誤解でした
殿下のステップは、優雅さを見せるためにわざと大きめの一歩を取るようにしてるらしい。ややクセが強いが、都度こちらの身体をしっかり支えてくれているので、合わせにくさというものは特にない。そして味もない。
さっきのメンシスとのダンスの刺激が強過ぎたなーとぼんやり考えながらステップを踏んでいると、殿下に話し掛けられた。
「この前のジャム、とても美味しかった。改めて礼を言う。」
「いえ!素人が作ったものですから。それにあれは殿下から頂いた薔薇ですし。」
「あぁその時の話なのだが、エルザ嬢は私の周りにはたくさんの女性がいるというようなことを言っていただろう?」
「えっと、それはその…。」
「いや、責めているわけではない。誤解なく伝えておこうと思ってな。私が気にかけているのは、エルザ嬢、君だけだ。入学式の件は迷惑を掛けたが、あれも他でもない君だから声を掛けたのだ。むやみやたらにしていることではなく、ああして想いを伝えたのも君が初めてだった。」
「え…?」
「やはり気付いて無かったか。まぁ情けない私が悪いのだが。」
え、、、、え!!ちょっと待ってーーー!!
勝手に話を進めないでほしい。
あの日、本気で私に告白してたのか、殿下、、。
うそでしょ。。。
うん、やっぱり見た目通り真っ直ぐな方だったんだなと思うとそこは少しホッとするわ。
しかし、それはそれ、これはこれ。
こんなこといきなり言われても困る困る困る。
どうしたら良いのよ…
関わりたくない相手だと、鼻から拒絶してたけど、こんな真摯な心の内を見せられたら、無碍に出来ないじゃない…
真っ直ぐな相手にはきちんと正面から向き合わないと。ここでまた逃げたら、私は私のことを嫌いになってしまう。
それなのに、自分の気持ちが分からなくて、何も選択できない。
「こんなこといきなり言われて困ると思うのだが、どうか私に、君に近づくチャンスをくれないだろうか。」
「あの…、正直なところ、私は殿下の期待に応えられるか分かりません。そして、今自分がどうしたいのかも分かっておりませんの。そんな状態でも良いと仰るのなら、私に殿下の行動を制限する権利はありませんわ。」
「ありがとう。今の私にはその言葉だけで十分だ。改めて、これからよろしく。」
殿下は笑いながら言った。それは今までとは全く異なる、芯のある笑顔だった。
話しているうちにいつの間にか曲が終わっていた。私たちは互いに礼を取りその場を後にした。
フロアを出ると、先に退出したメンシスが待っていてくれた。
「疲れただろう?少し休憩するか。」
「そうね。」
私たちは壁際に並んでいる椅子に腰掛けた。その直後、メンシスがさり気なく飲み物を渡してくれた。いつの間に…
「殿下と随分話し込んでいたな。」
「うわ、、聞こえてた…!?」
「いや、声まではさすがに。なんの話をしてたんだ??」
は!!答えにくい質問No.2が来た!
誰々が私のことを好きだって言ってくれてー
なんて口が裂けても他者に言えないヤツ!!
「えっと、殿下と私の間でちょっとした誤解があって、それを無事に解消出来たよって話、かな。」
「なるほどな。」
さ、さすがは公爵家次期当主!!!!
これだけで言いたいことを理解してくれるだなんて…
本当に、彼の賢さには毎度脱帽ですよ。
「じゃあ、俺も頑張らないとな。」
「ん?もう毎日かなり努力してるんじゃない?あまり無理すると身体壊すわよ。」
「…。俺もまだまだだな。」
「???」
*************
「何か腹に入れるか?食べやすそうなものを取ってくるが。」
「ありがとう。でも、メンシスはそろそろ他の子と踊らなくて良いの?」
「ああ、問題ない。今日はもうお前以外とは踊らない。」
「絶世の美女が現れても知らないわよ。」
「望むところだ。」
そんなことを話した後、結局彼は、何か適当に取ってくると言って離席した。今日のドレスは動きにくいため、彼の気遣いがとてもありがたい。
飲み物を飲みながらメンシスの帰りを待ちつつ、休憩をしていると、声を掛けられた。
「美しき姫君、どうか僕と一曲踊ってくれないだろうか。」
「人違いですわ。私はルシア皇女殿下ではございませんわよ?」
姫君=皇女様と脳内変換したエルザが、反射的に答えた。
「ははっ!やっぱり君面白いね。」
え…だれ??
この人知らないんですけど!!!
ようやく殿下の誤解が解けました!!
何度も試みたのですが、うまく伝えられず、このまま物語終わってしまうのではないかと内心ヒヤヒヤしながら見てました笑
アイザックのおかげですね!!
読んでくださった方、いつもありがとうございます!!
とても励みになっております。
引き続きお付き合いのほど宜しくお願いします。




