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正義が勝たないデスゲームから脱出しよう【R15】  作者: かざみはら まなか


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525/537

525.お父さんお母さんへの俺の希望的観測。弟は部活仲間ヨッシーくんの本心を知りたがるが、背後に誰かいる状態で本心は聞けない。

物心がつく頃から培われていく内側にあるものが、俺と弟では違っている。


腹を割って話すうちに、感情面で納得できないことや、共感し辛いことが弟と俺の間で増えていくと俺は予想している。


俺と弟の間で噛み合わなくなる最たるものが、家族や友達との向き合い方だとしても、俺は不思議に思わない。


「ショウタと弟さんが会って話をしているときにデスゲームが始まらなかったら、弟さんは今、家にいなかったのではありませんか?」

とカガネ。


カガネの追撃に。


弟は、酸っぱいものを口に溜めているような顔になった。


弟も、弟なりに思うところがあるというのが見て取れる。


「一言ずつメッセージを残した四人が、個別に連絡してきたことはあるか?」


俺と弟は、仲良くなるほどの関係性を築いてこず、仲が悪くなるほどの時間を一緒に過ごしてこなかった。


弟の友達よりも弟を知らない自覚が俺にはある。


「ない。今日が初めてだよ。」

と弟。


「近況報告をし合っているヨッシーさんには、弟さんを呼び出したくなる差し迫った用事がありそうでしたか?」

とカガネ。


「差し迫った事情があるなら、家に呼びに来ると思います。


俺が家にいると分かっているなら、家に来た方が早いので。」

と弟。


「ナマハラくんが留守電にメッセージを吹き込んだタイミングを考えると。


今日、全員で留守電に入れる計画を立ててから、ヨッシーくんが誘ってきたとしても不思議ではない。」


「全員のタイミングがぴったりだったね。」

と弟。


「弟さんとの仲に温度差がありながら、趣旨がズレた発言をした部活仲間は一人もいませんでした。」

とカガネ。


弟は、カガネを見た。


「留守電に入れた全員が、予め決められた台詞を吹き込んでいたと考えていますか?」

と弟。


「電話口で、順番に台本を読んでいたという断定はしません。」

と弟カガネ。


「複数人で、流れるように台詞吹き込むための練習をしたのかもしれない、とは思う。」


「家にいる弟さんが、吹き込まれていくメッセージをその場で聞いていることを疑っていないようなメッセージばかりでした。」

とカガネ。


カガネは、自分の考えを強調する話し方をしない。


カガネがすることは、提案や一つの見方として、周りに示すだけ。


弟は、カガネの台詞を噛み締めるかのように聞いて黙っている。


「ユキミが今日家にいることは部活仲間に知らせているのか?」


「予定も位置情報の共有も俺はしていないよ。


お母さんは、美容絡みの人達と予定や位置情報の共有を勧められてやっていたけれど。」

と弟。


ここで、お母さんについての情報が弟から追加されるとは。


予想外だった。


美容整形手術を受ける前のお母さんと弟は、信頼関係を築けていたのだと思う。


親としての信頼を得ていた親が、息子から慕われ、息子を導ける立場にいた、か。


家族ではない他人と位置情報の共有をしてしまったお母さんが、美容整形手術を受けずに逃げ出す道を選ぶのは、心理的に難しかったのではないか。


ユキミに聞いたお父さんとお母さんの会話から分かることになるが、ある時以降、お母さんはお父さんを心配していない。


既に美容整形手術済みのお父さんの心配は、しなくてもよいと割り切ったのか。


それとも。


位置情報の共有などをやりすぎたお母さんは、自身の心をすり減らしたせいで、お父さんを心配する余裕をなくしてしまったか。


お母さんが、お父さんを心配しなくなった理由までは分からない。


俺が出ていった後も、この家には、お父さんとお母さんだけでなく、就職してからも一緒に住んでいるユキミが残っていた。


自分が逃げたら、まだ無傷で済んでいる息子がどうなるかを考えないお父さんお母さんか?


答えは、いいえだ。


俺に要望を押しつけてくる人がいたら、最初はともかく、最終的にはお父さんお母さんが先方に謝罪することで、なあなあになりしながらも、俺の意思を通すことは死守されてきた。


お父さんお母さんが、大人になっても出来ないことが多くある大人であることは間違いない。


だが。


お父さんお母さんは、親であろうとすることを投げ出してはしなかった。


親であろうとするのを止めなかった。


親であるという意識がある大人だった。


親になっていなければ、お父さんお母さんは、周りに流されて楽に生きていけたかもしれない。


なまじっか、親になったために、お父さんお母さんの人生は不得手な分野から逃れられなかった。


自身の不得手な分野が分かっていたとしても、親になるときに不得手な分野がついて回る人生は想像しなかったのではないか。


お父さんお母さんの間に俺が生まれるという事実が、生まれる前から分かっていたら、産んだ後のことを考えて対策しておこうとなったか?


