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あの果てしない空の果て  作者: kai
陽光掃討作戦編
46/46

46.あの果てしない空の果て

Tips:石動翔太の正体

石動翔太は有巣仁理の高校時代の同級生。

その正体は、チート能力を持ってこの世界に転生して来た異世界人。

本来なら彼が柊を倒す運命だったのだが、何故か同時に有巣仁理という因果ブレイカーが生まれたため白紙になった。

「やぁ。」

堂々と現れる石動翔太。

長髪の男は、余裕綽々といった表情で振り向く。

「やぁ、とはなんだぁ?礼儀がなってないんじゃねぇかぁ?」

「すまない。長話はしたくないんだ。」

男は反応する隙もなく、石動の剣の餌食になる。

「さて...」

そこで、スマホのアラームが鳴る。

「タイムリミットか。」

石動がその場から高速移動で消える。

直後、渋谷全体を覆う黒い結界が出現した。



「よぉ、柊。」

「有巣くんか。久しいね。」

胃の底を撫でるような重低音。

「その音......やっぱ神格実体だな。」

「まだだよ。まだ、もう少しだけ先だ。」

犯した罪の数々が柊の背筋を伝う。

重低音。

現時点では、圧倒的に有巣の方が強い。そのことを自覚し、柊におよそ1000年振りの緊張が走る。

「伏線回収の時間ぐらいはくれてやるよ。」

迷いなく『呪手』を破壊する有巣。

次いで、『紫陽花』も破壊する。その行動の底知れなさに、柊は怪訝さを覚えた。

「それ、壊して良いのかい?」

「そもそも外付けの力は嫌いでね。」

お前が使うような、と言いたげな有巣の瞳。

「柊。お前の目的を教えろ。」

「......私の目的は、世界の全てだ。世界の全てを手に入れる。そのために、君の力を借りるか、君より強くなる必要があった。」

有巣の左眉が上がる。

「綾取くんは惜しかった。あと一歩の所まで行ったが、君の能力(ちから)で洗脳が解けてしまった。長い時間をかけて仕込んだんだがね。」

風に煽られてスーツの裾が揺れる。

「陽杯教の作った神格基盤と、白井くんと無堂くんは失敗だった。霊力を基にしたからね。かなり長い年月を要したんだが、大事なのは年月ではなかったらしい。」

ネクタイを締め直す柊。

場の緊張が高まる。

「新城くんも失敗だった。結局、霊力は人体とは親和性が低くてね。酢漿くんはイレギュラーだけど、面白い物を見せてくれた。彼女のお陰で、ある可能性に思い至ったんだ。」

どこからともなく瓢箪を取り出す柊。

「悪魔だよ。魔界に棲息する、本物の悪魔。どうやら、受肉していない彼らの身体の組成が神格実体に近いということが判明してね。利用させて貰うことにしたんだ。」

柊が仮面を外す。すると、仮面の下から黒く変質した外殻が現れた。

「高密度のエネルギーによる肉体の変質。それに伴う自我の混濁と、現実の理解。やはり神格実体は本物の神!私は間違っていなかった!」

柊が両手を広げたタイミングで、有巣が指を鳴らす。

すると、瓢箪が割れて中から天道穂香が飛び出した。

「おやおや、せっかく捕まえたんだがね。」

大きく飛び退いて有巣の傍に移動する穂香。

「しかし、もう遅いんだ。」

抵抗も虚しく、柊が周囲の魔力を取り込み始めた。

同時に、穂香が苦しみ始める。

「ぐっ...!?な、なんで......!」

穂香から赤い塊が抜け、柊に取り込まれる。

「ッハッハ!頂くよ、君の切り札。」

結界が壊れる。

雑音。

瞬間、2人の前に現れたのは、天を穿たんとせん程の大きさの黒い球体だった。

雑音。

穂香の頭を頭痛が襲う。

雑音。

「有巣さん!有巣さん!!」

すぐ隣に居る有巣を認識出来ず狼狽える穂香。


