ネノ
神の使いが消えてから5分ほど経つと、馬車がこちらに近づいてきた。
業者が馬車を俺の手前で止めると、中かな中年の女性が降りてくる。
「初めまして、新たなる『トリッパー』殿。私はランスのギルドマスターを務める、ネノと申します。此度は神の御使い様より貴方の保護を仰せつかりました。」
ネノと名乗った女性は、そう言って頭を下げる。
本当に言葉が通じるようだ。
「初めまして、ネノさん。私は柿野瀬 優と申します。神の使いと名乗る方から、この世界のどなたかが来ると聞いていました。よろしくお願いします。」
そう言って、ネノさんに向かって頭を下げる。
「ところで先程、新たなる『トリッパー』と言われましたが、『トリッパー』とは、私のように異なる世界から来た者のことでしょうか?」
「はい。もうすぐ夜のなりますので、説明は町に向かいながら馬車の中で行います。しかし。」
困った表情で俺の後ろにあったトライクに眼を向ける。
「そちらのモノについては、流石に馬車で運べそうにありませんので、どうしましょうか。」
確かに、トライクは馬車に乗せるには重すぎる。
「こちらに来たばかりで分からないのですが、これを入れて運べる魔法の袋などは無いでしょうか?」
そう問い掛けると、また困った表情をされた。
「過去の『トリッパー』達が、テ、テン、何だったかしら。」
「もしかして、テンプレでしょうか?」
「そうです。そのテンプレに大切なモノが無いと言われて、そういったモノの作成に取り掛かられたと聞いたことはありますが、出来上がったとは聞き及んでおりません。」
なるほど、どうやらそういったモノは無いのか。
「仕方がありませんが、これはここに捨てていくとしましょう。流石にこれで平原を走るのは難しそうですから。」
「そうして頂けると助かります。流石にその馬車を引く馬の用意はしていませんでしたので。」
「ん?」
「はい?」
何やら妙な発言が聞こえたが。
「えっと、これは馬を必要とせず、これ単体で走らせる事ができます。」
「そうなのですか?」
「はい。しかし、このような平原を走るように作られていないため、走っても凹んだ場所に車輪が入り込み、抜け出せなくなる可能性があります。」
「それなら大丈夫ですよ。」
ネノはそう言うと、トライクに手を向ける。そして、何かを呟く。
すると、トライクを囲むように円が出来上がり、神秘的な光がトライクを包む。
「今使ったのは、馬車に使われる魔法です。物を強く、そして軽くする事ができます。馬車などは馬で引きますし、窪みなどに車輪を取られて壊れる事があるため、丈夫で軽い方が良いんです。これで一度走ってみてください。」
そう言われて為、半信半疑でエンジンをかけ、平原を走ってみる。
少し泥がある場所でも車輪が取られる事もなく、衝撃はコンクリートに比べれば大きいものの、凸凹の平原でも走る事はできる。
「すごいですね。それと、魔法なんですが、衝撃を和らげるモノはありませんか? 少し衝撃が強くて、手が痺れてしまいました。そうだ。他にも燃料、ガソリンはありませんか? 流石に燃料が無いと走れませんし。それから、えーっと。」
この世界でトライクに乗れた喜びに興奮し、ネノさんに近づいて一気に問い掛ける。
興奮して質問を続けた挙句、辺りが暗くなってしまい、ネノさんに怒られてしまった。




