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個営小隊-ランペイジ  作者: カイガラ商店
二章 愛し合うことは罪なのでしょうか
10/12

2-5、嵐と嵐がぶつかると…?

二人の鹿児は番外編でも作って適当に詳しくやる予定。

神は龍神族を邪魔に思っていた。

一族でかかれば自身すら討ち滅ぼす彼らを。

外なる神である自身には信仰の基盤が出来ておらず、わずかな信仰心でも確保したかった。信仰心は、神として存在するための担保であり証明でもある。故に、死活問題であるということだ。

それを一掃、尚且つ被害は無し、理想の展開だったはずだ。が、その実行犯が想像以上に強くなった。龍神族がこれほどの力を持つ理由として、同化と言われる物がある。相手を傷つけた分、相手の魂を奪い自分の物にしてしまう。

そうして龍神族の力を全て手に入れた彼女は、もはや神を超えていた。利用しようにも、潰そうとしても、どうにもならない。

だが、つけいる隙はあった。なぜか彼女が全てを掛けて尽くしている少女を利用するつもりだった。


「これから呪いを解くわ、この子と私、二人っきりにさせてもらってもいいかしら?」


「………不服ですが、しょうがないですね。」


少女は彼女の行動を知らなかった。何をしたのかは聞いても答えてくれなかった。既にその手が赤く染まっていることなど知る由も無かった。

そして、いつしか愛情を抱いていた。絶望は影を潜め、彼女と共に歩むことを望んでいた。いや、絶望はまだ居ただろう、彼女の愛に埋もれることにしたのだろう

そしてそれが彼女の手綱になっていた。

神が少女の呪いを解き、その愛情を利用するつもりだった。

ただ、少女の呪いは、「魔力の出力を抑える物」だった。不死は、別にもたらされた物だった。

少女は、輪廻の輪から既に外れていた。

神は油断していたのか、気づかずに呪いを解き、支配の呪いをかけ直そうとした。

少女は呪いが解けた瞬間、溢れ出る魔力に驚く。巡る魔力によって活性化する脳に驚く、次々と花開く力に驚く、己を理解する。

目にしただけで魔法の種類と効果を把握して、適切な対策をとる事も出来た。

頭に手を掛け呪いを掛ける神の魔法を反射し、反対の属性の魔法で吹き飛ばした。

彼女は異変に気づき、状況を瞬時に理解する。扉を蹴破り部屋に駆け込み体勢を崩した神に、龍の拳で殴りかかる。


「私のクレイスから離れろ!!クソ女!!」


今までの丁寧な言葉からは想像できない汚い言葉でののしりながら、怒りに任せ体の一部を消し飛ばす。

すぐに少女を抱えガラスを破り、空を飛び天界から逃げ出す。


「呪いは!?解けたんですか!?」


「…呪いわな、代わりに知れたよ。私の底の低さをな。」


呪いによって記憶が、意図的に封印していた記憶が出てきたことにより少女は絶望を完全に受け入れた。

罪と罰、罪を知って罰を求め続けることを。


「ひとまず、帰りましょう!」


二人は逃げた。だが、誰も追わなかった追えなかった。神が恐れた力を持つ者と神を傷つけた者。当時の、いや今でも敵う者のいない最強の二人だ。

少女は知らなかった、彼女の払った犠牲と手段を。

彼女は知らなかった、少女の力と呪いの意味を。

二人は地上に戻り、国を転々とした。細々と暮らし、小さな趣味を見つけて。寄り添わなければ崩れてしまいそうな状態で。

少女が道案内をして、彼女が身の回りの世話をする。

何時しか互いの罪を許し合えるようになるまで、互いが断罪される日まで、合わせるわけでもなく秘めた想いを胸に押し込んで。

だが収納は苦手だ、互いに無理矢理押し込んだせいでバレバレだ。

今でも。


「………龍神族の力を全て手に入れたハーク、不滅の泉を宿したクレイス。夫婦は遂に家族を手に入れましたとさ。」


