そもそも学校名が普通じゃない
ここは明韻妃星高校。公立でどこの高校とも変わらない普通の学校。
もちろん私の二年クラスも変わってるところなどない。
三年になるまでは。
私、佐東 真衣。今年三年生に進級した女子生徒だ。
「あーあ、クラス替え別れちゃったねー。真衣と離れるの嫌だなー」
「一人だけ一組とか、最悪っしよ。真衣いつでもこっちこいよー」
「ありがとう。でも心配しなくてもちゃんと友達は出来ると思う。じゃあ、わたしクラスここだから。」
進級に伴い、私は仲のいい友達分かれてしまった。こんな感情が出にくい私と仲良くしてくれる人は珍しく、心の底では寂しい思いでいっぱいだ。それでも、ない表情筋を更に顔に出さないように友達と別れる。
(クラス離れるの寂しくて全体の名前確認しなかったけど、知ってる人いるかな。)
そう思いながら私はクラスのドアをくぐったのだ。
さっきまでは期待や、不安が入り混じった感情だった。
だが教室に入ると、そんな感情を持つのを忘れてしまった。
私の目に入ってきたのは眩いほどの美形美女達の顔だった。
眩しいっ。皆が皆整った顔立ち。見るからに個性の強そうな集団。そして何より全員が一、二年の時から有名な人ばかりだ。
女の子を4人もまわりにつれてまるでハーレムを築くヤツ、その逆に男に口説かれる逆ハーの女。男同志で熱視線を交わす人や、その光景を黙って傍観する子。アイドルに、外人に、まるで本物のケモミミみたいな頭の人。
(しかも何で双子の兄妹が同じクラスに居んの?)
その光景まさにカオス。
すべて平均の私がすごい浮いている気がするのは気のせいでありますように。
(いやー、無理だわこれ。)
先生が到着し、新しいクラスの人たちの自己紹介が終わった。自己紹介ってこんなに疲れるのかと思いながら、こちらに向かってくる人に気がつく。
「真衣!一緒のクラスだね。一年生以来だけど、よろしく。」
「花恋、よろしく」
「んー、久々だから難しいけど、今嬉しいって顔してる?」
「知ってる人がいてよかったから安心したの。」
「相変わらず表情筋かったいねー。」
紬乃 花恋。私が1年の頃同じクラスになり、私に声をかけてくれた友達。朝の二人とは小学校からの付き合いなので高校での初友達という人だ。
「このクラス、もう有名になってるのよー。」
彼女は人懐っこそうな笑顔で話しかけてくる。
「…?有名なの?」
「そうだよ。真衣も一人一人の噂話とか聞いたことあるでしょ?その話題の人たちが全員このクラスにいるとなれば有名になるわよ。」
確かに、このクラスの生徒達と、担任の噂話は聞いたことがある。
「けど、全部噂でしょ。本当の話かは、分からない。」
噂は噂だ。それだけで決めつけることは失礼な気がする。
「真衣は真顔でいいこと言うね。けどさ、それが嘘じゃなかったら、このクラスはやばいよ。」
ヤバイとは?
