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第67話 コイバナしちゃう女子たち。

私は今森の中にいた。

そして。

私たちは全員、長距離の転送魔法に慣れていなかったため。

……グロッキーである。


ヤベェ、今なんかに攻められたらきっと負ける自信しかない。

おえぇ……。

コーディはレディとして気丈に振る舞っているが、顔色真っ青である。

我慢しないで転がっとこうよ……。


一見ボロいログハウスの様なところでの床で。

いいとこの坊ちゃん嬢ちゃんが、打ち上げられたマグロの様に転がっている現状。

正直面白いと思う。

私が元気なら、多分めちゃくそ笑っていただろう。


転がったリオンと目が合う。

同じこと思っていたのか、目があった途端『プハッ』っと吹き出した。

私も我慢しきれずに笑ってしまったじゃないか。

余計な体力を使い、またグロッキーが加速する。


……とりあえず、こちら側のみんなは無事である。


中は意外に広く、ずっと誰も使ってなかった割に、綺麗だった。

そそくさとリューさんたちは掃除をはじめる。

精霊は働き者だなぁと、転がっている自分が恥ずかしくなるが、どうにも動けず。


「ここは木々が古いので、精霊たちには過ごしやすそうな力が見えます……」


光合成をする様にアキラが両手をかざす。

もう日が傾きかけて、木々の隙間から射す光は僅かだが、アキラは気持ちよさそうに光を集めて浴びた。

それはとてもキレイで、思わずみんなの目を捉えて離さなかった。


日が落ちだした頃。

ノロノロとマグロが人間になった。

夕飯の支度をみんなで手伝いながら、キャンプを思い出し。

こんな状況なのにもかかわらず、ちょっとウキウキする私。

みんなでご飯とか久しぶり過ぎる。

妙にニコニコしながら、自分から進んでお皿を出したりと、すごいやる気が満ち溢れている子、略してやる子です。

メニューは質素にパンとスープですが、充分だった。


リューさんたち精霊は小さな家の周りを緑色のベールで覆い始める。

この場所を隠すための魔法らしい。

私とリオンとビクターが1個づつのランプを持って、地下にあるサマンサ先生のお父さんの研究室へとおりた。

サマンサ先生は……。


転移の魔法でここについてから、眠ったまま起きなかった。

アキラの話では、魔力を使い過ぎてしばらくは目を覚まさないのではと言っていた。

先生に無理をさせてしまった事に、とても心が痛んだ。


アキラの案内で地下に降りて。

本の量にまず驚いた。

これ全部先生のお父さんが書いた本なのか……。

サマンサ先生の研究室の倍はありそうな、高く積まれた本の壁に圧倒された。


「……これは手分けしても2週間で読める量じゃないし、お目当を探すのも難しそうだな……。」


ビクターが困った様に頭をかいた。


「……たしかに。でもやらなきゃだね……」


リオンがビクターを見つめ、頷いた。

それに答える様にビクターも頷く。


「とりあえずは、皆さん。

今日はもう休みましょう……。転送魔法で体力を削られていますし、夜も更けてきます。

今夜はセドリック王子が派遣してくれる護衛もいないので、外からの警戒の方に力を入れたいと思います。

サマンサが目覚めるまで、私たちで頑張りましょうね……。」


アキラはそういうと、ガッツポーズをした。


「私の側近たちがこの家を魔法で覆ってます。

今夜はこの家ごと気配を消したのですが、なるべく明かりは早めに消してください。

人にはバレませんが、獣には油の匂いでバレてしまうかもですから……。」