「まあ、かなり掻い摘まんだがな。無茶苦茶な所もあるだろう。」


紅茶が冷めていない、短い間の昔話。だが、二人の概要を知るには十分なほど、一言一言に気持ちが込められていた。

この二人はどれだけの時間を生きてきたのだろう。

4000年前?途方もない時間を生きていたのだろう。


「…以外だな。一族郎党皆殺しにしたんだぜ?もっと引くものかと思ったが。」


「殺すことが罪なら私もそうよ…。義輝だってそう。何よりね、私達は皆そうでしょう。」


私は人殺し一家の当主だし、義輝は処刑人だった。

あなたたちの、この短い間に時折見えた自然な笑顔は、信用には完璧に足りる。まだ短い間だが、これだけは自信を持って言える。


「ねぇ、クレイスの事は話してくれないの?」


所々疑問に思うところがあったが、恐らく音でクレイスの話で保管されると思う。何より、掻い摘まみすぎて話の流も分かりづらい。


「話してやりたいが、まあ落ち着いてからかね。」


そうだ。一応敵地の真ん中だった。私がやれることは決まっているが。


「私はハークと合流する。お前は援護してやれ。」


誰のことかは言わなくてもいいだろう。いつも通りの、妙に自信ありげな笑顔が示している。

クレイスは瞬きの瞬間に姿を消していた。神出鬼没とはこの事を言うのだろう。

どうやって来たのか、聞きたいことは沢山あるがそれも後で話させるか。


「第三ブロックは近道があるわね。この部屋の右手に転送機があるから使いなさい。」


「…そういえばあなた天使だったよね。」


「言ったでしょう…私はあいつが嫌いなのよ。」


シナモンロールを囓りながら、ひらひらと手を振りながら暗闇に歩いて行った。

さて、私も行かないと。

家族か…後でお母さんとでも呼んでやろうかな。年齢的にはおばあちゃんだけど、呼んだら確実にただでは済まない。

私は無謀は嫌いなんだ。



遠視の魔法で衝撃点を観測する。

今は神と義輝が戦闘しているようだ。完全に拮抗している。具体的には、よく分からないがなんか戦ってる。時々光っているぐらいしかまともに分からない。


「状況を。」


「はっ、ローカス隊は下層の制圧を完了後調査に、ストーム隊の尋問は上手くいっていないようです。」


「他は継続中と……ふむ、概ね予定通りだな。バースト、そっちはどうだ?」


ナリスは城内に入るやいなや、沢山の兵隊を召喚して制圧を始めた。私の知ってる兵隊とは少し違う、でも格好いい。兵隊達は数十人づつのグループに分かれて掛けだしていった。ミリアはどこかに行ってしまった。

気付くと「あそこでドンパチ騒いでる奴らの監視な」と命令され、現在に至る。


「完全に拮抗している。援護するのか?」


私は出来ないがナリスなら余裕で出来るだろう。椅子に座って本を読む余裕があるくらいだ。

あの本は敵の兵士や、スナック感覚で殺した天使の持っていた物らしい。興味はあるが血がべっとりついている本なんて触りたくもない。あれ、私いつの間に血が苦手になったんだっけ?


「ああ、だが今じゃない。どうせなら全員で決めたいだろ?」


初陣だからなっていうけど、いやだから何?

私的にはさっさと終わらせて欲しい、流れ弾が当たるかもしれない所に居たいわけ無いだろ。

今こうやって眺めているだけでも怖いのに。


「ピラティス隊から連絡、地下に巨大な魔法区間を発見。なお、尚美様の魔力を探知。」


魔法で生み出された人形のはずなのにまるで自我を持っているように考えて行動している。よほど高度にプログラムされているのだろう。


「そうか……くくくっ、空の上なのに地下か…」


「いかがいたしましょう。」


「放っておけ、ピラティス隊はランス、ソード、ハンマーに分解せよ。ランスは現場で警戒、ソードは遊撃隊として各隊の掩護を、ハンマーは七階の食糧庫からワインを三本頼む。」


