底辺高校の鈴谷さん その9
鈴谷さんのトレーニング
一人での買い物からの夕暮れ時の帰り道、トントンっと肩を叩かれる。
「やあ、奇遇ではないか」
そこにはニコりと優しく微笑む道着姿の鈴谷さん、普段とは違って長い黒髪を後ろで結んでポニーテールにしている、ランニングの最中だったのか頬が少し赤らんでいる。
「道着、似合ってるね、カッコイイし可愛い」
僕がそう言うと満面のドヤ顔で。
「うぬ、いい感じに汗臭いぞ、8千円でどうだ?」
現役JKの道着とかそこそこ需要ありそう転売したろかな。
鈴谷さんの道場
道場が近場との事なので少しお邪魔させてもらう事に。
この時間帯は中学生までと高校生以上が入れ替わる時間なので道場内にはほとんど人がいなかった、その中に見知った顔を見つける、相手も僕の顔を見つけて少し驚いたあと笑顔を向けてくれた。
「うぬ、太田殿もつい最近ここで稽古しているのだ」
と鈴谷さんが説明してくれている間に太田君が近づいてくる、彼は今日も今日とて爽やかイケメンだ。
「やぁ!君も空手するのかい?」
僕はフルフルと顔を振る、稽古中どーせサンドバックにされるだけだ、何なら中学生にだって負ける自信がある。
「そうかい、まぁ君は筋肉は似合わないし・・・いやその女の子みたいとかそう云う意味じゃないからね、君はそのままでも十分魅力的だし、こう・・・なんて言うのか守ってあげたくなる感じが愛おしいというか・・・いや変な意味じゃないよ?」
途中から顔を赤くしてまくし立ててくるけど別にどうでもいいので話題を逸らすために質問する。
「太田君はどうして空手を?」
ふぅ、と一息吐いて興奮気味だった自分を落ち着かせる太田君。
「毎回鈴谷さんに守ってもらったり、返り討ちにあったりじゃあ揉め事を大きくするだけだからね、俺も少しは自分に力を付けたくて鈴谷さんに道場を紹介してもらったんだ」
この行動力がイケメンをイケメンたらしめる理由なのだろうか。
「あ、いや、君も男なら鍛えた方がいいとかそう云う意味じゃないからね、君は筋肉なんか付けるよりそのままの方が良いよ、抱き心地良さそうだし・・・いや、下品な意味じゃないよ?甘く口蕩けるドルチェってイメージ?だから君はそのままでいてね」
・・・・・なにこのイケメンちょっと怖い帰る。
鈴谷さんと番長
朝の通学中、校門の前でいきなり昭和の香り漂う大柄な不良に声をかけられる。
「おい、この学校の人間か?もしそうなら番長の鈴谷ってのを呼んで来い」
そっか鈴谷さん知らない間に番長まで登り詰めてたのかぁ~
「ぬ?我の事か?我は番長なぞしとらんが・・・」と後ろにいた鈴谷さんが反応する。
「黙れ、アマには用は無い、この学校に喧嘩の最強を謳う鈴谷と云う奴がいるだろ、今すぐそいつを連れて来い」
なるほどその人ならこの人だわ。
「うぬ、我と手を合わせたいと申すのか、面白いかかってこ「みーこ次喧嘩したら停学じゃ済まないって生指のおっさん言ってたじゃん」
言葉の途中で糸田さんがツッコミを入れる。
「・・・・3秒だけでも駄目か?」
んな3秒ルールねぇえよ。
「ごらぁ!何ふざけてやがんだ、お前が鈴谷なんだな!!ぶっ殺してやるよ!!!」
「まて!俺が鈴谷だ!!」
ここでイケメン太田君の登場である、主人公スキルの高い登場の仕方だ。
「いやいやあーしが超鈴谷だし」
おい糸田何を言い出す。
「我が鈴谷だ!!」
そうだなお前は鈴谷だ。
・・・・・・・・・何か皆僕を見てる。
「・・・・ぁ、僕が鈴谷です」
「「「どうぞどうぞどうぞ!!!」」」
ふざけんなよ