「...っあ、頭...が......」

同刻、無堂らが居るアジトにも柊の影響が出ていた。

嘔吐する酢漿、涙を流す舵原、痙攣する新城。各々が身体に異常を抱え、阿鼻叫喚といった様子だ。


「有巣さん!!」

一方の有巣は仁王立ちのまま、思案を続けていた。

有巣が勘定していたのは、以降も柊レベルの神格実体が出現する可能性、天道レベルの能力者が現れる可能性、そして、有巣が柊を倒すための攻撃がこの世界に与える影響だ。

しかし、既に柊の周囲の空間が歪み、雑音は大きくなり続けている。

そんな中、有巣の思考を遮る声が一つ。

「やはり!やはり私の考えは間違っていなかった!!神格実体は本物の上位存在!本物の神!!全てわかる!!全て理解出来る!!全て感じる!!!」

「見てられないな。」

雑音が大きくなり続けている。

しかし、有巣は未だ正気を保っている。

「何が!何がだ!!私は全てを手に入れた!!私が!私が神になった!!!」

「違う。そんなモノは神じゃない。」

「違わない!!今となっては私が正しい!!!」

「お前はただ力に溺れ、知恵に溺れ、傲慢に浸って愉悦しているだけだ。そんなものに何の価値も無い。人間の“幸せ”は人間の姿でしか享受出来ないからな。」

「何を!!」

「お前は友達とドーナツ屋に行ったことはあるか。友達とソシャゲの話で盛り上がったことはあるか。友達と新幹線の車内でしょうもない話をしたことはあるか。」

「喧しい!消し炭にしてくれる!!」

高密度の瘴気が有巣を襲う。しかし、有巣は『 』の力で気張るまでもなくそれを止めた。

「やっぱ説得は出来ないか。」

「あぁその通り!私と君は分かり合えない!圧倒的な力を持ちながら、何故多くを得ない?!何故多くを望まない!!!」

「言い残すことは、それだけか?」

「答えろ!!有巣仁理!!お前は何故!欲に溺れない!!!欲で支配されない!!!」

これ以上の話し合いは無駄だ。仕方ない、と大きく溜め息をつき、有巣は右手を構えた。

「俺が、ひとりじゃないからだ。」

指の鳴る音。

瞬間、周囲が眩い光に包まれた。




「やぁ、有巣くん。久しいね。」

声を掛けられて振り向く有巣。

その先には、綾取廻が居た。

「随分と古い言い回しだな。平安人か?」

「ふふ。平安は遡りすぎじゃない?」

ハハ、と快く笑う有巣。

「そういえば、宮本ちゃんとは仲良くやってる?」

「まぁ、ぼちぼち。そっちは?」

「んー、微妙かな。」

腕時計を見て「あ。」と声を出す綾取。

「じゃ、私行かなきゃだから。」

「あぁ。お疲れ。」


柊との決着の際、有巣は能力を用いて「超常が存在した事実」を“0”にした。故に、現在の世界は能力、魔力、霊力、神器など、あらゆる超常存在が存在しない、ごく普通の日本である。


「ただいま〜。」

「おかえり!仁理くん!ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も〜?♡」

はぁ、と呆れ顔の有巣。

「それ、昼間に帰宅したニートに言うことじゃないだろ。」

「良いじゃん!不労所得でウハウハ!逆玉なんだから!」

現在の有巣は実家の火災により18歳で両親及び弟2人と死別したことで大学の学費が払えなくなり、バイトをするのも嫌なので大学を中退したことになっている。

奨学金の返済に追われ、アパートも追い出され、着の身着のままコンビニ前で途方に暮れていたら、パチンコ帰りの宮本双葉に拾われた。そして、その宮本は持ち前の才能と勝負強さを活かして、22歳という若齢にもかかわらず億単位の資産を築いた豪運の持ち主であった。

(...ま、能力があるから一人でもどうにかなったのかもしれんが。)

