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パーティーの始まり


控えていた楽器隊が一斉に構える。指揮者がタクトを振り上げる。その合図によって、王族の入場に相応しい盛大な演奏が始まる。


演奏が始まってから、クレメンス殿下とルシアが入場してきた。その前後には護衛騎士が配置されており、厳粛な雰囲気である。


殿下は王族の正装を着ている。白と金を基調にしたそれは、殿下の風貌をよく引き立てており、この会場にも負けない輝かしさを持っていた。


ルシアは、控えめな黒のドレスだったが、よく見るとシャンデリアの光でキラキラと輝き、光を当てた布は紫色にも見える。彼女だからこそ着こなせる、高貴な雰囲気のドレスだった。



2人はそのまま主賓の席に向かう。

席の近くに着いたタイミングでぴたりと音楽が鳴り止む。


その後、殿下は簡単な挨拶とルシアへの歓迎の言葉を延べ、会場は大きな拍手に包まれた。紹介されたルシアも挨拶をしたのち、着席した。



乾杯を終えた後、殿下とルシアはフロアの真ん中に立ち、ダンスの準備に入る。



そして、曲が始まった。



殿下は目の前のルシアに騎士の礼を取り、優雅に手を差し出す。ルシアは微笑んでその手を取る。


そのまま流れるような動作で、殿下がルシアの腰をホールドし、音楽に合わせて滑らかに踊り始めた。


それは息を呑むような美しさだった。


金髪碧眼の彼が黒髪の美女を見つめて、微笑みながら優雅にステップを踏む。さすがは、王族と皇族、ステップのひとつひとつに余裕があり、気品溢れるゆったりとした動きだった。


殿下の腕の中で踊りながら、時折ルシアが流し目で殿下を見つめるたび、会場から歓喜の悲鳴が上がった。




「はぁ。なんて素敵なのかしら。」

両手を胸の前に組んだまま、2人の踊る姿に見惚れて、心拍数を上げるエルザ。


「なんだ、殿下に見惚れているのか?」


「ん?どちらかというと、ルシア様の方かな。お美しいもの。」


「ならいい。」



2人は次の出番に備え、フロアのすぐ近くで待機している。緊張している雰囲気はない。



演奏と共にダンスが終わる。

会場には割れんばかりの拍手が鳴り響く。殿下とルシアがフロアを去った後もしばらくその拍手は続いていた。次はいよいよエルザ達の番だ。



え!!!

この雰囲気の中で踊るの!?

うそでしょ。。辛すぎるんですけど。。



一気に緊張してきたエルザ。

こんな雰囲気を作り上げた殿下に軽く殺気まで湧いてくる。


「出番だ。行くぞ。」

いつもの表情でメンシスが手を差し出した。


「はぁ。あなたは緊張とは無縁そうで羨ましいわ。」


「緊張する必要などない。俺に任せて俺だけ見ていればいい。」


「そうね。パートナーの顔をちゃんと見るのはダンスの基本よね。ありがとう。初心を思い出して、なんとかやり切るわ。」


「…。」


緊張しているエルザには、言葉の裏を読む余裕は全くなかったらしい。




2人でフロアの真ん中に立つ。

音楽が始まる前に、メンシスが動いた。



ん?音楽はまだよ?どうした、、??



ゆっくりとその場で跪き、エルザの手を取り、そのままの姿勢で彼女を見上げて言った。


「今宵、この会場で誰よりも美しい貴女と最初のダンスを踊る栄誉を私に頂けませんか?」


そう言いながら手を握ったまま真摯な瞳でエルザを見つめるメンシス。


「こ、こんなの聞いてないわよ、、もう!」

羞恥で顔を赤く染めながら、照れ隠しに、小声で言い返してしまったエルザ。


そんなことはお見通しばかりに、メンシスが柔らかく微笑んで、優しい声で言う。

「で、返事は?」


「え、えぇ、喜んで。」


「よろしい。」

そう言ってにっこりと笑顔を向け、握っていたエルザの手の甲に口付けをした。



「!!!!」

「「きゃああああああああああ!!」」



エルザの声にならない声を掻き消すように、フロアから悲鳴が上がった。


ちょ、ちょっとーーーー!!!!

こんな公衆の面前で何してくれてるのよ!

聞いてないわよ!!!!


心中では叫びまくっているが、もう何も声には出せないエルザ。



メンシスは立ち上がって、エルザの腰に手を添えて引き寄せ、踊る姿勢を取る。もうエルザは心臓の高鳴りが大変なことになっており、彼にされるがままだ。

そのままの姿勢でエルザにそっと呟く。


「だから言っただろ?俺に任せとけって。」


メンシスが楽器隊に目線を送り、演奏を始めさせた。


今2人のダンスが始まる。




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