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第82話 すれ違う原因は。

エーコの言葉を信じていた騎士たちが狼狽え出す。


「お前ら誰に忠誠心を捧げて騎士になったんだ!目の前にいる得体の知れないものか!?

今こそ立ち上がり忠誠を見せろ!この脳筋どもが!!

考える脳みそないなら、上のいう通りに動けばいいんだよ!

みんなを誘導して落ち着かせろ!ダイアン!!」


セドリックが叫ぶと、メンドくさそうに頭をかきながら、ダイアンさんが『はいはーい』とか言いながらやってきた。


「全員持ち場につけ!先に怪我人がいないか確認し、速やかに混乱を収めよ!」


ダイアンさんの声に、騎士たちの声が揃う。

その声に会場の人たちもこちらを注目し始めた。


「今よ!!」


会場の端から、サマンサ先生が飛び込んできた。


あっという間だった。


サマンサ先生が一冊の本を広げ、何かを唱え始める。


アキラが苦しそうにその場にうずくまった。

そして、エーコも。


何が起こったのかわからない速さだった。


あっという間に、アキラとエーコはうずくまったまま、見つめあった。


「……こんなことで戻ると思っているのか?」


「……思っていないわ」


「……なら何がしたい?」


「……わたし、謝りたかった、エーコに。」


「相変わらず、謝れば許してもらえると思っているの?」


「そうじゃない……!」


「お前はいつもそうだ。自分がどれほどの偽善者かわかっている?

アンタのその天真爛漫さにどれだけムカついてきたか……!

いつもそう。何をした覚えがなくても、ワタシの機嫌が悪くなったからって謝られて。

結局それって周りから見たらワタシが悪い人になってるって気がつかないの?

ワタシだってうまくいかなかったり、失敗したら落ち込むのよ!

それを機嫌悪いのはワタシのせいだって謝られて、周りにはワタシが八つ当たりしたかの様に取られて……!」


そこまで言うとエーコは黙った。

そして深呼吸をすると。


「アンタがいるとペースが崩れる。もう二度と会いたくない。

ワタシの邪魔はしないで。

なぜいつもこっちの都合考えないんだろうか?

謝りたいなんて自分のエゴだって気がつけよ!」


エーコの姿が黒い煙に揺れる。

まるでエーコの形をぼやかすかの様に。


それに同調してアキラは緑色に包まれ、形がぶれた様に見えた。


アキラはずっと泣きながら、『ごめんなさい』と呟き続けた。


自分が一番大事な人の気持ちを気がつかず、傷つけたことを知ったせいだろう。

魔王の姿でハラハラと涙を流し、エーコを見つめ続けた。


「んなことで邪魔されても困るのよ。

もう時間がない、急がなきゃ。」


エーコは静かに目を閉じた。


ユラユラと自分を形取った線がブレていく様に。

ドンドンとエーコは黒く染まっていく。


「……これはサマンサがやっているの?」


エーコは目を閉じたまま、そういった。


「……動けなくしてるだけ。そんなことはできない。

コレをやってるのは、エーコ、あなた自身だと思う。

姿が動揺とか怒りで維持できなくなっているんじゃないかな……」


サマンサ先生の答えに、納得したかの様にため息をついた。


「……ますます時間がないことがわかったということね……。

いいわ、姿を返してあげる。

もうこの姿はいらない。」


「エーコ!?」


アキラが叫んだ。


「何?嬉しくないの?返して欲しかったんでしょ?

返してあげるわよ、『精霊王』さま。」


「姿なんてどうでもいい!エーコ、何しようとしているの!?

まさか死ぬとかないよね!?」


「バカ言わないで。まだワタシの願いは達成していない。

死んでなるものか……!」


それでもアキラは不安そうにエーコを見つめる。


そんなアキラを見てエーコは笑った。


「もうすぐヒロインに会えるわよ?やっとね。

会いたかったんでしょ?」


「……エーコ?」


「コレで世界は元どおりよ。ねぇ、嬉しいでしょう?『ワタシタチ』の願いだったものね?」


エーコはクルクルと喉を鳴らす様に笑った。


そして。


話終わると同時に、エーコとアキラを形取っていた光が、輪郭を露わにさせる。


そこには。


魔族と呼ばれたアキラの姿は緑の光に包まれた元あるべき姿と戻った。


ふと、自分の姿をまじまじと確認し、エーコを見る。


光が弾けたと同時に、エーコの姿はそこにはなかった。


アキラがエーコを呼んで叫んだ。


会場の人々はアキラの姿を見て、ひれ伏すのだった。



「エステル、無事!?」


セドリックが私に手を伸ばした。


「ぶ、じ?と思う。」


なんだかよくわからない返事に、ワタシの頬を思いっきりつまんだ。


「いひゃいいい!なにひゅるんらよ!」


「相変わらず伸びるほっぺだなぁと思って!」


べちんと頬の手を払いのけ、痛そうに頬を自分で撫でる。

相変わらず私の扱いひどいんですけど!?


