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フォックスの翼  作者: ジョニー
第1章
43/46

43.公園のクマ

43


「狐野様ですね、お荷物をお預かりしています」


翌日、昨日より更に豪華な朝食バイキングを食べていた僕は、ホテルのフロントに呼ばれた。


笑顔を振りまくフロントマンは、切手の上に判子が2つ押された茶色い封筒を僕に手渡した。


渡された封筒の裏面には、差出人の名前の代わりに笑った猫のマークのスタンプが押されていて、誰からの荷物かは聞くまでもなく、中には原稿が一枚入っいて、右端に小さく13とページ数が振られていた。


♢♦︎


公園こうえんいたキツネさんは、くちでコトリさんの羽根はねつけました。

「あれれ? 今度こんどは2まいちてるぞ」

「グーグー」

「ん? なんだ?」

キツネさんが羽根はねひろっていると、とおくのベンチで、おおきなクマさんがイビキをかきながらていました。

「クマさん、クマさん」

「ん? おやキツネさん。どうしたんだい?」

「ここにコトリさんがませんでしたか?」

たよ。さっきまでここにすわって一緒いっしょにお昼寝ひるねをしていたんだ」

きつさんはクマさんのとなりすわりました。

「そういえば、コトリさんは、いまからあのやまのぼるってってたな」

クマさんはとおくにえるやま指差ゆびさしました。

「ありがとう、クマさん」

「またてね」

「わかった。それじゃあね」

キツネさんはやまかってあるきだしました。


♦︎♢


ホテルの外に出た。今日も蒸し暑くなそうだ。昨日の晩に下調べをしておいた「弘前りんご公園」行きのバス停に向け、僕は歩き出した。


20分ほどで目的地に到着したりんご園の入口。両脇に細い木がたくさんあり、それは多分、リンゴの木だろう。想像よりも遥かに低い。またその下には「ジョナゴールド」や「ふじ」などの品種が書かれた立て札があり、リンゴの甘い香りが僕の顔に当たった。


「こんにちは」


呼ばれた声に驚いて振り向くと、僕は自然に視線を上げてしまった。そうせざるを得なかったのは、彼の身長が190センチ以上あったからで、体格の良さ気な肉体は、ラグビー選手のそれに近い。二十代後半ぐらい彼は、白い歯を輝かせ、僕に笑いかけてくる。本当に彼に食べられてしまうかもしれない。


「君、大学生? こっちの人じゃないね?」


「あ、そうです。あの、ここで絵を描きたいんですが、いいですか?」


「大丈夫だよ。あとごめん、勘違いしてた。てっきり体験希望者かと思って」


「体験希望?」


「そう。今はまだやってないんだけど、来月からここでりんご狩り体験が始まるのさ。たまに開催月を間違えて来る観光客の人がいてね。君もその1人かと」


「そういうことでしたか」


「いきなり声をかけてしまって悪いね。お詫びに絵を描くには打って付けの場所を案内するよ。こっちに来て」


彼の影を踏みながら、僕は芝生の道を歩く。彼が案内したのは、小さな丘を登った先にある展望台だった。


「どうだい? いい眺めだろ?」


ドヤ顔のクマが腰に手を当てる。眼下にはりんごの木がずらりと並び、遠くにはそびえ立つ大きな山がこちらを睨んでいる。備え付けのベンチに2人で腰掛け、僕は質問した。


「あれは、何ていう山ですか?」


「岩木山っていうんだよ。大きいでしょ。でも、初心者でも比較的登りやすい山でね。リフトもあるし。山の南東に岩木山神社があるんだけど、そこが最近、パワースポットなんて呼ばれだしてね。県外から参拝に訪れる人が増えたみたいだよ」


「神社か…」


「僕としては、君にも是非一度、登ってほしいものだね。頂上からの景色は、ほんと、最高なんだ」


「そうなんですね。ですが、僕、一度も山登りしたことがないんです」


「そうなのかい?」


「体育系は、ちょっと。でも本当に登らなければいけないかもしれません。もちろん、強制ではないんですが」


「すごく複雑だね。まぁでも、君がもし、本当に山に登りたいと思っているなら、僕がアドバイスしてあげよう。山登りの先輩としてね」

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