05 焼き芋
『あああああ! ヤマト少年の場のイモが一掃されてしまったぁ!!』
「さらにフォートレスの砲撃は相手の土壌を痩せた土地に変える!!」
「くっ!!!」
ヤマトは再び膝をついた。もうあとライフも残りわずか。
相手の場には難攻不落の大要塞。
土地も痩せ、誰が見ても絶望的な状況だった。実況も言葉を失う。
「なぁに。怖がることはないよ。命を獲ろうってわけじゃないんだ。キミたちはイモを失うだけの話だよ」
残忍な笑みだった。
そんなアキラを前にヤマトは--笑った。
「俺は川越のイモ農家の息子だ」
唐突にヤマトは言った。
「だからなんだというんだ? そんな痩せた土地でこれ以上戦えるとでも?」
嘲るアキラへ、ヤマトは笑ったまま、最後のターンの開始を宣言した。
「こんな痩せた土地でも育つんだよ!! ウチのイモならな!!! ターンをもらうぜ!!」
藁カゴが紅蓮に輝く。
ヤマトの手にひとつのイモが握られた。
根拠なく、ヤマトは確信していた。
絶大なるイモへの愛と信頼。
このドローは運命だ。
「ここからは地球のターンだ!!」
ヤマトが両手を大きく左右に薙いだ。
「紅赤! 紅あずま!! 紅はるか!!!」
現れたのは三つのイモ。イモの街、川越の誇る名産だった。
この試合、初めてアキラの顔に焦りが出た。
「な、なんだその奇妙な形状のイモは!?」
ポテトニアンは知らなかった。地球にはさまざまなイモがあるということを。彼らにとってイモとはジャガイモだけだったのだ。
「サツマイモってんだ! よーく覚えとけ、ポテトニアン!」
ヤマトの瞳に炎が宿る。
それは純粋な闘志。
それは不屈の精神。
それらに呼応するように三つのイモが、燃えた。
「燃えあがれ紅!!」
『これは、焼き芋だああああああ!!』
三つのイモが炎上げ、アキラに迫る。
だが、それを頑強なフォートレスが阻む。
「無駄だ! フォートレスはあらゆるイモの攻撃を--」
アキラの表情が凍りつく。フォートレスが炎に包まれたのだ。
「バカな!? ボクのフォートレスは無敵のはずだ!!」
ヤマトは拳を突き出し、吠えた。
「ジャガイモとサツマイモはまったく違う作物なんだよ!!」
そう。ジャガイモはナス科。サツマイモはヒルガオ科なのだ。
フォートレスが地面に沈む。同時にアキラのライフもゼロになった。
ポテトニアンフォートレスはその強大さ故に使用者のライフを引き換えにする諸刃の剣だった。
『決着ぅぅぅ!!!』
かくして、地球史上初の宇宙人との決闘は地球人の勝利で幕を閉じた。
正々堂々を信条とするポテトニアンは約束通り地球を去った。
地球のイモは守られたのだ。
こうして再び平和になった地球だったが、大きな二つの変化があった。
ひとつは、イモをエネルギーとした技術開発が本格的にスタートしたこと。
そしてもうひとつ。敗者となったポテトニアンの戦士、アキラ。
本名、アカリ・キタという少女が地球に残ったことだ。
十年後、ヤマトとアカリは地球初の星間結婚を果たすことになるのだが、それはまた別のお話。
『ヤマト少年! 一言お願いします! どんな戦いでしたか?』
「正直よくわかんないです。ただ必死で。でも、ウチのイモで世界が救えてよかったです」
イモは世界を救う。
氷川です。
ふざけすぎました!!
焼き芋のテーマがあまりに思いつかなくて、昼休みぼんやりネタノートを開いていたんですよ。
最初のあたりのメモは、過去作で登場したバンシー&デュラハンのバカップルことバン&ユーラで焼き芋の話でも書こうかなと。
多分、ユーラが焚き火の中に頭を落としますね。
このあと、急にTPGという謎の単語が書き込まれます。
ポテトニアン星人というキーワードが登場。本作のプロットがここから一気に完成したというわけでした。
設定上使われませんでいたが、ヤマトくんは長芋と大和芋から名付けています。サツマイモ関係ないな。
「土壌を変えるぜ!」とか「そんなpHの低い土壌でイモが育つわけが!?」とか謎のセリフの跡があります。
芋煮三原神vsポテトニアンチップスワルキューレとかも最早謎です。ヤマトロロンとか、ヤツガシラオロチとかどうするつもりだったんだろうか。
ともあれ、氷川バカだなあ……と思っていただけたら、ちょっと嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました!