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【完結】POD Enemy  作者: D-delta
エピソード1 強く生きる雛

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第四話 降り立った花

更新……ハッ!

 静かに歩いていく人影が一つ。その人影は小さな田舎街――ホルムスクにある田舎らしい建物の陰に隠れて移動していた。


「黒煙に集まっているようだな?」


 ぬるりとした物音がする度に辺りを確認し、警戒を行っている人影の正体は唯一生き残ったゼラニウム4だ。手には89式小銃を持っており、アイアンサイト越しに物音のする方を見つめていた。

 敵が通り過ぎたと判断出来るまで下手にその場から動かず、周りの様子を窺う。

 ここで交戦すれば最悪十匹以上の『PODE』と交戦してしまうことになる。ゼラニウム4はその最悪な状況をなるべく回避するために物陰に隠れた。


「…………」


 ぬるりとした音が行き過ぎるまでゼラニウム4は待つ。

かなりの数がゼラニウム4のいる場所が行き過ぎ、墜落した大型輸送ヘリに向かって行った。

 行き過ぎて行く『PODE』の中には初期のスライム状のものから人型、車型のものまでいた。幸いなことに戦車のような兵器類はなかった。これで交戦したとしても死ぬ確率は大幅に下がる。

大量の『PODE』が行き過ぎる姿を見ていたゼラニウム4はこれを好機と見て、足音を立てないように走り抜けた。


「……」


 次の隠れ場所に素早く隠れたゼラニウム4は無言のまま墜落の衝撃で無残にも壊れた無線機を取り出した。この状態で他の隊員と交信出来たものではない。

 彼は潔く無線機を捨てた。壊れているのでは役に立たないと判断したからだ。


「先に進む」


 冷静になって先に進むことを考える。今一度周りをよく確認、敵がいないことが分かると移動を開始した。

 なるべく車道は進まず、歩道や路地裏を進んでいく。もしも敵が銃をコピーしている状態で交戦に入っても物を盾に出来るからだ。


「……?」


 彼の耳に女性の「助けて!!」という声が聞こえてきた。

 付近で誰かが助けを求めている。そう分かってくると、声の方へとゼラニウム4は急いで移動し始める。足音がかなり目立ち、今にも『PODE』を引き寄せてしまいそうだが、彼はその足音よりも人命救助の方に思考を優先させた。


「あ……ぁぁ!」


 声にならない悲鳴が上がる。

 近くで聞き取ったゼラニウム4は声のした方を辿って行った。そこで彼が目にしたのは蹂躙されながら全身を取り込まれている最中のアイーラとゆっくり取り込まれる恐怖で苦しんでいるレイテットだ。


「……!」


 一刻でも早い救助と救助者の安全のために89式小銃の銃口を下に向け、ナイフを取り出す。そのまま急ぎ接近してレイテットの全身を取り込もうとしている『PODE』の『シールド細胞』にナイフの刃を突き立てる。

 ナイフが刺さった『シールド細胞』は血を流し、その形を崩していく。


「へ……?」


『PODE』の形は崩れ、蒸発する。

 レイテットは死の恐怖から解放されたように顔を上げた。視線の先にはゼラニウム4のガスマスク姿がある。その内にレイテットが〝助かった〟と認識出来てくると、生きているということを噛み締めて恐怖の抜け切らない笑みを浮かべた。

 それを余所にゼラニウム4はアイーラの身体全体を取り込んでいる『PODE』に目を向ける。しかし面倒なことに丁度『シールド細胞』とアイーラの身体が重なっていた。この状態でナイフを突き刺せば、アイーラをも死傷させる可能性を孕んでいる。

 ゼラニウム4はそうならないように移動して、重ならないようにナイフの切っ先を『PODE』に向ける。


「コイツ、人を食った個体だな」


 ゼラニウム4にそう言わせるほどアイーラを取り込んだ『PODE』は賢い。この『PODE』はナイフの切っ先がアイーラと重なるように『シールド細胞』を移動させていたのだ。

 アイーラが完全に取り込まれ、消化されるまで時間がない。


「迅速に、確実に」


 ゼラニウム4はアイーラを取り込んだ『PODE』の体内に無理やり手を入れ、迅速に『シールド細胞』を鷲掴みにした。これでもう『シールド細胞』は逃げられない。ゼラニウム4は確実にナイフを突き刺して『シールド細胞』を破壊する。


「アイーラ!」


『PODE』は蒸発。アイーラが解放されると、レイテットは心配するように声を大きくした。

 ゼラニウム4はナイフを戻し、呼吸困難に陥っているアイーラを助け起こす。


「アイーラ!!」


 レイテットの声で意識をハッキリさせたアイーラは口の中に入っているスライム状のものを吐き出した。大量に飲まされていたのか一分ほどしてようやく全てを吐き出した。


「こほっ……レイテット?」

「私たち助かったよ!!」


 助かったことにはしゃぐレイテットは生きていることが嬉しいようにアイーラに抱きついた。アイーラは静かに「うん」と返して抱きしめ返す。

 嬉しさの声が広がって行く。


「ここは危険だ、ひとまず逃げるぞ」


 ガスマスクを被り、冷静な口調でゼラニウム4は話す。

 しかしレイテットは「でも、あの黒煙のところにいる人を助けに行かなきゃ!」と正義感に身を任せた。アイーラはレイテットに乗るようにうんうんと頷く。


「あそこで生きていたのは俺だけだ」


 ゼラニウム4は味方の死体をふと思い出し、述べた。


「そう……なの?」

「あぁ、そうだ」


 ゼラニウム4の鋭い目がレイテットの意志の強い目と合わさる。

 目が合ったところでゼラニウム4は軽くレイテットとアイーラに自らの状況を説明した。


「俺はサハリンに派遣されてきた対特殊災害チームの自衛隊員だ。大型輸送ヘリでホルムスクに行く途中で『PODE』の攻撃を受け、墜落した。生き残っていたのは俺だけだ」


 理解出来た二人はそれぞれ落とした武器を拾い上げた。缶詰めの入ったレジ袋はバケツを被り直したアイーラが持った。


「一つ聞きたい。ここはどこだ?」

「ホルムスク」

「既に目標地点に着いていたか」


 ゼラニウム4の質問にレイテットが即答した。

 顎に手をやった彼は質問を考えようとしていたが、それを遮るようにアイーラが「早く帰りたい、お腹空いた」と言い放った。

 ゼラニウム4の鋭く純粋な殺意のある目がアイーラに向く。


「な、なんだよ」

「特になんでもない」

「な、なら見てくんなよ」

「分かった」


 猫のように警戒心丸出しでアイーラはゼラニウム4を睨み、睨まれているゼラニウム4はアイーラから目を離した。


「とりあえずさ、家に帰ろう? そっちの自衛隊員さんも一緒に来て、せっかくの生存者なんだから私たちの家に案内するよ!」


 底抜けに明るい声のレイテットがゼラニウム4の手とアイーラの手を引っ張って走り出す。手を引かれた二人は釣られるように走る。

 走り、帰る先は山の方にある何度か改築されている和式の家だ。


「ようやく帰れる!!」

「カレー、カレー」

「…………」


 はしゃぐレイテットとアイーラ。そして無口でいるゼラニウム4。

 彼女らはゼラニウム4という新しい生存者を連れて、帰り道を走って行く。


更新するにも中々難しいもんすね~


2019/7/20 追記:流石に銃弾ではアイーラ諸とも貫通するだろう、と指摘はなかったものの自らで思ったのでナイフでの描写に修正しました。

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