そう言われた途端、一斉に明かりを消してしまう私たち。


「……いや今消したら階段さえ見えないから!」


リオンがつっこんだが、消したのは君もでしょうが!という。

壮大なブーメランを投げつけられる羽目となった。

そのやり取りもまた、私は思わず微笑んでしまう。


とりあえずリオンと私の2つは再びランプを灯し、それぞれの部屋へと帰っていく。

部屋は男女に分かれて、私は3人部屋。

向こうも今は2人だが、セドリックが追いつけば3人部屋になるだろう。


あとはアキラと、サマンサ先生と、精霊たちとで別れた。

部屋はまだ余ってそうだから、護衛が来てくれたときまた掃除すればいい。


狭い部屋に大きなベッド。

3人でぎゅうぎゅうにくっついて寝ることにした。


「なんだか緊張感ない事を言うのだけど……、なんだかお泊まり会を思い出すわね……」


コーディがそう言って笑った。


「ええ、本当に。不安はたくさんありますが……少し楽しいと思ってしまう私がいるのです。」


マギーもそう言って笑う。


「……私もちょっと楽しい。自分でもわかるけどさ、みんなに会えてからすごいテンション高いんだよね。なんだか本当に嬉しかった。」


3人でギュッと手を繋いだ。

真ん中が私で、左右にマギーとコーディに挟まれて。

3人でくっつきながら、手を繋ぐ。

暗がりのベッドに3人で。

月明かりが窓からさすだけの明かりの中で、まっすぐ天井を見上げながら。

3人がまるで1つみたいな感覚になってくる。


「……なんとしても、この国を…世界を、あるべき姿に戻しましょう……。」


コーディが呟いた。


「……のをエリナも、ね。」


私も頷きながらコーディに続く。


「……ええ、エリナも元に。きっとエーコ様が負の存在だと分かれば、元に戻りますわよね?」


マギーも呟いた。


「うん、きっと。……きっと元に戻るよ。

そしたら私、エリナに言わなきゃいけないことがあるんだ。」


……そして謝らなきゃいけないことも。


「自分の気持ちを伝えるのですか?」


「……気持ち、かぁ。まだ本当いうとよくわかってないんだよね……。

誰が好きかと聞かれたから、自分の周りから選択する、……いわゆる消去法というか……。

その中で1番に思い出したのはエリオットだった。

もしかすると、エリナが騒いでたせいで頭に残っているだけかもしれない。

もちろんリオンもビクターも、……癪だけどセドリックも好きだよ。

でも、さ。

私がクリスマスちゃんにコップ投げつけられた時、1番に駆けつけてくれたのも、嬉しかったんだと思う。

じゃんけん婚約の言い訳をまだ聞いてないけどさ。


でもさ、今好きって認めてしまえば、きっと簡単にどんどん好きになるんだろうなというのも怖いし。

好きな気持ちって単純であって、単純じゃないから……恋して変わる自分も嫌で、まだ認めたくないって思っているところもあるんだ。

私が好きだとしても、向こうはわからないでしょ?

……こういうの、わかる?」


多分難しいこと言ってる気がするけど、言いたいことはそんな感じで。


「……要訳して、複雑な乙女心ってことですねぇ?」


そういうとマギーはニコニコと笑った。

……めっちゃまとめられたけど、その通りです……。


「……私も、サイラス様を初めて見た時、なんて素敵な方だろうって思ったわ。

でも、私には婚約者がいたので…すぐその感情は小さな箱にしまったの。

サイラス様って、初めは天使みたいな方だと思ってたのよ。誰にも平等に優しく、でも家族の絆をとにかく尊重したり。生徒会にターナーに呼ばれた時になどによくお見かけしてたんだけど、仕事も嫌な顔一つせずに着々とこなされて……。

