表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/33

最終話

 手術は八時間にも及んだという。


 その間、タケルは物語のように美しいダイヤモンド王国の夢を見ていた。


 結婚の許しを得るために、フレイアと共にタンザナイト王国へ向かう意気揚々としたアヴェリュスの姿。


 生まれたばかりのエヴァンスを抱く、フレイアの幸福な笑顔。


 それを見つめるアヴェリュスの、慈しみに満ちた金の眼差し。


 庭を駆け回る幼いエヴァンスとリリアーヌの姿。


 エヴァンスとジュリアスの結婚式。


 青薔薇の咲き乱れる庭園で遊ぶ、4人の子供達を見つめるエヴァンスとジュリアス。


 走馬灯のように巡った情景はタケルが描いた夢なのか、垣間見た現実なのかは分からない。


 ゆっくりと目蓋を開く。




「大丈夫か、タケル」




 心配と安堵が入り混じったような表情で見つめる父親の姿があった。


 今にも涙が零れ落ちそうな、薄茶の瞳を震わせる母親の姿もある。




「手術は成功したぞ」




 本当にと尋ねようとしたが腹部に力が入らず、声にならなかった。


 タケルの思いを抱きしめるように、父親の大きな手が、タケルの頭を撫でた。




「よく頑張ったな」




 言葉の代わりに小さく頷いた。


 途端、無意識の涙がタケルの頬を伝い落ちた。


 細く長い母親の指が、流れ落ちた涙にそっと触れる。


 言葉も出ない様子の母親の目からも、涙が零れ落ちた。


 手術室に入る前、もう両親とは会えないかもしれないと思った。


 やはりやめると言いたくなる心を留めたのは、フレイアの成功する確率が半分もあるという声だった。


 フレイアは、絶対に大丈夫だと言った。


 その言葉を信じようと思った。


 結果、タケルは丈夫な身体を手に入れた。


 両親が見つめている。


 誰よりも、幸せを願ってくれた人達。


 誰よりも、幸せにしたいと思った。


 嬉しそうに見つめる両親の眼差しに、手術を受けて良かったと思った。


 同時に手術を受ける気持ちを起こさせてくれた、夢の国の人々に深く感謝した。




「もう少し眠れ、タケル」




 子守歌のように紡がれた父の言葉に、タケルはゆっくりと目を閉じた。


 もう目覚めないかもしれないと、眠りにつくことに恐怖を抱くこともない。


 ずっとずっと先の未来まで、道は続いているのだ。


 その道の途中にはきっと、扉の向こうの世界へと続く道もあるはずだ。


 いつか必ず、彼等に会いに行く。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