しかし、裏社会に身を投げると常に気を張る必要が出てくるため愚かなことである。故に、有巣は現状に甘えることにしたのだ。

「それでぇ...仁理くん......」

「んー?」

有巣の膝の上で、宮本は身体をくねらせている。

「結婚って...いつにする......?」

「んー、もうちょい先かな、流石に。」

「え〜そっかぁ......」

先程の記述からも察せる通り、有巣の能力と記憶は消えていない。しかし、能力があってもなくても変わらない宮本に、有巣は安堵していた。

「まぁ、あと2年ぐらいして、双葉が変わってなかったらな。」

その言葉に、宮本の表情が明るくなる。

「うん!約束ね!」

「あぁ。約束。」

机の上から財布とスマホを取り、玄関へ向かう有巣。

「じゃあ、俺コンビニ行ってくる。何か欲しい物は?」

「お酒!あとゴム!」

「はぁ...昼間からお盛んなことで。」

「えへへ。照れる///」

「褒めてない。」

扉に手を掛ける有巣。

「んじゃ、行ってきます。」

「待って!行ってきますのチューは?」

「良いだろ別に。」

「いや!する!」

「はいはい。」


「じゃ、行ってきます。」

「気を付けてね。」

「はいはい。」

やれやれ、と言わんばかりの表情で扉を閉める有巣。

足取りは軽い。少し長いコンビニへの道も、いつもより楽しく感じる。

人生を捧げた趣味も、積み重ねも失ったが、以前は知らなかった愛を知っている。きっと良くなる、そう感じていた。


次の瞬間、激しい目眩が有巣を襲った。


視界が明転と暗転を繰り返す。


不快感に耐えきれず財布を取り落とし、有巣はその場にしゃがみ込む。


強く目を瞑った次の瞬間、ふっと楽になった有巣は、目を開ける。


そこにはアスファルトではなく、明るい暖色の石畳。

「......は?」

顔を上げると、見慣れない顔立ちの人や獣人などが往来している。

「嘘だろ......?」


世の中は上手くいかない。

「仁理くん!スマホ忘れて...る......」

最も被りたくない不運は必ず、幸せな時に訪れる。

「財布......?誰かが落としたのかな......?」

世界はいつも残酷で、不平等である。

「有巣仁理?誰だろ......ま、いっか。お酒お酒〜♡」

Tips:能力の無い現代日本での〔削除済み〕探偵事務所メンバー

・舵原良也:能力の無い社会では有巣が東京に来る必要が無い。高校時代に有巣と出会わないため小学校で虐められた際に発症した人間不信が治らず、高二の夏で入水自殺。


・無堂瑞希:柊の仕込みが無いため死産。


・天道穂香:同い年の女の子と運命的な出会いをして高一の春に軽音楽部に入部。そのまま4人でバンドを続け、穂香のギターの実力とベースの女の子の統率力により有名なアーティストになる。しかしコミュ障は治らず、幸せだが独身のまま生涯を終える。死因はベースの女の子のタバコの火の不始末による焼死。享年は27。


・天道舞香:圧倒的陽キャなので従来通り沢山の友達が出来るし彼氏も出来る。しかし『超速再生』が無いので白血病で死亡。享年14。


・斑目詩織:なんやかんやで要領良く大学を卒業。一級能力者の任務も無いため勉学に全振りし、そのまま検察官に。良い感じに優しい夫を見つけ、子供も2人作って幸せを謳歌する。最期は寿命で死亡。


・白井響香:ヤバい男に引っ掛かりまくる。同級生に助けられる→元彼がストーカー化→警察のお世話に→また新しい男に引っかかるのループで心身が疲弊し、自室で首を吊って自殺。享年18。


・宮本双葉:持ち前の運の良さと勝負強さ、そして先見の明により不動産取引と株式で成功。好みの男の子もしくは女の子を引っ掛けて一途に愛しそのままゴールイン。特に不運に見舞われることなく寿命で人生を終える。


・綾取廻:能力が原因で虐められることが無いため、環境に順応し楽しく大学までを終え、幼少からの憧れだった警察官になる。運命的な出会いはしないものの、同僚から熱烈なアピールをされてそのままゴールインし、幸せな結婚生活を送る。しかし子供が2人出来たタイミングで追っていた殺人事件の容疑者に銃殺される。享年35。


・井桁蒼太:特にトラブルに巻き込まれることもなく平和に過ごす。持ち前の明るさと人懐こさによって周りに気に入られ、建築士として楽しく仕事をする。しかし良縁は無く独身のまま死亡。死因は職場で腹にチェーンソーが落ちてきたことだった。享年24。


・新城右玄:親の勧めとスカウトで何故か消防士に。面倒臭がりだが人助けの才能があったため、「普段は本気を出さないがいざとなると最強の男」として一目置かれている。特に危なげもなく寿命で死ぬ。


・酢漿菜々:能力が無いため中学時代の誘拐・強姦が打開出来ずそのまま男性恐怖症に。父に拒否反応を示した菜々を母が叱責したため対人恐怖症に。統合失調症を患って部屋に引きこもるも誰かに見られているような感覚に耐えきれず、恐怖を紛らわせるかのように過食を続け、齢17で餅を喉に詰まらせ窒息死。


・■■■■:記録無し

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