恨みがましく睨みつけると、嬉しそうに顎を突き出した。


「とりあえず、エーコはどうなったの?エリオットはどこ!?」


「エーコは消えた。多分エリオットたちのとこに飛んだんだと思う。」


セドリックはそう言うと、サマンサ先生に声をかけた。


「先生、エーコの魔法を追える?」


先生は頷いた。


「出来るよ、微量だけど。必死だったから隠すこともできなかったんだろうねぇ……。

待ってね、今やるから」


先生はそういってまた魔法を唱え始めた。


セドリックは私をポンと後ろにいたリオンに突き飛ばした。


「エステルを頼む。僕は今から後処理しなきゃだから。父上に喝を入れて、母上を叩き起こして、エリオットを探さなきゃ。見つかったら言うから、控室にいて。」


「セドリックとりあえず休まなきゃ!ご飯食べてないんでしょ!?」


「……そう思うならなんか作って持ってきて?

重いのやめてね、軽食ね!」


「……あ、はい。ワカリマシタ」


「とりあえずみんなそのお揃いは着替えてね。僕だけ仲間はずれみたいで、やなんだけど?」


そしてフンとそっぽを向いた。

それにみんなが吹き出した。


空気が変わる。


そこから落ち込むばかりの空気ではなく、前向きに協力しようと動くものが増えた。


会場に残った人たちは、自分が見て怯えてたものが、実は精霊王だったと気がついて、複雑な思いを寄せていた。

もちろん王様に関しても。


セドリックに連れられて、奥へと引っ込んで行ったが、憔悴しきっていて見てられなかった。

目の前で王子が誘拐されたのだ。

自分が信じて疑わなかった存在によって。


セドリックは顔色が悪く、立ってるのもやっとだったが、凛としていた。

誰よりも、しっかりと。

誰よりも、立派だった。


私たちは控え室へ戻り、侍女に用意してもらった服に着替え、厨房へ行き消化のいいものを手伝って貰いながら、作った。


流石にね、王子に出すものなので…シロウト満載の我々の手作りは出せません。

ちゃんとシェフ監修です。

いえ、ほとんどシェフです。

……ちゃんと運ぶ仕事を全うさせていただきます。


私たちが戻った時には、既にサマンサ先生を中心に捜索の場所が絞られていた。

転送を繰り返しただろうが、魔力は動けなくした時にサマンサ先生が吸い取っちゃったので、あまり残っていなかっただろうと、転送もすぐに絞り込めた様だ。


次にエリナとエリオットの魔力を探る。

そこにエーコの魔力が重なる場所を、照らし合わせ、探していく。


その間セドリックに食事をさせる。

『あーん』とかわけわからないことを言いやがったので、ビクターにさせた。

ひと口ですぐ、自力で食べだした。

自分で食べれるなんて、元気が出てきた証拠ですね!

よかったよかった。


誰もみんな不安な心をプラスに変え、前向きに考えていた。

きっと無事に会える。

エリオットにも、エリナにも。

そう信じて。


リオンとビクターは会場の誘導の手伝いに行った。

客人をみんな落ち着かせ、馬車に乗せていく。


みんな何か思うことがある様で、エリナとエリオットの無事を願いながら帰路についていった。


コーディとマギーも、私も。

出来ることを手伝おうと、騎士たちや急遽城のために集まってくれた貴族や大臣達に軽食を運んだ。

仮眠用のリネンを配ったり、出来る限り手伝った。


みんなが落ち着いてきた頃、空が白々と開けてきたので、3人で仮眠をとることにする。


正直眠れなかったけど、それでも寝なきゃ!体力つけるために食べなきゃ!って。

元気を奮い立たせて頑張った。


気合いが切れると、泣いてしまいそうだったから。


鼻の奥がツーンとする。

それをずっと耐えていた。


私が控室のソファーでウトウトしていると。

ふと長い髪が私に触れたので目を覚ました。


「……エステルさん?」


「……はい。」


「……起きてますか?」


「起きました……。」


眠い目をギュッと無理やり開けて、見つめる。


私を見つめる人はアキラだった。


「……どうかしましたか?」


すっかり精霊王に戻ったアキラさんは、ちっとも嬉しそうではなかった。

それどころか辛そうに俯いていた。


「……アキラさん?」


「すいません、どうしても、エステルさんと話がしたくて……。」


「……どうしましたか?」


「えっと、ごめんなさい……わたしのせいで、エリオット王子が拐われてしまって……お詫びしたくて……」


俯いたまま、ずっと途切れ途切れに喋るアキラを見つめていた。

なんとなくだけど、エーコの言葉を思い出した。


「アキラさん、あのね。

傷つけるかもしれないけど、思ったこと言ってもいい?

