3-8話 敵と本格的に戦いました
街道の中心で、遮蔽物のない場所。ここで敵を迎え討つのは無理だ。
ボスっぽい敵の斧を回収し、まずは周囲を確認。
遠くから弓で狙っている敵を確認する。
このままではいい的になってしまう。慌てて、近くの岩場に隠れる。
瞬間、足元へ音と共に矢が突き刺さった。
判断が遅れたらそれでアウトだったな。
格好つけて飛び出したはいいが20対1か……無理難題な気がしてきた。
「正直、これ打開できないよな……」
複数に囲まれて攻撃されたらそれで終わり。何とか各個撃破をしたい。
だけど一人では全部の攻撃の把握なんてできない。どこかで攻撃を食らって終わりな気がする。
「せめて敵の場所を教えてくれる人でもいればな……」
そこまで呟き、自分の言葉に引っかかった。そういえば、これも配信している訳で、人の目はほかにもある。
視聴者がいれば可能性はある、か?
「なあミリン」
『なんじゃ?』
若干怒ったような声。どうも俺が無茶をするとミリンは怒るようだった。
別にゲームだからやられても問題ないんだけどな、と思いつつ別の事を聞く。
「今、これライブで何人見ている?」
『5人じゃが、それがどうしたのじゃ?』
「ライブ放送を4画面ぐらいして俺を中心に360度見えるようにしたいのだけど、可能か?」
『ふむ、その程度ならすぐにできるのじゃが……何をしたいのじゃ?』
「ちょっとした視聴者参加型放送をやろうと思ってな」
『……まあ、面白い試みじゃな。すぐに切り替えるのじゃ』
「頼む」
視界の端にあるライブ画面が4分割になる。
その画面自体は小さくて、画面内容は雰囲気しかわからないが、視聴者はちゃんと見えているはず。
コメントは読めるように拡大できるので、そうする。
「じゃ、皆、敵の位置を指示お願いします」
俺のやりたいことの意図が伝わったのか。コメントがすぐに返ってくる。
めめめ:わかったー。指示厨するぞー
にゃー:オッケー
テロゾン:嘘松していいか?
「まあ、それも仕方ないです」
一人では勝てない以上、まだ可能性がある方に賭けるつもりだった。
「では、始め!」
チリン:右3歩の距離敵1
瞬間、投げナイフを選択。指定された方向に全力で投げる。
敵の姿を確認はしない。視聴者を信じなければ、この試みは成功しない。
予測した場所に敵が踏み出し、同時に投擲したナイフが刺さる。
崩れ落ちる敵を横目で見ながらその脇をすり抜けるように前進する。
同時に敵の獲物――長剣を奪い取る。
武器がなくなったら終わりだ。敵の武器を奪い取れるシステムが幸いだ。
「1」
さらに視線の先には二人敵が見える。
二人とも俺の行動に驚いたのか、一瞬だけ棒立ちになる。
俺はそのまま敵の懐に飛び込むと全力で武器を振るった。
手心などない全力の一撃。まずは右手の敵を袈裟懸けに切り捨て、その勢いのまま回転し、左手の敵を切り上げる。
両方とも受け止めることができず、まともに食らった。あっさり戦闘不能に追い込む事になった。
「思ったより、自己犠牲スキルの能力上昇が強いな……」
全力で振るったとはいえ、たった一撃で倒せるレベルの威力になっている事に驚きながらも視線をコメントへと向ける。
にゃー:左上10度50m程度先、弓構えてる
確認する暇もなくとっさに転がるように左へ跳ぶ。同時、一瞬前まで自分がいた位置を飛翔物が通過した。
「あっぶな……」
少しでもミスると一気に形成不利になる。
遠距離武器持ちは積極的に排除しないといけないか。
慌てて装備をイルミの弓に持ち替え、引き絞る。
弓を構えている敵を今度は視認。放つ。
――命中
肩に刺さり悶絶している敵。無力化した以上これ以上は構わない。
「4」
めめめ:背後、3人
武器を長剣に切り替えながら振り向くと、まさに振りかぶっている敵がいた。
――斧が振り下ろされる。
とっさに構えた剣とぶつかり火花がちらつく。
ぐっと力を籠め、押し返そうとし――長剣がへし折れる。
敵はニヤリと笑った気がした。
「――――」
声もだせない。咄嗟の判断で武器を手放しながらさらに敵へと踏み込む。
斧の柄の部分が肩に当たるがダメージはほとんどない。
武器をナイフに切り替え斧を振るった敵に突き立てた。
驚愕の表情のまま崩れ落ちる敵を抱え、さらに後ろにいる敵へと突き飛ばす。
敵が受け止めようとしてぶつかり、態勢を崩した今がチャンス。
斧を回収し、装備。力任せに横なぎに振り回す。
敵を3人とも戦闘不能に追い込んだ。
「7」
敵をさらに確認しようとコメントに目を向ける。
目楚々:敵、逃げ出してる
にゃー:勝ったんじゃないかな?
