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魔物のお医者さん  作者: 浅見カフカ


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9/11

人選

魔王へのデモンストレーションの人選は悩みに悩んだ。

塚本ドクターの参加は必須だ。

そうなると先ずは通訳が要る。

高位の魔物になれば言葉も通じるが、通常の魔物の多くは人間の言葉を知らない。

エドを推す声が多かったが、エドが随行してしまうとこの医療キャンプが回らなくなりる。

情けない話だが、俺は医者ではない。

塚本ドクターは俺をもよもとドクターと呼んでくれるが、せいぜい保健委員の上位互換だ。

会議が沈黙し始めたところで、外の騒ぎが聞こえてきた。

急患かもしれない。

塚本ドクターは椅子を倒して立ち上がるとそのまま駆け出して行った。

俺もあとを追った。


外ではゴブリンたちが上を見て騒いでいた。

「ワイバーン!!」

初めて見た。

竜騎士の国では名誉騎士として騎士と暮らすと聞くが、通常はこのような里には飛来しない。


大きな翼を広げたワイバーンが幾度かの旋回の後、滑空して降りてきた。

ゴブリンたちは散り散りに逃げ出して物陰に隠れてしまった。

俺たちの前に降り立ったワイバーンは長い首を後ろに回して背中を振り返っていた。

まさかと思い、ワイバーンの背に回ると魔族と思われる男が死神の迎えに手を伸ばすところだった。


「エド!」

塚本ドクターがそう呼んだ時にはもう既に、ストレッチャーを押したエドがそこに居た。

「もよもとドクター!!」

エドに言われて俺はようやく魔族の身体に手を掛けた。

「1・2・3」

声を合わせて同時に持ち上げた。

僅かに呻いたその口から、ノコギリのような鋭い歯が覗いた。


「失血が酷い、至急輸血をする」

「塚本ドクター、どうするんですか?魔族の血液型なんてどうやって」

俺が言い終わる前に、エドが患者から採取した血液を二枚のガラス板に垂らして観察を始めた。

「A型......凝集確認。B型......凝集確認」

「AB型の供血者を集めろ」

塚本ドクターの号令でゴブリンたちが行列を作り始めた。

「ウラは?塚本ドクター、ウラ検査はやらないんですか!?」

「治療と並行だ。今は失血を補うのが優先する。エド、全型で免疫の高い者を」

塚本ドクターの指示でエドが人間一人とゴブリン三人を集めて採血を始めた。

きっとウラ検査用の抗原採取だ。

塚本ドクターとエドは緊急時の為に、患者全員の血液型のみならず、免疫能力の高い者まで選別していた事実に俺は震えた。

そしてこの世界の医療が、治癒魔法の弊害で遥かに遅れていることを改めて知った。

「もよもとドクター、輸血を頼めるかい?私は損傷した臓器を止血する。ネペンテス、麻酔を」

呼ばれたゴブリンが、ワインに何かを溶かし始めた。

あれはきっとケシから抽出したものだろう。

古代ギリシアでは麻酔として、詩人ホメロスのオデュッセイアでは悲しみや苦しみを忘れる薬——

そう、ネペンテスと呼ばれていた。


ネペンテスはワインを染み込ませた綿を、魔人の口に当てた。

次第に身体が弛緩していくのが分かる。

それを見て塚本ドクターは魔人の腹を開いて探り始めた。



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