俺のお父さんお母さんに出来る対策があるとすれば、俺の親にならないことぐらいしか思いつかない。


お父さんお母さんは、俺と弟の親として、お父さんお母さんが出来る精一杯をしていたと思う。


俺とお父さんお母さんが、一緒に生きていく図は、今も想像しにくい。


お父さんお母さんに俺の全部は任せられないという感覚が、俺の中に根付いている。


だが。


弟には、親として求められていた。


俺は、お父さんお母さんの在り方を他の誰かと比較したりはしない。


お父さんお母さんは、俺と他の子どもを比較する発言を自発的にはしなかった。


比較する誰かの発言に逆らうことも訂正することも、同じくらいしなかったが。


お父さんお母さんが息子を犠牲にしないと決めて、我が家の今がある。


そう解釈するのは希望的観測すぎる、か。


「お母様の成り代わりは、お母様と同じように、お母様に美容整形手術を強要してきた人達と位置情報を共有していませんか?


位置情報の共有をしていなくても、報告はしていたとは考えられませんか?」

とカガネ。


「お母さんの成り代わりが報告した人達から、俺が家にいるとヨッシー達部活仲間に伝わった?」

と弟。


「お母様の成り代わりとヨッシーさんの間に、何人か挟んでいる可能性は十分あります。」

とカガネ。


「お母さんの成り代わりが、誰かと連絡を取り合い、ヨッシーに俺の情報を伝えているのは今日だけかな?」

と弟。


芽生えた疑いを確認するかのように口に出した弟は、カガネを見た。


「部屋に引きこもっていても、連絡は出来ます。」

とカガネ。


「ユキミが家にいない時間に、連絡し放題か。」


「俺が行けない日を把握した上で、ヨッシーは俺を誘っていた?」

と弟。


弟は愕然としている。


「ヨッシーくんに、ユキミに会いたくても会えないという思いがあったのか。


会わなくてもいいから会わなかったのか。


会っても会わなくてもいいから会わなかったのか。


まだ、何も分からない。」


「参加できない日に誘うこともさりながら、弟さんを誘うこと自体、ヨッシーさんの意思だったかどうか。」

とカガネ。


「ヨッシーくんが誰かの指示に従って、日を決めたり、ユキミを誘ったりしていなかったとは言い切れない。今は。」


「ヨッシーに話を聞きたい。」

と弟。


弟は、力強く言った。


「話を聞く前に、デスゲームはクリアしましょう。」

とカガネ。


「ヨッシーくんと話をするなら、まずはヨッシーくんに関わっているやつらの排除からか。」


「兄ちゃんは、ヨッシーが誰かの指示に従っていると考えているよね?」

と弟。


「ユキミとの関わりに限定して言えば、ヨッシーくんの自由意志で動いているとは思っていない。」


「兄ちゃんは、ヨッシーに指示しているやつらを知っている?」

と弟。


「問題がある存在を認識しているが、その集団の構成員の誰がヨッシーくんに指示しているかは知らない。」


「詳しく知ってそうなのに、ピンポイントで知らないのはなんで?」

と弟。


「構成員が誰かを突き止めたことがない。


深く関わりがないうちは、何らかの働きかけがあって取り込まれて協力者になったのか、純粋培養の構成員かを調べるきっかけがない。」


北白川サナの祖父が支援団体の協力者になった経緯は、本人から聞いた。


しかし、構成員だった誰かの告白は聞いたことがない。


構成員が、構成員だと名乗ることはないのではないか。


「排除する相手が分からないのなら、排除して話を聞くなんて出来ないよ。」

と弟。


弟は難しい顔をした。


「これまで疑問を持たずに過ごしてきて、何が分かっているか分からないのなら、これから分かっていけ。


何をするにしても、今日のデスゲームを無事に終わらせてからだ。」


「兄ちゃんは誰が悪者か分かっていないくせに、なんで偉そうなんだよ。」

と弟。


「誰かの指示で弟さんに向き合っている場合、ヨッシーさんは、思うように話せないのではありませんか?」

とカガネ。


「俺は、ヨッシーの本心をヨッシーから聞きたいです。


今のままじゃ、ヨッシーを友達と言っていいのかすら分からないから。」

と弟。

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