聞くか聞かないかは別として、大事なことだと思うので……。」


「……それは、是非。はっきり言ってください。」


アキラは悲しそうにうつむいたままだった。


「何でもかんでも自分のせいだと思うことをやめませんか?」


「……え?」


アキラが顔を上げた。

多分何か思っていたのと違うことを私が言い出したからだろう。


普通だと『私のせいで、ごめんなさい』と言われたら『いえいえ、あなたのせいではないですよ』と社交辞令でも、そう思ってなくてもいうのが体裁。

面と向かって『あなたのせいです』なんて思っていたとしても言える人の方が少ないのだ。


例えば自分がしでかしたことではないのに謝る人が居たとしたら。

天の邪鬼な私なら『この人はとりあえず自分を卑下し、謝って自分をいい風に見せたいだけでは?』と思ってしまうかもしれないということ。


多分この積み重ねで、初めはいいよと流せた事が、積もり積もると恨みにもなりかねないという事だ。

エーコが言いたかったのはこの部分なのでは?と思った。


『あの人は悪くないの、全部私が悪いの』ヒロインが持つ特性の一つである。


これによって、これを『は!?』と思う人が悪者になり、『可哀想に』と思う人に攻められるということを理解していない。

アキラは無意識にこの特性を持っているのかもしれない。


今私に言われた言葉をじっと考え込んでいたアキラが口を開く。


「わたし、そんなに謝ってますか?」


「いっぱい謝られたというより、今なぜ謝ったんですか?って聞いてもいいですか?」


「今謝ったのは、自分が原因でお友達がさらわれてしまったことを気になってしまって……謝っても謝りきれないんですけど……」


「うーん、なぜアキラさんのせいだと思ってますか?」


「えっと……、エーコを私が怒らせたから、エリナさんと王子をさらったんだと思って……」


「そっか……。でもそれは違います。原因は別にあるのでアキラさんが謝ることは何もないんです」


「……え?」


「原因ではなく、むしろ何も関係ないとしたら、アキラさんが私に謝るっていうのは全くお門違いというか……むしろなんで謝られているんだろうと複雑な気持ちが生まれて余計混乱しますね……。」


アキラはハッとした顔をした。


「……なるほど……。原因が別にあったなんて思いもしなかったです……。」


「なので、まず謝ることをひとまずやめましよう。それで、本当に自分が関わっているかを考えてからでも遅くないと思います。何でもかんでも自分のせいだと思うのも『謝罪』が軽いものになってしまいますよ?」


「……エステルさんは、すごい、大人なんですね……」


感心したように私を見つめるアキラ。

私は困ったように笑った。


「大人なんでしょうか?私は大人でも子供でもあって、どっちでもない気がしていますけど……。」


「考え方が大人です。勉強になりました……。自分のこと、全然わかってなかった。だから、エーコも傷つけたんですね……。」


アキラは寂しそうに笑った。


「エーコさんの場合は転生した状況の差による嫉妬が6割ですから、あまり気にしないでいいかも?……と言っても気にするでしょうけど。でも後の3割ぐらいはアキラさんが原因です。」


「わたしが、3割……」


「酷なことを言ってすみません。でも、知らず知らずにエーコさんを卑下させる気持ちを与える行動をしたんだと思います。エーコさんとの関係が修復できるかをずっと、相手の気持ちを考えず押し付けていたのではないでしょうか……?

もうエーコさんのことが本当に好きなら、追わず遠い位置で見守ってあげるのがいいかとは思います。」


「そうなんですね……。」


「反省は成長するチャンスだと誰かが言ってました。

まだまだ変われます、きっと。

まぁ私がいうには生意気すぎますね……」


誤魔化すように、テヘヘと頭をかいた。

アキラは真剣に考え込んだ。

そして。


「反省、したいと思います。もう押し付けない。そうか、相手の気持ちか……。

私は随分と自分勝手を繰り返していたのですね……

あんなに拒絶されても気がつけなかったなんで……。」


「今気がつけたので、きっと変われますね」


「……たしかに!」


アキラは寂しそうに笑った。

私も同じように笑い返した。


空はもう明けていた。

アキラを見送り、もう一眠りしようとしてる時に。


今度はリオンがノックもなしに入ってきた。


「……居場所がわかったみたいだ!」


眠かった頭が冴える。

慌ててリオンを追って、広間へと走った。





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