そのコメント通り残りの敵が全力で逃げていた。
……わざわざ追う必要はないかな。
立て続けに1人で7人を倒したのだ。それに恐らく一番始めに親玉格を倒したのだろう。
敵は完全に戦意喪失したの考えるのが自然だった。
「皆さん。ありがとうございます」
にゃー:楽しかったよ
めめめ:オッケー
視聴者へ礼を言いながら、念のためここに残っている敵を縛りすべての装備を取り上げる。
長剣2本、斧2本、弓2本、ナイフ3本。鎧類は使えそうにないので放置。
辛うじて小さな盾が1つ使えそうなので回収する。
やってること追剥っぽいな。とは思うが相手が先に攻撃してきたのだ。正当な報酬のはずと思っておこう。
『何とかなったのう』
安堵のような声音でミリンが声を掛けてくる。
ゲーム中は俺から話しかけない限り、ミリンが声を掛けないようにしているはずなのに珍しいと思いつつも、別の事を聞くことにする。
「自己犠牲スキル。強くないか?」
『まあ、敵が雑魚山賊じゃったしなぁ。これで無理が肯定されるわけじゃないのじゃ』
「あー。うん。わかった」
ミリンからしっかり釘を刺されてしまった。
それにとりあえずは返事をしながら、これからどうするか考える。
「ミリン。これからイルミと合流したいんだが、バーゼスさんがやったように近くに転送ってできるのか?」
プレイ時間の制限。ここを緩和するための基本システムとして、仲間と合流する時間を短縮するシステムをメンテナンスの際に実装していた。
今回バーゼスさんとの合流はそのシステムを使用していた訳で、今回もできると思っていたのだが。
『街から転送はできるのじゃが、今の所ダンジョンや街道みたいな敵が常駐する場所では転送できないようにしているのじゃ。
ピンチになったら転送で脱出が、専用のスキルではなくベースシステムとして出来たらゲームとして問題じゃろう?』
「まあ、それもそうか……」
諦めて別の方法を考えるがいい方法は思いつかない。
俺は乗馬スキルもないから、例え馬とか見つけても乗るのが無理だし……
街まで徒歩か? 馬車でまだ2日掛かる距離を徒歩で?
『一回強制ログアウトという手段もあるのじゃが、ペナルティは死亡時と同じじゃからなぁ』
「あーそれは避けたい」
『そうなると歩くしかないじゃろな』
やっぱりそうなるか。
割と絶望的な気分になりながら、ため息を吐く。
イルミ:ヨキ、大丈夫?
ヨキ:視聴者のおかげて何とかなったよ。
イルミ:そっか。良かった。合流どうしようか? 今アジュさんが犠牲にしてしまったとか言って滅茶苦茶怖いし
ヨキ:あー。それはまあ、そっちで何とかしてくれ。俺は歩いて向かうから時間がかかりそうだ
イルミ:イベント進めないほうがいい? やっぱり引き返すとか言おうか?
ヨキ:うーん。なんとなく時間制限がありそうなんだよな。早い方が良さそうだから先に行ってくれ
イルミ:わかった。連絡するね
イルミとの会話を終え、街道を改めてみる。
「必要なことだったとは言え、イベントの最後は見逃しだなあ。あ、視聴者はイルミの方のライブへどうぞ」
そしてゆっくり歩き始める。まあ、こういう事もあるか。
風景を見ながら歩くのも冒険の醍醐味だと思う事にしよう。
戦闘描写は難しいですね。要練習です。他含め時間があれば少しずつでも修正していけたらいいなと思います。