「まー、すぐにでも色々わかってくると思うよ。」
「…花恋はもう何か知ってるの?」
噂の全てを知っているかのような言い方に、一人一人調べたのだろうか。
「んー、その話はまた後でするよ。とりあえずこの一年間でその表情筋、なんとかしよーね?」
そりゃあ無理ですわ。
「とりあえず、今日一緒にごはん食べよ!」
花恋は可愛らしい笑顔で自分の席に戻っていった。
(花恋いて良かったな。)
お昼時間、二人で向かい合わせにして座る。クラスのみんなは外や、私たちと同じようにお弁当を広げている。
けれど、日常じゃ聞きなれない話し声や、会話が聞こえてくる。
「自分たちの話に全く集中出来ないね?みんな声通るし、内容が凄いし。」
花恋の言う通りだ。
周りからの会話が、修羅場にありそうなものや、誰と誰が二人で食べるか、作った材料の説明が基本毒物になりそうな物。
そんな会話を聞き流しに出来るほど、心が柔軟ではない。
(なんだか盗み聞きしてるみたいだ。)
「まー、楽しいからいっか!」
「逞しいな。」
「真衣は食べずらい?」
「盗み聞きしてる気分。」
「ここで話すのが悪いんだからいいのよ。本人達は自分の世界入ってるし。そんな人たちともいつかは友達になるのよー。」
「恐ろしいわ。」
「そう言えばさっきの話。」
「え?さっきなんか話したっけ?」
花恋ははてなマークを出して首を傾げる。
「なんか知ってるって。」
「あ、あー!忘れてた。じゃあ放課後教えてあげる♡」
花恋はそう言ってウインクをした。可愛いなおい。
「転生者なのあたし!」
「いきなりだな」
放課後になり、教室には私と花恋だけになった。
「んー、真衣はさ、あたしの噂知ってる?」
私は小さく首を縦に振る。
「特定の人たちの言葉と態度の未来が見える宇宙人。」
花恋の噂話はこれが主の内容。予知者とも言われていたのを聞いたことがある。
「特定の人っていうのはこのクラスにいる、あたしと、真衣以外の人たちのこと。それ以外は分からない。」
「何で私と真衣以外のクラスメイト。」
「あたしが転生者だからってことと、真衣は純粋なここの『世界』の人だからだよ。」
「転生者?世界?壮大だな。」
花恋は物語が好きだった。それはきっと今も変わらないだろう。
「あ、これ嘘じゃいよ?妄言じゃないからね。」
「それで?」
「あ、うん。あたしは前世って言うのかな?こことは違う世界、うん、こことは異なる日本で暮らしてたの。あたしは高校の時バイトをしながら本やゲームとか買って楽しんでたの。けど、ある日事故にあって死んじゃったみたいだけど、中三の受験終わった時に記憶が戻って生まれ変わってるって気づいたの。」
「そう…」
転生って本当に出来るんだ。宗教とかの話だと思っていた。
「でもなんでクラスメイトのことが分かるの?」
問題はそこだ。転生者はまーいいとしても何故彼らの行動が理解出来ることにつながるのだろう。
「言ったじゃない、見たことあるって。」
さも当たり前のように言わないでほしい。
「話の流れでわからない?みんなゲームや本の中のメインキャラなのよ。」
「めいんきぁら??学校名がどうしたの?」
「いや、明韻妃星じゃなくて!!この学校の名前おっかしいわー。メインキャラ。物語に出てくる主要キャラよ。」
「一つの作品にこんなにも濃い登場人物いるお話って見ている方が大変そう。」
どこかで主人公争いが起きてそうだ。
「いや、流石に一つの物語ってわけじゃないよ。別の世界のキャラがこの世界に集結してるって感じなの。」
わけがわからない世界だな。
ならこの世界はなんなのだろう。
作品のキャラクター達がこの世界にあつまるほどの価値が果たしてあるのだろうか?
「まぁ、取りあせず。あたしの噂はさながら嘘じゃないってこと。あとの噂は自分で真実を知ればいいよ。」
「いやよ、友達作り苦手だもの。」
「ってか、自分で言っといてあれだけど、真衣信じてるの?」
「信じてるっていうより、個性強いから信じざる負えない。」
「そっか…」
翌日のお昼、私は昨日花恋から聞いた話をずっと頭の中で考えていた。勿論授業に差し支えない程度に。だが、昨日の話が本当だとしたら私の知っている噂話は花恋じゃないけどやばい。
嘘か本当かはこれから知る機会があるかもしれないが、出来ることならば知る機会は要らない。それほどの内容もあるのだ。
「でも、関わることなんてないわね。」
きっと私は真相を知ることはないだろう。
そんなことを思い、その日は何事もなく過ぎた。
なんてことは無かった。
「紬乃さん、佐東さん良かったら一緒に食べない?」
通称「地味たらし」が現れた。
短編小説に行き詰まったので、手を出しました。
誤字、脱字お知らせ下さい。