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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第4章 空の迷宮

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58話 このままじゃ、勝てない

足場の崩壊は止まらない。


ひび割れた石床が、足の下で低く軋む。

中ボス的な何かはその上に立ったまま、少しも急がない。


動かない。


追ってもこない。

攻めてもこない。


ただ、見ている。


視線だけがこちらをなぞる。

順番を選ぶみたいに、ゆっくりと。


遊ばれている。


その認識が、遅れて腹の底に落ちた。


俺は息を整える。

構造は見えた。

同時に触れない。


なら、こちらが重ねればいい。



「凛、正面散らして。

 雪那、左右封鎖。

 ひなたは中央で割る」



凛が短く返す。



「行く」



雪那が頷く。



「合わせる」



ひなたが大鎌を握り直す。



「今度は外さない」



三人が動く。


凛の雷が先に走る。



「雷槍散華」



空を埋める雷槍。

逃げ場を潰す密度。


同時に、雪那の氷糸が空間を縫う。



「氷糸結界」



足場の間を塞ぐ氷の網。

さらに間髪入れずに氷刃。



「氷刃連華」



斬撃が雷槍の隙間を埋める。

ひなたが中央へ踏み込む。


完璧だった。


次の瞬間、全部が壊れた。


雷槍の発動が一瞬遅れる。

氷刃の軌道が半歩ずれる。

ひなたの踏み込みだけが逆に早く流れる。


噛み合わない。


同時にならない。


影は、その“ずれた隙間”に立っている。



「は……?」



ひなたの一撃が空を切る。

足場が砕ける。


身体が傾く。


落ちる。


凛が雷歩で飛ぶ。



「雷歩」



速い。


間に合うはずだった。


それでも、着地がわずかに後ろへずれる。

届くはずの腕が届かない。


雪那の氷糸も、展開が一瞬だけ遅れる。


その一瞬で、ひなたの身体が足場の外へ滑る。



コメントが一気に流れる。



「同時になってない」


「全部ズレてる」


「これどうやって合わせるんだよ」


「無理だろ」



違う。


ずらされている。


俺は歯を食いしばる。


干渉の空白を突く。

それ自体は間違っていない。


だが足りない。


こいつは対象を選ぶだけじゃない。


触れた相手の“時間”をずらしている。


発動。

踏み込み。

反応。


全部、わずかに遅らされるか、早められる。


だから、同時攻撃が成立しない。


雪那が氷を撃ち込む。



「氷牢・静」



ひなたの落下先に氷床が生まれる。

叩きつけられる。

止まる。


だが、着地の瞬間に位置が外れる。


立っているはずの場所が、半歩ずれる。


ひなたの顔が歪む。



「立ってるのに……合わない……!」



今度は雪那に視線が向く。


その瞬間、雪那の右手がわずかに遅れる。

氷糸の起点が外れる。


結界が成立しない。


雪那が低く呟く。



「……間に合わない」



凛が前に出る。



「雷閃」



至近距離。


当たるはずの一撃。


その直前、凛の身体がわずかに前へ流れる。

狙いがぶれる。


雷は影を掠めることもなく、背後の石を砕く。


凛の表情が明確に歪む。



「……ふざけてる」



コメントが流れる。



「凛でも当たらん」


「時間ズレてるだろこれ」


「配信もおかしい」



その瞬間、視界の端で文字が歪む。


コメントが一瞬止まり、次の瞬間に別の位置に現れる。



「おちる」



ログに残らない。


嫌な予感が走る。


ひなたの足場が崩れる。


違う。


崩れたんじゃない。


ひなたの位置だけが、崩壊した座標に重ねられている。


また落ちる。


凛が飛ぶ。

雪那が氷を展開する。

俺も前に出る。


間に合わない。


ひなたが自分で大鎌を引っかける。

火花が散る。


止まらない。


腕が震えている。


限界だ。



「ひなた、離すな!」



「離してない……!」



声が震える。

それでも、折れていない。


中ボスは動かない。

助けるか、落ちるか。

その結果を見るためだけに、そこにいる。


完全に格上だ。

俺は動きを追う。


違う。

追っても意味がない。

観測じゃ足りない。


再現しないと届かない。

だが、その手段がない。


雪那の氷が重なる。

凛が無理やり引き上げる。


ひなたが戻る。


全員の呼吸が乱れる。

整っているのは、あいつだけだ。


足場がまた割れる。

逃げ場が減る。

確実に、削られている。


凛が低く言う。



「このままじゃ、何回やっても同じ」



雪那が短く返す。



「対処できてない」



ひなたが膝をついたまま顔を上げる。



「……次は、無理」



その一言で分かる。

次に選ばれたら終わる。


偶然じゃない。

順番だ。

コメントが流れる。



「引け」


「これ死ぬ」


「勝てる気がしない」



俺は中ボスを見る。

まだ余裕がある。

まだ、試している。


勝てない。

今のままじゃ、絶対に届かない。


理解が浅い。

一段、足りない。

俺は吐き捨てるように言う。



「……このままじゃ、勝てない」

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