文音 side1
青島文音は大学受験に失敗した。
高校生活すべてを勉強にあてていたはずなのに、滑り止めの滑り止めにしか受からなかった。
どうして私が、もっとできたのでは?
後悔をしてもどうにもならない。
とにかくぎりぎりで入学先を決めた。
そして親から一言
「寮に入りなさい」
お金もかからないし、何より友達の輪が増えると。
しかし文音は受験に失敗したショックでどうでもよくなっていた。
短い時間で準備するものをしていよいよ入寮式前日。
突然緊張が文音を襲ってきた。
高校生活を勉強に全て捧げてきた文音にとって唯一の息抜きが漫画やアニメだった。
そう、文音はオタクだったのである。
しかしもし、同室の子がこの趣味を理解してくれなかったら?
気持ち悪いと言われたら?
大学生にもなってそれはないと頭の中で否定するが実際にはわからない。
服装や髪形はオタクに見えないように、隠せるようになんとか今どきの子に仕立てあげてもらった。
しかし最近流行っている曲や芸能人など知らない。
ギャルだったらどうしよう、今どきの子だったらどうしよう。
怖くなって急いでテレビを見ながら今の流行りを吸収して行った。
「早く来すぎちゃった…」
ドアを開けるとまだ同室の子は来ていなかった。
そして部屋を見て驚く。
寮では二人部屋と聞いていたが、真ん中に襖があり隣の部屋が丸見えでそう、まるで4人部屋のようだったのだ。
「う、うそでしょう…?」
オタクであることを1人だけでなくもう2人隠さなければならないの?!
文音はこれからどうしようと思っていると同じ部屋のドアが開いた。
「あ、はじめまして」
「はじめまして…」
ドアから入ってきた子は想像していた通り今どきの女の子だったのである。
「あ、私青島文音、よろしく」
「私は柏木愛海。よろしく」
愛海の第一印象は今でも覚えている。
細くて、お金持ちそうで、なによりクールなイメージ。
ますますオタクだと言うことを言いづらくなる。
自分に仮面をつけたような状態で愛海と話し続ける。
「この部屋、なんだか4人部屋見たいだよね。」
「だよね。だったら4人部屋って書いといて欲しいよね。」
初対面でなにを話したらいいのかわからずあたりさわりないことを話す。
そしてふと愛海が持っていた荷物を見て文音は思いだす。
「あっ!私歯ブラシとか買ってない…」
ここでも買える物は買ってこなかったためいつか買いに行こうと思っていたのだ。
時間あるのかと時計を見ていたら愛海が言った。
「あ、ほんとに?じゃあ近くのドラックストア行く?」
「えっいいの?」
「いいよいいよ。行こう」
少しだけ二人の間の緊張感がほぐれる。
大丈夫、この子は良い子だ。
文音は直感で感じた。
出かける準備をしていると隣のドアが開いた。
「こんにちはー!」
元気良く入ってきた子を見て文音と愛海は挨拶をする。
「はじめまして、」
「はじめまして…」
そしてその女の子は笑顔で彩音たちの方へ向かってくる。
「私、上杉枝里!よろしくね」
「私は青島文音」
「柏木愛海。よろしく」
挨拶をし話をしていると時間が無くなってきた。
「あ、愛海ちゃん、ドラッグストアにいこう。」
「そうだね。」
枝里を置いていくことは申し訳なかったけれど、それよりもその日使うものを集めたかった。
しばらく無言で歩いてドラッグストアへ行く。
取りとめもない話をしながら買い物をして、そう、まるで”普通の”友達と買い物をしているようで私はとても嬉しかった。
気分良く帰って行くと残りの一人が到着していた。
しかし目を見開く。メイクぱっりちの顔に金髪の髪の毛。
まさしく私の考えているギャルそのものだった。
「よろしく…」
「よ、よろしく…」
とりあえず挨拶をしなければと笑顔で挨拶をするとぼそぼそと不安そうな顔で挨拶をし返してくれた。
話をしていくととてもシャイな子でなにより天然だった。
私の思っていたギャルとはかけ離れていたけれど、それでも暖かい彼女の雰囲気に私はとても安心した。
その日は昼から入寮式があり学校へ向かうこととなった。
しかしその移動中何を話せばいいのかわからず良い雰囲気ではない無言が続く。
それは入寮式が終わっても続いており、寮へ帰りご飯を食べ、風呂へ入ってもそれは同じだった。
何か質問をしたらそれに対して答えたり、返事をもらったりするけれどもそう長くは続かない。
質問も途切れ無言になる。
夜には一列に並べられた机といす。そこにそれぞれ座りいつのまにか携帯のメールを無言で打っていた。
この状況がいつまで続くのだろう。
どうやったら仲良くなれるのかな。
地元の友達にメールを打つけれども、不安が募るばかり。
これからの寮生活、不安の方が増していくばかりであった。
文音sideを担当します文音と申します。読んでくださった方ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!




