好きな相手
「ねぇ、あの噂はまだ消えないのかしら?」
「『花の妖精と銀髪の貴公子』のお噂のことですわね。ふふ、、今も大変人気ですわよ!」
「エミリア、あなた嬉々として広めてないでしょうね??」
収穫祭パーティーで私たち2人のダンスを見た人たちが勝手に噂をしているらしい。ご丁寧なことに勝手に名前までつけやが、、つけてくださって!!
あれからもう1ヶ月以上経つというのに、噂というのは中々に消えにくいものらしい。って、身をもって知ってるけどね!
お互いに孤高の存在だったが、ペアを組まされたことをきっかけに一気に燃え上がった。
銀髪の貴公子の心を花の妖精のように可憐な彼女が溶かして、それが愛に変わっていった。
花の妖精のような彼女は銀髪の貴公子と金髪の王子を惑わせ、翻弄している。
私が知る限りでもこれだけある。きっと、もっと変な噂もたくさんされているのだろう。
花の妖精とか、柄じゃないからホントにやめてほしいわ。どこにファンがいるか分からないから気が抜けないじゃない。。
休み時間にそんなことをエミリアと話していたら、殿下がやってきた。
最近は用があるときは、入り口で声を掛けるのではなく、直接席まで来る形式に変えたらしい。些細なことだけど、私にとってはかなりストレスが減ったのでありがたい。
「エルザ嬢、突然で申し訳ないが、今日の放課後空いてないか?ルシア皇女がそろそろ帰国するだろう?だから、簡易的なお別れ会を開きたくてな。ただ、皆の都合が中々合わず、今日なら合わせられそうで、君にも聞きに来たんだ。」
「ありがとうございます、殿下。ルシア様にはとても仲良くして頂きましたから、ぜひ参加させて頂きたいですわ。」
「ありがとう。では、放課後生徒会室に来てくれ。よろしく頼むよ。」
殿下の話を聞いて思い出した。
そうだった。ルシア様、年末までの短期留学だったから、あと2週間ほどで国に帰ってしまうのだ。色々あったけれど、やっぱり寂しいって思う。せっかく仲良くなれたのだから、たくさん手紙を書こう。いつか皇国にも遊びに行きたい。
放課後、生徒会室に行くと、もうメンバーが揃っていた。
主役のルシア様と主催の殿下に加え、いつものアイザックにメンシス、それとアリスもいた。で、私だ。内々での催しらしい。
「今日は急遽声を掛けたにも関わらず、みな集まってくれてありがとう。もうすぐルシア皇女が帰国してしまうため、その前に皆で話せる時間があればなと思ってこの場を設けた。時間が許す限り、楽しいひと時を過ごそう。」
殿下の挨拶でお別れ会が始まった。
テーブルの上には、紅茶とお菓子が用意されている。皇国のお菓子も混じっているようだ。ひとつの大きなテーブルを囲うように皆で座っている。
「皆さん、こうやって私のために集まってくれてありがとう。最初はお兄様がいなくて不安でしたけど、今は、来られて本当に良かったって思いますの。せっかく仲良くなれたんですもの、もっとこちらにいたいくらいですわ。」
「ルシア皇女は嬉しいことを言ってくれるな。こちらもおかげで楽しく過ごせたぞ。月並みの質問だが、こちらに来て1番楽しかったことや印象的なことは何かあるか?」
「ふふ、それはもちろん恋ですわ!」
「は?」
さすがの皆さま!間抜けな声が漏れたのは私1人だけでした。アリスもやってくれると思ってたのに、、。
ちなみに、他の人は声を出さずに固まっていた。
「それは良いこと、だな?」
「ええ。人を想うことの儚さ、切なさ、愛しさを学びましたわ。まだまだ経験不足ですけどね、、。あっ良かったら教えて下さいません?皆さんはどうやって恋をしてることに気付きますの?その好きな相手にはどんな感情が芽生えます??」
お!!ぶっ込んで来た!と思ったけれど、いい質問ね。私もそれみんなの話気になる。とても勉強になりそう。
「そうですわね、、少し想像も入りますが、何をしていても相手のことを考えてしまう。例えば、美味しいお菓子を食べた時に、あの人にも食べさせたいなとか。そうやって頭の中を埋め尽くすようになったら、もう相手のことを好きになっているのではないでしょうか。その次はやっぱり相手の笑顔を見たくなりますわね。相手が喜ぶことを進んでしてあげたくなりますわ。」
最初に答えたのはアリスだった。
彼女の話にみんなが大きくて頷いて強い肯定を示していた。
確かに、好きになったらもうその人のことで頭がいっぱになりそうだ。
「私は、相手に対して、誰の目にも触れさせたくない、自分だけのものしたい閉じ込めてしまいたいって感情が真っ先に出てきますね。それで初めて好きなんだなって自覚します…冗談ですよ?ふふっ」
アイザックの言葉に全員が固まった。
そして多分全員がコイツ本気だ、と思っている。
エルザも皆と同じくそう思っていた。
アイザック、、見かけによらずかなり闇が深かったのね。見事なヤンデレだわ。マルクスとちょっと似てるかも。。
うん、後でエミリアに、気を付けてと伝えておこう。
「私はなんだろうな、、喜ぶ顔が見たくていろんな物をあげたくなるな。やはり笑顔はいいよな。」
…。
殿下の言葉に皆が心配になる。
悪女に誑かされて国庫を空にしませんように、と。
右回りの席順で話してきたので、なんとなく視線がメンシスに集まり、次お前の番だよプレッシャーがかかる。
「俺は…笑っていてほしいし側にいてほしい。その瞳を曇らせるようなことは、命に代えても全て排除してやりたい。出来る限り綺麗なものだけをその瞳に映してほしい。そう願う相手ですね。」
素敵な話!と思ったら後半結構重かったー!!
そしてやっぱり彼は過保護だわ。
うんうん、みんなも結構引いてますよ。
殿下とアイザックはかなり引いてる…てか、顔が引き攣ってるわ。。
え、ルシア様だけ目を爛々と輝かせてるのだけど、なぜに!?
脳内実況してたらあっという間に自分の番が来てしまった。。
大トリ緊張しますわ。
「私はまだよく分からないので感覚的なお話になりますが、きっと、その相手から大丈夫って言われたら心底安心できて、その人が頑張っていたら自分も頑張ろうって思える。悲しかったら肩を貸してもらって、次は自分の肩を差し出す。そんなふうに、利害を気にせず全てを分かち合える相手かな、なんて思いましたの。」
それを聞いたメンシスは一瞬目を見開き、その後眩しそうに目を細めた。
殿下とアイザックはなるほどと言わんばかりに大きく頷いている。
女性陣は…
「さすが、エルザね!言っていることがとても素敵だわ。もらうだけの関係より、お互いを思い遣っているのが深く伝わってきたわ。」
軽く殿下をディスったルシア。
「本当に、素敵なお考えですわ。お互いに支え合って成長できる関係というのは素晴らしいお考えですこと!」
目を輝かせたアリスが言った。
と、絶賛の嵐だった。
またエルザの噂が一つ増えそうな勢いである。
その後も話は盛り上がり、楽しいひと時を満喫した一同。
ルシアのお別れ会のはずが、本人の強い意向で恋愛志向大暴露大会に変わったこの催しは、終了時間を迎え、お開きとなったのだった。




