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をぐらのさうし 巻之弐十六  作者: 小椋夏己
2026年  6月

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たかえちゃん

 前回も書いた通り、今日は朝からちょっと忙しくてバタバタしてたんですが、テレビはずっとNHKの国会中継をかけてました。


 かけてても他のことしてるので、そんなにじっくりは見てないんですが、何やってるかとかは耳に入るし、気になるところは手を止めて見たりはしてます。今朝もまあ、なんというか、時間の無駄だなってこと言ってる人がいましたね。聞くところによりますと、国会一日やるのに3億円かかるんだそうで、そのお金使ってそんなしょうもないことしかやれんのかと、本格的にアホらしくなります。


 で、ですね、今回は内容は全く関係ないことなので、今回のタイトルの名前の国会議員さんとも全く関係のないことだと先に言っておきますね。お名前を見ていて私が勝手に思い出したことなので。


 タイトルにある、


「たかえちゃん」


 と呼ばれる女の先生が中学の時にいらっしゃいました。


 たかえちゃんは保健体育の先生で、何クラスかの保健体育とクラス担任を受け持っていました。保健体育の先生は男女合わせて何名かいたんですが、たかえちゃんはその中で一番えらいボスでした。他の先生がみんな一目置いているという感じの当時50代ぐらいかなあ、もしかしたら40代だったかも知れないけど、貫禄だけは半端なかったです。


 たかえちゃんを一言で言うと、


「怖い」


 みんな口を揃えてそう言ってました。


 幸か不幸か私は科目もクラスも一回も受け持ってもらったことがないんですが、中には女子で三年間ずっとたかえちゃんのクラス、もちろん保健体育もという子がいて、少々同情されてたりもしました。


 といってもたかえちゃん、怖がられてはいたけど嫌われてはいませんでした。その証拠に、卒業式の日に羽織袴のたかえちゃんの元に生徒がたくさん集まって別れを惜しんでいる姿も見ました。慕われつつも怖がられてたという感じなのかも知れません。


 たかえちゃん、私はそういう感じで直接関わりはほぼなかったんですが、3つだけ覚えていることがあります。


 1回は何年の時か忘れましたが体力テストの時でした。懸垂のテストでぶら下がって何分かを測るやつです。その説明の時にたかえちゃんがこんな話をしてくれました。


「ブラジルの高層ホテルで火災があった。その時に逃げようとしてマットレスをつかんで窓から飛び降りた人たちがあったが、そのほとんどの人は地面に落ちて助からなかった」


 なんでそんな話をするんだろうと思ったら、たかえちゃんの言いたいことはこうだった。


「その人たちがマットレスを離さないだけの握力があれば助かったかも知れない。その握力を鍛えるのに懸垂は大切」


 そう言ったんですが、高いホテルの上からマットレスつかんで飛び降りて、それを離さなかったからといって助からないんじゃないだろうかと思いました。もちろん、たかえちゃんにそのことを言えるわけもありませんが。


 2回目はなんでか教室で栄養の話をしてもらった時です。教科書だったか副読本だったかに載っている、食品の栄養について書いてあることを説明してくれてました。その時に、乾物にしたら栄養が高くなるみたいな話をしていてこんなことを言いました。


「イカなんか生だと100グラムでこのぐらいの栄養があるけど、スルメにしたら同じ重さで何十倍もの栄養がある」


 グラムで量ったら、たとえ同じ栄養しかなかったとしてもスルメの方がはるかにたくさん含んでるのは当たり前じゃないだろうかと思いましたが、もちろんたかえちゃんには言えませんでした。


 3回目は修学旅行前に体育館に学年全員が並べられて、色々説明とか受けていた時です。たかえちゃんがこんな質問をしました。


「中学生にもなると、お風呂上がりや寝るまえに女子は色々顔に塗ったりすると思う。そこから順番に何を塗ってるか言いなさい」

 

 指さされた女子は順番に「化粧水」とか「乳液」とか色々言ってたんですが、何人目かの子が「何も塗ってません」と言ったら、


「そう、中学生ぐらいの若い子は何も塗らないのがいい。それが一番です」


 と言ったので、だったらなんで何を塗ってると言わせたんだろうと思いました。みんな必死にどう答えるのがいいか考えてたようですし。


 という感じで、なんかどっかちょっと抜けてるような感じだったんですよね、たかえちゃん。水曜日の午後の「学科クラブ」の時には「なぎなたクラブ」の顧問で、かなり厳しく指導している姿しか見てなかったもので、本当に怖い先生だと思っていたんですが、この3回でかなりたかえちゃんに対する評価が私の中では変わったものです。


 そして卒業式の時にたくさんの生徒に囲まれてにこにこしているたかえちゃんを見て、その時になって直接関われなかったことがちょっとさびしかったなあ、とか思った気もします。いや、本音を言うとやっぱり怖い先生にあたらなくてよかったという気持ちの方が大きいですが。


 テレビで見た国会議員さんの名前を見て、ちょっと思い出してしまったというだけのお話でした。

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