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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第1章 追放と覚醒

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2話 「無能」と追放された日、俺は一人になった

ダンジョンの空気は冷たい。

湿った石の匂いが鼻につく。


地下3階層。

石壁には苔が張り付き、通路は薄暗い。


ここはCランクダンジョン。

石窟型の最適化ダンジョンだ。


見た目は普通の洞窟。

だが、中身は違う。


分岐が多い。

ルートによって敵の数も、罠の量も変わる。


正解を通れば浅い階層でも抜けられる。

外れを踏めば、消耗だけが増える。


普通の探索者には運ゲーだ。

だが俺には違って見える。


空気の流れ。

魔力の偏り。


床の擦れ方。

壁の傷。


それで正解ルートは分かる。

今いるここは、外れだ。


敵が多い。

罠も多い。


オークが出る最悪の道。

だが、俺は何も言わない。


言っても意味がないからだ。

前を歩く連中は、俺の言葉なんか聞かない。


人気配信パーティ。

ヴァルキリー。


登録者50万人。

ダンジョン配信では有名な探索者パーティだ。


俺はそのメンバーだった。

いや、正確には雑用係だ。


前方でリーダーの桐崎隼人が剣を構える。

相沢美咲が後ろから炎を溜める。


藤堂玲奈は回復待機。

3人の動きは慣れている。


オークが咆哮する。

桐崎が踏み込む。


次の瞬間。

剣が閃いた。


オークの首が飛ぶ。

血が石床に飛び散った。


巨体が音を立てて倒れる。

配信カメラが、その光景を映している。


コメントが高速で流れる。



「うおおお」


「ヴァルキリー強い」


「隼人かっこいい」


「オーク瞬殺」



桐崎が剣を肩に担ぐ。



「配信切れ」



相沢がスマホを操作する。

カメラのランプが消えた。


配信終了。

ダンジョンに静寂が戻る。


さっきまでの歓声が嘘みたいだ。

遠くでモンスターの唸り声だけが響く。


俺は黙ってオークの死体を見る。

弱点も、動きも、全部見えていた。


あの一撃も、もっと早く入れられた。

無駄な動きも多かった。


だが、俺は前に出ない。

いや、出させてもらえない。


その時。

桐崎が振り向いた。


嫌な予感がした。



「悠斗」



俺を見る。

目が冷たい。


次の言葉は、思ったよりあっさり出た。



「お前、今日でクビな」



一瞬、意味が入ってこなかった。



「……え?」



桐崎はため息をつく。



「だからクビ。パーティ追放」



横で相沢が肩をすくめる。



「だって戦えないじゃん。雑用だし。

報酬もいらないでしょ? 何もしてないんだから」



笑いながら言った。

玲奈も困ったように笑う。



「ごめんね、悠斗。でも仕方ないよ」



俺は何も言えなかった。

悔しさだけが喉にひっかかる。


理由は分かっている。


俺のスキル。

【観察】。


モンスターの弱点。

行動パターン。


罠の位置。

魔力の流れ。


全部を分析できる。

だが、それだけだ。


戦闘能力そのものはない。

探索者の世界では、ハズレスキル。


ヴァルキリーでも俺の役割は雑用だった。

荷物持ち。


素材回収。

地図記録。


罠確認。

戦闘には、ほとんど参加しない。


いや、参加させてもらえない。

俺が見つけた弱点も、罠も、ルートも。


映える形で決めるのはいつも桐崎だった。

視聴者が称賛するのも、当然あいつだ。


桐崎が言う。



「俺たちBランクだぞ。

戦えないやつ抱える余裕ない」



相沢も続ける。



「次はAランク狙うんだよ?

足引っ張るのはいらない」



その言葉は、半分だけ正しい。

強さが必要なのは事実だ。


だが、このダンジョンにいる時点で分かる。

今まで俺が埋めていた穴も、確かにあった。


このルート選択。

この消耗。


全部、本来はいらないはずだった。

でも、誰も気づいていない。


桐崎は背を向けた。



「じゃあな」



3人は出口へ歩いていく。

足音が遠ざかる。


軽い会話が聞こえた。



「今日は神回だったな」


「切り抜き伸びそう」



笑い声。

誰も振り返らない。


残されたのは俺だけだ。

静かなダンジョン。


オークの死体が転がっている。

血の匂いが強い。


俺はしばらく動けなかった。

パーティを追放された探索者の末路は、だいたい決まっている。


引退。

もしくはダンジョンで死ぬ。


俺は壁にもたれた。

石の冷たさが背中に伝わる。


ふと、地上の安アパートが頭に浮かぶ。

家賃の支払いは今月末だ。


探索者をやめれば収入は消える。

だが、【観察】持ちを雇うパーティなんてまずない。


天井を見上げる。

これからどうする。


探索者をやめるか。

普通の仕事を探すか。


それとも、別の道を探すか。

だが、俺のスキルは【観察】だ。


誰も欲しがらない。

俺は小さくため息をついた。


その時。

ポケットのスマホが震えた。


取り出して画面を見る。

ダンジョン配信アプリ、DungeonLive。


ヴァルキリーの配信通知だった。

桐崎たちは、もう配信を再開しているらしい。


画面には見慣れたサムネイル。

中央で笑う桐崎の顔。


おすすめ欄には、知らない探索者たちの配信も並んでいた。

新人、ソロ、初見攻略。


そんな文字が妙に目に入る。

俺はしばらく画面を見つめた。


配信。

ソロ。


今の俺には、他に何もない。


だったら――やるしかない。

あいつらが捨てたこのスキルで。


全部、ひっくり返してやる。

俺はスマホを握りしめた。



「……見てろよ」



小さく呟く。


なぜかその瞬間――

ダンジョンの“流れ”が、はっきり見えた気がした。


この時の俺は、まだ知らない。

この配信が――

すべてを変えることになるなんて。

面白かったらブクマしてもらえると嬉しいです

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