自分自身の幸せとは
予定通りルシア様は帰国した。あっという間の4ヶ月だった。その後、短い冬季休暇に入り、今は学院は休みである。
その間、変わったことが2つあった。1つ目は、殿下にランチを誘われるようになったこと。それも2人きり…。
最初は何を話して良いか分からなかったけど、殿下が上手くフォローしてくれて、今では少しくらいなら雑談を出来るようになった。それは、自分のコミュ力が上がったのではないかと勘違いしてしまったくらいに。うん、勘違いだけどね!
こうやって殿下と過ごす時間は増え、今までよりも確実に仲良くなっているはずなのに、なんでだろう。隔たりが大きくなる感覚がある。話せば話すほど、何か違うなっていうこの感覚。何が違うんだろう?この違和感の正体はまだ分からない。
2つ目は、メンシスがかなり忙しそうで、学院に来る日もまばらになってきたことだ。詳しくは聞いてないけど、家の仕事で多忙を極めているらしい。元々彼は首席であるくらい優秀で、将来の道が確約されている身だから、本来授業を受ける必要なんてないのだろうけど、、、なんだろう、単純に会えなくて寂しいという気持ちと、置いてかれるようなそんな不安を煽られるような気持ち。
2年生の後半になると、自身の進路のため学院を辞めだす生徒がかなり多くなるという。
結婚が決まっている者は、女主人の仕事を学ぶため婚約者の屋敷へ、騎士を志す者は騎士団に仮入団を、爵位を引き継ぐ者は領地経営を学ぶために現地へ。
そんな風に、進むべき道に合わせた進路を取る。
私はどうしたいんだろう。
何ができるんだろう。。
今まで、死なずに生きることしか考えておらず、どうやって生きていくかを考えてこなかったわ…
このまま誰かと結婚して子どもを授かれば、それが幸せ、なのかな、、。
そう思えたら、この世界に順応出来て楽なのに、それなのに、それで良いのかなって気持ちがどうしても消えない。
人の顔色ばかり気にして、拒絶されるくらいならと自分から周りと距離を取って、そうやって自分の色を見出せないまま中途半端に終わってしまった前世。
それをまた繰り返すつもりなの?
なんのためにココにいるの?
そんな声すら聞こえてくる。
このままでは何も変わらない。それは分かってる。
これは私の人生。自分だけの幸せを見つけて、それを自力で手に入れる。その努力を私は惜しまずにしないといけないのだ。他でもない、自分自身のために。
うん、そうだ。そうだよね。
自分のために、出来ることは全てやってやろう。
あら、考え込んでたせいでせっかくの紅茶が冷えてしまったわ…
ルルに淹れて直してもらおう。
ベルを鳴らそうとしたら、その前にルルがノックをして部屋に入ってきた。
「エルザ様、お手紙が届いてますよ。紅茶淹れ直しますね。少しお待ちください。」
一度退出したルルが新しい紅茶とお菓子を持って戻ってきた。改めて手紙を渡しに手渡すと、ごゆっくりと言い残してそのまま退出した。
花柄の透かし模様が入った白い封筒はとても可愛らしかく、差出人の名は、麗筆な字で『メンシス・ルード』と書いてあった。
は?メンシスからの手紙??なぜ?
内容を読むと、冬季休暇中、1日だけ時間を取れそうだから、そこで例のお疲れ様会をやろうというお誘いであった。
その内容にエルザは破顔した。
なにこれ!めちゃくちゃ嬉しいわ!!
考え込んでた沈んでたタイミングで、楽しいお誘いだなんて、、その場にいなくても私を励ますメンシスって本当にすごいわね…
ふふ、本当に楽しみだわ!




