜか、その先に、俺を呼んでいる声が聞こえた気がした。


俺は再びその壁を見る。それはただの闇色の壁。……その壁に触れる。

弾かれると思ったその壁は、しかし俺の手が突き抜けた。


……奥に行ける? これも魔女さんの導きがあるからか?


そこに行く意味があるかと言うと恐らくはない。

しかし、好奇心が勝ってしまった。覚悟を決めると俺はその中に入り込む。



そこには何もなかった。

ただの領域があるのみだった。


「……もしかしてなにもない記憶域に来たか?」


やはり意味がない領域かと思う。なんとなく肩透かしを喰らったような感覚。

戻るかと思っていると、何かが見えた。

いや、見えたというか違和感か。俺はそれに興味を惹かれ近づく。



そして、それを見てしまった。



その色は漆黒、しかし、その姿を間違いなく俺その物だった。

何故、そんなものがこんなところに? その疑問を思う前に、その物が顔を上げる。


それは無垢な表情。その一対の闇色の瞳が俺を見る。

俺の中で警戒心が急激に上がる。これ以上いたら危険だと思う。

反射的に逃げようとするが、その物の方が早かった。


それは腕をこちらに向ける。闇の塊が腕となして俺へ殺到する。


まともに受けるわけにはいかない。

俺も同じように闇の腕を作り、その闇の腕へとぶつける。

それは激突し、闇の腕同士が絡み合う。

しかし自分の行為が失敗だったとすぐに気づく。

それの闇の腕は俺の魔術を飲み込むように絡みつく。

いや、融合している?


左腕が徐々に境界線が曖昧になる感覚がある。自分の中で危険のアラームが鳴り響くがどうすることもできない。

……何が起きる? どんな危険がここにある?


自問するが答えは出ない。ただ、危険だという感覚が襲ってくる。

逃げようとするがすでに体が動かない。この領域から逃げ出せない。当然声も出ない。


しかし、次の瞬間、恐怖は安堵に代わった。


目の前に女性の姿が現れたからだ。

そう、銀髪の女性、魔女さんがそこにいた。

魔女さんは、一瞬のうちに魔力の刃を形成しその闇の腕を叩き斬る。

完全に繋がりが切れたと同時に俺の体の自由が戻る。


慌てて俺はその領域から逃げだす。

並走するように魔女さんもそこにいた。

俺を護るように若干後ろのポジションをキープしつつ、そして後ろのそれを気にしながら。



闇色のそれは、これ以上何もしてこない。

ただ俺を見る。俺は、それ以上はそれを見ない。全力で逃げることを選択した。

しかしその領域から出るとき、見てもいないのにそれの表情がわかってしまった。


”また遊ぼうね”

それはそう言って嗤っていた。




気が付くと、中庭に戻っていた。

目の前には魔女さんがいて、彼女は顔を俺から離すとふっと息を吐く。

そして真剣な顔でぽつりとつぶやいた。


「……ふう。どうでしたか? 魔術の感覚は掴めましたか?」

「へ?……あ、はい。大丈夫だと思います」


そう言って、俺は闇の腕の魔術を使う。

そこには確かに成功した闇の腕があった。


魔女さんはその様子に笑みを浮かべる。


「良かったですわ。これからしっかり制御の練習を続けるのですわ。魔術は暴発が怖いですからね」

「はい。わかりました。ありがとうございます」


そう言って、この場は終わる。

魔女さんは後かたずけがあると言ったため、俺だけが先に拠点へ戻る。


実際魔術は使えるようになったのだけど……何かきになるんだよな。


「魔女さん。叱らなかったな」


魔女さんに助けられた以上、終わった後叱られると思っていた。

しかしそれがない。


「もしかして、これも想定内か」


だとすると、魔術の怖さも同時に教わった事になる。

ちゃんと制御しないと、あのような怖い目に合うという事か。

……まあ、俺はプレイヤーだから怖いだけで済むんだけどな。

俺はそう納得すると、その日を終わらせることにした。


家に戻る途中、視界に窓が入る。

そこにはバーゼスさんが窓にもたれかかるようにして眠っていた。

なんであんな所で……と思う。


ま、まずは寝るか。ルームに戻ったらミリンに報告して仕様かバグかは聞いておかないとな。

バグだったら……ミリンからストップ掛からなかったし多分大丈夫だろうけど、アカウント凍結は嫌だなぁ。

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