明らかに暇をもてあましている。椅子をカタカタ鳴らしながら欠伸をするぐらいならさっさと終わらせてほしい。城内はほぼ制圧済みだが酒を飲んでいる余裕は無いと思うが。

それにチーズもないのにワインを飲む気にならない。酒単品なら個人的にはテキーラが好みだ。それかウォッカでもいい。


「ランスより伝令、第六天使が総菜パンと菓子パンを振る舞っているそうですが…」


アーアーキコエナイー。アリエナイソウゾウデキナイセキナンtキコエナイー。


「………包み紙か袋に何かマークは無いか?」


「時計を模したマークが有るそうです。」


「…規格外とはよく言うか……ランスに伝令、命令変更、それをもってこい。」


時計のマーク…確かクレイスのケーキ屋のシンボルマークだったはず…あ。まさかあいつここに来ているのか。ん?違う。なんで天使が菓子パンなんか配ってるんだ?訳分からん。

こんな時は別の事を考えるに限る。

ナリスはさっきから次々と入ってくる情報を処理しながら指令を出して、張り巡らせた兵隊達を両手のように自由に動かしている。

この部屋に入ってくる情報を適切に取捨選択する力が優れているのか、そのシステムを構築しているのか。


「こんにちはー、天使の宅配便でーす。」


何で来るんだよー!!いや一応拘束はされているけど、なんでそんな元気なんだよ!見た目に反して自由人か!


「ん、ああ、さっき聞いたぞ。第六天使だな。」


「ええ、頼まれていた物よ。あの兵隊達食べないなら早く言ってほしいものね。」


「では後でプログラムしておこう。」


もう気にしないぞ。考えるだけ無駄だ。当たり前のように敵と会話しているように見えてもそれは私が見ている幻覚に過ぎない


「で、目的は?」


「最上階の部屋の鍵、これを渡しに来たの。」


「最上階?…まあ、受け取っておくか。」


最上階に宝物庫でもあるのか?神でも光り物を集めたいのかね。

いやそもそもこいつは敵じゃないか。罠か?


