いざ皇国へ
「エルザ様、ルード様からお手紙が届いていますよ。」
「え?メンシスから??」
エルザは、皇国に行くための準備を自室でルルと一緒にしていた。まだ時間はあるが、旅の期間が長く必要なものが多いため、少しずつ準備を進めているのだ。
今回の封筒は、薄ピンクで淡く花のイラストが描いてあった。毎回違う柄の封筒を使ってくるメンシス。
相変わらず無駄にお洒落ね…
「は?何よこれ…」
手紙を読んだエルザは、ため息を吐きながらルルに手紙を渡した。
「どうされましたか??」
「これ、中身はルル宛よ。」
それを読んだ彼女は、なるほどと声に出して納得し、何かメモを書いていた。
「返信にはこちらを同封して下さいませ。」
「はいはい。ありがとうね。」
メンシスからの手紙には、今日学院で話した、建国祭の夜会で着るドレスについて書かれていた。
端的に言うと、『今日話した色で間違えないように侍女に伝えとけ。着るドレスが決まったら、大体で良いからデザインを教えて欲しい。』というものだった。
まったく信用ないわね、、。
…。
1回やらかしてるから、仕方ないか、、。
今回は頼れるアリスがいないしね。
ドレスと言えば、トマス皇子から、私とエミリアのドレスを皇国側で用意しようという嬉しい打診があった。ドレスは嵩張るから長旅で持参するのは大変だろうという配慮だった。
お願いしようかなと思ったら、瞬殺でメンシスとマルクスが断っていた。それを見たトマス皇子はまたケラケラ笑っていた…。彼のツボは良く分からないわね。
毎日準備をしていたら、あっという間に出立の日となった。前日はたっぷり睡眠を取ったため、道中は起きていられる、はず。
私は、家族(主に、義父と兄)に戦場に赴く前のような盛大な見送りをされ、迎えに来た馬車に乗り込んだ。今回は私たち4人で1台、荷物と道中の世話をしてくれる使用人2名を乗せた馬車1台、合計2台で皇国に向かう。
御者には腕の立つものを用意してもらい、メンシスとマルクスは帯剣を許されているので、半分護衛扱いだ。ちなみに、同行してくれる使用人も女性だが、かなり腕の立つ人物達らしい。安全面に配慮した采配だった。
長距離用の馬車のため、室内は結構ゆとりがある。前回同様、男女で分かれて互いに向かい合って座っていた。
「エルザ嬢、席交換しようか?肩借りた方が寝やすいでしょ?メンシスの貸してあげる。」
「ああ、いいぞ。」
「エルザ様の隣は譲りませんよ。ちゃんと、エルザ様のためにブランケットと抱き枕用のぬいぐるみを準備してきましたの。横になってお休みになりたい場合は、私の膝をお貸ししますので、遠慮なくおっしゃってくださいね!」
「え、羨ましいんだけど…」
って、ちょっと待て君たち…
私が寝る前提で話してくれるなよ…
エミリアの用意周到さにはちょっとキュンとしたけど。
「寝ないわよ!ちゃんと起きてるから。初めての国外だもの。道中も含めてすべて目に焼き付けておきたいわ。」
馬車の旅は順調だった。そして、エルザも順調に眠くなってきた。
やばい、瞼が落ちる…
その度に頭を横に振り、頑張って目を開けた。
それを必死に繰り返す彼女の姿を見て吹き出しそうになったマルクスは、いつもの如く、メンシスにどつかれた上に、エミリアにも睨まれた。
エルザにバレないように、視線で会話をした結果、彼女を安心して寝かせるために3人は寝たふりをすることにした。
他の人も寝てるわねと思った瞬間、エルザは深い眠りについた。すかさず、エミリアはブランケットをふんわりと掛けてあげた。
馬車はその後も順調に進み、景色がどんどん変わっていく。旅の間は、道中に点在する公爵家の別邸に泊めさせてもらう予定だ。国境を越えれば、半日程度で皇都に到着する。
皇国では、皇宮の近くにある迎賓館に滞在することになっている。外国から来た学生だけでこのような所に泊まることは異例だったが、トマス皇子の口添えで決定したらしい。なお、彼がそれをした理由は、なるべく近くで皆を面白がりたいから、というひどく利己的なものだった。
馬車旅5日目、皇国入りした。お昼過ぎには皇都に到着する。概ねスケジュール通りだ。
「ねぇ、あれ何かしら?大きい建物ね、博物館?え、同じ服を着た人たちがたくさん入ってくわ…。え?これが学校なのかしら??あ、あの建物もかなり風変わりな見た目ね、何の施設だろう?」
「あぁ、あれは公人の施設だな。人数が多いから、ああやって皇城とは別の建物を設けているらしい。あっちの建物は…」
馬車の窓に張り付いて外を見るエルザ。疑問に思ったことをすべて口に出す彼女に、メンシスが丁寧に回答していく。
彼は諸外国の知識はひと通り頭に入っているため、なんなく答えることができる。
そして、答えやすいからという理由でちゃっかり彼女の隣の席を陣取っていたりする。
エミリアは渋々席を譲ったが、その割には、マルクスとの会話を楽しんでいるようだった。