でも時折見せる表情というか、実は生徒会のトップってターナーではないのでは?と思い出したの。

うまい具合に言葉で誘導しているというか……指揮してらしたのはサイラス様のような。

ターナーの事件の時に、ハッキリとわかったわ。サイラス様の笑顔の裏の意思の強い瞳、芯のある方なんだなと、違う一面に恋してしまったのだわ……私。」


「あぁ、ギャップ萌えってやつですな……」


思わずボソリと呟いた言葉にコーディはキョトンとしたが、私は笑ってごまかした。

元々は兄はそういうやつだ。

だからこそ、うちの広い領地を治めるには適した人物だと思っている。

どんな奴が来ても、きっと言葉巧みに自分に有利になる方向へ誘導することができるだろう。

あの天使の笑顔で微笑みながら。


兄の性格を知っているので、コーディがそこに騙されてしまったんではと不安にもなったが……。

淡々と冷静なコーディをこんな可愛く変身させてくれた兄。

2人は結構お似合いかもしれない。


私は1人で『フフフ』と不気味に笑う。


「きっと幸せになるよ、お似合いだもん。」


私がそういうと、コーディが顔を赤くして顔を背けた。


「私も自信はありませんよ……。お二人はいつもからかうけど……。」


マギーが口を尖らせていった。


「えー?あんなにラブラブなのに。」


マギーの言葉を否定するように私がニヤニヤと笑う。


マギーはちょっと困ったように笑うと、『ふう』っとため息をついた。


「ビクターにとって私ってお母さんなんじゃないかなって思って……。

最近は靴下が表裏逆になっている事を指摘したら、私に履かせ直してと言うんです。

やってあげる私も私なんでしょうけど……この間ビクターに……言い間違いをされて……。」


マギーは恥ずかしそうに言葉に詰まった。


「……え、なんて?」


私が口を挟むと。


「……ありがとう母上って……。」


……はい処刑。

あいつ、処刑。

うちの可愛いマギーに、母上とな!?


「あ、でもすぐいい間違えに気がついて訂正してくれたんですけど……。

私、ショックでした……。

あと、私が横に並ぶとはや歩きになるんです。

きっと私が太っている事が恥ずかしいのかも?と最近思っていて……」


「マギーは10歳の頃からだいぶ痩せたよ?お胸が大きいぐらいで、もう言うほど太ってないよ?

無理なダイエットは成長過程の身体を壊すから、絶対ダメだよ?

そんなこと思うビクターは、私が締めるよ……?」


最後の一文、私のトーンが2つぐらい下がった。

思わずマギーが青ざめて『エステル、ダメです!殺人は……!』なんて言い出すぐらいに。


「私にもっと魅力があればなぁと、最近そればかりを考えます……。」


マギーはため息をつく。


「……私もですわ。もっと可愛い顔だったら、サイラス様の隣を堂々と歩けるのにと……」


コーディもため息をついた。


「えー、ブス自慢なら負けないんだけど?2人とも可愛いよ!自信持って。愛されてんだからさ。」


私はそう言うと2人をぎゅっと抱きしめる。


「……なんかこんなさ、恋の話とかすると思わなかった。まさか自分がってすごい不思議。」


私がまた『フフフ』と笑うと、マギーもコーディも笑いはじめた。


「本当だわ。私もエステルも、結婚しないで隠居するって言ってたものね!」


「……言ってた言ってた。気持ち的には今も変わらないけど、別の感情がそれを邪魔しているから困っている……。」


「……私は、ビクターのお嫁さんになりたいです……。側にいたい……。」


マギーはそう言うと恥ずかしそうに布団で顔を覆った。


「マギーはいつからビクターを好きだったの?」


「いつからですか……?うーん、気がついたのは4年前の夏休みに入ってですよ?それまでは世話のかかる子だなーって弟みたいに思ってたから……。」


「そういえば、あなた達って付き合っているの?」


「……いえ!!そんな!…何も言われてないので……ビクターは私のこと好きかどうかわからないです……!

私の片思いですよう……!」


「……てっきりもう、付き合っているんだと思ってたよ……」


「ええ、私も……。」


思わずコーディと私は絶句した。

何やってるんだよ、ビクターは!


これでマギーをなんとも思ってなかったら……アイツ、消す。


思わず私の決意が固まる。

横でコーディも同じ顔をしていたので、こっそりと握手した。


こうして私たちの『暗殺ランキング』にビクターが上位浮上したのはマギーには内緒だ。


こうして女子トーク、初めての恋バナは、ここが隠れている場所だとかいう緊張感も忘れ、深夜まで続いたのだった。


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