「ソードに伝令、命令変更、一度戻ってこい。」


まだ未制圧の階層には残りの天使が立て籠もって籠城戦を展開しているらしい。ナリスの召喚兵隊達は魔力で出来てるから死なないけど。つまり陥落は時間の問題だ。

しかしこのパン、甘くて美味しい。作り手の腕の良さが伺える。


「…ん、動いた。」


観測中の二人が、戦闘が大きく変化した。義輝が大きく後退して、刀を鞘に収める。二刀流のまま、鞘に収めた刀の柄を握りしめて体勢を低く構える。

あの体勢じゃ攻撃も防御も出来ないと思うが…


「あら、そのワイン持ってきちゃったの?」


「見つけてしまったからな、お前も飲むか。」


「ええ、私の大切なヴィンテージだもの。」


本当に何をしているんだあいつら。

私がまじめに働いているじゃないか。

そんなことを考えているうちに、義輝は動いていた。神の攻撃は基本、弓らしい。常に一定の距離を取っている。その距離を、一瞬で詰めた。

瞬間の事だから分からなかったが、一時的に超速で動いているのだろう。

そのまま刀を抜いて、抜いた勢いのまま横に二線、刀が振り抜かれたみたいだ。

神の横腹に赤い線が走る。

が、至近距離で放たれた矢が義輝の胸に刺さり、そのまま勢いに任せて転がっていった。


「おいおい…負けたぞ。」


「それはそうだろう。本気も出せないんじゃしょうがない。おっソードだな、頼んだぞ。…あー、気にするな。なんか上の方で馬鹿二人が本気出してるから。」


ワイングラスを傾けているが、見た目が幼いせいで教育的によろしくない絵面になっている。自分が小学校三年生クラスの養子だということを再認識したらどうだ。


「制圧完了です。ただ、半数が消し飛ばされたようですが……」


「気にするな、徴募兵であの二人を相手にして、被害がそれなら健闘しているさ。」


首筋を針金で貫かれたような感覚がじわじわとやってくる。何かに押されるように、真っ直ぐこっちに向かってくる。


「天使、そこの悪魔の後ろに隠れな。耐衝撃陣形構え!!武装拘束!!」


轟音が響く。瓦礫が雪崩のように襲ってくる…と思っていたが。

瓦礫は黒い霧に触れて消えていった。

その黒い霧の中心にはクレイスが立ち、組技でミリアを拘束するハーク、鎖状の拘束具でアリーシャを押さえつけるナリスが両脇に居た。

どうやってここに来たとか、この状況の理由はなんだとか、色々言いたいことがある。

しかし、おそらくこの現状の一番の原因のクレイスは昨日のふざけた様子は無く、ピリピリと魔力が張っている。来る前は着けていなかった無骨な指輪やイヤリングからは何やらの魔法がかかっている。顔こそいつも通りだが明らかに戦闘態勢を整えている。

アリーシャとミリアも、鎖が外れた獣のように荒々しい様子だ。普段の姿だと相対的に大したことのなさげな力だったが、今はクレイスにも負けず劣らずの力を感じる。

いつも通りの様子なのは、ナリスぐらいだろう。ハークはいつも通りすぎる、何というか無理をしているように感じる。ふつふつと湧き上がる物を必死に押さえつけているような…。


「で、何をする予定だ?」


「一つしかないだろ。あいつを殺すんだよ。」


「なら私にやらせなさい……あいつには痛い物を食わされたからね!」


痛い物とは、義輝も食らっていたあの光る矢のことか。確か吸血鬼の一族は強い光に弱いらしい。科学的な光でも魔法的な光でも効果があるらしい。

一応、こいつらと戦える力を持っている奴の魔法で弱点を突かれれば、それは効くだろう。


「……それだけか。」


「その程度でしたら私たちは譲りませんよ?」


「…はぁ?!だっだらあんた達から殺ってやろうかしら!!」


何やらやばい気配する、冗談じゃないぞ。こいつらの喧嘩なんて余波だけでも死ねるぞ。


「まあまあ、早い者勝ちでいいじゃないか。」


おお!まさか喧嘩大好きそうなナリスが仲介するとは!

これで助かりそう「乱闘で最後まで残っている奴が自由に決めるということでどうだ?」……え?

「そう…なら、始めましょうか?」「言い出しっぺが引くのはつまらんだろう。」「俺と戦うつもりか、面白い。」「グルルルル…」「あまり時間はかけませんよ?」


あかん、これあかん奴や。

拘束を解いて五人が部屋の中央でにらみ合う。戦うべき相手が違うと思うのに、最初集まった時のじゃれ合いなんかとは比べ物にならない事が起きるだろう。


「…私たちは逃げましょうか?」


心の底から天使に賛同する日が来るとは思っていなかった。だが、逃げた程度で助かるのだろうか、いや、逃げなければ確実に死ぬ。

服の背中を突き破り、私の自慢の悪魔の羽を伸ばす。とても久しぶりに羽を伸ばす気がする。この伸ばした時の爽快感はなかなか格別なんだが、今はそんなこと考える余裕はない。

全力で窓から飛び出し、一心不乱に遠くを目指す。


「もっと早く飛べないの?!」


「うるさい!自分で飛べ!」


「飛べないのよ!魔法なんて事務的な魔法しか使えないわよ!」


「それでも天使か!!」「悪いわね!!」


この世界の地のすれすれを、線が流れる世界に入った時、空気が震え衝撃として襲ってきた。

衝撃で皮膚が裂け血が噴き出る。三半規管が滅茶苦茶にかき回され吐き気が湧いてくる。命が削られていく。

それでも飛び続ける、今回ばかりはクレイスの強制契約に感謝しよう。その魔力でこうして逃げれているのだから。

逃げるために、逃げる対象の力を使うのは何やら矛盾を感じなくもない。

ああ、こんなくだらないことを考えれるなんて。

生きているとはすばらしいな。


「神こと、ラグナロク様よ。光栄に思いなさい。」

ー(めんどくせぇ…)あー、自己紹介をどうぞ。

「一応ネタバレはしない主義だから言えないわね。」

ーでは趣味など。

「ネタバレだから。」

ー……昨日のご飯は?

「ネタバレだから。」

ーもう帰れよお前!

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