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story 35 魔将型召魔の召喚

 イクサは再び『魔核の間』にやってきた。バトラーたち、城の護り手であるガーディアンたちが起動したのと同時に自分の内側から沸き起こる力の波動を感じたのだ。それは彼の新たなる召喚の力の進化に他ならない。

 魔核の間の装いも城の外装同様に変化していた。禍々しい魔力の波動を放つ眼の周囲を取り巻く枠にも壮麗な装飾が施され、簡単に眼に近づくことが出来ないようにされているようだ。眼の左右には楔文字の刻まれた石柱が立っていて、眼に近づくとバリアのような物が張られ、イクサは恐る恐る手をかざしてみるとブーンと雷の電流を思わせる紫電が舞う。安易に触ったら酷い火傷を負いそうだ。


「さて、次の召魔は何かな。【サモン・スピリッツ】」


 両手を広げ、召喚のワードを唱えた。足元に魔法陣が展開し魔法文字が動き出す。そして、静かに瞑目したイクサの脳裏には召魔のリストの巻物が広がっていく。

 今までに呼び出したのは精霊タイプ、魔獣型と来ている。やはり欲しいのは意思の疎通が出来る魔人型だろう。その期待に応えるように今まで暗いシルエットになっていたリストの一部が明らかにされて、魔人型の部分が露わになっていた。


「おお、やっと……」


 城にいる間はイクサの能力は拡張され、召喚するのに必要な魔力もブーストされる。今なら魔人型召魔を呼び出すことが出来る。


「よし、やるか」


 イクサは新たなるパートナーを召喚する覚悟を決めた。広げた両手の中に収束される魔力。足元の魔法陣が激しく脈打ち、巨大な魔力の波動を周囲に伝播していく。

 呼び出すべき召魔の魂がたゆたう召魔界にアクセスし、自分の魂とリンクさせていく。その過程に召魔の特性や素性も明らかになっていく。どうやら召魔は女性の人型のようだ。それも直接戦闘を得意にするようだ。


「【アドベント】バルキリー、【クリスニング】フィオナ!」


 イクサの召喚に応じ、召魔界からの魂の牢獄から解き放たれて足元の魔法陣の中に輝く光の繭が顕現し、繭が解けると金色の人型の像が出現した。

 やがてイクサが瞑目していた瞳を開けると金色の人型の像の表面を覆っていた金箔のような皮が剥がれて消えていくと彼の前に跪いた黒いスエット姿の女性が頭を垂れる。


「あるじ様、お召しにより参上しました。バルキリーが一人、フィオナにございます」

「あ、ああ、僕はイクサ。ああ、そのままじゃいけないな」


 フィオナと名乗ったのはイクサと同じくらいの年齢に見える美少女だ。青い髪としなやかな体つきをしていてスタイル抜群だ。知性を湛えた瞳をしていて落ち着いた物腰を感じさせる。

 イクサが頭の中で彼女にふさわしい装いを考える。全身はガーディアンたちと同様に全身をピッタリと包んだ黒いスエットのようなものに身を包んでいる。

 バトラーとメイドたちのように彼の趣味が反映される。とはいえ、あまり扇情的なのは困る。彼の従者として付き従って貰うことになる。簡単なシャツとズボンを思い浮かべるとフィオナの全身が淡く輝いてその通りになる。


「そういえば君の装備とかはどうなってるの」

「はい、私たち魔将にはそれぞれ専用の装備がございます」


 そう言ってフィオナは片手を広げるとそこに銀色に輝くブロードソードと盾が握られ、全身が神々しいまでの銀色の装備に包まれた。

 肩や胸、手足を守る装甲とヘルメットは耳に飾りが付いている。それぞれ金色の縁取りのされた華麗なデザインの凜々しい姿だ。


「おお、強そう」

「はい、これであるじ様をお守りいたします」


 呼び出すときに知ったフィオナの素性からは、初めからイクサと同じレベルで今まで彼が呼び出した召魔たちと同じ能力を持っている。それにプラスして、バルキリーは剣技を持ち、高い戦闘力を持っているらしい。

 彼女が呼び出した専用装備も彼女同様に成長するようだ。


「そうだ。さっき言っていた魔将というのは?」

「はい、私は魔人型召魔のうち、軍団を率いる将として存在します」

「そ、そうなんだ」


 イクサはこの時はまだ意識していなかった。この城と彼女たちの主人となることの意味を。


 能力の確認が出来たので一旦、フィオナには召魔界に帰還して貰おうかと思ったが、何故か悲しそうな顔をしてくるので思いとどまった。


「え、と……弱ったな」

「あるじ様、どうぞ、フィオナにもご寵愛を賜りとうございます」


 そう言ってイクサに抱きついてくるフィオナ。思いもしなかった展開に硬直してしまうイクサ。


「困ったあるじ様ですこと。私たち召魔はあるじ様のお側に居たいものですわ」

「あ、ああ、その……女性とそういう関係になったことが無くてさ」

「どうぞ、私たちがお相手をしますわ。お気を楽になさってください」

「と、取りあえず、今はその、いいかな。後でフォローするから」

「フフ、ご無体を申しました」


 フィオナは蠱惑的な微笑みを浮かべてイクサから体を離した。彼女が体を離してもイクサの胸の動悸はしばらく収まらなかった。

 申し訳なさげな顔をしながらフィオナには召魔界に帰還して貰った。


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